Secret Cherry Blossom 作:OCEAN☆S
「おかえり梨子。随分長かったけどどうしたの?」
「う、うん。ちょっと意気投合しちゃってね…」
「そっか、何話してたの?俺の母さんに気が合うなんて結構珍しいね。」
どうしよう…ホントのことをここで話してあげるべきなのだろうか?でも、柚くんのお母さんは真実を伝えるのを明らかに嫌がっていた…。
それに、あの事故が原因で柚くんの目に障害を与えてしまったのだから…柚くんのお母さんの言う、生まれつきからの病気って教えられても変えられることでは無い…。
でも…本当にそれでいいのだろうか…いつも一緒に仲良く過ごせたあの幼少期の頃の記憶を簡単に無かったことにされてしまうのは…。
私は…嫌だ。
「梨子?」
「うぅん、なんでもない。お風呂入りに行こ?海水たくさん浴びた後だし。」
~~
ふぅ…とてもいい湯だった。こんなにいい温泉が旅行券のおかげでタダで入れるなんて、なんてお得な旅なんだろう…。
あとは…梨子を待つだけか。
「お風呂、どうだった?」
また横から千歌が話しかけてきた。ほんとによく喋りにくるなこの子…元々、人と話すのが好きなタイプなのか?
「よかったよ、お風呂。疲れもよく取れた気がするよ。」
「ほんと?なら良かった~♡朝風呂もやってるから良かったら朝も来てね!」
そう言って千歌はまたどこかへ行ってしまった。ほんとに忙しそうな子だ。
「お待たせ~あれ?また千歌ちゃんと話してたの?」
「あぁ、お風呂どうだった?って聞かれてさ。」
「ふ~ん…そうなんだ。」
なんか…千歌ちゃんも怪しい。いくら同い年の高校生が泊まりに来たからって…初めて、会ったばっかりなのにあんなに話しかけてくるのだろうか…。
さっきも私が柚くんのお母さんと話しているときも盗み聞きしてたし…。
何かが怪しい…けれど、完璧な根拠がない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~夕食後~
「柚くん明日はどこへ行きたい?」
「う~ん…さっきガイドブック読んだ時に水族館が沢山あるみたいだから、ちょっと行ってみたいかもな。」
「そうね、私もそこへ行ってみたいかも!」
「じゃあ、明日に備えて早く寝るか。」
「うん、そうね。」
部屋の明かりを落として布団に入る…
「ねぇ…柚くん?」
「ん?」
「その…今日は一緒に寝ないの?」
「あぁ…うん、だって夏だとやっぱり少し暑いし。」
「……」
梨子が俺の横に入ってくる。
「…布団取っちゃえば関係ないんじゃない?」
「ふふっ確かにそうかもな。」
「ねぇ…柚くん?」
「ん?どうしたの?」
梨子がおでこをコツンと、俺のデコに当ててきた…。
「ど、どうしたの?」
「…最近あんまり会えなかったからいっぱい甘えたくて。」
「…寂しかった?」
「うん…部活で忙しいのもわかるけど…もっと柚くんからも連絡欲しいよ…。」
「そっか…じゃあ今、たくさん甘えていいよ。」
「うん…」
梨子の身体を抱きしめながら頭を撫でる…。
「…可愛いな梨子は。」ムニュ
そのまま梨子の頬を揉む…。マシュマロのようにふわっと柔らかい質感だ…。
「ひゃ…」
ずっと触っていると自分でも何をするか分からなくなってくるので、一旦手を離す…。
「さぁ…もう寝よっか。」
「まって…柚くんだけこんなにイタズラしてるのに…なんかずるいよ。」
梨子が俺の身体を押し倒し、指と指を重ねるように手を握る…。
あぁ…そうか、これが恋人繋ぎって言うやつなのか。
そして…そのまま梨子が黙ったまま俺の顔を見つめ…そのままキスをする…。
「…なんかいつもよりドキドキする。いつもと逆の立場になってるからかな?」
「ふふっ…♪そうかもね。」
梨子が俺の首筋にそっとなぞるように触れる…恥ずかしくてとても緊張する…梨子はいつもこんな風に…
「もう1回…しよ?」
~~~♪♪~~~
~夜中~
んー…?
いつの間にか目が覚めていた…けれど、外の景色はまだ暗い…。
スマホを開いて確認するとまだ、夜中の4時だった…。
「(なんかトイレ行きたくなってきたな。)」
今日の梨子の寝相は…大丈夫そうだ、今日は大人しいな。
~~~
「(ふぅ…さて、早く部屋に戻るか……あれ?)」
俺がトイレから出ると、それと同時に誰かが俺の前を横切った…
「(今のは…)」
俺は無意識にその人の後について行った…。
「…千歌?」
旅館の外で、千歌は座り込んでいた。
「あ…おはよ、柚くん…あなたも目が覚めちゃったの?」
「あぁ、そんなところだ…普段寝ていないところで寝ると目が早く覚めちゃうのかな。」
すると、千歌は立ち上がって真剣な眼差しで俺を見る…。
「変わらないね、そういう所。」
「変わらない…?それは一体どういうこと?」
「ねぇ…本当に覚えていないの…?私の事。」
「……は?」
「本当に…記憶が無いの?」
「…ま、待ってよ。君はさっきから何を…?」
「しばらく見ない間に何があったのか分からないけど…そんな簡単に柚くんは私の事を忘れちゃうの…?」
千歌が俺の両腕を掴む…
「あんなに仲良く遊んだじゃん…なのに…」
「…君は一体何が言いたいんだ?」
俺がそう言うと千歌はうつむき、俺から目をそらす。
「なにそれ…そんなの…そんなのひどいよ!!」
「…さっきから何なんだよ!俺に意味のわからないことを押し付けて…君は一体何者なんだ…?君にとって俺はなんなんだよ!?」
「…もういいよ。君がそこまで忘れちゃっているなら…あの時の約束も何も覚えていないんだ。」
千歌が胸につけていた貝殻のネックレスを外して俺に見せる
「ずっと…あなたが帰ってくるのを待っていたのに…!」
彼女の瞳から涙がこぼれおちていた…。
彼女の言っている言葉の意味は俺には理解できない…。
けれど、何かを俺に…必死に伝えたかったみたいだ。
教えて…じゃあ教えてくれよ…君は一体俺にとっての何者なんだ?
もう一度そう聞こうとしたのに、彼女の姿はもうどこにもなかった。