南鳥島のレアアース採掘プラントに駐留していた守備隊から敵艦隊接近の報が入ったのは未明頃で、夜明けには増援出撃の指令が下った。
うちの鎮守府からは水雷戦隊が派遣される。
旗艦阿武隈、以下五月雨、涼風、春雨、村雨、夕立
横須賀からは主力艦隊として高火力の艦隊が派遣されるらしい。
足の速いあたしたちが先行して主力が到着するまで支援を行う。
サミ姉と一緒の艦隊での出撃は実は今まで一度もなかった。
今回が初めての一緒の出撃である。
横須賀の鎮守府では出撃ゲートがあって艤装が上下左右からすっ飛んできて、ズバズバっと装着してカッコ良くかつ、迅速に出撃できるシステムが実装されていると噂を聞いてたので、鎮守府に着任した当初、どこにそんなものがあるのかと探したものだが、先に着任していたサミ姉に『えー、なにそれ、そんなのないよー』と言われがっかりしたものである。
ではどうやって艤装を装着するかというと、フレンドシップマニュピュレイトアシストシステム(FMAS)というのを使う。
というのは嘘で、要はごちゃごちゃした倉庫内でバタバタと手作業で装着するのだ。
出撃前の艤装の装着は大体その日に出撃のない、仲の良い艦娘にアシストしてもらうのがうちの鎮守府での慣習で、あたしとサミ姉は毎回お互いのアシストをしていたのだけれど、今回は二人とも同時の出撃だったので、それぞれ他の娘にお願いすることになった。
あたしのアシストは時雨に頼んだ。
そしてサミ姉は夕張だ。
『この艤装の装着作業というのはいいな、まるで二人、愛の語らいをしているようだ。そうは思わないかい?涼風』
時雨がまた訳の分からんことを言い始める。
『いや、別に思わねぇけど』
『そうかい?涼風はテレ屋さんだからな、ボクは無粋なことをきいたんだね、すまない』
時雨は相変わらずだ。テレ屋ってなんだ?テレとか売ってないぞ?テレの単価は?原価率は?賞味期限はあるの?
あたしは主機の装着をするために上を脱いで今下着姿になっている。わき腹ちょっと下の腰骨あたりに時雨が意味もなく手を置いて撫で始めた。
『涼風の腰骨、きれいだね』
『時雨、いいからとっととやってくれねぇか』
『そうだね、敵は待ってはくれない。急ごうか』
時雨はなぜか嬉しそうに満足顔で作業を続ける。あたしはふぅっと一つため息をついて、辺りを見回す。少し距離をおいて正面に夕立。由良がアシストしていて二人でキャッキャウフフとやっている。なんかむかつく。そして横目で隣のサミ姉と夕張を見る。うわっ
夕張マジ息荒いし目が血走ってないか・・・・
大きく露出したサミ姉の背中。その背骨に沿うように3つ並んだ丸い小さめのジョイントに主機を取り付けようとしている。その手が怪しく震えている。目はサミ姉のキレイな背中に釘付けだ。
『夕張さん息荒いよぉー、背中にかかってくすぐったーい』
サミ姉がけらけら笑って言う。『大丈夫?夕張さん』
『大丈夫!大丈夫だから!!』
けしからん・・・・
若干釈然としない思いを抱えながらも、この時のあたしにはまだ余裕があった。
夕張のその様子からは二人の関係性がまだそんなに深くはないと感じとれたからだ。
このくらいだったらあたしの方がサミ姉との関係はずっと深い。
『完了だよ涼風』
時雨があたしの頭をポンとかるくしてたたいた。
『おっしゃ!ありがとう時雨』
『暁の水平線に勝利をきざんでおいで』
時雨がニカっと笑う。気持ち犬耳の様にも見えるはねた髪がぴょこっと動いた気がした。時雨は黙ってれば犬っぽくてホントかわいいのだ。ロリフェイスに似合わずボディは出るとこ出てて、締まるところは締まってるし、全くうらやましいぜ。今回あたしの体を散々触ってくれたわけだし、今度頼んで身体触らせてもらおうかな。
『こっちも完了』
夕張がどこか心残りがありげに、残念そうに告げた。
サミ姉が両手を上に広げる。『夕張さんありがとう!』
あたしたちは制服の上下を整える。周りをみるとあらかた全員完了のようだった。
『五月雨ちゃん気を付けてね』
夕張はちょっと不安そうだ。
『はい!頑張ります!』
サミ姉が笑顔のガッツポーズを決める。かわいい。好き。
『いっちょいくぜ~~!』
あたしも気合を入れて掛け声をあげてから、サミ姉の手をとった。
駆け出したあたしたちに時雨と夕張は大きく手を振った。