さて、幸いにも先程の奇行については、あまり大事にならずに済み、偶然通りかかった人に道を聞き、現在は風華学園の敷地内に居た
「ここが風華学園か…広いな…。」
その規模に圧倒され、思わず感想を呟く輝だが、それもそのはず、風華学園は小中高の一貫校であり、敷地内には校舎や体育館、プール以外に学生寮も存在すし、今まで輝が通っていた学校とはハッキリ言って、スケールが違う
「…人を探すか…校舎がどこか、分からないしな…。」
腕時計に視線を向け、人の姿が無いかと、周囲を見回し人が居ないか探す
現在の時間は8時05分と始業時間までまだ時間はあるが、決して早い時間ではなく、逆に誰かいなければ逆におかしい時間帯である事が、今まで高校生だった輝には分かる
「この学校の生徒は、それほど真面目なのか…? オレの学校には遅刻ギリギリに…イヤ、忘れよう…。」
彼の頭の中にミラーワールドで死に、またはモンスターに襲われ命を奪われた自分と同じ学校の生徒達の顔が頭に浮ぶ、同じクラスの者もいた、知っている者もいた、顔も知らなかった者もいた、目の前で襲われていながら、助ける事の出来なかった者もいた…そして、自分のモンスターを強化すると言う理不尽な理由でライダーの従えるモンスターに襲われた者もいた
その事を思い出すと、無意識の中で彼は血が出るほど強く右手を握っていた
その時は何時も、強く後悔した…『自分にもっと力があれば助けられた』と…だが、後悔した所で死んだ者達は帰ってこない…だから、悲しむ者を犠牲になる者を一人でも救いたかった…最後の最後でそんな最初の思いさえも彼は忘れていた
「…誰か探して道を聞こう…。」
頭を振って嫌な考えを打ち消し、輝が周囲に生徒がいないかと探し始め様とした時
ドカァァァァァァァァァン!!!
突然の爆発音が輝の鼓膜を刺激する
「なんだ!? 何が起こった!?」
突然の爆発音に驚きながら、周囲を見回し音の発生源を探ると、前方の建物の付近で二度目の爆発が起こっているのが確認できた
「あそこか!?」
そこに向かおうとした瞬間、一度立ち止まると鏡の代わりになりそうな物を探す
鏡がなければ仮面ライダーに変身出来ず、彼はその力を使う事が出来ない、そうなれば彼はどこにでも居る、一年近くの間命がけで戦った経験を持つ普通の男子高校生に過ぎない…もっとも、そんな経験が有る時点ですでに普通では無いが
見ると腕にある時計の金属部分にドラグレッダーの姿が映し出された、その事から十分すぎる程、鏡の代わりになる事が分かる
「よし、急ごう。」
(…もう、絶対にオレの目の前で、理不尽な理由で無関係な人間を死なせはしない…。)
そう考えながら、輝は爆発現場に急ぐのだった
(フッフッフッ…オレのいる学校で騒動を起こしたのが運の尽きだったな…。)
その爆発の犯人が学校を狙ったテロリストと考えて、そんな物騒な事も考えながら…
そして、三度目の爆発…輝は近くに草むらの中に姿を隠しながら、いつでも飛び出せる体制で様子を伺う、念のために右手をカードデッキのあるポケットに入れて、すぐにそれを取り出せる様にしながら…
「え?」
思わず呆気に取られた声を出す
そんな声を出した輝の視線の先には二人の少女、一人は変わった腕輪をし、両手両足に炎を纏って宙に浮いている、もう一人は奇妙な形の拳銃を持っていた
戦闘の理由は不明だが、この二人が戦っているらしい
「まったく、これから授業だっていうのに…ところ構わずしつこいんだから!!!」
「私はお前のそういった飄々とした態度も! 物言いも!! 全てが気に入らない!!!」
銃を持った少女が動く、腕輪の少女が放つ炎を避けながら、彼女の死角に入り込んだ
「お前に『HiME』たる資格はない!!!」
少女が銃を連射、放たれた弾丸が腕輪の少女を襲うが、腕輪の少女は体を回転させ、纏わせた炎を螺旋状の防御壁とし弾丸を防いだ
「へー…なかなかやるな。でも、オレから見ればまだまだだな。二人とも戦い方に無駄が多い。」
一年にも渡る非常識な力を持つ者同士の死闘の中で勝ち残ってきた彼には、その戦いのレベルを理解しながらも、そう言い切れる
「まあ、力はともかく、ただのケンカか。まあ、『気に入らない』で殺し合いしてたら、王蛇 といい勝負だ。」
『イライラする』と言う事でライダーバトルに参加した仮面ライダーの事を思い出して、考えが別の方向に向かう
この戦闘に巻き込まれて、被害を受ける者がいた場合、変身してでも止める必要が有ると考える、やっている事はケンカだが、はっきり言って力が強すぎる、流れ弾の影響は大怪我で済めば奇跡と言う所だろう
そう考えて、周囲を見回してみると彼以外にも多数のギャラリーが居るが、それが全員、無責任に声援を飛ばしている
「舞衣~~~、負けるなよーーー!」
「頑張ってください、玖我さ~~~ん!」
前言撤回、もはや日常の一コマなのだろう、輝も輝でカードデッキを取り出すためにポケットの中に入れた手を外に出して、観戦に廻る事にした
「…ハァ…。オレ達がやって来た事がここじゃ日常か? 神埼、本当にライダーバトルの勝者って、お前の言ったとおり、願いが叶うのか?」
ふと、神崎の言葉に疑問まで持ってしまう、輝だった
(しかし…。)
少女たちの戦闘に視線を戻すと、ものすごいことになっていた…激しい動きの所為でまくれるスカート、拳銃の少女の攻撃のせいで服が破れあらわになる腕輪の少女の白い肌と大きい胸
(さーて、他に生徒を探すか…あの戦いに巻き込まれたくないしな。それに…気になる事も有る…。)
顔を真っ赤にして目を逸らしながら、そんな事を考えて、他の場所へ行こうとした時、彼の姿が戦っていた二人の目に止まった
(うそ!! こんな所に人が!?)
腕輪の少女がそう思った瞬間、拳銃の少女は輝に近づく
「あ!! なつき!?」
(ん?)
腕輪の少女の声で拳銃の少女の接近に気が付き、後ろに跳ぶが着地と同時に奇妙な形をした銃を突きつけられる
「お前、誰の鍵だ?」
「鍵?」
突然の問いかけに輝は思わずそう答えてしまう
(鍵って、オレは人間を辞めて、そんな物を始めた記憶は無いぞ。)
「言え、誰の鍵だ?」
「いや、突然、そう言われても、何のことだか分からないんだけど…。」
彼女の言葉に疑問を浮かべながら、幾つかこの状況の対処方法を考えているが、いい考えは思い浮かばない
「オレは転校してきたばかりだし…。」
まずは無関係である事を証明しようと、ここまで来る途中に手に持つから調べた自分…と言うよりも『楯 祐一』の個人情報を提示するが
「だったら尚更だ! この時期に転校など!!」
「いや、尚更とか言われても家庭の事情か、個人の都合としか答え様が無いんだけど…。」
彼女の言葉に対して、腕時計の金属部分―正確にはそれを鏡の代用としたミラーワールド―に見える、彼を助けようと、今にも彼女に襲い掛かろうとしているドラグレッダーを抑えながら、呆れたように言葉を返す輝だが、彼女は眉間に銃を突きつける
「言わなければ殺す。」
(神様…オレは何かあんたを怒らすような事をしたのか? それとも、前世で何か有ったのか、神様?)
思わず自身の不幸の原因を神に向ける輝だった…実際、そうでも思わなければやってられないと言った所だろう
「やれやれ…。」
(間違いなく、死ぬのは君のほうだと思うけど…。)
実際、平和的な手段以外の方法ならば幾つか対処方法は有るが、どれを使ったとしてもそれは間違いなく事態を悪化させるだけだろう…ポケットの中にある龍騎のカードデッキを握り締めて、眉間に突きつけられた銃から彼女に視線を向ける、彼女の目は間違いなく本気だ
それだけに彼女が危ない、今にもドラグレッダーは彼の意思を離れて、彼女に襲い掛かろうとしている、ドラグレッダーの出現するポイントとの距離を計算に入れれば…間違いなく、その銃を撃とうとした瞬間、彼女がドラグレッダーの餌食になる事は間違いない
「やめなさい、なつき! その人は関係なっ……。」
腕輪の少女が拳銃の少女を止めようとした時、一瞬だけ彼から拳銃の少女―話から、なつきと言うらしい―の意識が離れた瞬間を逃さず、射線から体を逃し、彼女の持つ銃を蹴り飛ばし、後に跳躍して拳銃の少女から距離を取る
「一つ聞くけど…目撃者は抹殺とか言う決まりは無いよな?」
ギャラリーの存在から考えて、そんなことは無いだろうが、一応、拳銃の少女に比べて、まだ話が通じそうな腕輪の少女に聞いてみる事にした…『Yes』といわれたら、即座に逃走できるような体勢で…
「そ、そんな決まりは無いけど…。」
輝の突然の行動に呆然としていた腕輪の少女が答える、迂闊にも武器を奪ったと言う油断から、輝はその時、拳銃の少女から注意を逸らしてしまっていた
「…それと、彼女がいった言葉の意味を説明して…なに!?」
「動くな!」
再び眉間に突きつけられた銃に輝は思わず言葉を失ってしまう、確かに注意を逸らしてしまっていたが、武器を拾いに行ってから、再びこの距離に近づかれるほど油断はしていなかった…だが、拳銃の少女は彼が注意を逸らした僅かな瞬間で再び武器を持ち、至近距離まで近づいていた
零距離…そう言えるほど銃が近づいた瞬間、再度対処法を考える輝の額に彼女の銃が触れる
―ドックン!―
(なんだ、この感覚は!?)
突然、心臓の鼓動が早くなる…今まで…ライダーバトルと言う非常識の中でも感じた事の無い感覚に輝は驚愕を浮かべる
「ぐ、こ・・これは……!?」
(こっちが聞きたい!?)
彼女の言葉に心の中でそう言葉を返す、輝と拳銃の少女が戸惑っている瞬間
「何してるの!? 逃げるわよ!?」
腕輪の少女が宙に浮びながら、輝を引き摺って離れていく
「あっ! ああ!」
一瞬、呆気に取られていると、彼女の言葉にそう返し、輝は彼女に引き摺られながら、その場から離れていく
(…なんだったんだ…あの感覚は…?)
腕輪の少女と輝がその場から離れた頃、拳銃の少女―『玖珂 なつき』―は木に背中を預け、地面に座りながら、消えていく光を見つめていた
「はあ…はっ…ふっ…ふふふ……そうか…消えたのは外れたためか、《領域》から…。」
そう言いながら、なつきはゆっくりと立ち上がる
その強い意志を秘めた瞳に面白い物を見つけた光を浮べて、妖艶な笑みを浮かべる
「なるほど………面白い。」
こうして、二人の姫と紅き龍の戦士たる鍵は出会う、輝の人生の本当の意味での波乱はここからが始まりである
負けるな、輝…きっと、死んだライダー達(特に王蛇あたり)は君の事を待っているぞ…冥界で
「…負けたら、いろんな意味で地獄だな…。」
おまけ
さて、『楯 祐一』に体を乗っ取られた『城戸 真司』はと言うと…
「なんか息苦しいな…って、なんだこれ!?」
彼の目の前には訳の分からない機械が並び、宇宙空間と地球がモニターらしき所に映っている。
「おお、ロボットか!? すごいな…でも、何でオレ、こんなヘルメットと変な仮面つけてるんだ?」
…彼、『城戸 真司』は…『ラウ・ル・クルーゼ』となっていた(汗)
『守りたい世界があるんだぁ――――――ッッ!!』
突然、彼のいるコックピットの中にそんな声が響いた。モニターを見てみると片腕を失った天使を思わせるMSがビームサーベルを向けながら、一直線に向かっていく。
「うわぁー!!! ちょ、ちっと待て!」
慌てて避けようとすると体が勝手に動き、絶妙の動きでフリーダムの一撃を回避する。
「あー…助かった。」
『このぉぉぉぉぉお!!!』
「うわぁー!!! またかぁー!!!」
再び襲い掛かるフリーダム、慌てて情けない叫び声を上げながら、プロヴィデウスを操作し、それを回避する真司…。何故、MSを操縦できるのかは、クルーゼの体のお蔭だろう。
必死で逃げながら、キラに状況の説明を求めた結果、彼は初めて自分が置かれた状況に気が付き、急いでプロヴィデウスをジェネシスへと向かわせる。
途中でジャスティスとストライクルージュを追い抜いて、ジェネシスの動力炉までプロヴィデウスを到達させると、僅かに残っているクルーゼの知識で武装の使い方を理解し、ドラグーンとビームライフルでそれを狙う。
「こんな物はこの世界に必要ない! 有っちゃいけないんだ!!!」
プロヴィデウスの一斉射撃により、ジェネシスは破壊された…。
その後、運良くクルーゼ(真司)の乗る半壊したプロヴィデウスは回収されるのだが…彼を見たアスラン、イザーク、ディアッカが暫くの間、真っ白になって石化し、元に戻ったと思ったら、頭を抱えて絶叫した。
「「「た、隊長!!!」」」
「え? 君たち誰?」
いつもつけていたあの仮面を外して、にこやかに話しかける能天気な『クルーゼ』に誰もが恐怖し、アークエンジェル、エターナルのクルーの多くが医務室へと運び込まれる事となった(汗)
もっとも、関わった事の少ないクサナギのクルーには影響は無かったらしく、その中でも特に重症なのは…
「あははは…。」
「ち、違う、あれは違う、絶対に違う!!! よく分からんがとにかく違う!!!」
「イザーク、アスラン…隊長がオレ達のお見舞いにって、餃子作ってきてくれたぞ…食うか? しかも、美味いぞ。」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」」
比較的真面目なこの二人だったようだ…
「ああ、オレはもうなれた。前よりいい人になったしな。」
彼等を心配したクルーゼ(真司)の差し入れの手作り餃子を食べながら、呟くディアッカの姿があったそうだ
なお、続編のSEED-Dの第四クールのOPタイトルバックは…
紅いレジェンド(真司専用機)になったと言う…
こうして、仮面ライダー龍騎こと、『城戸 真司』の『ラウ・ル・クルーゼ』としての人生が続いて行く事となる。
なお、余談だが…議長とミネルバの白いザクのパイロットは今のクルーゼを見た瞬間、『あんなのはラウじゃなぁーい!!!』と叫びながら、錯乱し始めたそうだ…。
なお
「…クルーゼ?」
「えーと、どちら様でしたっけ?」
クルーゼ(真司)と記憶を取り戻したネオ(ムゥ)の間でそんな会話が交わされたとか…。