Secret Cherry Blossom 作:OCEAN☆S
マジでごめんなさいマジでごめんなさいマジでごめんなさい…
〜10月9日〜
…うん?あぁ、そうか…もう朝なのか。
カーテンの隙間から強い日差しが差し込む…。
寝ぼけたまま俺はジリリリ…と鳴り続ける目覚まし時計を止めて、時間を見る…。
9時…2分…。
やっべえ…完全に遅刻だ。
急いで身支度を済ませて、外へ出る。
(梨子怒ってんだろうなぁ…流石に会場へ向かっているとは思うけど。)
バタバタと走りながら改札を通り、コンサートホール方面の本線に向かう。
はぁ…はぁ…あと電車が来るまで5分ある…なんとか間に合いそうだな。
息を切らしながら階段を登る…。
「大切な彼女の大事な日なのに、遅刻なんてひどいわね」
…?
あ…。
階段を登った先にキャリーバッグを持った梨子の姿があった。
「…その髪型いいね。」
「遅刻したらごめんなさいでしょ?」
そう言うと、髪にシュシュをつけてハーフアップにした梨子が。すこし頬を膨らませる。
「ごめんね、あまりにも似合っていたからつい…。」
「どっかの誰かさんが、髪を結ってくれたからね。前に…」
前に…?あぁ、ショッピングモールの時のことか…。
「覚えててくれたんだ。ありがと。」
「別に…あれが気に入ってたわけじゃないんだから。」
「ほんとに?あんなにニコニコしながら鏡見てたのに?」
「も、もう…!からかわないの!」
そう話しているうちに電車が来る…。
「そういえば、この時間帯に電車に乗っても平気だったの?」
「大丈夫よ、この電車ならまだ集合時間に間に合うわ。次の電車だったらギリギリだったけどね。…って、昨日LINE送ったわよね?」
「え…?あ…」
「はぁ…もう…しっかりしてよね。」
「う…ご、ごめんよ。」
「わかってると思うけど、演奏中は寝てちゃダメよ?」
「大事な彼女の演奏中に、寝るわけないでしょ?」
「遅刻してきたくせに…でも、ありがと。」
「?」
梨子が顔を近づけてじっと見つめる…。
「実は緊張してたけど…柚くんと話せたから緊張もほぐれたわ。」
そのまま笑顔を見せる…。
「なんか…変わったね前に比べて。」
「何が?」
「たまに、俺に気を遣って無理して笑ってる時とか…あったからさ。」
「そ…そうかしら?」
「うん…この一週間で大きく変わったよ。…もう吹っ切れた?」
「えぇ、柚くんやみんなのおかげよ…本当にありがとね。」
〜〜〜
そして、会場に着き次々にたくさんの人達が、順に演奏をはじめた…。俺は、音楽に関してはあまり知識がなかったから、梨子の出番が待ち遠しかった。
(あと4人後か…)
俺は一度座席を離れ、梨子があらかじめ教えてくれた、楽屋室へ向かった。一応出演者の知り合いで、大勢でなければ大丈夫らしい。
(部屋番号は19番か。)
ガチャ…
「やぁ、おつかれ梨子。」
中に真っ白なドレスに着替えた梨子の姿があった。
「すっげえ…綺麗だ…。」
「ほ、ほんと?ありがと柚くん。」
「あぁ、お姫様みたいだよ。」
「も、もう…いつもからかうんだから…///」
『桜内梨子さ〜んそろそろ出番で〜す』
スタッフの方が扉を開けてそういった。
「じゃあ、俺は席で見てくるね。じゃあ…頑張って!」
「ま…まって、柚くん!」
「ん?」
「少しだけ、手…握ってもいいかな?」
「うん…もちろん。」
ぎゅっ…と梨子の柔らかい手の感触が伝わる…。
「大丈夫…もう震えてないよ。」
「あぁ…!じゃあいってらっしゃい!」
「うん!」
俺の手を離し、自信とやる気に満ち溢れた笑顔で、梨子はステージへ向かった…。
そして…順番が周り、梨子の出番がやってきた…。
(大丈夫、辛いことも苦しいこともあった…それでも、私は…柚くんやみんなにたくさん助けてもらった…。)
(でも今度は…私がこのピアノで…この音で…柚くんに…感謝と私の気持ちを伝えるんだ!)
梨子がお辞儀をし、ゆっくりと椅子に腰掛け…演奏をはじめた。
(この…曲…俺がいつも聴いてる…大好きな曲だ…。)
あの時ずっと怯えていたあの梨子とはまるで、別人のような演奏を披露する…。
その姿に俺は涙なしでは見られなかった…自然と涙が溢れてくる…。
よかった…梨子は打ち勝ったんだな…!辛い過去に…!
〜〜〜
梨子の演奏が終わり、おれはまた、梨子の楽屋室へ向かっていった。
「梨子!」
「柚くん…きゃっ!」
俺はそのまま梨子を抱きしめていた…。
「ピアノ…すっごい良かった…今でも涙が止まらないくらい…すっごい感動したよ…。」
「柚くん…やめてよ…そんな顔したらこっちまで涙が出てきちゃうよ…」
「それと…俺の好きな曲…まさか、あの曲を演奏してくれるなんて思っても見なかったよ…。前に弾いてた曲はコンクールの曲じゃなかったの?」
「ううん、コンクールの曲だったんだけどね…変えたんだ。」
「…どうして?」
「…それはね。」
梨子が俺の顔にそっと触れ、そのままキスをした…。
「柚くんに…感謝の気持ちを伝えたかったからだよ…。」
そして、全ての公演の終了後、結果が会場に提示された…。
『優秀賞』桜内梨子。
これからもどうかよろしくお願いします