The Knight Of DRAGON   作:龍牙

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第十話

「…なんで、蜂が一斉に逃げていったんだ?」

 

『グゥ…。(さあ。)』

 

偶然、輝が部屋の近くで見つけた蜂の巣の撤去は何故か、多少、窓から距離が有った為にドラグレッダーを足場に撤去しようとした瞬間、一斉に逃げ出して行ったのだ。蜂達も野生の本能で感じ取ったのだろう…数多の獣の王たる竜(を模したモンスター)の力を…。

 

「まあいいか…。」

 

自分がドラグレッダーを呼び出した事が原因とも気付かず、そう呟きあまり気にしない様にして蜂の巣の撤去作業を開始する輝であった。

 

………どうでも良いが周囲の環境が環境だからかもしれないが…そこまで簡単に力を使って良いのか、輝よ? 『別に良いじゃん、違和感ないしby輝』

 

………ある意味、この世界に来てしまった事は輝にとって幸運だったのかもしれなかった

 

「…それにしても今日は物凄い一日だったな…。」

 

思わず空に浮ぶ月を見上げながらそう呟く、彼がそう思うのも無理のない事だろう、ライダーバトルの最終決戦の後、気が付いたら別の場所(多分異世界)で別の人間になっていたのだから。

 

そして、そこで知った新しい戦い、ミラーモンスターとは違う怪物『オーファン』とそれと戦う『HiME』と呼ばれる少女達、人を護る為に戦うという最初の願いと共に再び仮面カードデッキを手に取り、ライダーへと戻った事。

 

最後にその極めつけは…

 

「最後は女子寮で女の子と同居だからな…。」

 

何に驚いていいのか分からない状況の中、輝は自分の中に一つの疑問があるのがすぐに分かる。そして、その疑問の理由は全て『理事長』に収束するのだ。

 

(でも…なんで女子寮に同居させるんだ? 男子寮でも別にいいはずなのに…。)

 

そう、それである…。『自分が男子の大半を敵に廻してしまい、危険だから(この場合、どっちが危険とは言わないが。『ギャウ(応)。』byドラグレッダー)』や『戦力を一箇所に集中させ、イザと言う時の対処をしやすくする事』と言う理由も考えられる。だが、

 

「確かに、考え方を変えてみれば…オーファンに対抗できるHiMEにチャイルド、その鍵で有り、単独で対応できるライダーのオレ。貴重な戦力を分散させず一箇所に集めておくって言うのは確かに戦術としては確かに有りなんだろうけど…。」

 

確かにそう考えれば納得できる。だが、それには『理屈が理解しても感情が納得してくれない』のだ。

 

「………………………………今回の一件は、ひょっとして風花理事長の趣味じゃないのか? 今頃自分ンちのベランダからこの部屋を観察してたり…。」

 

軽い冗談でそんな事を呟き、『まさかな。』等と言って笑う輝だった。

 

 

 

 

 

某所

 

「くしゅんっ」

 

「真白様? そろそろおネムの時間ですよ。」

 

「もう少しだけ…。」

 

某豪邸のベランダにて、双眼鏡を片手に嬉々とした顔で女子寮を眺める少女とそんな主に溜息をつくメイドのやりとりがあったとか…。

 

…ただこれだけは言えるだろう…『輝君…………大・正・解!!!』

 

 

 

 

ゆっくりとドラグレッダーが地面へと降り、頭の上に乗っていた輝を地面へと下ろす。それは舞衣達の入浴には、まだ時間が掛かるだろうと考えて、少しだけ夜の散歩を楽しもうと思った結果である。

 

己の住むべき場所ミラーワールドに戻った相棒ドラグレッダーの姿を確認して、輝は月を見上げる。

 

(カズヤ…ミク…オレは生きていていいのか……人の優しさや暖かさを感じて、笑っていていいのか…? オレは血に染まりすぎている。)

 

『楯祐一かれ』になって生きる事、それが自分の償罪と言うのなら、生きていこう…。だが、暖かさを優しさを感じる事が辛い自分が一度だけ、こう思うだけなら罪はないだろうと考え、彼はたった一度だけと決め弱音を吐く。誰の姿も無いこの場所で…

 

「…誰でもいい…オレを連れ出してくれ…。」

 

 

 

「分かった連れ出してやろう。」

 

 

 

誰にも聞かれていないと思って呟いた言葉に聞き覚えのある声での返事が彼の耳に響く…。

 

「え?」

 

思わずそう呟き、帰ってくるはずの無かった返事が聞えた方向を振り向くと、そこには…

 

「デュラン!」

 

「な?」

 

突然額に触れる金属の感触で視界に入れる前に誰かを判断した輝は、その闇から滲み出る様に現れたのは、此方に短銃を構えたなつきと彼女のチャイルドであるデュランの姿を確認する。

 

満月を背中に背負い白銀に輝く狼を従えるその姿は、彼女の雰囲気と合わせ、まるで月の女神の様な少女は艶然と微笑みながら告げる

 

「お前を、攫いに来た。」

 

「…そう言う意味で言ったんじゃないんだけどな…。」

 

艶然と微笑む少女とは反対に苦笑を浮かべながら返す輝であった

 

『どちらかと言うと助ける方がいい』等と考えながら、月に視線を向ける…。

 

(…いいのかな、こんなに楽しい日々がオレの元に戻ってきて…。)

 

かつての戦いを思い出しながら、少女と彼女の従える狼に攫われる姿は仮面ライダーの彼の姿だけを知る者からは何と思うだろうか…? しかも、攫われてる姿はどこか間抜けであった。

 

 

 

 

 

 

輝がドラグレッダーの頭の上で自分の現状を考えている頃、偶然にも舞衣もまた今日一日の出来事を思い返していた…女性的な豊かなふくらみと丸みを帯びた白い裸身を静かに浴槽に沈めて。

 

「ん~~~~。」

 

一日の疲れに凝り固まった身体をほぐすように伸びをすれば、広い浴槽に張られたお湯がちゃぷりと揺れる。

 

「今日も色々あったなぁ…。」

 

脳裏に浮かぶのは自分となつきの鍵でもあり、今日から同居することになった一人の少年の姿、

 

最初は優しい先輩だと思っていた…次はお人好し

 

そして、理事長との説明のとき、彼の体験した地獄を知った。

 

(…辛いはずなのに…。)

 

人を殺して生き残って、今の彼はここにいる。そして、それを楽しむ様な人種ではないという事は付き合いの短い舞衣でも理解できる。その戦いの事を話すたびに辛そうな表情を浮かべる。本当に辛いのだろう…それなのに…辛い筈なのに全て受け入れて自然体で笑えている、自分事を考えず他人の事を優先して考えている…悲しいほど強い人、悲しいほど優しい人、と彼女は思った。

 

そして、日暮あかねをオーファンから助け、紅き龍の騎士へと変身しオーファンを倒した時の彼は、

 

「ちょっとだけ、カッコよかったかな……。」

 

そんな事を呟いて、舞衣は顔を半分だけ浴槽に沈める…その顔に微かに注している朱は、お湯の熱さからかそれとも別の想いからか、そんな彼女の隣では、上せて目を回した命がモノの見事に茹っていた。

 

「もうこんな時間なのに、先輩何してるんだろ?」

 

入浴を終え、就寝用のパジャマに着替えた舞衣は、自分の膝の上で未だ目を回している命を扇ぎながら、壁にかけられた時計を見る。

 

真夜中と言うほどの時間帯ではないが、外はかなり暗くなっていると言うのに、輝の姿は無かった。護衛ドラグレッダーもいて心配は無いのだろうが、それでも心配な物は心配…いや、だからこそ姿が無い事が心配なのだ。

 

連絡を取ろうと携帯に手を伸ばそうとした時、携帯からコール音が響いたそれを慌てて取って通話ボタンを押す。

 

「もしもし、鴇羽ですけど。」

 

「あぁ、鴇羽さん。少しお時間をよろしいですか?」

 

携帯電話のスピーカー越しに聞こえてきたのは意外な人物の声だった。

 

「理事長さん? 一体どうしたんですか?」

 

疑問を口に出す舞衣に理事長こと真白は端的に事実だけを簡潔に告げた。

 

「実は、楯さんが久我さんに誘拐されました。」

 

「はいィーーー!!?」

 

一晩の騒動、長い一夜が始まりを告げた瞬間だった…いや、こう言い方を変えよう…輝の一晩の災難が今ここに始まりを告げる。

 

つづく…

 

 

 

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