The Knight Of DRAGON   作:龍牙

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第九話

 

輝は呆然とそれを眺めていた…ピンポイントで吹き飛ばされた寮の一室…しかも、そこは…『楯祐一』が入る予定だった部屋なのだ。

 

(あぁ、天にまします我等が父よ。何でこんな仕打ちを…お前はオレになんか恨みでもあるのか…。絶対、いや、必ずお前の元に辿り着いて…ドラゴンファイヤーストーム叩きこんでやる…。つーか、神崎…お前の陰謀か!!!)

 

 

『無罪だ、冤罪だ、訴えて勝つぞ。by神崎』

 

 

そんな電波な声が輝の頭に届いた。どうでも良いが流石の神埼でもそんな事は出来ないだろう。

 

「転入してきた楯の部屋だってよ。」「えらくピンポイントで壊れてんなぁ…。」「罰が当たったんだぜ…。」「肉欲獣めが!!」

 

「…ドラグレッダー…GO。」

 

後ろで色々と叫んでいる人達を指差して一言呟く

 

輝の目の前には見事に半壊した学園の男子寮が…抉り取られたように消し飛んだ昨日入ったばかりと聴いていた、自分(楯祐一)の部屋があった。

 

「あぁ…何でこんな事に…。」

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』

 

力なく呟きながら、背後の絶叫と助けを求める声と龍の咆哮を黙殺し、空を見上げる。…考えることは一つ…

 

「…食うなよ、ドラグレッダー…ああ、ついでに殺すなよ。」

 

とりあえず、ムカついたので八つ当たりしておく事にした輝だった…。(つまり、食わなければ、生きてさえいれば何してもいいと言う指示を出した)

 

『ギャウ(応)。』

 

「「「「「おたすけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」」」」」

 

ドラグブレスを加減しながら吹きながら、騒いでた連中を追い掛け回すドラグレッダーだった。

 

「はあ…これからどうしよう…。」

 

原因は聞いた話から推測すれば自分を鍵として生み出された、炎の仔カグツチの炎だろう…。しかも、向こうにも悪気が合った訳ではないので、怒る事も出来ず、文句もいえない…。

 

彼は背後から聞こえる絶叫をBGMに取り合えず、理事長室に行ってこの事を相談しようと決めた。

 

 

「…そう言う訳でして…。」

 

「あらあら。」

 

以前と同じ位置に輝が座り、同じく同じ位置に真白の車椅子が置かれその後ろに二三が立っている

 

えらくデャヴュな光景だがそれよりもまずは寝床の確保が重要だ、一度『なつき親衛隊v』と名乗る連中に襲われた以上、一度は全滅させたとは言え、イヤ…全滅させたからか…夜襲をかけられる危険がある以上、ゆっくりと野宿などは出来ない

 

襲われる危険が無いとは言え、ミラーワールドでなど寝ていたら間違いなく、イヤ、絶対に死ぬ…ライダーであっても10分間も存在できない世界なのだ

 

取り合えず、学校の屋上でも借りられれば、まだ野宿のしようがある、ある程度の夜襲対策も用意する事が出来るので…それに以前は寝袋一つで学校に泊まった経験もあるのだ…下宿先追い出されて

 

「どうにかなりませんか?」

 

「そうですねぇ…。」

 

可愛らしく首を捻る真白…回答を待っている間、輝は入れて貰った紅茶を飲んでいた…最悪のパターンも一応、想定済みなのだ…

 

(ドラグレッダー…その時は頼む。)

 

(グルゥ…。)

 

邪笑を浮かべる輝に対して『気乗りはしないが、任せておけ主。』とでも言いたげな視線が向けられた

 

ライダーバトルの勝者の権利が自分にあるなら、思わず寝床の確保を願ってしまいたい気分であった

 

…………まあ、幾らなんでも、そんな事に使われたくは無いと言うのは参加者全員の意見だろう…

 

ふと、横に視線を向けてみると…何故か呼ばれている対オーファン部隊の『鴇羽 舞衣』と『美袋 命』の姿があった

 

最悪の状況は考えていても…『嫌な予感』と言う事については何一つ…『考える事が出来る訳が無い』のだ…彼の場合において大抵、嫌な予感には回避不能の状態で初めて気が付くか、予感を感じても直前までそうだとは気が付かないのだ…

 

この期に及んで予感を感じてはいるが、その予感の正体にはまだ気付いていない輝であった…そして、その予感はすぐに現実の物となるのだが…それにさえも輝はまだ気が付いていなかった

 

二人が呼び出されていた事についても…『何で呼び出されたんだ』程度にしか考えていなかった

 

そして…真白の言葉を聴いた時…『フリーズベント』を使われたモンスターの如く凍り付く事となるのであった

 

「はいぃ?!」

 

「ですから、先ほども申したようにカグツチが発射した火球によってこのように男子寮、それも楯さんの部屋がピンポイントに破壊されました…お二方にはその責任を取るのを兼ね、男子寮が修復されるまで楯さんをお二方の部屋に泊まらせてあげて欲しいのです。」

 

「お断りします!!」

 

舞衣はこれ以上無い位にキッパリと言い放つ彼女の後ろでは命が腕を組んで頷いている、思わず『そうだろう』と思いながら、頷いてしまう

 

「そんなこと仰らずに……。」

 

「お断りします!!」

 

そこから大論争が始まる…真白があの手この手と言葉を重ねる中、舞衣は毅然と『NO!』を繰り返す

 

(…二三さん…何故貴女は命ちゃんにそんなにケーキを薦めてるんですか?)

 

ふと、視界に入った光景に心の中でそんな疑問を持つ…嫌な予感が更に襲い掛かってきた…輝でも気付くほどに…だが、有る意味微笑ましいその光景に深く考えず舞衣に助け舟を出す

 

「理事長、流石にオレもちょっと…。」

 

「でしたら、私のお部屋に…。」

 

「「それはもっとダメです!!!」」

 

声を揃えて叫ぶ輝と舞衣、同年代の少女と一つ屋根の下というのも十分過ぎる程問題だが、自分より幼い少女と一緒というのはさらに問題がある

 

(…変な噂が立って二人に迷惑掛けたくないしな…。)

 

「ところで、同意書にサインはしていただけましたか?」

 

(同意書ってまさか…。)

 

その真白の言葉に輝と舞衣は同時に命の方に振り向くとそこには……

 

「ん。」

 

美味しそうにテーブル一杯に積まれたケーキを頬張りながら、二三に紙切れを渡している命がいた

 

「ミコトッ! ケーキで買収されるな!」

 

「うまいぞ。舞衣も食え!」

 

そんな二人を後目に二三は真白に命から貰った紙切れを渡す

 

「同室の美袋さんからの許可はいただきましたので。」

 

「許可ってちょっと…。」

 

突然の男の子との同居に慌てる舞衣、マイペースにケーキを食べ続けてる命、悪戯が成功した子供みたいに茶目っ気のある微笑を浮かべている理事長とそのメイド、ついでに妙に嬉しそうな戦友―ドラグレッダー―…それを見て、明後日の方向を眺めながら、力無く項垂れた

 

「ああ…何でこんな事に…。」

 

何度目か分からないそんなセリフを吐いた…

 

(もう、この際だ…神でも悪魔でも、邪神でも魔王でも、神崎でもいい…。頼むから…。)

 

「オレに平穏をくれ…。」

 

そう一言呟いたのだった…どうでもいいが、すっかり輝の中で『神崎士郎』は神魔と同レベルに扱われている様だ…

 

 

さて、輝の女子寮への引越しだがそれは思っていたよりも早く終わった

 

それもそのはず、カグツチの炎で家財道具は言うに及ばず彼の私物の殆どが消し炭になっており、持ち出せた物が少なかったからだ、もっとも、消し炭に成ってしまったのは飽く迄、『楯祐一』の持ち物であって、輝の物ではないのだが…

 

追記:壊れた家財道具その他は後日学園が責任を持って弁償してくれるらしい

 

追記その2:輝が舞衣の部屋に住む事になったと知ったなつきが過敏な反応を示してくれた事は輝としても知る由が無かったのだ…まあ、それが元で後々一騒動起こる事となるのだが…

 

それで、その後、帰宅する舞衣と命から歓迎のために料理を作ると聞き…一応は歓迎されている事を知るのだった…

 

 

そして…

 

 

「おおッ!!」

 

輝はテーブルの上に載せられた珠玉の料理の数々に息を呑んでいた

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、何でもない。」

 

かつてカズヤ達と同じ下宿先に居た時はまったく料理の才能が無かったカズヤの分まで食事当番を引き受けていたので、かなり久しぶりなのだ、人が作った夕食と言うのは…

 

そう…最近、人の作った食事は…カズヤの作ったバーナーで焼かれた黒焦げの玉子焼きと付け合せの食材そのまま…斬ってさえ居ないキャベツとまともに形を持っていない御飯という物だったのだから

 

なお、下宿先の住人達から声を揃えて食事係を一任された

 

「どうしたんですか? 冷めちゃうから、早く食べましょう。」

 

「ん、ああ。」

 

彼女の傍らの命は待ちきれないと言ったばかりに涎を垂らしている、そして三人声をそろえて

 

「「「いただきます」」」

 

目の前に盛られた煮物を一口して一言

 

「美味い…。」

 

輝は思わずそんな感想を漏らす

 

「当然だ! 舞衣は料理の天才だからな」

 

「そんな、ただ慣れているだけだよ」

 

ハムスターのように口いっぱいにご飯を頬張って賞賛を贈る命に、舞衣は極当たり前のように

 

「家事は私がやらなくちゃいけなかったし。」

 

その言葉を聴いて輝は彼女に病気の弟がいる事を思い出す、食事の準備は自分が行っていたが、その分、下宿先の部屋の掃除とかはカズヤが多く引き受けていたから、随分と楽だった記憶がある…舞衣は一人で家事の全てを引き受けていたのだから、その大変さはある程度理解できる

 

「イヤ、コレだけできればいい嫁さんになれるよ。ああ、それと…居候している立場だから、敬語じゃなくていいよ。」

 

その事には触れずに微笑みを浮かべて明るく返す、それを聞いて舞衣は一瞬きょとんとした後、くすっと笑みを零した

 

「はぁ? 今時そんなこというヤツいる?」

 

「そう? ああ、おかわりもらえる?」

 

照れくさそうに差し出された茶碗を

 

「うんっ。」

 

舞衣は微かに笑って受け取った

 

鏡の中では楽しそうな主を嬉しそうに眺めているドラグレッダーの姿があったとか…

 

 

つづく…

 

 

 

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