Secret Cherry Blossom   作:OCEAN☆S

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震える指先

梨子と大阪へ来てから3日余りがすぎた…徐々に落ち着いてきて、夜中にうなされることも無くなってきているが…。

 

もし、また学校に戻って心に亀裂が入ってしまったらと思うと…。

 

 

「柚くん…私…どうしたらいいんだろう。」

 

「梨子…」

 

「学校へ行かなくちゃいけないことはわかっている…でも、あの校舎を見る度に頭の中でたくさんの悪口が浮かんでくるの…。」

 

 

梨子がソファの上に体育座りをする…。

 

 

「ピアノだって…練習しなくちゃ行けないのに…」

 

「ピアノ…か…。」

 

 

ピアノ…?そうか…。

 

 

体育座りしてしょげている梨子の肩をポンっと手を置く…。

 

「柚くん…?」

 

「ピアノ…弾きにいこう!」

 

「でも…今は東京には戻りたくない…」

 

「戻らなくていいんだよ!さぁ行くよ!」

 

 

柚くんに引っ張られてホテルの外へ出た…今度は…どこへ連れてってくれるのだろう?

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「曜ちゃーん!電話鳴ってるよー?」

 

「あ、ごめん月ちゃん。代わりに出て~?」

 

「も~しょうがないな~…もしもし…あ!柚くん!!」

 

「え!?柚くん!?」

 

 

ものすごい勢いで階段から曜ちゃんが駆け下りて、僕の手に持っている電話機を取った。

 

 

「どうしたの?どうしたの?お姉ちゃんの声が聞きたくなったの!?」

 

「…緊急事態なんだ、協力してくれないか?」

 

 

~~~~~~~~

 

 

「柚くん、今の電話相手って…」

 

「梨子、これから学校へ行くぞ。」

 

 

海と自然に囲まれた、今までとは正反対な学校だけどな。

 

 

 

…そして、新幹線で5時間ほど…俺達はまた再びここへ戻ってきた。

 

 

 

 

 

駅を降りると、千歌、月、曜の3人が出迎えてくれた。

 

 

「久しぶり!柚くん」

 

「おう、千歌も相変わらず元気そうだな。曜も月も元気だったか?」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「柚くん、曜ちゃんの隣にいる彼は…?」

 

「あぁそうか、梨子は知らなかったんだよな。彼女は渡辺月。俺と曜の従姉妹だ。」

 

「彼女…ってことは女の子!?ご、ごめんなさい!!」

 

「あはは~気にしないで。間違われちゃう事はよくあるから。よろしくね梨子ちゃん♪」

 

 

とりあえず場が和んだので、ここに来た目的を全員に話した。

 

駅からバスに乗って50分…バスの窓から青い綺麗な海が広がっている…日差しも綺麗に差し込んでいて、やっぱり東京とは違う世界にいる気分だ。

 

 

「着いたよ、ここが私達の学校。浦の星女学院だよ!」

 

 

…凄い…こんなに綺麗な自然に囲まれて…心地よい潮風が香る学校が存在するなんて…。

 

 

「…?梨子ちゃ~ん?」

 

千歌ちゃんが私のほっぺを軽くつまむ…

 

「いい学校ね…羨ましいな~」

 

 

それにしても、どうして学校へ来たのだろう?その理由を柚くんに聞こうと思ったけど、聞くタイミングを逃してしまった。

 

 

そして、10分ほど歩いて学校に着いた。

 

「え~と…音楽室空いてるかな…?」ガラッ

 

 

曜ちゃんが扉を開ける…今日は風が強いからか、潮風が私達を覆うように吹く…

 

ゆらゆらと揺れるカーテンの隙間から見える海がまた綺麗で本当にここは学校なの?

 

とても素敵なリゾートのような気分を味わえる…。

 

 

 

「柚くん…ここで何をするの?」

 

「…梨子、ここでピアノを弾いてくれないか?」

 

「…!?」

 

みんなが驚いた顔をして俺に視線を送る。

 

「…柚くん、どうしてここでピアノを演奏させる必要があるの?」

 

曜が首をかしげる。

 

「…なんとなく。」

 

「え…?」

 

「なんとなく…ここなら梨子の気持ちも落ち着くだろうって思ってさ。」

 

「…意味がわからないよ、ここじゃなくてもピアノの練習くらいできるんじゃ…」

 

 

千歌も同じく、疑問に思ったように喋る。

 

 

「…理由は後で話すよ。梨子、とりあえず弾いてみてくれ。」

 

「…うん。」

 

 

私は訳も分からないままイスに座り、鍵盤に指をかける…

 

けれど…私の指は石にでもなってしまったかのように動かなかった。

 

いや、動かせなかった…ピアノとは何も関係ないのに…私に送られる視線が…あの時の視線のように感じてしまう…。

 

…どうして…こんなにいつまでもくよくよとしているんだろう私は…

 

…きっと弱いんだ。今までだってそうだ…怖いことから逃げて、目と記憶に障害を負った柚くんの未来にも怯えて…。

 

私はいつも逃げてきた…。

 

いつも逃げて遠回りしてきた私に…ピアノなんて弾けるわけないよ…。

 

 

私が席から立とうとすると柚くんが私の肩にそっと手を添えた…。

 

 

「…大丈夫、弾けるよ。」

 

「…柚くん。」

 

 

柚くんの手が触れた時…すっ…と肩の力が抜けた…。

 

鍵盤にかけていた指も…ゆっくりと動いた…。

 

私はそのまま、コンクールの曲を演奏した。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

「…弾けたの?…私…自分の手で…?」

 

「あぁ、そうだよ。梨子が自分で弾いたんだ…」

 

 

梨子が満足な笑みを浮かべた後、俺に抱きつきながら大泣きした。

 

「…辛かったよな、でも…よく頑張ったね。」

 

 

そのまま梨子の頭を撫でる…

 

 

「あのさ…お二人共?」

 

月が間に入るように話しかける。

 

 

「…どういう状況かよくわからないから詳しく教えてくれないかな?」

 

「そうだよ!二人だけで進めちゃって、千歌達全然話についていけないじゃん!」

 

「あ…ごめん、じゃあ今から説明するよ。」

 

 

 

俺は梨子の盗撮された内容の事を上手く省いて、3人に説明した。

 

 

「…そんなことが…あったんだ。」

 

3人は心配そうに梨子に駆け寄る。

 

 

「梨子ちゃん…どうして相談してくれなかったの?」

 

千歌が悲しそうな顔をして問う。

 

 

「…言えなかったの。」

 

「…え?」

 

「…誰かに助けを求めたら…もっと悪い噂を流すって脅されて…その人が怖くて…怖くて…」

 

 

梨子が涙をこぼす。

 

 

「…でもさ、柚くんのスマホを使ってバレないように連絡とかできたんじゃないの?」

 

曜が梨子の涙をハンカチで拭きながら言った。

 

 

「梨子ちゃん、私達友達でしょ?辛いことがあったならいつでも頼ってよ♪いつでも力になるからさ!」

 

「曜ちゃん…千歌ちゃん…」

 

私はそのまま曜ちゃんと千歌ちゃんに抱きつきながら、また泣いた。

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

やっぱり…俺の思った通りだ。今までの梨子には何かが足りていなかった。

 

それは、本当に信頼出来る同性の友達。

 

俺から繋がってできた友達、例えばサッカー部の部員とは違って。

 

梨子の本当の性格を知り、本音で話せる友達。

 

これが足りていなかったんだ。

 

 

 

「でも、これからどうするの?梨子ちゃんが学校に戻った時にまた何かに巻き込まれちゃうんじゃ…」

 

 

月が不安そうにそう言った。

 

 

「大丈夫、そうさせないようにするのが俺の役目だから。」

 

 

 

その後、千歌達の旅館に泊まらせてもらうことになった。

 

 

「じゃあね、柚くん~お姉ちゃんがいないからって泣いちゃダメだからね~」

 

「余計なお世話だっつーの。」

 

曜が余計な事を口にするので、強い口調で返す。

 

 

「じゃあ、僕は曜ちゃんの家に泊まっていくから、帰る時はまた連絡してね。」

 

「あぁ、連絡するよ、またな。」

 

 

曜と月の後ろ姿を見るとやっぱりあの2人は血が繋がっているんだな…もしかしたら俺もあんな感じに普段は歩いているのかな?

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

こーら、お姉ちゃんの手を離しちゃダメって言ったでしょ?

 

だ…だって…

 

…は強い子でしょ?…そんなにすぐ泣かないの!

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

…!?

 

今の…何…?また何かの記憶が…頭の中を横切った気がする…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…俺……のことが…!!

 

うん!私…!も…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうしたの?柚くん?」

 

 

俺がぼーっとしていると、千歌が顔を覗き込むように俺を見ていた。

 

 

「早く旅館に入ろ?最近夜は冷えてきたから風邪引いちゃうよ?」

 

「…あぁ、そうだな。」

 

 

俺と梨子は千歌に予約の入っていない部屋に案内してもらった。

 

 

「…どうして、ここに連れてきてくれたの?」

 

部屋に着いた途端に梨子はそう言った。

 

「…柚くんのことだから、他にも理由があるんでしょ?ピアノを演奏するだけなら大阪でもどこかで借りればできたはず…。」

 

「…梨子はさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この街と、ここの友達は好き?』

 

「え…?う、うん。」

 

梨子は少し戸惑いながらもそう答えた。

 

 

「…学校での問題を片付けて、梨子のコンクールが終わったらさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一緒に…ここで生活をしないか?』

 

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