ドゥンケルハイト・トップ   作:サバ缶みそ味

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10杯目 今後の方針

「全員集まったな?」

 

改めて全体を見回す。逢魔の王間にはアルクを始め各階層の守護者達や領域守護者達やミリタリヴァルキュリアとミリタリ部隊、各階層に住まうモンスター等々多数大勢が膝をつき頭を下げて待機していた。オレイカルコスやオズマといったサイズがでかすぎる者は階層で待機してもらっているが、改めて思うと物凄い数だな‥‥

 

 彼らは皆、玉座に立っている俺を注目している。ま、まあこのちっさい身長のせいで座らない方が示しがつくのだがな…って、誰がちびすけじゃゴラ‼‥‥じゃなくて今はこんな事してる場合じゃないな。

 

「あー‥‥皆、待たせてすまなかったな。顔を上げてくれ、まずは俺の号令に集まって来てくれたことを感謝する」

 

「ラクーン様、勿体なきお言葉。至高の御方々のお声があれば我ら、何処へでも駆けつけてまいります」

 

 一番先頭にいる階層守護者総括であるアルクが再度頭を下げる。堅苦しいのは苦手なんだけどなぁー‥‥まあこれが彼女達のやり方なのだろうだから多少は受け入れないと。

 

「今回皆に集まってもらったのは他でもない、俺達ドゥンケルハイト・トップの今後の活動方針についてだ」

 

 アルクを始め逢魔の王間にいる全員が真剣な表情になって俺を見つめてきた。自分達がどう動けばいいか、悩み考えていた者もいるだろう、彼らにとってこれは最重要事項なのだから。

 

「まず初めに地盤固めだ。この世界に転移してから俺達にはなんの情報もない。情報収集をしつつ、利用できるものは利用し、この世界に慣れていくことだ」

 

 ノッブやブラッドから聞いた話では()()()()()モンスターや人間のレベルは俺達よりもはるかに低い。だが俺達よりの他にもプレイヤーがこの世界にいたという痕跡が残っていた。考えたくはないが強いプレイヤーはワールドアイテムや激レア武器、激レアアイテム等々、俺達の脅威になるであろう物を使い国を興しているかもしれないし、そのプレイヤーが死んだ後この世界の住人達が使っているかもしれない。

 

 それに俺達の知らないアイテムやスキルや魔法もあるかもしれない。俺達はまだまだ手探りの状態なんだ、無暗やたらと突っ込むのは危険だ。

 

「そして情報が集まり、地盤が固まったのであれば、この世界でのドゥンケルハイト・トップを作り上げていく」

 

 俺の答えにアルク達は目を輝かせ喜びの声を上げた。郷に入っては郷に従え、ユグドラシルでのドゥンケルハイト・トップがあったようにこの世界での俺達の家を作っていこう。ブラッドは冒険好きだからあっちこっち飛び回っていくだろう、ノッブはリアルの世界でできなかった事をこの世界でのやり方なりに挑戦するだろう、デス・アダーは‥‥うん、考えるのはやめておこう。

 

「この世界で我が家を作っていくんだ‥‥お前達、力を貸してくれるか?」

 

 俺の問いに彼らは喜んだ。ある者はうれし涙を流し、ある者は拍手をし、ある者は歓声をあげる。良かった、皆ついて来てくれるようだ。

 

 さて、次の問題はこっからだ。皆、ちゃんと理解してくれるかどうか‥‥今後様子をしっかり見ていかねえと。俺が手をあげると彼らは静まり返る。

 

「その代り‼これだけは肝に銘じてくれ。決して相手を下と見るな」

 

 NPCの幾人かはカルマ値が悪よりの者がいるし、人間を含め俺達の邪魔をする輩はきっと下等生物だと見下している者もいる。世界は広い、例え弱者であっても俺達を倒す術やアイテムを持っている可能性は高い。そして何よりゲームの世界じゃない。経験値が高くともステータスが高くとも、それだけで雌雄を決するとは言えなくなっているのだ。

 

「どんな相手でも凌駕する力を持っている可能性を考慮しろ。あと、どんな相手でも甘く見るな。彼らにはお前達にない物を持っている」

 

 彼らはそれは何かと不思議そうな顔をしている。そりゃ当然だ、転移する前までは簡単なAIでしかなかった。

 

「それは『覚悟』だ。死を覚悟する者、何かを守ろうと戦う覚悟を持つ者、たとえ死しても一矢報いようと覚悟を決めた者、そいつらは時として牙を剥き一撃を与えてくる」

 

 懐かしいな‥‥かつてダンジョン攻略時、たった一匹のヒトクイ箱が倒される間際に『道連れ爆弾《フェロウ・ボム》』くらって全員死にかけたってことがあったな。そんで異業種狩りにも出くわすわで本当にやばかった。

 あとはデス・アダーがお家に空き巣が入って食べ物が無くなって、ブラッドとノッブが遊びに来てなかったら餓死してたってやつ。あいつ『死にかけると本や段ボールって食べれるんだね!』って言ったもんな。人間、死にかけると生きるために全力出すものだ。

 

「油断や慢心せず、心してかかれよ‥‥?」

 

 果たしてこの言葉をちゃんと理解してくれているだろうか、心配ではあるがしっかり見ておかねえと。

 

「それから‥‥報告はちゃんとすること!どんな些細な事や情報でもいい、必ず守護者達や俺達に伝えてくれ。自分にとってどうでもいい事が重大な事だという可能性もある、その時は躊躇わずちゃんと言ってくれ」

 

 見落としだけはしたくない。そのミスで彼らが怪我したりとかはして欲しくないからな。

 

「報告を怠ったり考えずに勝手に行動すると‥‥あのバカみたいになるからな?」

 

 俺はちらりと横目で睨む。隣には膝に重しをのっけて正座しているデス・アダーが。『私は勝手に行動しちゃいました』という看板を持ってしょんぼりしている。こいつは勝手に外出した挙句、ビーストマンの一部隊を一掃したり村を救ったりと先に行動してしまった。ジゼルとアルトリウスの報告を聞いた時は卒倒しかけたわ。

 

「俺達がいなかったらアルクやサカマタでもいい、必ず相談をするように。最後に‥‥思考を張り巡らせ、何でもいいから意見を述べて欲しい。俺達だって考えや行動に誤りもある、こっちの方がドゥンケルハイト・トップの利益になるのではないかと思う所があれば遠慮なく言ってくれ。ただ命令に従うのではなく、何が俺達の為になるかしっかりと考えて行動をして欲しい‥‥デス・アダー、リーダーであるお前は何か言うことねえか?」

 

「み、みんな無理しないようにね!が、頑張っていこー!」

 

 足の痺れを堪えながらデス・アダーはプルプル震えながら声をかけた。彼の答えに守護者達全員が必ずや期待に応えようと答えた。

 

 

 

 

「あ゛ー‥‥ラクーンさんお疲れさん」

 

 第8階層のマイルーム館にある『Bar.ニャルホテプ』にてくたびれているラクーンさんに労いの言葉とビールを渡す。おつまみは棚にあった柿ピー。

 

「あいつらやる気満々過ぎてコワイ」

「ラクーンさんがあれだけ言ったんだ、きっと分かってくれる‥‥かなぁ」

 

 俺達もNPC達もまだまだこの世界の事を理解してないし、NPCはちゃんと考えて行動してくれるだろうか心配ではある。そこは俺達でサポートしてやんねえと。ラクーンさんはビールを飲み干したのでおかわりを注いであげる。

 

「まーだからこそ、幾人かに指示は出しておいた」

「バハルス帝国へ潜入するチームと各国の情報を収集するチーム‥‥」

 

 今後の方針を伝えた後、幾人かに指令を出した。バハルス帝国へ向かい国内の調査と『魔法』の調査する者達と竜王国を始めその周辺の国の情報を収集していく者を選んで向かわせる予定だ。

 

「あいつらは準備が出来次第、知らせてくる。その際にいくつかスクロールとアイテムを渡しておく」

「ワールドアイテムは所持させておくか?」

「念のため‥‥な。後は俺達でバックアップする」 

 

 そうと考えるとなんかやる事が多すぎて漠然としそうだなこれ。俺の考えを察したのかラクーンさんが苦笑いして小突いてきた。

 

「俺達が弱音吐いてどうする。ノッブとブラッドはもう先に頑張ってるんだ、俺達もやんねえと」

 

 あの二人はユグドラシル金貨が流通してないのでこの世界の貨幣を手に入れるために動いているようだ。後はノッブが何かやりたい事があるみたいだが‥‥まあ今は気にしなくていいか。

 

「あいつらは『王都リ・エスティーゼ』で、俺達は竜王国とバハルス帝国、あとついでにビーストマン国とその周辺だ」

「ラクーンさん、なんか俺達の方がやる事多くない?」

「あぁ?お前がビーストマンに喧嘩売らなきゃこんなに増えてなかっただろうがよ。ま、あいつ等にも手伝わすからまずは俺達で、だ」

 

 ラクーンさんは笑い飛ばしながらバンバン肩を叩いてくる。ああ、上機嫌のようでなによりです‥‥

 

___

 

「さて、皆の者。ラクーン様達が仰っていたことをちゃんと理解できたかしら?」

 

 至高の御方々のお言葉をちゃんと胸に刻み込んでいるのか改めて全員に問う。全員が静かに頷いたのでしっかり理解していることを確認する。

 

「我々がやらなければならないこと‥‥ラクーン様は『この世界でのドゥンケルハイト・トップ』を創り上げていくと仰ってました‥‥それはつまり、『この世界に至高の御方々の国を立ち興す』ことであると‼」

 

 周りの者達は歓声の声を上げる。その通り、至高の御方々は私達に期待をしているのだ。ふと副総括であるサカマタが手を上げた。彼は必ず私に意見を言ってくる‥‥

 

「アルク、ラクーン様達は本当にそう仰っていたのか?私からすると少しばかり早とちりのような気がするのだがね」

「言葉を慎みなさい、サカマタ。これはドゥンケルハイト・トップの最終目標のはずよ。アルトリウス、デス・アダー様が仰っていたのでしょう?」

 

 あの時至高の御方々の傍にいて発言を聞いていたアルトリウスに確認をとる。アルトリウスは静かに縦に頷いた。

 

「間違いない‥‥デス・アダー様は竜王国の荒廃とビーストマン達の蛮行を嘆き、それならば己が代わって新たな国を興し覇を唱え、我々ドゥンケルハイト・トップと同じように人間も亜人も異業種も区別なく平等な国を目指すのだ、とお考えになられていた」

 

 優しいラクーン様もデス・アダー様のお言葉を聞いて決行したのでしょう。ブラッド様もノッブ様も自ら行動しておられる‥‥だからこそ私達は後れを取るわけにはいかない。

 

「至高の御方々のために、私達は尽くせねばならない‼皆の者、期待に応えるよう恥じない働きをしなさい‼」

 

 

 

 アルクの声に歓声が巻き上がる。確かに至高の御方々為に我々は尽くさねばならないのだが‥‥タマモがこっそり私に歩み寄ってきた。

 

「サカマタ様‥‥たぶん、これ違くね?」

「今更言ってももう遅い‥‥どちらにしろ最終目標なのだからやらねばならんだろう」

 

 

_____

 

「バンビ、ちゃんとついて来いよー」

 

 俺は地図と格闘しながら街中をどんどんと進んでいき、バンビは辺りを見回しながら散策を楽しんでいた。

 

「ったく、ノッブのやつ『ワシはペルガさんと色々と今後の話とかしなきゃならんから先にやっといて』とか言って押し付けやがって‥‥王都広すぎだろ」

 

 エ・ランテルによって一泊した後馬車馬に『狂走<オーバーラン>』をかけてぶっ飛ばしたこと2日、なんとか目的地である王都リ・エスティーゼへと辿り着いた。無論、馬は過労で泡吹いて死んじゃったけど‥‥ごめんね

 

 ペルガさんの弟さんも羊皮紙の生産を行っていたため共同で行うとか、自分の工場を建てれる費用が入るまで頑張るとか言ってたっけな。まあノッブが今後も用心棒やるとか言って報酬に羊皮紙が手に入るようになったのは良しとしよう。

 あとの問題は通貨の確保、俺達で冒険者となってギルドの依頼を熟していかなければならない。今はカッパーと底辺だから皆のために一層頑張らねばならない。あぁー‥‥アダマンタイトのランクになるまで励めば。

 

「だからと言って先に俺達に押し付けなくても‥‥楽しまなきゃ損だな」

 

 しゃあない、請け負ったからにはしっかりやりますかね。気分転換に王都の街並みを見ながら楽しもう。なんというかよくある中世ヨーロッパ的な世界観を思わすような街並みだよな。これぞファンタジーというやつか。

 

「バンビ、どうだ楽しいか?」

「はい!色んな建物やお城があって‥‥‥爆発し甲斐がありますよね!」

「待ってね、待ってねバンビちゃん。絶対に人前でそれ言っちゃだめだからね?」

 

 時折バンビの爆弾発言におっかなびっくりするんだが‥‥これがボマー、ってやかましいわ。というか誰だ!バンビに『爆発は芸術だ』とか教えた奴は‼間違った知識を吹きこませるんじゃない。

 とか考えてたらやっと到着した。お探しの場所、冒険者ギルド。ここでクエストを受注できるんだよな。いざ入ろうとする前にバンビはやる気満々でフンスと張り切っていた。

 

「いよいよブラッド様の伝説がここから刻まれるのですね‥‥!バンビ・アイン、何処までもお供します!」

「おバカ」

「あうっ」

 

 バンビにチョップをいれた。大きな声で言いだすから町の人達が一斉にこちらを見てるじゃないか。というかさっき言ってたこと忘れてるよ!?

 

「バンビ、さっきも言ってたがここでは俺は一介の冒険者ブライ、そしてお前はそのお供バンビだと」

 

 もしプレイヤーがこの世界にいてそれが異業種狩りのプレイヤーだった場合、名前を知られると襲いかかってくるかもしれない。だから偽名を使って無暗に本当の名前を広めないようにしなけばならない。

 

「あと、ここではブライ様じゃなくてブライさんと呼ぶように」

「はーい!わかりました、ブライ様さん‼」

「分かってるよね!?大丈夫だよね!?」

 

 流石トゥーヤコさんお墨付きのポンコツカワイイ子。なんだかちょっと心配になってきたぞ?そんな不安を拭えないままギルドへと入っていく。

 

 やはり国の中心地というべきか施設内は広く、多くの冒険者で賑わっている。布の装備や軽装備の者、鎧を身に着けている者と老獪や若者やら様々だ。あーよかった、フルプレートにしなくて正解だったわ。たぶんすっごい目立ってただろうな‥‥狩人の服はあまり目立っては無い

 

 と思ったら冒険者達は後ろについてきているバンビを注目していた。『うは、カワイイ』とか『あの男にもったいねえ』とか『ヤリたい』とか言っている。うん、たぶんノッブきたらもっと騒がしくなるぞこれ。

 

 彼らの話は無視して受付へと向かう。クエストボードらしきところに色々と張り紙が張ってはあるが読めないので、受付嬢に教えてもらったほうがいいな。

 

「申し訳ない、クエストを受けたいのだがカッパーのクラスで一番難しそうなクエストを教えて欲しい」

 

 受付嬢は不思議そうに首を傾げたが気にせず笑顔でリストを取り出してくれた。あー‥‥よかった一応通じたようだ。後ろでは『あんなおんぼろそうな皮装備でやるのかよ』とか『田舎者か?』とクスクスと笑っている。バンビ、女の子が中指を突き立てちゃダメでしょ?

 

「それでしたら‥‥こちらのリストにございます討伐クエストがカッパーのクラスで高難度かと、どれをお受けいたしますか?」

「全部だ」

「へ?」

「それもクエストの一つ二つではない‥‥全部だ」

 

「」

 

 あ、受付嬢が物凄く困ったような顔をした。そうだよな、ユグドラシルでは低ランクのクエストやミッションは一括で受けることも可能だったが、ここでは道理が違う。

 

「も、申し訳ございませんがお、お一人で受けるには流石に無理が‥‥」

「ごめんね、確かに無理だったよね。じゃ、これとこれとこれの3つ。あ、二人でやるからいいよね?」

「み、三つ!?」

 

 み、三つもダメなのか!?でも今はどうしても稼がなきゃならん‥‥止むを得ん、ごり押しで行くか。

 

「ダイジョーブダイジョーブ!一日で3つで我慢すっから。あとお供のバンビがいるから2人だし3つでいいよね?」

「で、ですから3つは‥‥」

「カッパーのクラスでも3つはできるよね!?いやー、3つぐらいやんねえと腕がなまっちまう!3つでいいよね?」

「あ、あの‥‥」

「ありがとー、助かるよ!流石は受付嬢さんだよ!ね、3つでいいよね?」

「あ、あうぅ‥‥」

「3つでいいよね?」

 

「は、はいぃ‥‥」

 

 

 ブラッドさん大勝利。おーし、皆の為にがんばるぞい

 




 
 ごり押しというか‥‥うん、生活かかってるしシカタナイネ!(視線を逸らす
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