(…やっぱりか…。)
オーファンの出現の報告を聞き、その現場である初等部の校舎に着いた輝は目の前の惨状を見てそんな事を思う。消え去っていくオーファン…無傷の校舎。そして…
最初に戦ったスライムオーファンとの戦い、あの時の様に傷ついた人々。
(…オレの意思は決まったな…。なあ、相棒ドラグレッダー。)
「オーファン出現から戦闘終了まで1分36秒63、これまでの第三位の最短記録です。」
「上出来ですわ!!!」
第三位と言う記録が不満なのだろう、少しの苛立ちを込めた声で雪乃の言葉に返す遥。
予断だが、第二位の最短記録は輝の四十秒で、最短時間第一位の栄冠はドラグレッダーの三十秒と言う記録である。この二人の場合は偶然にも大して強くない固体が近くに出現したので遠慮無く瞬殺した結果である。
「ちょっと!! これ、どういうことよ!!!」
「あらあら、今頃到着ですの? こっちはとっくに戦闘終了して、解散してしまいましたわ。」
遥の背中に向かい舞衣が声をかける。その言葉には明らかに苛立ちが込められていた。その言葉に対して余裕たっぷりと言った態度で遥はそんな言葉を返す。
「何でこんなに怪我人が出てるの!? 一般生徒の避難が最優先でしょ!?」
舞衣の言葉に一人傍観を決めている様な態度だった輝がポケットの中でカードデッキを握る。
「人間の怪我くらい放って置いても治るでしょう。」
やれやれと言った態度で言葉を返す遥。それを聞き、輝は奥歯をかみ締める。
「周辺建物の破損率は0です。」
それに補足されるように繋がれる雪乃の言葉。それを聞きカードデッキを握っていない手を握り締め自らの爪が皮膚に突き刺さり血が流れる。
「そう言う事じゃなくて!!」
「舞衣ちゃん! 執行部に手をあげたら退学よ!」
慌てて舞衣を押し留めるあかね…だが、
それよりも早く…上空より打ち出された火球が遥の横を通り過ぎ、その進路先にあった無人の校舎の一部を吹き飛ばした。
「「「「な!?」」」」
その一撃により少女達の視線が一箇所に集中する。炎を操る事が出来るのは二人だけ、その一人である舞衣は手を出していない…故にその答えは一つ。
彼女達の視線の先には真紅の炎をその身に宿した火龍『ドラグレッダー』とその主である輝だった。
「楯祐一!? これはどういう事ですの!?」
「…何って…? 先日の答えのついでの宣戦布告だ。」
己のエレメントを突きつけ輝へと詰問する輝。今まで伏せていた顔に怒りを宿し、睨み返す。見れば主の怒りに反応してか、ドラグレッダーも遥を威嚇する様に睨み付けている。
「なんですって!?」
「態度でも示したことだし言わせてもらおう…。物は幾ら壊れた所で作り直す事は出来る。でもな、死ななかったとしても…お前は…腕や足…視力を失った被害者が出た場合、どう償うつもりだ…? 必要最小限の被害だから諦めろとでも言うのか…? 戦う者に必要なのは『命の重さを知る事』だ。それが分からない奴が戦うな…。」
そこまで言い切ると一息着き再び口を開く。
「死んだ人間は戻って来ない…戻ってきちゃいけないんだよ。犠牲者の憎しみを背負う覚悟は有るのか? お前には…?」
それこそが自分がライダーとしての戦う事を決意した時の決意…戦う理由…それはただ一つ『人を守る事』なのだ。
ミラーモンスターによって、他のライダー達によって犠牲になった人達の事を知っている。大切な人を奪われた人達の事を知っている。故に…彼は決意したのだ、ライダーとして一人でも多くの人を守ることを…。それがライダーバトルの最後の最後で彼が忘れていた…彼女達と共にオーファンと呼ばれる怪物と戦うと決めた時に…二度と忘れぬと、汚さぬと誓った『願い』。
ライダーに変身していなくても、例えドラグレッダーがその場に存在して、場の全てを支配する存在感を発していなかったとしても、彼の纏っている意思が、彼の瞳に宿った意思が有無を言わせていない。
「所詮、物は物だ。物は直せば元に戻る…。人は物なんかじゃない。人の傷は本当の意味で癒える事は無いんだ。」
何時もの彼からは想像も出来ない冷たさ、ライダーバトルと言う彼の心に有る傷より生み出された負の部分…だから輝は…。
「祐一。」
立ち去ろうとする彼をなつきが呼び止める。
「本当にオリHiME隊には来ないのか?」
「…………。」
なつきの言葉で無言のまま視線を向ける事で返す。
「…悪いが命より物の方が重いって公言しているような連中の同類になる気は無い。」
「楯祐一!!! 執行部に逆らってタダで済むと…。」
「さてね。ただ…オーファンなんていう怪物が出てくる現状で現時点での最強戦力と言えるオレを簡単に放り出すという真似は理事長がとるとは思わないけどな。」
ここから先はタダの推測…だが、輝の中には不思議な確信があった。
ライダーバトルに当てはめれば『オーファン=ミラーモンスター』と言う公式となる。だから、ライダーバトルで知ったモンスターを生み出すミラーワールドの『コアミラー』と言う物に該当する存在があると言う推測。そして、理事長はそれの存在を知っていると言う妙な確信。
閑話休題それはさておき…
必要以上に表面化してしまう負の部分、絶対に忘れてはいけない過去…心の闇とでも言う部分に支配されている自分が何よりも不快なのだ。
「………。」
「バカな判断をしたものね。」
(楯先輩……!!)
輝の言葉に答えるように無言で立ち去ろうとするなつき、先ほどまでとは逆に余裕たっぷりと言った口調で答える遥、嬉しそうに彼を見つめ心の中で彼の名を呼ぶ舞衣と三者三様の反応。
「とにかく。」
「現場じゃあ、邪魔をしないでもらいたいな。」
「現場では、邪魔をしないでくださいね。」
遥の言葉に続くように出た輝の言葉と遥の言葉が重なり、遥は輝を睨み付ける。
「…お前達がオレの必殺技ファイナルベントに巻き込まれて怪我してもオレは知らないぞ…。これから先の戦いは三つ巴になりそうだからな。敵対者の怪我はオレにしてみれば、最小限の被害なんでな。」
それに巻き込まれて、怪我だけで済むのかと言う疑問もかなり出てくる様な彼の言葉に睨み付け、彼女達は立ち去っていく。
(…どうかしているな…今日のオレは…。無意味にケンカを売る必要なんてなかったはずだ。)
冷静になった部分でそんな事を考える。必要以上に敵対してしまったいつもの自分らしくない行動…それを鑑みて自分の行動を大いに反省する輝だった。
つづく…