1、篠原視点メイン
2、篠原視点オンリー
3、蘭視点メイン
4、蘭視点オンリー
5、どれでもOK
この選択肢の中で、どの展開にしてほしいか、となります。
活動報告の方に同様のアンケートを掲載しておきますので、そちらの方で回答をお願いします。協力して頂けると助かります!
それでは、今回も楽しんでいってください!
彼とLINEを交換してから、もう数日が経った。あの日からあたしと彼は毎日やり取りしている。学校で篠原と話す頻度は前とさほど変わっていないが、LINEを含めると、明らかに彼とのやり取りは増えている。
そのことはあたしにとってすごく嬉しいことだし、そういうふうになるために、あんな思いをしてまで連絡先を交換したのだから、あたしの目的は達成されていた。
ただ、あたしが心配なのが──。
「蘭〜? また篠原くんのツイッター見てるの〜?」
これだ。あたしがからかわれる回数が、前よりも増えた。みんなのことは、その、何というか……大好きだけど、本当に恥ずかしいから、やめてほしい。
あたしはスマホをロックして、リュックの中に戻した。
「違うよ。タイムラインを適当に眺めてただけ」
「ほんとに〜?」
「ホントだって。そろそろ練習再開するよ」
あたしはモカにそう促したのだが、モカの、まあでもそうだよね〜、という言葉に上書きされてしまった。
「蘭、篠原くんのツイートほとんどいいねしてるもんね〜」
「なっ……!」
「ほかの人のツイートなんてたまにしかしないのに、篠原くんのは別だもんね〜、蘭?」
「い、いや別にそういうわけじゃ……!」
いやそういうわけなんだけども。それを素直に認めてしまったら、あたしは羞恥で死んでしまうので、頑なに否定することしかできなかった。
*
「……はあ」
全く、散々な目にあった。最近はこんなことばっかりだ。
あたしは隣に座っているモカに文句の一つでも言いたくなったが、すぐに反撃されるのは目に見えているので、黙ってコーヒーが来るまで待つことにする。
向かい側にいる巴とひまりはそれぞれスマホをいじっている。あたしもそうしたいが、そうしたらまたいじられることは目に見えているので、流石にやめておく。
「おっ、この映画、蘭が見たかったやつじゃないか?」
巴があたしに向けてきたスマホの画面を見ると、そこには確かにあたしが気になっていた映画の広告が流れていた。
「明日上映開始だってさ」
明日か。明日なら特に予定もないし、見に行ける。みんなはどうだろう。あたしが聞いてみると、どうやらみんな都合が悪いらしかった。
なら一人で行こうかな。いやでもなあ。あたしが思索していると、ひまりが妙案でも思いついたみたいに、そうだ、と声を上げた。
なんだろう。嫌な予感がする。
「蘭、篠原くんと一緒に行ってきたら?」
「は?」
あまりに突拍子のないその発言に、あたしの口から間抜けな声が出た。
「篠原くん、映画の感想とかちょくちょくツイートしてるし、映画好きなんじゃないかな? 誘ってみなよ!」
「えっ、いや、でも……」
そう言って否定するあたしだったが、こういう時のひまりの勢いには当然勝てるわけもなく、渋々それを了承させられた。
あたしはスマホを取り出し、LINEを開く。トーク欄の一番上にある、彼とのトークルームをタップする。そこにはついさっきまでやり取りをしていたメッセージが残っているけど、それは恥ずかしいからあまり見ないようにして、手早くメッセージを打ち込む。
『明日、一緒に映画見に行かない?』
あとは送信するだけなのだが、本当に送ってもいいのだろうか。断られたらどうしよう。
そう考えると、どうしても躊躇ってしまう。
「蘭〜? 送んないの〜?」
「うひゃあ!?」
いつの間にか画面を覗き込んでいたモカに驚いて、また変な声を出してしまった。
「うひゃあだってー。かわいい〜」
「う、うるさい!」
もう一度画面を確認する。どうやら驚いた拍子に送信していた、なんてことはないようだ。
「それで、送らないの〜?」
「うん……。断られるかなって思って」
「ええ〜。篠原くんなら断らないと思うよ〜」
「そ、そうかな?」
「そうだよ〜」
しかしそうとは言っても、まだ不安があるのは事実なわけで。結局、その日のうちに誘うことは出来なかった。
***
翌日。休日だからといって、昼まで寝ているなんてことはなく、9時にセットしてあるアラームで起きた。
あたしは結局、一人で映画を見に行こうと考えていた。やっぱり断られるのが怖いし、そもそも誘う勇気なんてない。
しかし、あたしが顔を洗いに行こうと布団から起き上がったところで、スマホが鳴った。手に取って画面を見る。
『もし今日映画見に行くんだったら、篠原くんちゃんと誘うんだよ?』
お母さんか、と突っ込みたくなるような内容のメッセージが、ひまりから届いていた。
すぐに返信する気にはなれなかったが、取り敢えず既読は付けておいた。
それから、あたしはため息をついた。
篠原を誘うか、どうするか。今のあたしの心にはそれしかなかった。
今まではマイナス方向に動いていたものが、あのメッセージのせいで──おかげとも言えるが──急にプラスに向かおうとしている。
もし断られたら、という思いは、今でも胸の中にある。
──でも、一緒に行ってみたい。
よし、誘おう。
*
そう決意したのが1時間ほど前で、あたしはさっきのそれをまだ実行に移せていなかった。
もう既にメッセージは入力してあるから、あとは送信ボタンを押すだけだ。でも、そのあと1動作が出来ずにいた。
ああもう。こうやっていつまでもうじうじしてしまうのは、あたしの悪い癖だ。誘うと決めたんだから、それを曲げちゃだめだ。
あたしは送るはずだったメッセージを消去し、思い切って篠原に電話した。
彼はすぐにはでてくれず、何コールかしてから電話に出た。
『……もしもし』
最初は、普段よりも低めの掠れた声に驚いたが、すぐに彼が寝ていたことを察した。
『……寝てたでしょ』
起こしてしまったことへの申し訳なさと、それでも電話に出てくれたことの嬉しさがごちゃ混ぜになって、ぶっきらぼうな言い方になってしまった。
それからちょっと間が空いて、肯定の返事が来た。
『ごめんね、起こしちゃって』
『いや、全然大丈夫。それで、どうしたの?』
ここからが本番。
『うん、えっとね……』
あたしは彼に聞こえないように、小さく深呼吸した。
『き、今日一日、あたしに付き合ってくれない?』
返事はしばらくなかった。恐らく驚いているか、予定を確認しているかのどちらか。
だんだん心配になってきたあたしは、声をかけてしまった。
『……篠原?』
『え、ああごめん。今日は予定ないから、大丈夫だよ』
その言葉に、あたしは胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
『ほんとに? ほんとにいいの?』
『うん。美竹さん、どこに行くの?』
あたしは昨日から考えていたプランを話そうとしたが、了承してもらったことで浮かれていたのか、待ち合わせ場所と時間しか彼に伝えていなかったことに気づいたのは、家を出たあとだった。
『うん、じゃあまた後でね、篠原』
それからもいくつか言葉を交わしてから、あたしは電話を切った。
「……やった!」
思わず一人でガッツポーズしてしまったが、誰にも見られなくて良かった。
*
いつもなら待ち合わせ時間ギリギリに到着するあたしだか、今回は5分前くらいには着くように家を出た。
あたしがCiRCLEに着くと、そこにはもう彼の姿があって、あたしは小走りで篠原に近づいた。篠原に待ったかどうか聞くと、篠原は待ってないよ、と答えた。その答えにほっとすると同時に、ちょっとデートっぽいかも、なんても思ったりもした。
あたしは篠原の向かい側の席に腰掛けて、取り敢えずご飯にしようと提案した。篠原もそれを了承して、メニューを眺め始めた。
篠原、何を食べるのだろうか。あたしが尋ねると、篠原はミートソースパスタにすると言った。確かに、軽食が多いここのメニューの中では、お昼ご飯にするのならそれが一番無難だろう。あたしも篠原と同じのを頼んだ。
そして食べている時に、やはりと言うか、当然というか、篠原に今日はどこに行くのか聞かれた。
あたしは今度こそプランを説明した。
「わかった。美竹さん、今日はよろしくね」
「うん、こちらこそ」
*
それから江戸川楽器店でまた恥ずかしい思いをしたりと、色々あったが、無事にショッピングモールに到着することが出来た。
篠原に見たい映画があることを話し、スマホでその広告を見せて、篠原は横からそれを覗き込む。
そこであたしはあることに気づいた。
──ねえちょっと待って近くない?
あたしと彼の身長差を考えると、画面を見るために距離が近くなってしまうのは仕方ないことなのだけど、いつになく近いこの距離に、あたしはドキドキを隠せなかった。
心音とか、聞こえてないかな。赤くなった顔を見られないように、篠原のちょっと後ろを歩いていたら、いつの間にか映画館に到着していた。
あたしと篠原は当たり前だけど、二人で一緒に並んでチケットを買った。
篠原から何か買うか、と聞かれたけれど、あたしは基本的には飲み物しか買わないので、飲み物だけ、と返した。どうやら篠原もそれは同じだったみたいで、あたしたちは二人揃って爽健美茶を買った。
そして劇場に入り、あとは上映されるのを待つ。本編が始まる前にいくつかほかの映画の予告をやっていたが、特に気になるものはなかった。
いよいよ劇場内が本格的に暗くなり、映画が始まった。
映画の内容自体は目新しくなかったが、主人公の心情などが細かく描かれているし、映像も迫力がある。これは楽しめそうだ。
そして、映画の中盤あたりだろうか。まるでホラー映画のような雰囲気になってきた。
──ちょっと待って聞いてないよそれは。
あたしが内心あたふたしていると、突然スクリーンにアップでゾンビの映像が流れた。
悲鳴をあげるのはなんとか堪えたが、あたしは恐怖心から、隣にいた彼の手を握ってしまった。あたしはすぐに離そうとしたけれど、彼が握り返してくるという予想外の反応を取ったから、それは叶わなかった。
──あったかい。
あたしはもう、彼の手の感触にドキドキしてしまって、映画どころではなくなっていた。
*
情けないところを見せてしまった。驚くだけならまだしも、手を握ってしまうなんて。
「美竹さん、もしかして──」
ホラーが苦手なのか、と聞こうとしたのだろうけれど、今それを聞かれたらどうにかなってしまいそうだったから、何も聞かないで、と返した。
それから少し沈黙が流れて落ち着いたころ、篠原がこれからどうするのか聞いていた。映画のあとのことなんて全く考えていなかったあたしは、篠原に行きたいところがないか聞いた。
「なら、本屋に行かない?」
本屋か。篠原がどんな本を読むのか興味があったがあたしは、篠原について行った。
しかし篠原は驚くくらいの速度で本を買っていたので、何の本を買ったのかは分からなかった。もしかしたら、前々から欲しかったやつなのかもしれない。
そこからはベンチで腰掛けて、少し休憩ということになった。せっかくだし、普段学校ではしないような話をしたい。
まずは、好きな本の種類から聞いてみよう。
*
そこからもいくつか店を回って、今日の買い物は終わった。今は自分の部屋でのんびりしている。
さっきひまりに一緒に行ってきたよ、というメッセージを送ってしまったので、明日からかわれることは確定だが、そんなのが気にならないくらい、今のあたしは上機嫌だった。
あたしは篠原にもメッセージを送る。
『今日は楽しかった。ありがとう』
いろいろ考えてたけれど、こんな素っ気ないことしか言えない自分を恨みたくなった。篠原からの返信はすぐに来た。
『こちらこそ、誘ってくれてありがとう! 僕も楽しかった』
あたしはその文章を見て、彼も同じ思いだったことが嬉しくて、枕に顔を埋めてしまった。