「…力が欲しいか…輝あいつの様な力が…?」
今の《楯 祐一》の姿ではない、かつての《霧島 輝》と同じ姿を持った少年《輝》が目の前の相手にそう問いかける…。
彼の前に立つ男は迷う事無く、彼の問い掛けに答える…『Yes』と…。
「…ならば、受け取れ…あいつと同じ『ライダー』の『力』を…。」
少年は何処からとも無く取り出した一つのカードデッキを渡す…。それはかつて、龍騎としての輝と戦い敗れた男ライダーの使っていた物と同じ紋章のカードデッキ。
「学園を守るはずの対オーファン部隊が学園を破壊しては…本!! 末!! 転!! 倒!!」
『バダァァン』と言う音を立て、理事長室の扉が開かれ、二人の少女が入ってくる。
「…あの二人…確か…執行部の。」
(…まあ、確かに守るはずの立場の人間が破壊したら意味がないのは分かるけど…。ん?)
見覚えの有る…と言うよりも本日、盛大に無視した二人の少女『珠洲城 遥』と『菊川 雪乃』…。ふと、輝は二つほど何か引っかかる物を感じていた。
一つはその一人、遥の正論の中に感じる妙に何か引っかかる事。
もう一つはまだ部屋に入っていない三人目の気配とドラグレッダーの様子。
「それも!!! これも!!!」
怒りに震えるように手を握りながら、そう叫び。
「全てはオーファン退治の任をCランクのHiMEである……。鴇羽さん達に一任しているせいですわ!!!」
舞衣達を指差しながら高く宣言する。
「例えるなら青銅聖闘士ブロンズセイント!!!」
「いや、変なシルバーや、ゴールドの蟹より、ブロンズのペガサスとか、フェニックスとかの方が上だとは思うけどな…エピソードGとか、冥王神話以外だと。それにその例えだとオレは冥闘士スペクターになるのか、海闘士マリーナなるのか?」
「「「………。」」」
ボケなのか、天然なのか、冗談なのか分からない輝の呟きに沈黙してしまう一同。彼の言葉にどっちなのだろうと言う変な疑問まで湧き上がる始末である。
どうでもいい事だが、蟹の負け方が自分の知っている蟹のライダーと同じ負け方と言うのに既視感デジャヴを感じてしまう。何故、仮面ライダーシザースの事を思い出すのかは彼自身にとっても最大の疑問だが…。
「い、いーえザクよ!!! しかも、旧ザク!!」
怒りに震えながら、遥は例えを言い換える…。だが、
「…普通に強いと思うぞ…ザクとか、九ザク。ガイアやカオス、アビスを圧倒してたし、九ザクは高性能でフリーダムやジャスティスと同じ動力だしな。それで…その例えだと、オレはどうなるんだ? MFか、オレは?」
「「「……………………………………………。」」」
気を取り直して叫ぶ遥の言葉をボケなのか何なのか分からない一言で潰す輝だった。
どうでもいいが、ザクはザクでもそのザクは『ザクウォーリア』だし、『九』じゃなくて、『旧』だし。
しかも、その例えなら本当にMFになるのかは疑問だが…。
自分の話の腰を二度までも折られて、悔しそうに『キー』と叫びながら暴れている遥と必死にそれを宥めている雪乃…そして、どう反応していいのか分からない舞衣達と、ついでに呼ばれるのを待っている人も一人、そんな空気を一切無視して何かを考えているその状況を作り上げた張本人である輝。
誰かが口を開くまでその空気は壊れてくれない事だろう…。
「では、珠洲城さんには何かお考えでも。」
そんな混沌とした空気を払拭してくれたのはその部屋の主である真白だった。
「フッ、フッフッフッ…決まってますわ!!!」
待ってましたとばかりに、輝の言葉ボケで言い出すタイミングを殺されていた遥が真白の言葉に即座に反応する。
「現在いまの対オーファン部隊は即刻解散!!! 以後、執行部が結成したAランク…。」
全員の視線が自分ではなく、真横に行っている事に気がつき、自分もそこに視線を向けてみると……いつの間にか立ち上がって、自分を無視して横を通り過ぎて帰ろうとしている輝の姿があった。
「楯祐一、人の話は最後まで聞きなさい!!!」
「いや、反省会は終わったんだし、別に帰ってもいいだろう。あんたに付き合う必要も無いと思うけどな。せ・ん・ぱ・い。」
「そ、それでは私達の仲間を「それで、いつ入ってくるんだ、玖珂?」しょう。」
「「!?」」
これ以上、輝のペースに巻き込まれない様に彼の行動を無視しつつ話を進め様としていた遥の言葉を輝の一言が遮る。
当然ながら、注目が集まるのは遥では無く輝の方であり、再び話の邪魔をされた遥が怒りのあまり『キーッ』と叫んでいるが見事に宥めている雪乃以外にはスルーされている。
「気付いていたのか?」
彼の言葉に従うように理事長室へと入ってくるなり、なつきは輝へとそう問いかける。輝は鏡の中から半身を出現させたドラグレッダーを指差し。
「ああ。ドラグレッダーの様子が変だったからな…転校初日の一件以来嫌われてるだろう、玖珂は。」
警戒心を露にしているドラグレッダーを鏡の中へと戻し、輝は部屋を出て行こうとする。そんな輝をなつきが呼び止める。
「待て、祐一。お前もオリHiME隊に来い。」
「…………。」
なつきの言葉で無言のまま視線を向ける事で返す。
「……まったく、なんであんな奴を……。」
「藤乃会長の命令ですし。」
後ろで輝を睨み付けながら文句を言う遥とそれを宥める雪乃。
「それがお前の為でもある。」
なつきからの言葉に反応し、舞衣達は輝へと視線を向ける。
「…その答えは保留だ…。」
(楯先輩…。)
輝の言葉に信じられないと言う様な表情を浮かべる舞衣とそれとは対照的に勝ち誇った笑みを浮かべるなつきと遥。
「そうか。いい返事を期待してるぞ。」
そんななつきの言葉を背中に受けながら、輝は部屋を後にしていく…。
向かう場所は一つ…以前、『なつき親衛隊v』に追い掛け回された時、奇しくも確認できた学園の施設の一つ『図書館』である。
「………ドラグレッダー…お前はオレが何であんな答えを出したか気になるか?」
輝の問い掛けにドラグレッダーは首を横に振る。そんなある種、想像していた相棒の答えに輝は嬉しそうに笑みを浮かべる。
遥の言葉の中で輝が引っかかっていた所…それは『学園の破壊』の言葉…。
確かに『本末転倒』と言う点では激しく同意するが、彼女の言葉はまるで『人的被害を考慮していない』様にも思えてならないのだ。
それは次にオーファンが現れた時、向こうの行動を見れば分かるだろう…先の事はまったく考えないのは問題だが、悪い方向に考えすぎるのも良くない。
自分がこれから行うのは最悪の状況になった場合の裏付け。この学園の建設、設計に関わった人間の調査。
彼女達が守りたい物が生徒を含めた学園全体ではなく、学園だけだったとしたら…。
「…そんな奴らに任せるのは『危険』だな…。」
輝の呟きが虚空へと吸い込まれていった…。
つづく…?
「ふ~ん、それで…彼は受け取ってくれたの?」
「ああ。あれは神崎のカードデッキの一つをベースに改造を加えた試作品壱号だからな。」
「それで、どこら辺が楯君のとは違うの?」
「変身した際に発動する『ある機能』を付け加えた。まあ、並の人間でも、実験動物モルモットには丁度いいだろう。」
「それはそれは、楽しくなりそうだね。」
無邪気な笑みを浮かべる凪に対して《輝》は冷たい笑みを浮かべながら『ああ』とだけ素っ気無く答えた。
(くっくっくっ…あれはオレからの再会を祝してのプレゼントだ。まあ、精々頑張ってくれ…忘れたくても、忘れられない過去の罪との再会をな。)
つづく…