Secret Cherry Blossom 作:OCEAN☆S
海で半日中ずっと遊び続けた後…今日俺達が泊まりに行く旅館に着いた。
今日遊んだ海と全く距離はない。すぐ側にある。本当に便利なものだ…。
「荷物まとまったか?」
「うん、忘れ物はないよ。」
「よし、じゃあ体冷やさないうちに早く旅館に入ろう。もうだいぶ日差しも落ちてきたしな。」
~♪♪♪~
旅館の入口…「十千万」って書いてある…落ち着いたいい雰囲気が出てる…。
しかし…俺のそばにいる梨子は何故か落ち着きがない…何故だ?よく見ると、梨子…視線には犬小屋に入った大きな犬がじっと見つめているのだ。
「そういや…梨子は犬が苦手なんだっけな?」
「え、えぇ…柚くん…中に入るまでその手…離さないでね?」
「あぁ、わかってるって————」
~~~~~~
『ね、ねぇ…あのわんちゃん追い払ってよ~!』
『落ち着きなよ。わんちゃんなんて可愛いもんだろ?』
『で、でも~!』
『わかったって…その手離すなよ?』
~~~~~~
——っ!?なんだ…今の…?
ぼんやりと…何かが…頭の中で誰かの声が…
「しいたけは怖くないよ。」
後ろから幼い女の子の声が聞こえる…
「こんばんは~♪」
「こ、こんばんは…」
「あれぇ?二人ともこの辺りじゃあまり見ない顔だね~どこから来たの?」
その少女は嬉しそうに話しかけてきた。
「え、東京から…」
恥ずかしそうに梨子は答える。
「えぇ~!?東京から~?いいなぁ~♪」
「…そうか?俺はこの街も結構いい所だと思うけどな?」
「ほんと?そう言ってくれると凄く嬉しい♪」
すると、その少女は俺のそばによって顔をじーっと見つめてきた…。
「むー…」
「な、なに…?」
「ふむ…やっぱり似てる…曜ちゃんに。」
ヨウちゃん…?何を言ってるんだこの子は?
「特に…このまつ毛とか…」ズイッ
「ちょ、ちょ…近いって…///」
少女が俺の体に密着する程に近づくので、少女の胸が俺の体に触れた…。
こんな小さな体とは似つかないほどの大きさだ…体に触れた感覚だけですぐに分かる…
「…ご、ごめん。ちょっと離れてもらえるかな?」
「あ、えへへ…ごめんね~じゃあここで♪」
少女は俺から離れ、「またね」と言い、パタパタと旅館の中に入っていった…。あの子きっとここの旅館の娘なのだろう。
同い年くらいの子にはあんなふうに接しているのか…?だとしたら相当スキンシップが激しい子だな。
「ねぇ、柚くん。」
「ん?」
「今、あの子にデレデレしてたでしょ。」
「え、そんなことないよ?」
「だって…顔真っ赤になってる…」ムスッ
確認のため、自分の頬を触ると少し熱くなっていた…。
「ほんとだ。」
「もうっ…!」
「そ、そんなに怒んないでよ…。」
「……」ツーン
「俺にとって一番大好きな人は梨子だよ?」
「…いきなり変な事言わないでよ。」
梨子はそう言って俺から視線を逸らす…。
だけど、梨子の顔を見ると……
「梨子…照れてるでしょ?」
「…照れてない!」
「嘘だ~赤くなってるじゃん。」
「う…だ、だって…」
『そんなこと言われて…恥ずかしくないわけないじゃん…///』
梨子が恥ずかしそうに見つめる…。
「…そ、そう…だね…///」
「ゆ、柚くんが照れてどうするのよ!」
「ご、ごめん…」
「言葉に責任もってよ…もぅ…///」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お部屋はこちらになりま~す♪」
さっきの少女が俺たちの部屋を案内してくれた。
「わぁ…この感じ…すごく落ち着く気がする♪」
「そうだね…なんか気楽に過ごせそう。」
「気に入ってもらえたかな?」
「あぁ、もちろんだよ。」
「とっても素敵なお部屋ね。」
「えへへ♡よかった~」
少女は嬉しそうな笑顔を見せる。
「何かあったらすぐに声をかけてね!あ、それと私、『高海千歌』って言うんだ~!よろしくね♪」
「俺は風早柚。よろしく。」
「私は桜内梨子。高海さんは高校生?」
「千歌でいいよ~。うん、私は高校一年生だよ♪」
「そっか。じゃあ私達と同い年だね。」
この子…俺たちと同い年だったのか…少し幼く見えたから年下かと思ったけど…。
しかし…どうやったらそんなに大きく胸が実るんだ…?梨子はうちのクラスだと全然小さくなく、平均よりもずっと大きく見えるけど。
千歌はその梨子よりも、もう一回り大きく見える…暮らしてる環境が違うからなのか…?
「それにしても…」
千歌が梨子をじっと見つめる……
「梨子ちゃん…スタイルいいね~♪」
「うわっ!?ちょ、ちょっと…!」
千歌が梨子の太ももを撫でるように触り出す…。
「程よく背も高くて、足も長くて…髪もサラサラで…羨ましいなぁ~」
「うわっ!?ちょ、ちょっと千歌ちゃん!」
「雰囲気も気品あるし…女の子らしくていいなぁ~」
~♪♪♪~
「じゃあ、夕食の時間になったらまたお部屋に伺うね~!」
長々と30分程3人で話した後、一旦千歌が部屋から出た…。
「さて…と、ちょっと喋りすぎて喉が渇いたね。」
「そうね、さっき入口側に自動販売機があったからなにか買いに行こうか。」
二人で一緒に入口の方へ向かう…。
「俺は久しぶりにメロンソーダでも買おうかな~…ん?」
「どうしたの柚くん?」
「あそこで受付をしてる人…母さんじゃ…?」
「え?」
私も受付を確認する……あれ?おかしいな…私は幼い頃に柚くんの母親を見た事があるけど。
こんな感じな人じゃなかった気がする…この数年で一気に変わってしまったの?
「母さん?」
「柚?」
俺がそう言うと、母さんは直ぐに振り向いた。
「どうしてここに居るの?」
「今、ちょうど出張でね。静岡に来てるからここに泊まりに来ただけよ。」
「…そっか。仕事頑張ってね。」
俺はそう言って後にしようとすると…。
「まって。」
「梨子?」
「柚くんのお母さん…ですよね?」
「…えぇ、そうよ?」
「少し話をさせてください。」
「えっと…それは俺はいない方がいいのか?」
「…うん、ちょっとだけ部屋で待ってて。」
「…わ、わかった…よ?」
~~~~~~
「すみません、お忙しいのに…。」
「いや、気にしなくていいわ。それよりなんの用かしら?」
「…どうして柚くんに本当のことを教えてあげないんですか?」
私は思い切って話した。
「柚くんの記憶はそんなに簡単に塗り替えてしまってもいいものなんですか?…母親だったら彼のことを…」
「そう…彼のことを知ってるの?じゃああなたは桜内梨子ちゃん…随分おおきくなったわね?」
「正しいことを教えてあげるのが母親のはずです!なのにどうして彼に嘘を……」
「……あなたに…あなたに…!本当の母親になれなかった私の、何がわかるって言うのよ!!!」
柚くんの母親が怒声を挙げた。
「本当の…母親?」
「…悪いけど、あなたには関係ないわ。それじゃあね。」
そう言って、柚くんの母親は旅館へ戻って行った…。
本当の母親…あの人が言ってたことはどういうことなのだろう…柚くんは母親だって認識してる…仲もそんなに悪そうには見えなかった…なのに…。
ガタッ!
「誰っ!?」
私は物音のする方向につい、大きな声を上げてしまった。
「千歌ちゃん…?」
「ご、ごめん…さっき受付の時…梨子ちゃんの様子が変だったから…。」
「そ、そう…ごめんなさい、心配かけて…。」
「う、うぅん…こちらこそごめんなさい…。じゃあ私も、もう行くね。」
そう言って私は梨子ちゃんの傍から離れた…。
やっぱり…記憶がなくなってるんだ。
だから私のことも…
もう…戻らないのかな?