今日の収穫は大漁だ。何日も前から用意していた甲斐があったものだ。
仲間から竜王国のとある商人がリ・エスティーゼ王国へと逃げると聞いて商人が持っている財産の量や偽物の冒険者の手配や従者の数や用心棒の有無、どのルートを通りいつ頃抜け出すかと予め調べておいた。
今回は用心棒もおらず力の無い従者ばかりだったため手早く有り金全てを回収することができた。今頃他の仲間がトロトロと逃げている商人を始末しているだろう。
ここ最近ビーストマン共の侵攻が激しくなったため竜王国の兵や冒険者共はやつらの進行を食い止める事に精一杯で俺達のような野盗をしょっ引く暇がない。そして商人や貴族、金持ちの奴らはもう竜王国はいつ滅びるかわからないと怯えて他の国へと逃げていく。
そのおかげでそいつらを襲い、大量の金や金目になる物が楽に手に入る。男を殺し女を好きなだけ抱ける。まあ用済みになれば捨てるか売り飛ばして金にするけどな。これだから野盗はやめられない。馬車も持ち帰って今晩も大酒飲んで宴だ。
しかしあいつら遅いな。そろそろ戻ってきてもおかしくないはずなのだが。あの商人を殺して持っていた有り金をこっそり山分けでもしてるのかそれとも用でも足してるのか?おっとそんな事を考えてたら仲間の一人が茂みから飛び出して来た。
「おい一体何処で油を売ってやがったんだ?」
「長いしょんべんだったな?仕事前に酒を飲み過ぎだってあれほど言ったじゃねえか」
仲間達はゲラゲラとそいつを笑っていたのだが、俺は気付いた。様子がおかしい。額から汗を大量に流し、息は荒く、顔は逃げること必死な形相で何か恐ろしい化物でも見たかのような恐怖で怯え震えていた。
「―――に、逃げろ‥‥!こ、殺される‥‥!」
そいつは息を整えないまま必死に、そして怯えて告げた。他の仲間は何を言っているのだとポカンとする。もしかして商人を追っている最中にモンスターにでも出くわしたのか?だがこの周辺にでるとすれば餓えたワイルドウルフかちっこいゴブリン程度だ。森の奥まで行かない限り危険なモンスターに出くわすことは無いはず。
「おいおい、何から逃げるんだ?幽霊でも見たのか?」
「ち、違う!も、もっと恐ろしい奴らだ‥‥ばけry」
言い切る前に何か破裂した音が響いたと同時にそいつの頭に小さな穴が開き、穴から血を吹きだしながら前へと倒れた。そいつはピクピクと数回体を痙攣した後動かなくなった。突然の仲間の死に全員がどよめく、一体何が起きたのか見当もつかない。
「ふむふむ…『紀州国友』も問題なく使えるな。よいよい」
茂みから出てきたのは黒い分厚い布の服と帽子を身に着け赤いマントを羽織った赤い瞳の黒髪の女だった。その女
この女が殺したのか?だとすればさっきのはなんだ、まさかこいつマジックキャスターなのか?女は戸惑い警戒する俺達なんか興味が無いようで先程からその鉄の筒を舐めるように見ている。
「おー盗賊がわんさかいるな。ひーふーみー‥‥だいたい20くらいか?」
黒髪の女に続いて今度は薄汚れた皮の装備をした男が茂みから出てきた。その男はおぞましい見た目の鉈を持っており、鉈に血がべったりとついていた。深くかぶっている帽子と服とマスクで顔が伺えないが絶対に目を合わせてはいけないと何故か本能がそう言っていた。
その男の後ろには鉄の筒を持っている女とは反対に白く分厚そうな布の服を着た長い黒髪の女があの商人を連れてついてきていた。その女は俺達を見ると不敵に、好戦的な笑みを見せた。
「ブラッド様、ノッブ様、こんな烏合の衆なんか私の爆発魔法で爆散してやりますよ!」
「バンビ待ってね。この数を破裂<エクスプロード>したらスプラッタよりもひどいことになるから、ペルガさんさっきみたいにゲロっちゃうから」
やはり、商人を殺そうと追っていた仲間はこいつらに殺されたのか?まさか商人のやつ冒険者共を雇っていたとは油断した‥‥だが落ち着け、相手はよく分からない鉄の筒を持っているマジックキャスターと弱そうな装備をしている男女とたった3人だ。
「お前ら落ち着け、相手はたった3人‥‥数で押せばどうにかなる!」
警戒している仲間達の士気を上げる。どうせこいつらは安いおこぼれにあやかろうとしていた底辺の冒険者ににがいない。気を取り直した仲間達は次々に武器を構えていく。いつものように商人と男は殺して、女は弱らして犯す。あの女二人はよく見りゃ上玉じゃないか、竜王国にこんないい女がいるとは。
一方の鉄の筒を持った女は俺達を見ると不思議そうに首を傾げだした。
「うん?火縄でも撃てばびびって逃げるかと思ったかのだがなぁ?」
「鳥じゃないんだから‥‥この世界じゃ銃器は知らないんじゃねえの?奴さん達やる気満々だな」
「ふーむ、是非もナシ。さっさと片付けるかのぅ!」
「オッケー。バンビ、ペルガさんの守りは任せる。近づく奴は容赦なくやれ」
その瞬間、皮装備の男が一気に俺達の方へとあっという間に迫って来た。呆気に取られた仲間に鉈を斬りつける、鉈の切れ味がとても鋭いのか仲間の首がきれいに上へ飛ぶ。男は勢いよく鉈を横へと薙いで3,4人と一瞬にして切り伏せていく。男の死角から襲おうとすれば鉄の筒を持った女がその鉄の筒を構えた。鉄の筒から破裂音が響くと同時に仲間が倒れる、奴の魔法かなんだろうか音が響くたびに次々に倒れていった。
男が鉈を振るえば仲間の体から血しぶきが吹いて斬り崩れ、女が持っている鉄の筒から音が響けば体に穴を開けて倒れる‥‥あいつらよりも多くいたのにいとも簡単に仲間が死んでいく‥‥
俺は悪夢でも見ているのか?こんな奴等がいるなんて聞いたこともない!こいつらいったい何者なんだ!?
愕然として逃げる事も戦う事もできずにただただ突っ立っていた俺の前に男が迫る。俺にめがけて鉈を振り下ろしてくる寸前、俺はそいつの目と合った。ああ‥‥わかった。こいつらの正体が分かった。こいつらは
「―――化け物‥‥っ!」
そして俺の視界は男から星空へ、そして落ちるように地面へと変わっていた
_____
「―――と、言う感じでさ。野盗を始末した後はこのまま王都へ向かう事になっちゃった」
『バカかお前』
やっぱりラクーンさんのお叱りをくらってしまったよ。ノッブが勝手に進めていくから早めにアダーとラクーンさんに知らせなくちゃとダメもとで相手と連絡を取り合う魔法『伝言<メッセージ>』を使ってみたらうまくアダー達に繋がることができた。今後この魔法は有効活用できるな‥‥
「ラクーンさん、怒るならノッブに怒ってくださいよー」
『あいつが帰ってきたら正座させて叱る、ったく心配して損したぜ』
『ブラッド!お土産は!?持って帰ってくれる約束だっただろうが‼噓つき‼』
「ねえよ!つかそんな約束してねえだろ!?」
アダーはほっといて‥‥取りあえずラクーンさんに外の状況と竜王国やビーストマンの国、その両国が戦争している事、冒険者という存在やその周りに他にも国がある事を話した。
『そいつは厄介だな‥‥ルルイエ地下迷宮の防御を固めておくか。他の国についても調べておく必要がある』
「商人から詳しい事を聞いておくよ。あとあの商人、羊皮紙の生産をしていた」
『でかした、スクロールの作成に必要な材料だ。今後再開できるかどうかも聞いてくれ。その商人、絶対に死なすなよ?』
『ねえねえ、竜王国の王女って竜人なんだって?なんか‥‥王女ってひびきエロいよねー、デカパイならそそる!』
『‥‥‥‥ブラッド、ちょっと待ってろ』
ラクーンさんが突然喋らなくなるとドタバタと喧しい音と思い切り殴る音とアダーの悲鳴が響いた。すぐに静寂が戻るとラクーンさんがふぅっと一息つく。
『まあなんだ、こっちは任せておけ。ブラッドはまた新しい情報が入り次第報告をしてくれ、そっから今後ルルイエ地下迷宮の活動を決めておくさ』
「ラクーンさん、すまない‥‥こっちのやる事片付いたらすぐに戻るよ」
『気にすんな、ノッブにも考えがあっての行動だろう。無理せず頑張って来い』
ラクーンさんはそう言って伝言を切った。ラクーンさんには感謝しねえと、アダーは‥‥まあいっか。さて野盗は後始末したし、この後はペルガさんを安全に王都まで案内してやらないと。この辺りだけでなく国やその周辺の地理も知っておく必要があるな。
ノッブ達の下へと戻るとノッブは何やら難しい顔をしてまじまじと広げた羊皮紙を見ていた。何を見ているのか覗いてみるとよく分からない文字とマークがついた紙のようだ、もしかしてこいつは地図か?
「ノッブ、これ地図?」
「その通りのようじゃが‥‥うーん、全然読めん」
「まあそうだよな。ペルガさん、俺達は今どのあたりにいるんですか?」
「私達は今、国境の湖と山脈の間の道の中間辺りにいます。近隣国のスレイン法国領を経てエ・ランテルへそして街道を通り王都へと向かう予定でした」
湖のすぐ隣あたりがスレイン法国か。ペルガさんの話では6人の神様を信仰している宗教国家とのこと、少し胡散臭そうな気がするし何よりも人間を優位と考え亜人種等を討とうと活動をしているとのこと。亜人種や異形種が多い俺達じゃ絶対に関わったら危険だ。ペルガさんは羊皮紙をその国へと送り続けていたようなのだが今はこの国に関わるのはやめておこう。
「遠回りじゃな‥‥面倒くさいし。このまま真っ直ぐ突き抜けて行こう」
ノッブは現在地から一直線に指を伝ってエ・ランテルへと指し示す。真っ直ぐのルートならスレイン法国らに関わることなくそして短日でエ・ランテルへ着き、王都へと向かうことができる。
最短ルートだと思われたがペルガさんは何やら顔を青ざめているようだ。はて、このルートは流石に無理過ぎたのか?
「こ、このまま真っ直ぐ行きますとカッツェ平野を通ることになるのですが‥‥」
「「カッツェ平野?」」
「は、はい、年中薄い霧に覆われた荒野なのですが‥‥あらゆるアンデッドが大量に出現する土地で、スケルトンやエルダーリッチだけでなくスケリトル・ドラゴンやデス・ナイトなど凶暴なアンデッドも棲息しているのです」
ほほう、そんな不思議な土地があるのか。確かに普通の人間にとってはスケリトル・ドラゴンとかデス・ナイトとかは危険と感じるだろう。俺は危機感といよりか俄然興味が湧いてきた。ノッブも同じ考えのようで目をキラキラと輝かしてニッと笑う。
「面白そうじゃ、増々その道を通りたくなってきた!」
「で、ですがっ‼並大抵の冒険者じゃ倒せないモンスターがいるのですよ!?野盗よりもかけ離れた強さを持っているのですよ!?」
「だからこそ面白いのだ。安心せよ、ワシらはお主の思っている以上に強い」
他の地域のモンスターやこの世界の人間がどの位のレベルの強さを持っているのかもっと知る必要がある。それに高レベルのモンスターが相手ならこちらはガチモードで戦う。
「それに‥‥真っ直ぐ進むしか方法はもうないしな」
ノッブは楽しそうにくふふと笑った。あ、これなんか仕込んだなこいつ。荷物の整理と馬車の準備をし終えたバンビが戻ってくるとノッブは満足そうに頷く。
「バンビ、支度はできたかの?」
「はい、荷物は『収納ボックス』に全て纏めて馬車の馬達には『気力回復<スタミナヒール>』、及び『狂走<オーバーラン>』をかけておきました!」
やっぱりやりやがったか。一体何のことかとペルガさんはキョトンとしているが要は馬車馬達は一定時間疲労することなく爆走するということ。まだ俺とアダーが低レベルだった頃、ダンジョン攻略の帰りから異形種狩りに襲われないようホームへと帰る為にやってたトンズラ方法、今回はPKも無いのでより細かい補助魔法をかける必要はない。ただこの『気力回復』と『狂走』だけだと少し問題がある。
曲がれないのだ
できないことではないのだがやろうとしたら絶対にこける。負荷はかかるが急停止はできるので曲がる時は一度停止しないといけない。でかしたと満足そうに頷くノッブに撫でられてバンビは物凄く嬉しそうにへにゃぁっと笑う。
「ノッブ、よりにもよって馬車で『狂走』はまずいだろ‥‥」
「問題なかろう、というか楽しいと思うぞ?手綱はよろしくネ♪」
ノッブは可愛らしくウィンクしてペルガさんを連れて馬車の中へと入っていった。仕方ない、任されたからにはやってやろう。
「しゃあねえ。バンビ、お前は俺の隣に。馬車に近づこうとするアンデッドがいたら消し飛ばせ」
「お任せください‼アンデッド特攻は大得意です!」
バンビはフンスと張り切る。バンビがいればワイトキングとかグランドフィッシャーとか面倒なスキルを持つ特殊なアンデッドが現れても問題はないはず。アンデッドが大量発生するカッツェ平野、果たしてどんな場所なのか内心ワクワクしている。
さて出発だと手綱を引いて馬を走らせ‥‥たのだが馬車馬は赤い配管工の某レーシングゲームのロケットスタートをかますかの如く猛スピードで走り出した。
「はやああああああっ!?」
イヤイヤイヤ!?予想外の速さで半端ないって!?ユグドラシルの時とは速さがシャレになってないって‼絶対に『狂走』のせいだろこれ‼まさか『狂走』の効果がユグドラシルとこの世界とでは効果が違うとは。いや俺はいいとしてバンビは大丈夫か!?
「ひゃああああ!?」
案の定、予想外の速さにバンビもびびってた。馬車なのだから勿論シートベルトなんてない、ジェットコースターのようなスピードにバンビは涙目で必死に帽子を押さえていた。バンビちゃん、押さえる所違うでしょ?せめてスカートを押さえてなさい。アダーがここにいなくてホント良かった
___
「む‥‥?」
「どうしたアダー?」
「‥‥ラクーンさん、俺なんかシャッターチャンスを見逃したような気がする」
「寝言は寝て言えっ‼」
「あろっ!?」
【またまた4話目からの続き】
サカマタ‥‥モデルは僕らのヒーローアカデミア、ではなく逢魔が時動物園のシャチさんから。ギャングオルカもいいけど、水族館の方がなんだかマフィアっぽくて好き(コナミ感
タマモ‥‥Fateから皆大好きエロ担当のキャス狐さんですハイ。初登場だったエクストラでキャス狐を選んだ時はクリアするのに地獄でしたけど。本当は実際合切めちゃんこ強い英霊だとか
ウスイ本も多いようで‥‥そんな本を読んでてふと気になるのだけどエキノコックスとか大丈夫なのかな?