ドゥンケルハイト・トップ   作:サバ缶みそ味

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9杯目 ほうれんそうは的確に

 一難去ってまた一難。またしてもビーストマンの軍勢がこの村に近づいてくる。折角助かった命がまた危機にさらされる、今度は皆殺しにされると恐怖を抱いた村人たちは次々に声を荒げていく。

 

「村長!この村を捨てて逃げよう!この村はもうダメだ!」

 

「嫌よ!何処へ逃げたってビーストマンに追いつかれて殺されるわ!」

 

「じゃあみすみすあいつらの餌になれってか!?冗談じゃねえ!」

 

「今ならまだ間に合う!俺は荷物をまとめて逃げるぞ!」

 

 やんややんやと村人達は己の主張を述べたり反論したりと何とも言えない言い争いが勃発している。村長も悩んでいるのだろう。長く過ごした場所だ、ここを捨てるか若しくはここに残るか。捨てたとしても何処へ逃げればいいか、残るとしても抵抗か死を受け入れるか、どちらにしろどの道にも苦難が立ちはだかる。

 

「なんて言うか、醜い争いですねー」

 

 ジゼルは人間の言い争いなぞどうでもいいようで、「はやく自滅しないかなー」なんてニヤニヤしながら呟く。ジゼル、恐ろしい子っ‥‥

 しかしながらこんな所で言い争いをしても時間が過ぎるだけだ。俺はため息をついて村人達の言い争いを止める。

 

「‥‥お前達はこの村に愛着はないのか?」

 

「あ、愛着‥‥?」

 

 まあ俺の図体がでかいせいでもあるだろう村人達は静まり返った。ちょっとビビられてるのは少しショックなんだけどなー‥‥

 

「俺の故郷の話をしよう‥‥俺の故郷には沢山の仲間がいた。俺もそいつらも最初は力がねえ弱っちい半人前でな、幾度となく襲撃をされて何度も滅茶苦茶にされた。畑も建築物も大切にしていた物もぶち壊された。でもな、俺達は弱音を吐くことなく何度も何度も建て直していったよ」

 

「‥‥に、逃げ出したいとは思わなかったのか?」

 

「ああ、思わなかった。そこには仲間がいたからな。嬉しい事もあった、涙を流したいくらい悲しい事もあった、苦楽を長く共にし、共に思い出を過ごした。かけがえのない大切な物がそこにはあった‥‥それでお前達はどうだ?長く過ごし思い出の積もったこの場所を捨てる勇気はあるのか?ただ只管ビーストマン達に蹂躙されたいか?」

 

 俺の問いに村人達は言葉を発することなく俯く。すると村人の一人が顔を上げた。

 

「この村を捨てたくねえよ‥‥失いたくねえよ。この村で産まれてこの村で過ごしてきたんだ、簡単に手放したくない!」

 

 一人の村人の発言を皮切りに次々に村人たちが頷いていく。

 

「この村で産まれたんだ…どうせならこの村で死にたいさ!」

「あいつらに一方的に殺されてたまるか、一矢報いてやる!」

「どうせ何処へ逃げたって同じこと‥‥それならせめて大好きなこの村で果てた方がましよね!」

 

 先程の消沈していた村人達の活気が段々と戻ってきた。どの村人達も覚悟を決めたようだ。村長も覚悟を決めたようで俺に笑顔を向ける。

 

「デス・アダー様、私達はこの村に残ります‥‥皆でこの村で最期を迎えようと思います」

 

「そうかそうか‥‥ならこの村に愛着がわいたぜ」

 

 なんだかな、やる気に満ちた村人達を見てみるとかつての弱小ギルドだった頃、右往左往しながら必死に頑張っていた俺達を思い出した。

 

「そんじゃもう一仕事でもしようかね‥‥喜べ、最期を迎える時期じゃなくなるぜ?」

 

「そ、それはどういう事ですか‥‥?」

 

「ん?ちょっくら3人でこの村に来るビーストマンの方々に帰ってくださるようお願いしてくる」

 

「そ、そんな‥‥無茶だ!たった3人でビーストマンの軍勢を相手にするなんて無謀すぎる!?」

 

 どうだろうなぁ、ワンマンで戦ってみたがぶっちゃけ相手にならなかった。相手のレベルは低いのだろうか、それなら軍勢で来ても問題はないだろう。まあアルトリウスとジゼルがいるし、危なかったらマジでラクーンさん達呼べば何とかなるだろうし。

 それに相手の軍力がどんなものか知りたい。今後ドゥンケルハイトに脅威になる存在がいるのか、各国の力を把握し対策を練る必要もある。

 

「問題ねえよ、俺はめちゃんこ強いし。それに‥‥やられたらその倍に返すのが俺のモットーだし」

 

 今後この村は情報収集するための大事な拠点にするつもりだ。これ以上ビーストマン共に滅茶苦茶にされてたまるか、二度と来ねえようにしてやろう。ジゼルとアルトリウスについてくるよう目で指示し、さっそくビーストマンの軍勢をお迎えすべく向かおうとする。

 

「ま、待ってください‥‥!」

 

 ふと俺を呼び止める声が振り返ると村のはずれで助けた少女、アストラルが駆けつけてきた。

 

「で、デス・アダー様‥‥お、お願いします‥‥私もつ、連れてってください!わ、私もた、戦います!」

 

 アストラルは『冥剣リベリオン』を持って俺に懇願してきた。覚悟を決めている目ではあるが、体は恐怖に震えていた。

 

「‥‥アストラル、この村は好きか?」

 

 しゃがんでアストラルと同じ目線で尋ねる。言わなくても分かる、まだこの子の剣は未熟だ。連れていったとしても一方的に死ぬか、俺のゴールデンアックスに巻き込まれて死ぬ。

 

「は、はい‥‥!母もおばあ様も、先代も皆この村を愛してました。私もこの村が好き‥‥だからこの村を守りたいんです!」

 

「そうか‥‥気持ちはわかった。だがお前さんを連れてはいけねえな」

 

 アストラルは反論することなく俯く。自分は弱い、少女自身も分かっていた。俺はポンとアストラルの頭を撫でた。

 

「お前さんなら強くなれる、きっとその剣を使いこなせる。俺は応援してるぜ‥‥」

 

 まだまだ若い。これから少女は強くなるはずだ。話も大分長くなってしまった事だしさっさと向かうことにした。

 

「強くなるんですかねー‥‥あれじゃ低レベルのラフムすら倒せないと思いますよー?」

 

 後ろについてきているジゼルがチラっと俺達を見送っているアストラを見て呆れたようににやける。そんなジゼルをアルトリウスがぽこんとげんこつを入れた。

 

「言葉が過ぎるぞジゼル。あの娘は『冥剣リベリオン』を所持している。デス・アダー様にとって最重要人物なのだぞ」

「まー‥‥レベリングぐらい遠回しに手伝ってやるさ」

 

 見た感じからして『冥剣リベリオン』の効果は発動もしていない。所謂所有者認めるとか言うやつ?使いこなせばきっとあの子は剣聖とか剣豪とかになるだろう。使いこなせばの話だけど。まだまだあの子は若い、あともうちょっとボインでセクシーだったら俺が手解きをば‥‥げふんげふん

 

「それにしても救援すらこねえたぁ竜王国は滅びかけてるってわけか」

 

 ブラッドやノッブが言ってた通り、竜王国は風前の灯火。もう村や村人の救助とか国の防衛と兵力不足で手が回らないのだろう。下手したら来週ぐらいに滅んじゃったりして。

 

「そんなら国を興そうかなぁー‥‥」

 

「「!?」」

 

「‥‥なーんて、そんなこと言ったらラクーンさんにどやされるな、ははは」

 

 思わずこぼした俺の呟きを聞いたジゼルとアルトリウスはギョッと驚いたようにこちらに顔を向けていた。勝手にやろうとしたらラクーンさんに怒られてしまうもんな。ノッブはたぶんやる気満々になるだろうな、ブラッドは‥‥あいつは冒険の方が好きだし興味はないかも。

 

「さてと話はここまでにしてお出迎えの準備をしますか!」

 

____

 

「テイガー隊長、副隊長が向かった村はあちらです」

 

 部下の言葉を聞いてはるか先に見える村をじっくりと眺める。一見人間どもが建て貧弱そうな村だ。竜王国への遠征討伐を行った際に減った食料を確保するために副隊長であるアルムに一部隊を引き連れさせ食料の確保を命じたのだが、一向に戻ってこない。

 遠征で肉に飢えた兵士達もいたであろう、兵士達が我先にと人間どもを喰っているのか。いや、あのクソ真面目なアルムはそうはさせないはずだ。何よりも食料の確保を優先し、戻ってくるはずなのだ。

 

 なによりも一部隊の兵士達も戻ってこない。まさかあの村にアダマンタイトの冒険者が潜んでいてやられたのか?いや、あいつらは本隊とぶつかっている。こんな離れた村にいるわけがない。

 

 あのクソ真面目の生死なぞどうでもいい。どちらにしろやることはただ一つ、蹂躙だ。あんな貧弱な村なぞこの少数でも一瞬にしてぶっ潰す。人間がいたら喰ってやろう。ここ最近、人間の肉は喰ってない。どの兵士達も早く喰らいたいと舌なめずりしている。

 

「‥‥?」

 

 もう少しで村に着くといったところで軍の歩みを止める。俺達の行く手を阻むかのように、3人の人間が立っていた。一人は上半身にマントを付けた黄金の斧を持った鉄仮面の大男、一人は銀色のフルプレートで長剣を持った背の高い男、そして白い分厚い布の服を着ている2つのアホ毛のついた黒髪の女だ。

 

「ふむふむ、お前らがビーストマンの軍勢か」

 

「えーと‥‥200ぐらいです。これならゾンビアーミー作れちゃいますよ!」

「これを全部持って帰るのは諦めろ、ジゼル。また今度にしておけ」

 

 

 なんだこいつらは?俺達に喰われたい自殺願望者か?それともただのマヌケか?

 

「なんだお前ら?」

 

「おう、俺はデス・アダーっていうもんだ。聞くがお前らはあの村を襲うつもりか?」

 

「何を言い出すかと思えば‥‥その通り、これからあの村を潰し人間を喰らう」

 

 

 デス・アダーと名乗った大男はそうかそうかと呟いて頷いた。本当になんだこいつ。

 

「あの村に愛着がわいてな、今後俺のお気に入りの村にするつもりなんだ。今なら悪い事は言わねえ、俺の邪魔をしねえならさっさと帰れ。そんで二度とくんな」

 

 デス・アダーの発言に俺達は面食らい、兵士達は一斉に笑いだす。これを笑わないわけが無い、もう俺もおかしくてたまらねえ。

 

「ガハハハハ‼おまえ、何を言うのかと思えばっ‥‥本当に頭がおかしい野郎だな!」

 

 一瞬、銀色のフルプレートの野郎が動こうとしたがデス・アダーに止められる。

 

「お前ら下等な人間の願いなぞ聞き入れられると思うか!お前らは餌だ‼俺達に喰われる弱小な存在だ‼」

「そうか‥‥じゃあ俺のお願いは聞いてくれないのか」

「当然だ!お前達はこれから俺達に喰われるのだからな!そしてあの村の人間も喰ってやろう‼これは蹂躙だ‼どんなに泣き喚こうが命乞いしようが、貴様らはもう助からないのだからな‼」

 

 あの村の蹂躙より先に手始めにこのバカ共を嬲り殺してやろう。大男とフルプレートはさっさと殺して喰らい、あっちの女は犯してから喰ってやろう。

 

 するとデス・アダーが俺達よりも大きな声で大笑いしだした。恐怖で気でも狂ったか?

 

「いやー‥‥あれだ。所詮は獣の頭脳、ド低能すぎだしテンプレすぎてもう笑っちゃうわこれ」

 

 大笑いしたデス・アダーはすぐに黄金の斧の切っ先を俺達に向けた。先ほどのふざけたような様子が一変、殺意を込めた視線で俺達を睨み付けてきた。

 

「あの村を蹂躙すると言ったな?いい度胸じゃねえか‥‥お前らは容赦なく潰してやろう」

 

「ふん!たった3人でこの軍勢を相手できるわけがねぇだろうが‼」

 

 俺は剣を振りかざして兵士達に突撃の指示を出す。合図共に300の兵士達が一斉にデス・アダー達へと迫っていく。こいつらをぶっ潰してその勢いで村へと向かう、蹂躙の始まりだ。

 

 だが、デス・アダーはこの数を見ても臆することもなく、それどころかため息をついていた。

 

「あーめんどくさっ‥‥アルトリウス、ジゼル、下がっとけ」

 

 銀色のフルプレートとアホ毛の女が後ろへと下がるとデス・アダーは斧の切っ先を向け、魔法陣を展開しだした。

 

「『圧し潰す重力《グラビティ・フォール》』」

 

 奴が魔法を唱えたその刹那、迫っていた兵士達の大勢と彼らが立っていた地面が一瞬にして沈降した。まるで見えない巨大な岩でも落ちたかのように地面は抉れ、兵士達は血と臓物と肉片を撒き散らしトマトの様に潰れ肉塊へと変わり果てていた。

 

 なんだ‥‥何が起こったのだ‥‥!?300もいた兵士達が一瞬にして潰された!?それよりもなんだあの魔法は‥‥見た事も無いぞ!?

 

「き、貴様、何をした!?」

 

「あ?言ったろ、ぶっ潰すって。こちとら有言実行派なんでね、あとさっさ帰りたいからはよ終わらす」

 

 デス・アダーは呆れたように言い返すとゆっくりとこちらへと近づいてきた。残っている兵士達は先ほどの余裕が失せ、焦りと恐怖にまみれた顔をしている。

 

「な、何をしている‼剣がダメなら弓矢や魔法で殺せ‼」

 

 血相を変えた兵士達はあのデス・アダーを近づけさせないように弓矢を射ったり、魔法が使える者は魔法を放ったりした。奴に当たるかと思った瞬間、放たれた弓矢も魔法も障壁でも張っているかのようにことごとく弾かれていった。

 

「‥‥‥っ!?!?!?」

 

「悪いな、一定数値以下の攻撃力による攻撃も第6位階以下の魔法も効かねえんだわ‥‥てか拍子抜けすぎてがっかりなんだけど?」

 

 ふ、ふざけるな‥‥第6位階だと!?誰も踏み入れた事のない、踏み入れるはずのない領域の魔法。そんな位階魔法を使える奴なんているはずがない!?

 

「て、テイガー隊長‼こ、こ、ここは退きましょう‼あれは桁違いです‥‥‼我々では勝てません‥‥‼」

「何を恐れている‼俺はテイガー・ハーシン‼ビーストマン王国が『十騎士』の9番隊隊長だぞ‼」

 

 誰もが恐れる『十騎士』の中でも剛力、惨忍と恐れられ、数多もの人間共を喰らい殺してきた。名を聞けば人間共は震えあげ恐怖に立ち尽す。

 

「あぁ?知らんがな」

 

 デス・アダーという男は不機嫌そうに睨み返してきた。知らないだと‥‥!?こんな無知な男に、名も知らないたった一人の男に殺されてたまるか‥‥‼

 

 

 そうだ‥‥俺には『これ』があるじゃねえか‥‥‥念のために持ちだした甲斐があった

 

「!?て、テイガー隊長‼なりません!それは竜王国を攻め滅ぼすための数少ない兵器です‼」

 

「うるせえ!今ここで使わねえと意味がねえ‼」

 

 

 

 

「‥‥お?なんじゃありゃ?」

 

 

 なんかトラ頭の野郎が喚きだしたかと思えば部下の抑制も振り払って懐から何か取り出したな。なんか黄金色に輝く半透明の鉱石のようだが‥‥

 

「もしやあれは‥‥」

 

 恐らくだがあれは召喚石に違いねえな。まさか武器や魔法だけじゃなくてユグドラシルのアイテムもこの世界に存在してるとはな。なんというか外出して正解だったような気がする。

 確か召喚石には色でレア度がランク付けされてたな。ノーマルなら銅、レアなら銀、Sレアは金でSSレアは虹色…つーことはSレア、6、70レベル相当の召喚獣が出てくる可能性がある。

 

「これが俺の切り札だ‼」

 

 トラ頭が召喚石を掲げると金色に眩しく光り出した。光の中から現れたのは推定8mぐらいのでかさを誇るケンタウロスの姿をした石のゴーレムだった。およ?あんなモンスターいたっけな?まあ強そうっちゃ強そうだしいっか。

 

「ほー…面白そうなもん持ってるじゃねえの」

 

「こいつは4体のうちの一つ、本来は竜王国を攻めるために使う兵器だがお前をぶっ潰すのに丁度いいだろう!」

 

「あーうん、そっか」

 

 なんというか珍しいモンスターだ。ノッブ、こういうの欲しそうだしうまく捕獲して持って帰ろうかなー‥‥あ、いや持って帰ったらラクーンさんに勝手に外へ出た事バレるしなぁ。何てこと考えてたらなんかトラ頭がキレてた。

 

「いい度胸じゃねえか‥‥‼お望み通り潰してやるよ‼ゴーレムよ、あの愚か者を叩き潰せ‼」

 

 トラ頭の命令にケンタウロスのゴーレムは巨大な石の剣を手に持って雄たけびを上げながら俺めがけて振り下ろして来た。

 

 

 

 巨石の剣の一撃が響き渡る。大地を揺らし、亀裂を走らせる。完膚なきまで叩き潰せただろう。竜王国の僅か数日で3つの都市を攻め落とした程の力だ。俺達の勝ちは確定だ。

 

「ふははは‼ゴーレムにかかれば呆気なかったなぁ‼」

 

 あとは愚か者の潰れた死骸を拝見すれば‥‥‥‥‥おかしい、ゴーレムの持っている巨石の剣にひびが‥‥!?

 

 まさか‥‥いや、そんなまさか‥‥!?巻き上がる土埃の先を恐怖と嫌な予感を過らせながら目を向ける。土埃が消え失せると、そこには巨石の剣を片手で受け止めているデス・アダーの姿が‥‥

 

 

「うそ‥‥だろ‥‥!?」

 

「んんー‥‥いい攻撃だが、まだまだってとこだな。期待はしていたがこの程度か」

 

 デス・アダーが強く握り絞めると巨石の剣が亀裂を走らせ砕け散った。

 

「ありえん‥‥ありえない!?竜王国やミノタウロスの国を窮地に陥れた力をもつゴーレムだぞ!?こんな、こんな簡単にあしらえるわけがない!?」

 

「今度はこっちの番だ」

 

 デス・アダーは黄金の斧を強く握り絞めて思い切り縦へと振った。斧から金色の剣閃が飛び、吹き飛ばすような突風が通り過ぎたと思ったその刹那、ゴーレムが縦に両断され大きな音を立てて崩れていった。我が国の最高の兵器が、国をも攻め落とせるほどの力を持つ兵器が、目の前で一瞬にして崩壊した。

 

「い、一撃で‥‥‼!?」

 

「今のは『魔煌刃』というスキルなんだが‥‥ここで死ぬんだから教えても意味ねえか」

 

 

 デス・アダーは再びゆっくりとこちらへと近づいてきた。やっと今更になって確信した。こいつは人間じゃない、俺達と同じ‥‥いや、それ以上の化け物だ。殺される‥‥殺される‥‥‼

 

「ま、ま、待ってくれ‼い、いやお待ちください、で、デス・アダー殿‥‥否、デス・アダー様‼」

 

「あぁ?」

 

「わ、我々はも、もうあの村を襲いません、に、二度と近づきません‥‥‼それで足りなければお望みの額をは、払います‼で、ですから‼わ、私だけでもいい‼私の命だけはた、助けてくれませんか!?」

 

 デス・アダー様はピタリと動きを止めた。や、やはり金か…い、命だけ助かるのなら全額貢いでやってもいい…

 

 

「お前さ‥‥今まで喰ってきた人間の命乞いを聞いたことある?」

 

「‥‥へ?」

 

 デス・アダー様はとても呆れがこもった声で答えた。片手を上げると後ろに待機していた銀色のフルプレートの男とアホ毛の女もゆっくりとこちらに近づいてきた。3人から発せられている殺気ともう分かってしまっている結末に恐怖し、体が動かない

 

「お前の言ってたことを言い返してやろうか?これは蹂躙だ、どんなに泣き喚こうが命乞いしようが貴様らはもう助からないのだからな‥‥!」

 

 鉄仮面から見える赤い眼光に睨まれた‥‥恐怖で言葉が出ない、もう逃げられない

____

 

 

「ふぅー‥‥あー、終わった終わった」

 

 やっとこさ後片付けが終わった。気が付けば日は沈んで暗くなり、空には星が点々と輝いている。やばいな、これ早く帰らないとラクーンさんに殺される‥‥!

 

「デス・アダー様、ありがとうございました!おかげでボクの死体コレクションがたーくさん手に入りました!」

 

 ジゼルはとても幸せそうに満面の笑みで抱き着いてきた。あー可愛いなちくしょう。でも今は早くお家に帰ることに集中しなければ‥‥‼

 

「それでデス・アダー様、今後あの村には監視を置くのですか?」

 

 ちょ、アルトリウスがもうあの村の今後の相談をしてきたぞ!?まだ早いって!確かに考えなきゃいけないけど、今はお家に帰ることを考えて!?

 

「あー…うん!村づくりとかノッブ好きそうだしな!ノッブに相談しようかね!あ、でもラクーンさんにはちくんなよ‼」

 

「村づくり‥‥」

 

 なんか納得してくれたのはいい、もう適当にノッブに押し付けてやろうか。だがまたビーストマンの軍勢に攻められちゃ意味ないしな、なんとか強化しておくべきか。

 

「さてと‥‥お家に帰るぞ!ジゼル、アルトリウス。お前達は先にゲートを使って帰ってくれ」

 

「?よろしいのですか?」

 

 おそらくゲートをくぐった先にラクーンさんが笑顔で待ち構えているはずだ。ここは敢えて裏をかいてジゼル達とは別の方法でお家に帰る。いわば門限に遅れ、玄関で待ち構えている親父に見つからないように裏口から帰宅する作戦だ。

 

「ま、まあな俺は他にする事があるから。帰ったらゆっくり休め、あとラクーンさんには秘密な!」

 

「は、はあ‥‥?」

「‥‥」

 

 ジゼルとアルトリウスは納得してくれたようで、二人は先にゲートをくぐって帰っていった。さて、俺はこの『飛行<フライ>』を詠唱できるネックレスを使って、入り口から帰る!

 

「飛行<フライ>!」

 

 空へと高々と飛びあがり、空を切るように大急ぎで飛んで数十分。木々が恐ろしい程生い茂てできた樹海に隠されている我が家、洞窟の入り口へと辿り着く。

 

「ふぅー…なんとか早めに帰れたぜ。これならラクーンさんに外出してたってバレやしねえ‥‥」

 

 

 

 

 

 

「そうかそうか、勝手に外出はそんなに楽しかったか」

 

 

 

 

 ぞくりと恐怖と殺気を感じて恐る恐る後ろへ振り返る。そこには煙草を吸いながら楽しそうに笑っているラクーンさんがいた。いや、目が笑ってない…めっちゃ怒ってる。ラクーンさんは自分の体よりも大きすぎるバズーカ砲を取り出してリロードして銃口を向ける。

 

「ら、ラクーンさん…!?どうしてここに!?」

 

「あ?リルティから聞いたぜ、お前が勝手に抜け出したって。てめえの考える事は簡単すぎて分かるんだからな?」

 

 あー‥‥やっぱりリルティは報告したんだね。えらい、流石はミリタリヴァルキュリアの中でも常識人。ホウレンソウは大事だからね。

 

「さて、デス・アダー。何か言う事はねえか?」

 

「‥‥ゆ、許してちょ?」

 

「‥‥死に曝せやぁぁぁぁぁっ‼」

 

 ラクーンさんの怒声と共にバズーカ砲の引き金は引かれた。

 

 

 樹海の中に爆発音と俺の悲鳴が木霊する。




 
 報告することは大事だからね!

 なおビーストマンの死体はジゼルによってゾンビ化、またはラフム召喚の素材となりました
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