ドゥンケルハイト・トップ   作:サバ缶みそ味

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15杯目 襲来、タイラントマジヤバスオオカブト ②

 巡回を務めて15年。今までに一度も王都内に魔物が現れることなんて一度も無かった。大抵は外から近づいてくる魔物どもを防壁から射殺すか冒険者を要請して退治されるかだ。だからこそ王都内に魔物が暴れる、なんて絶対にありえない。

 

 だがその常識はこの夜に覆された。王都の街に魔物が出現し、街を壊している。遠くからでも見える、それは赤銅色に輝くオーガ程の巨体を持った昆虫型のモンスター。今までに見たことがないモンスターだった。

 

 突進をして家のあちこちを破壊し、このモンスターを倒そうと駆けつけた冒険者や王都の兵士達を角や爪を振り回して蹴散らし、魔法を唱え地面から鋭く尖った岩を飛ばし蹂躙していく。

 

 そして何よりも驚くのは奴の甲殻の硬さだ。彼らの剣や槍や弓矢の攻撃や魔法による攻撃に傷一つすらついていない。

 

「臆すな‼何としてでも食い止めるのだ‼」

 

 この兵団の長であろう男がいくら攻撃しても手応えがないことに臆しだた兵士達をなんとかして奮い立たせる。確かにここで食い止めないと奴は王都の中央に侵攻し被害が拡大し兼ねない。しかしいっぱちの兵士である俺でも分かる。あれは俺達じゃ食い止めることができない。

 

 そんな事を考えていたら奴が低空飛行して勢いよくこちらへと突進してきた‼

 

 次々と轢き飛ばされる兵や冒険者達‥‥やばいやばいやばい‼こっちに来るぅ!?

 

 

「おぉぉぉぉらぁぁぁぁっ‼」

 

 その時、低空飛行して突進していた奴の横から鎧を着た筋骨隆々な逞しい女性が持っていた巨大な刺突戦鎚を奴の横っ腹めがけて思い切りぶつけ、力いっぱいスイングした。突進していた奴は金切り声をあげてスピンしながら吹っ飛んで家屋へとぶつかった。

 

 あの女性は‥‥アダマンタイト冒険者、『蒼の薔薇』のガガーラン‼他にも2人ほど同じメンバーの姿も見える‥‥アダマンタイト冒険者がいれば勝てる‥‥‼

 

 

 

 

「‥‥っ」

 

 あの魔物は一体何だ‥‥?クエストを済まして帰ってきたら王都内に魔物が現れたと聞いてかけつけてみりゃぁ見たこともない昆虫型の魔物が暴れてやがっていた。挨拶混じりに奇襲をかけて思い切りぶっ飛ばしたのはいいものの、なんつぅ硬さだ。振動で腕が痺れてやがる。

 

「ティナ、ティア。お前らあの魔物は見た事あるか?」

 

 同じく駆けつけて来たティアとティナに尋ねる。案の定、二人は首を横に振った。

 

「あの魔物は初めて見る」

「ガガーランのあの一撃をくらっても動けるモンスターは久々にみた」

 

 赤銅色に輝く魔物は体勢を立て直しこちらに標準を定めたようだ。最初の一撃を耐えたのはギガントバジリスク以来だな。

 

「あの硬さからしてクナイや手裏剣、飛び道具は効かないみたい」

「でもガガーランの攻撃は効いてる。私達は支援する」

「頼んだ。やっべ、久々に苦戦を強いられる相手かもな!楽しくなってきた‼」

 

 確かにあの魔物には効いてる。二人の援護がありゃ何とかして倒せるかもしれねえ‥‥または別行動してるラキュースとイビルアイが駆けつける時間稼ぎにもなりそうだ。

 

「行くぞ‼」

 

 奴が攻撃を仕掛ける前に先手を打つ!奴のヘイトを稼ぐために真正面から迫る。見てからして奴の動きは鈍重だ、その分攻撃はくらったらシャレになんねえかもしれねえが。真正面から向かってくる俺に向けて奴は突進してきた。

 

「不動金縛りの術‼」

 

 ティナが忍術を使って奴の動きを止める。奴の動きは止められたが、奴は力尽くでも動こうとキリキリと音を響かせながら脚を動かしていく。

 

「っ!?ち、力強すぎ‥‥‼」

 

 術をかけているティナが何とか動きを止めているが強引に解かれられそうになっている。解かれる前に奴のご自慢の角をへし折ってやらぁ‼

 

「ふん―――――っ‼」

 

 奴の顔面に向けて鉄砕きを思い切りぶつけた。思った通り鈍い金属音が響き、腕から体にかけて鈍い振動が伝わる。頑丈すぎんだろうが‼

 奴が奇声をあげたと同時にティナの金縛りの術が解かれた。腕の痺れで怯んでる場合じゃねえ、このまま角で突かれる前にもう一撃くらわせねえと!

 

「おらあああっ‼」

 

 今度は下から上へと鉄砕きを思い切り振り上げる。ガツゥン‼と鈍い音が響いたと同時に奴は仰け反った。

 

「今だ!」

 

「『爆炎陣』‼」

 

 ティアの対象を爆破させる忍術、『爆炎陣』が奴の腹に見事に直撃。奴は先程とは比にならない奇声をあげる。やっぱりな、赤銅色に輝く甲殻がない所は防御が薄い。これならいける‥‥‼

 

「このままガガーランが奴をひっくり返し続ければ倒せる」

「無茶言うなっての。あいつの甲殻、バカになんねえほど硬てぇんだぞ?」

「筋肉馬鹿ならできる」

 

 だから無茶言うんじゃねえ。そんなこと言ってる間にも奴は起き上がると、魔法を詠唱したようで魔法陣が展開され鋭く尖った岩が大量に飛んできた。

 

「やべえ!?」

「「不動金剛盾の術‼」」

 

 ティアとティナが七色に光る六角形の盾を生み出して飛んできた岩を防いでいく。まさか魔法まで唱えてくるとは思いもしなかったぜ‥‥

 

「あれって第5位階魔法『巨石の刃《ストーン・エッジ》』」

「第5位階‥‥!?そりゃあ相当やべえモンスターだな‥‥俺らでやれる相手か?」

「防御が薄い所を何度も攻撃すれば倒せる‥‥かも」

 

 正直俺ら3人でもあのモンスターには苦戦を強いられる。あの二人が駆けつけてくれば勝ち確なんだが、倒せない相手じゃねえから何とかして倒さねえとな‥‥‼

 

「もう一度仕掛けるぞ‥‥‼」

 

 俺はもう一度真正面から奴へと迫り、ティアとティナは頷いて奴の横へ駆ける。奴はもう金縛りされてたまるかと『巨石の刃《ストーン・エッジ》』を飛ばしてきた。ティアとティナは不動金剛盾で防ぎつつ、俺は避けたり迫る巨石は鉄砕きで砕いて奴へと迫った。

 

 前方へと飛んできた巨石を砕いたその時、奴が真正面から突進してきた。まずい、反応が遅れた。このまま刺し違えてでも奴に一撃いれてやるか‥‥!体に赤銅色に輝く角が突き刺さる寸前に奴の体が止まった。

 

「ったく、遅せえよ」

 

 ティナが金縛りの術で何とか動きを止めてくれた。危なかったー‥‥突き刺さるかと思って冷や冷やしたじゃねえか。

 

「ガガーラン、今だ!」

「あいよぉぉぉっ‼」

 

 奴の顎めがけて力を込めて思い切り振り上げた。鈍い音が響いたが強烈な一撃を加えることができた。奴は体をひっくり返されジタバタともがく。この隙に仕留めねえと‼

 

「オラオラオラオラオラオラァァァァッ‼」

 

 ティアとティナが奴の腹部めがけて『爆炎陣』を何度もぶつけまくっている間に俺は複数の武技を同時に発動させた鉄砕きの連続攻撃、『超級連続攻撃』を放ち続けた。

 ガツンガツンと鈍い音と奴の奇声が響くがそれを聞いている暇はない。ありったけの力を此奴にぶつけまくることに集中した。スキルを使い果たした頃には漸く奴の奇声は響かなくなり、もがき動いていた脚は止まっていた。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥仕留めたか?」

 

「‥‥や、奴から‥‥奇声は響かなくなった‥‥」

「なんとか‥‥倒せた‥‥かも」

 

 ティアとティナも術を使い切って息が上がっていた。軽く突いて奴が動かないことを確認する。俺らが全力を使い切ってやっとか‥‥なんつう化け物だったんだよ‥‥

 

「ふぅ‥‥これで、あの二人が駆けつけてくるまで待てるな」

 

 なんとか魔物を仕留めて漸く一息‥‥‥

 

 

「!?ガガーラン、離れろ!奴が動いたぞ!?」

 

 ティアの声に俺は咄嗟に後ろに下がった。仕留めた魔物がピクピクと脚を動かし始め体勢を立て直した。マジかよ‥‥あれだけやって動けるのか!?いや違う‥‥奴の体が光り出した‥‥!?

 

「何なんだよこいつは‥‥!?」

 

 奴は光を放ちながらどんどんと大きくなっていく。光が消えると、奴は銀色に輝く甲殻を持ち、ギガントバジリスクよりも大きい巨体へと変貌した。琥珀色に輝く目を光らせ金切り声を響かせる。

 

「‥‥足止めはできそう?」

「まずいな‥‥どうやって止めようか考えてんだが、勝てる気がしねえぜ」

 

 

 先程の赤銅色の奴と比べて銀色になった此奴からは比にならない強さが感じられた。何とか時間稼ぎができるかどうか‥‥

 内心焦りながら考えていたその時、奴は琥珀色の目をギラリと光らせる。その瞬間奴の周りに魔法陣が展開されたと同時に大地から無数の棘が突き出してきた。

 恐らく第5位階以上の魔法だ、くらったらやばい。ティアとティナより動きが遅い俺は兎に角防御して無数に突き出してくる大地の棘を防いだ。

 

 

「ガガーラン!無事か!?」

 

「痛ぅっ‥‥防具のおかげでなんとかな‥‥」

 

 生半可な防具だったら間違いなく貫通してお陀仏だった。思った以上にくらいすぎた‥‥立って瘦せ我慢するのがやっとだ。

 

「ガガーランにも真っ赤な血が流れてたんだ‥‥てっきり青い血が流れてるのかと思ってた」

「何言ってやがる‥‥まだまだ人間やめてねえっての」

 

 とりあえず持っているポーションを飲んで回復する。さて‥‥どうやってあの化け物を止める、か。さっきの大地の棘で辺りはひどい惨状だ。奴は地響きを響かせながらゆっくりと侵攻していく。

 たぶん俺らじゃ足止めにもなんねえ、このまま奴は王都を破壊しつくすに違いない。だが勝てないからって尻尾巻いて逃げるつもりはねえ、玉砕覚悟で一秒でも奴の侵攻を止める。

 

「死ぬ覚悟で突っ込むぞ‥‥!」

「もう覚悟はしてる」

 

 

 正面へと迫る。銀色の化け物は羽虫を払うかのように角を振り上げてきた。あ‥‥こりゃあ死ぬな‥‥

 

 

「『最強化《マキシマイズマジック》』、『水晶の短剣《クリスタル・ダガー》』!」

 

 何処からか水晶でできた短剣が飛来し奴の目へと突き刺さる。奴は奇声をあげて怯みだした。

 

「超技‼『暗黒刃超弩級衝撃波《ダークブレードメガインパクト》‼」

 

 どことなく長い武技を述べて黒い大剣を銀色の化け物に角に向けて振るう剣士の姿が見えた。黒い剣の刃は角に直撃すると爆発を起こす。角は折れることはなかったが奴には大きなダメージを受けたようで奇声をあげて後退りした。

 

 俺は目の前に現れた剣士と真紅のローブを羽織った仮面の少女を見て安堵して苦笑いする。

 

「ったく来るの遅せえよ。ラキュース、イビルアイ」

 

 蒼の薔薇のリーダーのラキュースと恐らく魔法を使える中で一番強いイビルアイ。これで全員揃ったな‥‥

 

「遅くなってごめんなさい、あとは私達に任せて」

「いや、ラキュース。お前でも苦戦を強いられるだろう。お前のその剣でも傷がついてない」

 

 イビルアイの言う通り、ダメージは受けているが奴の銀色の体には傷一つついていない。なんつう頑丈な甲殻をしてやがるってんだ‥‥

 

「こいつはお前達より強い‥‥そしてこいつは私より弱い」

 

 イビルアイはそう言って前へと、突進してくる銀色の化け物に向かって歩いた。確かにイビルアイは強力な魔法詠唱者だが、あの化け物に何か勝てる手があるのか‥‥?

 

「そしてこいつが虫の化け物なら尚更だ」

 

 イビルアイは突進してきている奴に向かって手を向ける。

 

「『蟲殺し《ヴァーミンベイン》』‼」

 

 白い魔法陣が展開されそこから白い煙の様なものが噴き出てきた。白い煙が銀色の化け物に包んだ瞬間、そいつは奇声をあげてもがきだした。奴は苦しんでいる‥‥!

 

「やはり有効だな‥‥今のうちに全員で攻めるぞ‼」

 

 なるほど、虫のモンスターに有効な特殊な魔法か。これならいける‥‥‼俺達は奴が苦しんでいる隙に攻撃をしていく。頑丈な甲殻をしてるが僅かにもダメージになっているのなら当て続ければいずれ倒れる!

 

 白い煙から逃れようと奴は後退りし、『巨石の刃《ストーン・エッジ》』を飛ばしてきた。

 

 

「『水晶防壁《クリスタル・ウォール》‼」

 

 イビルアイは俺達の前に水晶でできた壁を発現させて飛んでくる巨石を防ぐと高く飛んで壁を飛び越え、奴の真上から『蟲殺し《ヴァーミンベイン》』を放っていく。真上から散布された白い煙に奴は奇声をあげて苦しみだした。

 

 この隙に再び攻めていく。赤銅色の時よりも頑丈であるが銀色の甲殻がない箇所、顎下や胸部、腹部は比較的ダメージを与えれそうだ。

 

 俺は鉄砕きを思い切りぶつけ、ラキュースは何か長ったらしい武技名を叫んで黒い大剣を振るい、ティアとティナは忍術をぶつけ、イビルアイは『蟲殺し』の魔法の他に水晶の槍やら散弾やらを飛ばしていく。

 

 奴がまた動き出したらイビルアイが『蟲殺し』を放って足止めさせ、奴が苦しんでいる隙に俺達が一気に攻める、そしてまた動き出したら『蟲殺し』‥‥の繰り返しだ。イビルアイとラキュースの二人が駆けつけてきていなかったら一方的にやられていただろう。特に『蟲殺し』を唱えてくれるイビルアイがいるおかげで勝機が見えてきた。

 

 

 それからかなりの時間がかかったが、だんだんと奴の奇声が弱くなり動きが鈍ってきた。いよいよ大詰めか。奴は最後の力を振り絞ったのか勢いよく突進してきた。

 

「無駄だ、『蟲殺し《ヴァーミンベイン》』‼」

 

 イビルアイの放った白い煙に包まれて奴は苦しみもがく。奴の動きが止まった隙にイビルアイは高く跳ぶ。狙いは奴の甲殻の隙間。

 

「『最強化《マキシマイズマジック》』、『水晶騎士槍《クリスタル・ランス》』‼」

 

 イビルアイが発現させた魔法陣から水晶でできた大きな槍が飛び、水晶の槍は奴の甲殻の隙間へと突き刺さる。奴は断末魔の如く大きな奇声をあげ、地響きを響かせ倒れた。

 琥珀色の目には光が消え、もがくように動いていた脚と口はしだいに動かなくなった。

 

「や、やっと倒せたわね‥‥」

 

 ラキュースもティアとティナも息が荒くなっていた。あんな頑丈すぎる化け物と戦ったのは初めてだ。イビルアイのやつはまったくピンピンしてやがるけどな‥‥

 

「ふぅ‥‥お前にとっちゃ敵じゃねえってか、イビルアイ?」

「ふん‥‥それよりこの魔物は一体どこからやってきたんだ?」

 

 そういえば、こいつはどこからやってきたんだんだろうな‥‥帝国か法国か、いやどちらにしろこんな化け物を操れるような魔法や道具を使う奴は聞いたことがねえし、寧ろ凶暴なこいつを操れるはずがねえな。誰かが意図的に放ったのか‥‥

 

 今は気にしない方がいいか。遠くから王都の兵士達の勝利の歓声が聞こえる。まあほとんどがイビルアイのお手柄なんだけどな。

 

「どうするの?片付けるといっても頑丈すぎるし‥‥燃やす?」

「いずれも後始末が面倒だな。このまま放置するわけにもいかないが‥‥」

 

 イビルアイとラキュースがこの化け物の後始末をどうするか相談したその時だった。

 

 

 奴がぴくりと動き出した。

 

 

「っ!?まだ動けたか‼」

「今のうちにとトドメを‥‥いや待って、何か変よ!?」

 

 ラキュースが異変に気付いたように、銀色の化け物の体が再び光始めた。光っている間に奴の体がだんだんと巨大化していく‥‥

 

 光が消えるとそこにいるのは‥‥先程よりも何十倍も巨体をほこる、黄金に輝く甲殻を持った4本角の虫型の化け物。こんな巨体は…巨人を思わせるようなスケールのでかさ‥‥いや、こんなばかでけえ化け物は初めてだ。

 

「ウソだろ‥‥こんなにバカでかくなんのかよ‥‥」

 

 俺だけでなくラキュースもティアもティナも絶句した‥‥恐らく遠くで見ている兵士や冒険者達、王都の街の人々も絶望しいるに違いない。いや、『蟲殺し』を唱えれる、虫に有効な魔法を持つイビルアイなら‥‥俺はイビルアイへと視線を向けた。

 

 

「‥‥お前達、なるべく遠くへ逃げろ‥‥」

 

 仮面をつけているからイビルアイの顔が伺えなかったが、なんとなくわかる。こいつも絶句して驚愕しているんだろうな‥‥

 

「はやく遠くへ逃げろ‼この化け物に滅ぼされるぞ‼」

 

 黄金に輝く化け物はガーネットに輝く赤い目を光らせ、咆哮した。




 赤銅色、タイラントメガヤバスオオカブト
 銀色、タイラントギガヤバスオオカブト
 そして最終形態、金色のタイラントテラヤバスオオカブト
 イビルアイよりつおい

 あれ?タイラントマジヤバスオオカブトの後にゲヘナって…王国やばくない?
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