The Knight Of DRAGON   作:龍牙

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第六話

『それ』が現れた場所は一年の間中開放されているプール…運悪く授業中だった為、水面から姿を現した、『それ』はその場に居合わせた生徒達の多くを取り込みながら、肥大化及び破壊活動を続けている

 

「あれがオーファンか…。外見は巨大なスライムタイプ…打撃や斬撃の類は効きそうにないな…。」

 

その様子を屋上から眺めながら、輝はそう呟いた…本来なら、真っ直ぐに向うべきだろうが…輝は、敵の能力を知る為と自分に言い聞かせ、その場所に居た…それは言い訳でしかない、今も心のどこかで《龍騎》に戻ることに抵抗がある…あの瞬間、覚悟を決めたはず…それなのに今の自分は逃げ出している

 

(…まあ、今はお手並み拝見と行くか…。)

 

本来、あの怪物と戦う任に当たっている《彼女》達…彼女達の実力しだいによっては自分が戦う必要はない、そんな…以前の彼ならば浮かべなかったであろう弱い考えを浮かべる

 

「来たか…。」

 

エレメントである腕輪から、紅蓮に燃える炎を迅らせ空を駆け、舞衣は炎を纏った拳でその巨体を殴りつける、その超高熱の打撃に耐え切れず殴られた箇所は一瞬で蒸発し、己の体内に捕らえていた獲物を吐き出す

 

その手を取り、巨大なスライム状のオーファンの中から引きずり出し舞衣は少女を救い出した

 

 

(…液体の体を高温の炎で蒸発か…それなら属性的にドラグレッダーの…オレの攻撃も有効そうだな。)

 

輝はその様子を眺めながら、敵に対する対処法を判断し、無意識の中でカードデッキへと手を伸ばす

 

 

「これで全員ね…。」

 

囚われていた最後の少女を駆けつけた養護教諭に預けながら、舞衣は安堵のため息を吐く、彼女が一息ついた瞬間、風切り音を立てながら無数の水を凝固させ作り上げられた触手の槍の群が迫る

 

グオォォォンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

だがそれは爆音を響かせて現れた黒塗りのバイク、ドゥカティ916に乗ったなつきがエレメントの銃より放たれた弾丸によって打ち抜かれ

 

「なつき!」

 

風を切って現れた少女が持つ旋風を纏う二重設置のトンファーによって破砕された

 

「あかねちゃん!」

 

「んしょっと…わ…キャッ!?」

 

自分を名を呼ぶ声に気をとられたのか、着地に失敗してしりもちをつく。

 

「油断しているからだ」

 

「……む…。」

 

冷たい声で切って捨てるなつきに舞衣が頬をむくれさせる

 

「とにかくエレメントでは埒が明かない。早く奴隷クンを……」

 

アレだけの猛攻にさらされながらオーファンは既に再生を始めている、舞衣が炎の拳で殴り消し飛ばした箇所は既に新たな肉(?)が盛り上がり、同じ様に粉微塵にされた触手も根元から新しい物が伸びかけていた…そして、よそ見する彼女の背中目掛けて再び音を立てて触手が迫り

 

「油断しているからだ。」

 

先ほどの彼女と全く同じセリフを放ちながら、身の丈ほどもある漆黒の大剣を小柄な、風花学園中等部の制服を着た少女が触手の群を一本残らず薙ぎ払う

 

「……ッ! だから、早く奴隷クンを連れてこいと……。」

 

巧みにハンドルを操り降り注ぐ触手を避けながら、ピキッと額に青筋を浮かべるなつきに

 

「あんたチャイルドがいないと何も出来ないの?」

 

「なッ!?」

 

同じように、炎で焼き払いながら舞衣が先ほどのお返しとばかりに茶々をいれ

 

「私ならチャイルドなどいなくても大丈夫だぞ、舞衣!」

 

「ぐぎ…。お前等。」

 

「今はもっと協力し合いましょうよ~~~。」

 

さっきより数段怖い顔になったなつきと、そんな三人に併走しながらあかねが泣きそうな顔で懇願する

 

「だったら、お前の鍵も連れてこい!」

 

「え…だってそんな…まだ付き合っても無いのに……///」

 

「あの~…、もしもし……?」

 

…何と言えばいいのだろうか…はっきり言って、チームワークもなにもあったもんじゃない、そして、それは当然ながら、致命的な隙を生む、瀑布の如く怒涛の勢いで降り注ぐ触手、迫り来るソレを焼き払い斬り捨て撃ち貫き打ち払い、それでも捌ききれずその内の一本があかねの足に絡みつき

 

「キャァーーー!」

 

「あかねちゃん………!?」

 

瞬く間に彼女の身体を飲み込んだ

 

 

 

 

「!? …オレは何をしている…?」

 

カードデッキを握る手とは逆の手を血が流れるほどに強く握る…『今朝決めた覚悟はうそだったのか!?』と、そう強く、自分自身へと問う

 

体中をドロドロの化け物の体液で塗れさせて、ぐったりと倒れている少女がいた、化け物に崩された校舎の瓦礫に埋もれている少年がいた、砕けた硝子を浴びて背中を真っ赤に染めた男がいた、彼ら彼女等を助けようと必死でもがく人々がいた

 

『そんな人達を助けるために自分は《仮面ライダー》となったのではないのか!?』と再び、自分自身にへと問いかける

 

「オレは…オレは何度気が付けば気が済む!?」

 

『過去のトラウマ…それがどうした!? その程度の事、目の前で苦しんでいる人達の痛みとどちらが思い!?』『自分の背負う罪…逃げる事のどこが償いだ!?』

 

輝は心の中でそう叫ぶ…より強い…『決意』と『覚悟』と共に…

 

 

 

『そうだよ、あれは君のために用意したんだからね…頑張ってね♪』

 

 

 

何処からともなく、輝の耳にそんな声が届いた

 

「!? …今のは…? オレの為ね…だったら、リクエストに応じないとなぁ…。」

 

輝は《楯祐一》の顔に《霧島輝》の頃に何度も浮かべていた笑みを浮かべる…輝の友人達曰く『覚悟を決めた時の笑み』を…

 

そんな笑みを消し、階段を駆け下り、丁度巨大スライムのオーファンの真上に有る教室へとたどり着くと、近場にあったモップを手に取り、ブラシを外す

 

「まずは…救助だな…。」

 

変身するにしてもその前に新たに取り込まれてしまった少女を助け出す必要がある…龍騎の攻撃の影響で大怪我させてしまう危険がある以上、助け出さない事には全力は出せない…別の体になっての初めての龍騎での戦闘…そんな不安要素はないに限る

 

「ドラグレッダー…最悪の場合頼む。」

 

『グルゥ…。』

 

ドラグレッダーにそう声をかけると応じる様な唸り声が響く、そして、オーファンの攻撃により、ガラスの砕かれた窓枠を飛び越え、輝は跳躍する…狙うは一点、捕らわれている少女のいる、その一点のみ

 

(ん? あれは…そう言うことか…。)

 

別の一点の存在を確認し、輝はいい笑顔を浮かべる、その笑顔に込められた意味は『弱点、見~っけ。』と言ったところだろうか…

 

 

 

 

「喰らえッ!」

 

なつきが声高に叫びエレメントの引き金を引き、風を裂いて飛ぶ銃弾がオーファンの体表に突き刺さるが…弾丸はそれ以上突き進むことなく地面に乾いた音を立てて零れ落ちる

 

「効かない!? 耐性が出来ているのか!」

 

「こっちもダメ! 一撃で倒さないとすぐ再生しちゃう!!」

 

驚愕するなつきに唱和するように、舞衣も焦燥に満ちた声を上げる、彼女の目の前では、巨大な火球で抉り飛ばして作られた孔が眼を見張るスピードで塞がっていく、オーファンの耐久も回復力も先程とは比較にならないほどに向上していた、見掛けこそ変わらないものの今オーファンの体内では凄まじいスピードで細胞組織が組み替えられ、自己進化が行われているのだろう

 

恐らくもうエレメントは通用しない、チャイルドの力ならその防御さえも突き破り、オーファンの核にダメージを与えられるかもしれないが、それでは人質となっているあかねまで巻き込んでしまう

 

人質と耐性、再生力まさに彼女達の攻撃に対する鉄壁の防御と言った所だろうか…

 

「あかねちゃん…!?」

 

『ごぼ』と、あかねが喉元を抑え苦しげに呻いた、彼女が囚われてそろそろ五分が経過しようとしていた、人間の脳はその機能の維持のために常に新鮮な酸素を必要としている、このまま酸素の供給がストップしたままだと細胞が壊死し、脳に重大な障害が発生するおそれもある

 

それは分かっているのに助ける術が浮かばない、この状況を打破するには力が足りない、時間は無常に刻一刻と過ぎていく

 

(それでも……!)

 

それでも諦めることなく舞衣が拳を振り上げた、その瞬間だった

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァァアア!!!」

 

叫び声と共に輝が一本の棒を構えて落下する

 

「奴隷クンか!?」

 

慌てて顔を上げる。舞衣の瞳に映ったのは

 

「うそ…なんで楯先輩が…!」

 

落下速度を咥えた棒がオーファンの体に突き刺さり、その勢いのまま、体内に捕らわれたあかねを押し出し、それを確認すると自分も彼女達の前に突き刺した棒を橋場にして、跳躍しスライムオーファンの体から飛び降りる

 

一瞬だけ呆然としている彼女達だったが…逸早く再起動した舞衣が輝に向って叫ぶ

 

「なんて無茶するんですか! 屋上から飛び降りるなんて!」

 

「イヤ、正確には…その一個下の階だけど…。」

 

そう言い切り、輝は不敵な笑みを浮かべ、龍の紋章の刻まれたカードデッキを取り出し、輝はオーファンを睨みつける

 

「まあそんな事はどうでもいいか…下がってろ…こいつはオレが倒す!」

 

「はい~~~~!? 何言ってるんですか楯先輩!」

 

「バカを言うな! お前に何が出来る!?」

 

輝の言葉に驚いて叫ぶ…そう、彼女達の記憶では…輝にはオーファンと戦うだけの力はない…そう、確かに《楯祐一》は戦うだけの力は持っていなかった…だが、彼は…《霧島輝》は違う…輝には戦うだけの力がある

 

人質を助け出された事に怒りだしたのか、余計に暴れだした巨大スライムのオーファンにより、巨大な《鏡》の欠片が輝に向って降る

 

「!? 危ない!!!」

 

それに気が付いて、輝に向い舞衣が叫ぶが輝はそれを気にせず降り注ぐ鏡の破片に《カードデッキ》を向けると彼の腰にベルト―Vバックル―が巻き付く、あとは決意を込め、自身へと力を与える言霊を叫ぶ…ただそれだけだ

 

「見せてやろう…オレに何が出来るかを! オレの戦う覚悟の証を!!! 変身!!!」

 

自身に力を与える言霊と共にVバックルへとカードデッキを差し込む、二つの人影が彼に重なり、輝の姿が別の存在へと変わる…その瞬間、鏡の破片は輝に激突する

 

「あ…ああ……ああ…。」

 

その光景を見た舞衣が声にならない悲鳴を洩らす

 

「くっ。」

 

なつきも思わず顔を伏せる

 

 

 

 

だが…

 

 

 

 

『心配するな…オレは大丈夫だ。』

 

彼女達を安心させる様に優しく呟く輝の声が響いた、それに気が付き、声の聞こえた場所に目を向けた瞬間、その光景に目を奪われた

 

その光景にその場に居た誰もが目を奪われる…粉々になった鏡の破片の中、その場に立つのは一人の紅き《騎士》…

 

龍を象った紋章の刻まれた騎士をイメージさせる顔全体を包み込む仮面、赤と黒の装甲がついたスーツ、右腕に有るのは龍を象ったガントレット

 

「貴様……一体、何なんだ?」

 

その場に居た全員の心情の代弁の様になつきの声が響く…《彼》はその言葉に静かに答える

 

「…《龍騎》…オレは…………《楯祐一》…《仮面ライダー龍騎》!!!」

 

一瞬の躊躇の後、輝は名乗る…その叫び声はその場に居た誰にも届き、その姿には誰もが目を奪われる…唯一人を除いて…

 

 

人であって、人でなき異形、人を守護する龍の騎士…

 

その者の名は《仮面ライダー龍騎》

 

 

「やっと、その気になったか…輝…。」

 

唯一人の例外《輝》がその光景を

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