The Knight Of DRAGON   作:龍牙

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第十一話

 

「ここが私達のマンションだ。」

 

「ちょっと待て、《達》ってどう言う意味だ? 《達》って!?」

 

「遠慮せず好きなだけ居て良いんだぞ。」

 

「…………………。」

 

不機嫌そうなドラグレッダーを抑えながら、輝の言葉を無視して話を進めるなつきを後目に、部屋の光景を見て思わず言葉を失ってしまっている輝。

 

まあ、脱ぎ散らかした制服や下着、使いっぱなしのタオル類、食い散らかされ飲み散らかされたコンビニ弁当やお握りの包み、缶やペットボトル、読みっぱなしで捨てられた新聞。正直女の子の部屋か一瞬疑ってしまう輝でした。

 

そして、テレビのニュースやワイドショーで見た最近の女子高生の特集や何かを思い出して『こうなんだな』と、ある種無理矢理に納得したのでした。

 

(遠慮とか、そう言うレベルじゃないだろう。)

 

そう呟いてしまう、輝。言葉に出さない分だけ、まだ取り乱しては居ないのだろう。無言のまま玄関に向かうが…。

 

「あ…おい…………。」

 

なつきの声を聞き、慌ててその場で立ち止まるった瞬間………目の前をレーザーが通り過ぎていった。

そして、レーザーの伸びてきた先に視線を向け、その出所を見て、

 

「……なにこれ……?」

 

思わずそう聞いてしまった輝だった。

 

「玄関には、防犯用のレーザー装置が…。」

 

「…どう見ても防犯と言うレベルじゃないだろう…。」

 

遅れて聞えてくるなつきの説明の言葉に力なく呟く。『それ以前に違法じゃないのか…?』と思ってしまう。

そして、さっき見たが、窓には鉄格子が有ってそこからは出らないようになっていた。

 

(…どこの要塞だここは!? イヤ、要塞と言うより…一歩間違えれば、監獄だぞ…ここは!?)

 

自分の現状を鑑み、脱出不可能な事を悟り、力なく床に倒れ伏す輝だった。

 

 

 

 

さて、復活した輝は小腹が減ったと言ったなつきのためにキッチンで夜食作りの最中だった。

 

何故こうなったかと言うと、いきなりカップ麺を作ろうとしたのでそれを止めての行動である。

カロリーの面から考えて、夜食に食べるような物では無いし、栄養面から見てもはっきり言って問題がある。

 

なお、冷蔵庫の中にはまともな食材が少なく、料理を完成させるのに多少四苦八苦した事を追記しておく。

 

「はぁ、夜食も良いけどせめてこれくらいに…って、ちょっと待て!!! 何だそれは!?」

 

「…………? 知らないのか? マヨネーズだ。美味いうえに栄養価も高いんだぞ。」

 

テーブルの上に置かれた料理に行き成りマヨネーズをかけ始めたなつきに対する輝の叫び声に彼女は不思議そうな表情でそう返した。

 

「…いや、そうじゃなくて…。いや、それ以前に栄養価の高い物をそんなにかけること自体…。」

 

何を言っても無駄と判断したのか、そこで言葉を止め軽く溜め息をつき、

 

「向こうのほうが良かったかな…?」

 

小声でそう呟いてしまっても、彼に罪は少ないだろう。

だが、彼の言葉になつきが敏感に反応し、行き成りエレメントの銃を出し、輝へと突きつける。

 

「“乳”か!? そんなに向こうの“乳”がいいのか!!」

 

「誰もそんな事言ってないだろう!!!」

 

鏡(ミラーワールド)の中で思いっきり、彼女の地雷を踏んでしまった輝を笑っている相棒(ドラグレッダー)を睨み付け、そう叫ぶ。

 

「さてと…。」

 

色々と諦めた様子で、立ち上がり手に持った大きなビニール袋にゴミを放り込んでいく。

 

「……何をしている?」

 

「掃除。ここに泊まる以上は寝床の一つでも、確保しておかないとな。」

 

「見事の奴隷っぷりだぞ奴隷君。」

 

観念した表情で掃除をしながらそう返事を返す輝に、味噌汁を飲みながら嬉しそうにいうなつき。

 

「…誰が奴隷だ…。オレには『楯 祐一』と言う名前があるんだ。」

 

『名前』…その存在を表す言葉と言う、なら…自分の名前はどれなのだろうと自問する。

《仮面ライダー龍騎》《楯祐一》………そして、真名は《霧島輝》。だが、今の自分が名乗っているのは、《楯祐一》と言うこの体の名前。

今の自分は別の人間の姿と人生、名前を借りて生きているのだ。それは、彼女達を騙しているに等しい。

 

そんな事を考え、黙々と掃除をしながら、部屋の中を見回すと少女漫画やテディベアとかが綺麗に並べられてレースのカーテンが掛かった戸棚がある妙に女の子らしい一角がある…ストイックに見えても女の子らしいのかもしれない。

 

だが、自分の探している物は残念ながら見つからなかった。

どうでも良いがゴミは分別して出したほうが良いぞ、輝よ…せめて燃えないゴミと燃えるゴミは分けよう。

 

「掃除機は?」

 

「無い。」

 

「…そうか…。」

 

(はあ、なんと言うか…大変だな…。)

 

『仕方ないのでこれで我慢しよう』そう考え適当なところに寄りかかった瞬間、輝の頭の上に何かが落ちてきた。

 

「これは……?」

 

輝の手の中に有るのは小さなダックスフントの縫いぐるみ、結構古い物のようで、あちこちが解れ柔らかくへたっている。

 

「ぬいぐるみ…犬の?」

 

「触るなっ!!」

 

怒気を孕んだ叫びを上げなつきが輝の手からぬいぐるみを奪い取り胸に掻き抱く、今朝の舞衣の時と動揺に全身から発せられる拒絶の空気。

 

(迂闊だったな…。)

 

「悪い…そんなに大事な物だったなんて…。」

 

部屋の空気に耐え切れなくなり、輝が話題を変えようとした時、なつきが小さく呟く。

 

「このコの名前は…『デュラン』、母さんから貰った……最後のプレゼントだ。」

 

『デュラン』…チャイルドと同じ名で呼んだぬいぐるみを撫でながら、なつきは呟く。

小さく絞り出される声は震え、瞳には深い悲しみが浮かんでいた。

 

以前にも見た事のある『意思』の込められた瞳…そこに込められているのは、自分の事を《好き》だと言ってくれた白鳥のモンスターと契約し、彼の影(リュウガ)に殺されたライダー…『仮面ライダーファム』に変身していた少女が『仮面ライダー王蛇』…朝倉に向けていた『意思』と同じ物だと感じ取る。

 

「………。」

 

その姿、その瞳を見て輝は納得した…全てを理解した…彼女は言ったのだ、『《最後》のプレゼント』と、

 

「…最後…か。それって…。」

 

輝は彼女に向かい問いかける、前にも見た相手と同じ意思を感じ取ったから、自分の中に浮ぶ予感を否定したいために…だが……

 

彼女の視線の先にある物に気がつき、輝も視線を向ける。

 

デスクの上に乗っかっている写真入れ、その中に写る二人。赤ん坊を抱きしめ、心の底から幸せだと訴えるような女性の笑顔、女性の顔は目の前にいるなつきに似ていて、母性的な優しさと大人の女性らしい丸みを帯びている。

その胸の中には、赤ん坊特有のはにかんだ笑顔を浮かべてスヤスヤと眠る幼いころのなつきであろう子供。

 

「―――殺されたんだ。」

 

現実は彼の願いを拒絶する。彼の予想は当たっていた。

見覚えのある瞳、かつて見た汚れ無き純白の騎士の瞳に見た物と同じ色が今のなつきの瞳の色にはあるのだから。

 

「母さんもHiMEで……その身を研究にささげていたんだ。この力を世の役に立てることは出来ないかと…だがっ!」

 

(同じだな…彼女と…。)

 

あと少し早く自分が駆けつけていれば助けられた少女、助けられなかった少女の事を思い出す。

 

「私は……今でも忘れない。夥しい血を流し、激痛と火にあぶられる熱さの中でも私を安心させようと必死になって浮かべていた母さんの笑顔。私に…形見であるエレメントを渡し、髪を撫でてくれて、そして………ゆっくりと腕が落ちる瞬間……動かず、冷たくなった母の体。」

 

HiMEという力にかかわり、この写真の中に写る何の変哲も無い幸せをかみ締めている家族の笑顔は、数年後に二度と取り戻すことは出来なくなるまでに壊された…自分の知る彼女(ファム)と同じように…

 

彼女の姉と同じように彼女の母は死に、そして娘は彼女の様に復讐の道へ……。

 

「このエレメントは、母から受け継いだ力…だから私は、この力で……母の仇を討つ。」

 

怒りを覚えずに入られなかった。彼女もまた、人を一人確実に殺すことを宣言しているのだ。

まだ、仇が何者かは分からないが、オーファンや快楽殺人者と言う相手とは違う。

 

「この学園に一体何人のHiMEが居るかは知らん。だが理事長がHiMEを集めているのならばここで母を殺したHiMEに遭遇する可能性は高い……あるいは既に…。」

 

「事情も知らずに悪かった…。オレに出来ることがあれば…。」

 

「そばにいてくれ……。」

 

涙を流しながら彼女は力なく呟く、

 

「え?」

 

「私はお前がいれば力がわく………。」

 

恥ずかしそうにそう呟く彼女の姿に顔が真っ赤になる、心臓の鼓動が早まる。だが、冷静に考えれば、チャイルドの事だろう。

 

「……だから、そばに……。」

 

「あ・・ああ…。」

 

そう答えた瞬間、至近距離で彼女の顔が目の前に現れ、目が合う…キスしそうになるほど近くに…。

 

「ホントに…?」

 

「あ・・ああ……。」

 

「ホント?」

 

「ああ。」

 

二人の顔が至近距離まで近づく…その瞬間…

 

「…!? 危ない!!!」

 

妙なデジャヴを感じながら、そう叫び彼女の体を抱えて後ろに跳ぶ。その瞬間、窓が切り裂かれて二つの影が飛び込んできた。

 

「何故に?」

 

そんな声をあげる輝…なつきに剣を突きつけているのは…

 

「祐一は返してもらうぞ、なつき!」

 

向い黒い大剣、ミロクを構えている命と…

 

「他人の部屋から勝手に拉致して監禁ってどういうこと?!」

 

割れたガラスを壊しながら窓枠を乗り越えてきた舞衣の姿だった。

 

そして、ワナワナと全身を先ほどまでとは全く違ったベクトルの方向で振るわせたなつきが、

 

「貴様等…こんな時間に討ち入りとはいい度胸だな………?」

 

両手には既に二丁拳銃のエレメントが握られ、怒りながら微笑すると言う器用な事をした顔には青筋が奔り引きつっている。

 

「それをあなたが言う?」

 

「窓をブチ破っておいて何をいけしゃあしゃあと! 防弾だから結構高いんだぞ! 弁償しろ!!」

 

「それは命が勝手に…。」

 

「貴様は仮にも保護者だろうが!」

 

「祐一を置いておけば真白から毎日ケーキをくれると言ってた。」

 

「奴隷くんは所詮乳だけの女よりも私のほうが良いと言っていたぞ。」

 

「胸は関係ないでしょう胸は?!」

 

「だから、祐一は連れて行く!」

 

「させるか!」

 

「フン、そんなだから男にも逃げられるのだ。」

 

「逃げっ…あんたねぇー!!」

 

 

 

 

 

どうしようかと思って、助けを求めるようにドラグレッダーに視線を向けるが、ドラグレッダーも力なく頭を振る。

覚悟を決め、二人に話しかけた瞬間。

 

「二人とも…。」

 

そう、二人を止めようとしたのが輝の運の尽きだった。

 

「「あんたはどっがいいの!?」」

 

二人が声を揃え輝の方に体を向けた瞬間、

 

 

【チャイルド召喚】

 

 

彼は二人のエレメントに触れてしまったのだ。

 

「「「あ。」」」

 

それに気が付き、仲良く三人が呟いた時には時既に遅し…。

 

一瞬の閃光の後、部屋の窓から首を出し、『ボフ?』と不思議そうな顔をしているカグツチとその上で『アオーン』と遠吠えをあげているデュランの姿………そして、押しつぶされた部屋から輝達四人を救助したドラグレッダーの姿があった…。

 

これにより、なつきの部屋は全壊…その結果、『仕方ないですね』と言う、鶴-理事長-の一声の元…

 

(何でこんな事に…。)

 

ギスギスとした舞衣と命の部屋……………その原因は…舞衣と命そして、なつきの三人であった…しかも、エレメント出してるし。

 

(何でこんな事にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!)

 

心の中で絶叫する輝だった…。

 

『ギャウ。(諦めろ、主。)』

 

同情する様にそう呟く、ドラグレッダーであった。

 

つづく…

 

 

 

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