ドゥンケルハイト・トップ   作:サバ缶みそ味

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7杯目 外出(無許可)

「そうか、この世界にも魔法があるのか」

 

『そうそう!どの程度かわからんけど話を聞く限りユグドラシルと同じようなもんかも』

 

 伝言<メッセージ>を通してノッブがあの商人から得た情報を早速伝えてきた。ユグドラシルと同じ魔法だというのなら一つの仮説がでてきた。

 

「となると俺達の他に別のプレイヤーもこの世界にいるという事になるな」

 

 俺達だけじゃなかったと安心するがより警戒を強める必要もでてきた。友好的なプレイヤーならまだしも異形種狩りやPKを主とするプレイヤー或いはギルドがいるのならば危険だ。バハルス帝国とやらもどんな国なのか気にはなるが、慎重に事を進めなければな。

 

『ラクーンさんはどうするつもりじゃ?』

「俺か?お前らに変わって周辺の調査とホームの補強をする。ノッブ悪いが地図が欲しい、それに地理や棲息している種族の情報がいち早く知てえ」

『おっけー、明日にでもすぐに送る!』

「じゃ引き続き護衛頑張れや」

 

 俺は伝言を切って装備のポーチから『タバコ』と『ライター』を取り出しタバコに火をつけて一服する。やることが多すぎる。周辺の調査にルルイエ地下迷宮の防衛の強化、ユグドラシル金貨が使えないのでこの世界で流通している通貨の入手、ユグドラシルでのアイテムの生産やスクロールの生産の手段を調べ、プレイヤーがいないか周辺国の潜入調査に、そして俺達ドゥンケルハイト・トップの今後の方針‥‥他にも色々と数え切れないほどある。

 

 いくらここで頭を抱えて悩んでいてもらちが明かない、ため息まじりに大きく煙を吐く。ユグドラシルでは精神回復のアイテムだった『タバコ』が現実世界と同じように吸えるのは有難い、しかも現実世界の安っぽいタバコと比べてかなりいい品のようだ。

 

「‥‥しゃあねえ、一ずつ片付けるしかねえか」

 

 『携帯灰皿』に吸い殻を入れ、さっそく一つ目の作業に取り掛かるとする。今頃現場にあいつらが出てもう作業に取り掛かっている頃だろう。ルルイエ地下迷宮の入り口で一服し終えた俺は向かうことにした。

 

 ルルイエ地下迷宮の入り口のある山の周りに次々と大地がうねり上げるように隆起していき新たな山々が形成されていき、周辺には次々と木々が生い茂り樹海へと変貌していく。

 

「タマモ、上々だな」

 

 中々の出来栄えに術でルルイエ地下迷宮周辺のカモフラージュを行っているタマモに声をかける。タマモは嬉しそうに尻尾を振り振りさせて艶めかしくウィンクをする。

 

「ふふ、この様な作業私にとってお茶の子さいさいです♪私達の家を土足で踏み荒らす輩がおりますればもっとえげつない仕掛けもご用意いたしますよ?」

 

「あー、今回はカモフラージュだけでいいさ。ついでにルルイエ地下迷宮の入り口を不可視化させてくれないか?」

 

「お安い御用です♪」

 

 一先ず部外者になる者は近づけさせないようにしておく。そして本拠点を隠し、トラップやらを用いてルルイエ地下迷宮に手を出そうとする者を退ける。後は‥‥っと、空間に異界門が開いてシュマゴラスが来たか。丁度いいタイミングだ。

 

「ラクーン様、ご準備できましたでシュ」

 

「おうご苦労さん。あの子も連れてきたか?」

 

「はい、ユグドラシルの土地ではないでシュが初めて外の世界を目の当たりできて大はしゃぎでシュ」

 

 それもそうだよな、あの子は領域守護者であり第六階層最終門番だ。外へ出すことなくその領域をずっと守らせてきたから当然か。

 

「さ、アビー。こっちに来るでシュよー」

 

 シュマゴラスに招かれて出てきたのは自分の腕より長い袖の黒い服を着たオレンジと黒の水玉模様のリボンをつけた長い金髪の少女だ。彼女はクマのぬいぐるみを片手にキョロキョロと星空を木々を苔の生えた地面を目を輝かせながら見回しつつ俺の下へとトテトテと駆けよって来た。

 

「ラクーン様!お外はとても素敵な所なのね!初めてでとてもウキウキしているわ!」

「ダメでシュよアビー、至高の御方の前でシュ」

「いいさいいさ、構わねえって。アビー、散歩は楽しかったか?」

「はい!そ、その‥‥も、もっとお外を見て回りたい、です」

 

 彼女はアビゲイル、第六階層と第七階層を繋ぐ『銀の扉』の門番である領域守護者だ。重要な場所の守護を務めている事もあって実力とレベルは階層守護者と並ぶ。こんな幼い見た目の少女ではあるが油断することなかれ、この子を作成したのは殺生inさんだ。アダーに『ぅゎょぅι゛ょっょぃ』と言わせたほどのえぐさを持っているのだ。あとスキルによってはSan値直葬させてくることもある。

 

 それでもまだまだ幼い少女、NPCも学習できる機会があるのならこの子もどこか学校に行かせて色々な事を学ばせてあげたいものだ。俺はそう考えながらアビーを撫で‥‥撫で‥‥撫で‥‥っ!

 

「「‥‥」」

「‥‥ラクーン様、どうぞ♪」

 

 必死に手を伸ばそうとしている俺を見たタマモとシュマゴラスは察して視線を逸らし、アビーは笑顔で屈んでくれた。くそっ!身長が低いし手が短くて届かねけぇ!畜生が、どうして二足歩行のアライグマなんだよ‼身長が欲しい‼

 

「そ、それでラクーン様、どうしてシュマゴラスとアビーちゃんを呼んだのです?」

 

 身長の低さで落ち込んでいる俺にタマモが気を使ってくれて話を進めてきた。うん、なんかすまねえな‥‥

 

「ブービートラップで偽のルルイエ地下迷宮を作ろうと思ってな。二人にはそのトラップを用意してくれた」

 

「まず簡単な洞穴を作成してその中でモンスターハウスへと転移させるトラップを仕掛けるでシュ」

「ラフムたちがいっぱいいるお部屋に案内するの!」

 

 『ラフム』と聞いてタマモは若干引き笑いしていた。ま、まあしゃあねえよな。『双貌の獣ラフム』、見た目がもうSan値ピンチものだし召喚に使う素材、職業レベルが十分にあれば大量に湧ける、敵だと厄介な奴だ。アビーは『降臨者<フォーリナー>』という特殊な職業を持っているのでラフムを簡単に召喚することができるのだ。

 

「それでアビー、どれくらい用意できた?」

 

「えーと‥‥33体です。素材の『黒い泥』は沢山あったのだけどもう一つの素材の『死肉』が足りなかったの」

「ジゼルの死体コレクションのほとんどを幻月がお遊戯で壊しちゃったでシュので全部使いきっても33体しか作れなったでシュ」

 

 ああ幻月にはもうちょっとまともな遊びをするよう言っておくか。それに今頃ジゼルは集めた死体コレクションが全部ロストして大泣きしてるだろうなぁ。こんど死体コレクション集めをアダーに手伝わせてやるか‥‥まあアビーの召喚でだいたい25~35レベルぐらいだろう、十分な数だ。

 

「上々だ。よし、偽の拠点を作成しこの近辺に状態異常トラップを仕掛けたら帰って休む‥‥」

 

 作業を終え次第拠点に帰ろうと告げる前にちらりとアビーを見てふと考えた。一度も外の世界に出た事がないのだから外で遊ばせてやってもいいのではないだろうか。折角リアルの世界でも拝めることの無かった星空と自然だ、堪能しても罰は当たりはしないだろう。俺は虚空に手を突っ込んでアイテムボックスの中を探り拠点作成用アイテム『グリーンシークレットハウス』を取り出して仮拠点を置いた。

 

「折角の外だ。今日の作業はここまでにして今夜はここでゆっくり休むとするか」

「‼ラクーン様、ありがとうございます‼」

「ははは、こらこら強く抱きしめるな、俺はぬいぐるみじゃねえぞ?それとタマモ、明日の朝食はパンケーキがいいな。作れるか?」

「お任せください、総料理長のキャットと並ぶ料理スキルを備わった良妻賢母の私に不可能はございません」

「それじゃ念のためにこの周辺に結界をはっておきまシュね」

 

 突然転移してからドタバタ続きだったからな、今日は休んで疲れをとっておこう。

 

 ただ心配なのは本拠点で待機しているアダーだ。あいつもじっとしてられない性分だからな、変な事をしでかさければいいのだが‥‥

 

____

 

「あ゛ー‥‥暇っ」

 

 ブラッドとノッブは王国へ向かい、ラクーンさんはなんか『ちょっと今夜は外で過ごすわ』とか言って外へ出てるし…俺はただ只管第七階層『千年城』の一室にある書斎室のソファーでグデグデしていただけ。やることなくてすっごい暇。

 

「俺も外出てえなー」

 

 俺も外出しても問題ねえと思うんだけどなぁ。上半身半裸マントの筋肉モリモリマッチョ鉄仮面マンで人が見たら卒倒するだぁ?失敬な、こんな素敵なボディのイケメン何処にもいねえっての!

 

「情報収集も大事だが‥‥異世界に来たからにはやっぱハーレム王国を設立すべきだろ!」

 

 そうだそうだ。ワイルドウルフやオーガがいるならどっかにエルフとか、竜娘とか、サキュバスとかいるに違いない!そんな選り取り見取りのカワイ子ちゃんを100人くらい集めて全員を嫁にして‥‥むふふふ

 

「デス・アダー様、笑い方が気持ち悪いですよー?」

「ぬわおっ!?じ、ジゼル、何時の間にいたのか!?」

 

 そうだった、この書斎室の近くにこいつらミリタリヴァルキュリアの部屋があったよな。危ない危ない、欲望ダダ漏れの呟きを聞かれなくてよかった。特にジゼルには‥‥って、なんかアホ毛をピコピコさせて恍惚な表情でこっちを見てきるし。

 

「そのぉ、デス・アダー様?溜まってるのでしたらボクがお相手いたしますよ?」

「やだ」

「そ、即答!?」

 

 だってジゼルは作成したトゥーヤコさんのせいで【性別不明】なんだもん。見た目が可愛いからトゥーヤコさんに問い詰めたら『ウミウシみたいなもんだ』と言って更に『女の子か男の娘か、こう見えるようで見えないようなアンノウンなラインが最高にそそるんだ‼』と熱弁して周りのメンバーをドン引きさせてたもんなー‥‥

 

「お、お望みでしたら生やすことだってできますよ!」

「うんジゼル、俺そんな趣味ないから一生生やさないままでいて」

 

 ジゼルは可愛い女の子可愛い女の子可愛い女の子‥‥よし、自分にそう言い聞かせて一旦落ち着こう。というかこの子達に手を出したら間違いなくラクーンさんに抹殺されるし、作成していったメンバー達の大事な子達だから手を出すわけが無い。

 

「というかジゼル、何か俺に用事があって来たんだろ?」

 

 こうまでして気配を消して誰にも見つからないように俺の所に来たのだ。おふざけは終わりと気づいたジゼルはシャキッと姿勢を正して膝をつく。こういう時は皆真面目なんだよなぁ。

 

「デス・アダー様、恐れながら外出の許可を頂けますでしょうか」

「‥‥ほう、その理由は?」

 

 興味深い、ブラッドの言う通りになったな。NPCは単純思考のAIが無くなった代わりに意思を持ち自ら考えを持つようになった。特に個性が強くマイペースな性格を持つジゼルとかはこうやって気ままに話しかけてくるのではないかとブラッドは俺に言っていた。俺にまじまじと見られてジゼルは少し言うのを躊躇いながらも顔を上げる。

 

「その‥‥ボクの死体コレクションがシュマゴラス様とアビゲイル様に全てラフム召喚の素材に使われてしまったので‥‥死体集めに‥‥も、勿論この外近辺で、遠出はしませんよ!?その辺の雑魚モンスターで我慢しますよ!?」

 

 幻月に暇つぶしに使われ、シュマゴラスとアビーにラフムの召喚に使われて底尽きてしまったというわけかー。まあこの近辺なら危険はなさそうだし‥‥いや、待てよ?ふふふ、いい事考えた。

 

「よし、ジゼル。外出は許可しよう――――その代り、俺も同行する」

「ええっ!?で、デス・アダー様がお手を煩わせるまでも‥‥」

「どんな場所でも十全に備える。それに単独行動は俺が許可せん」

 

 まだまだ調べる必要がある土地だし、うちの子をたった一人で出すわけにもいかない‥‥というのは建前で、これで俺も立派にお外デビューができるというわけだ。そしてできればナイスバディな可愛いエルフの女の子を見つけて‥‥

 

「デス・アダー様も出るのでしたらラクーン様にお伝えした方がよろしいですよね‥‥?」

「イヤイヤイヤ‼大丈夫、大丈夫!サッと行ってサッと戻ればダイジョーブ‼」

 

 うん、ラクーンさんに知られたら間違いなく俺が処される、絶対に処される。サカマタとかに知られたら間違いなくラクーンさんに知らされるだろうし知られないようにこっそりと出ないとな、まあ後は置手紙でも書いとけば分かってくれるだろう。『ちょっと出かけてくる』と置手紙を書いてさっそく異界門を開く。

 

「さあジゼル、死体集めにレッツラゴー‼」

 

 

「ジゼル、いつまで書斎室に籠ってナニを‥‥って、え?」

 

「あ、リルティごめーん♪デス・アダー様と一緒に外へ出かけるねー」

「」

 

 み、見つかったぁぁぁぁ!?よりにもよってミリタリヴァルキュリアの中でも一番真面目そうなリルティに見つかったぁぁぁ!?

 

「で、デス・アダー様、外出なさるのですか!?外出なさるのでしたらジゼルなんかよりももっと真面なお供をつけるべきです‼」

 

「むー!失敬な‼デス・アダー様はボクの死体コレクション集めを手伝ってくれるんだよ!」

 

 そういう場合ではない、慌てているリルティをどうにかしないと。しかし異界門にもう半分くぐっちまっているから止まらないし‥‥ああもう仕方ねえ!

 

「ちょ、ちょっと用事ができて外へ出るだけだ!え、えーと、そうだ!アルトリウス!アルトリウスに後で来るよう伝えておいてくれ‼とゆーわけで行ってくるなー!」

 

 これならたぶん大丈夫!置手紙も書いたし、大丈夫!きっと大丈夫、ラクーンさんに知らせることはないはずだ!もうどうにでもなーれっ!

 

 

 異界門をくぐった先は‥‥‥‥森からなんか樹海に変わってました。

 

 

「なぁにこれぇ」

 

 本当にナニコレ、最初見た時よりもなんか変わってねえか?こんなに密林っぽく生い茂ってなかったし、地面に苔とか生えてなかったし、空を見上げればもう夜は明けているみたいだがあまり陽がささってこないので薄暗い。ジゼルはクンクンと辺りを嗅ぎ、キョロキョロと見回す。

 

「この辺りにはモンスターも人間もいそうにないですね‥‥」

 

 そうだ、ラクーンさんがルルイエ地下迷宮を敵に知られないようにとカモフラージュをするためにタマモを連れて出てたんだった。この樹海もラクーンさんとタマモの仕業だろう。それにSan値が減りそうな不気味な雰囲気‥‥シュマゴラスかアビーによる精神異常トラップも仕掛けているみたいだ。それじゃモンスターもこの辺りをうろつかないわけだ。

 この辺りを歩きまわれないし、トラップに引っかかるかもしれないし、迷子になるかもしれないし、そしてラクーンさんに行き当たりばったりするかもしれない。ああくそっ、これじゃあ外へ歩きまわれねえ‥‥

 

「む‥‥そうだ、そんな時はこいつがあったな!」

 

 虚空に手を突っ込んでアイテムボックスの中を探り、ネックレスを取り出す。戦士職でも飛行<フライ>を詠唱でき空を飛ぶことができるネックレスだ。

 

「物は試しだ。『飛行<フライ>』‼」

 

 詠唱するとネックレスが光り出し、俺の体が羽の様に軽くなって一気に空高く飛びたてた。一定の高さで停まって浮遊し連なる山々に本拠点を覆い隠す様に生い茂っている樹海を一望する。中々の景色だ、中々リアルの世界じゃ見れない大自然に息を漏らす。このアイテムがあれば軽く遠出してもサッと戻って来れるな。

 

「なるほど空へ飛んで死体コレクションになりそうなモルモットを探すのですね!流石デス・アダー様です!」

 

 ジゼルは背中に骨の翼を生やして追いつき、ピコピコと翼をはばたかせて目を輝かせる。

 

「お世辞はよせ。ジゼル、ラクーンさんに知られる前にさっさと死体コレクションを集めるとすっか」

「そうですね!ですがこの樹海にはモンスターいそうにないですがここから匂いで探せば‥‥」

 

 ジゼルは風向きを探ってクンクンとうろうろしながら鼻を嗅いでいく。なんというか匂いを嗅ぐ様はまるでわんこみたいだな‥‥ヴァジラやタマモみたいに獣耳とモフモフした尻尾とか生やせないのかな、できたらモフモフしたいなー‥‥と、考えていたら突然ジゼルが燦燦と目を輝かせた。

 

「見つけました‼」

 

「もう見つけたのか!?早いな」

 

「はい!血の匂い、しかもたっくさんの血の匂いです‼」

 

 

「‥‥え?」

 

 思わず目が点になる。沢山の血の匂いはおかしい、大量殺戮や無暗な大量駆除はラクーンさんは望まないし好まない。だからそんな事はないはずなのだがジゼルがどんどんと恍惚な表情になって体をもじもじし息を荒げていく。

 

「それにこの血の匂いは人間‥‥大量の人間が死んで血を流してる‥‥あぁ、たまらない‥‥!はやく、はやく、はやく集めたい‥‥‼」

 

「あ、あのージゼル?そ、その匂いの下はどこかなー‥‥?」

 

「むこうです‼デスアダー様、はやく行きましょう‼」

 

 早くその場に向かいたいジゼルは先導して飛んでいく。かなりの速さなんだけど‥‥あれ?どんどん拠点から、樹海から遠ざかっていくぞこれ?これラクーンさんにバレたらヤバイレベルじゃないこれ?

 

「え、えーと、ジゼルちゃん?その場所って遠いのかなー?」

 

「結構遠くです!どんな遠くの場所でも血の匂いがあれば嗅ぎ付けることができますよ!」

 

 お前はサメか。ツッコミを入れたかったのだが拠点から離れていきかなり遠くまでとんでいることに気になってツッコミを入れている場合ではなくなっていた。下の景色は樹海から点在する森林と草原。ジゼルの言う通り、結構遠くの場所まで来てしまった。あー‥‥今日中に死体コレクション集めれるかなこれ‥‥

 

「デス・アダー様、あちらです!」

 

 ジゼルはようやく止まって指をさした。見下ろした先はまだまだ距離はあるが小さな村が見えた。なるほどあそこにジゼルの嗅いだ血の匂いが‥‥って、ちょっと待て。ジゼルが言うには大量の人間の血が流れているって言ってたよな。ならばなんで村で大量の血が‥‥

 

「待った、ちょっと嫌な予感がする。まだ突入すんなよ?」

 

 こう言っておかないと勝手に突撃しそうだからな。俺はアイテムボックスから偵察用の『遠隔視の手鏡』を取り出し、ついでに『鷹の目<ホークアイ>』と『隠密<シークリー>』のスクロールも取り出す。

 

「あの村を探索をする前に何があるか見ておかねえとな」

 

 見られている事を気取られないように『隠密』の魔法もかけて『遠隔視の手鏡』であの村を覗く。映し出された光景に肩を竦める。

 

「‥‥やっぱりか」

 

 手鏡に映っているのは村を荒らされ逃げ惑う村人に地面に突っ伏し血を流して動かない村人、腕を斬られた者や首を落とされた者と地獄絵図の映像。つまりはこの村は襲撃されている真っ最中なのだ。襲撃をしているのは人間、ではなく二足歩行をしているライオンやトラやヒョウやらと肉食獣だ。人間と同じように鎧を着て、剣や槍や斧と武器を持ち、馬?のような獣に乗り、次々と老若男女問わず人間を殺していっている。

 

「これはビーストマンですね」

 

 ひょっこりとジゼルが顔を覗かせる。ビーストマン‥‥あ、そういえばブラッドが言ってたっけな?竜王国となる国があって、その国はビーストマンに攻められているって。この村はビーストマンの軍かその一個隊に攻め落とされているってことか。じゃあ血が大量に流れているわけだと納得しながら画面をスライドしていくと、建物の隅で人間を喰らっているビーストマンの映像が映った。しかも一匹だけではない、幾つものビーストマンが殺した人間を切断してその肉を喰っているのだ。

 生きたまま人間の喉元にかぶりつく者、生きたまま人間の四肢を切断して四肢を喰らう者、女を犯しながら喰らう者、犯した後に屠殺して喰らう者、泣きわめく子供を頭から喰らう者と様々といた。

 

「こいつらは人間を食料としか見てないみたいですね。勿体ない、ボクだったらゾンビにするのに‥‥この村はどういたします?」

 

 どうすると言われてもなー‥‥リアルの世界の俺だったら怒って「この村を救うぞ!」と変な正義感を抱いてぬかすのだろうが、この身になってからはこの村人の地獄絵図に同情すらわかない。別に助ける義理もないし捨て置いても問題はないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 と、俺だけだったらそう考えるだろうなー‥‥

 

 

「ジゼル、アルトリウスに『伝言<メッセージ>』を繋いでこの地点に来るよう知らせろ」

 

 ほっといた事をラクーンさんが知ったら激怒するもんなぁ‥‥折角の貴重な情報収集となる場所を見捨てるなんて勿体ない。

 

 手鏡の映像をスライドすると村の外れへと逃げる少女が映った。懸命に走るがすぐにビーストマン共に追いつかれ囲まれる。その少女は剣を持っていたようで戦おうとするが、見た感じ剣の腕前はとても低くあっという間に剣を弾き飛ばされ少女の腕が斬られた。

 現場の音声は聞くことはできないが必死に命乞いをしているようだ。だがビーストマン共はどんどんと少女へと近づいていく。

 

「‥‥まずは此処へ行くか」

 

「ビーストを蹴散らすんですね!お手伝いしますよ、折角のコレクションをビーストマン達に喰いつかされてたまりませんしね!」

 

「ったりまえだ。グロシーンを見せやがって、エロは好きだがエログロは好みじゃねえっての‼」





 設定としてはルルイエ地下迷宮が転移された場所はだいたい飛竜騎兵部族の里と竜王国の間あたりにしております。
 本当に何番煎じの展開、申し訳ございません(焼き土下座
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