The Knight Of DRAGON   作:龍牙

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第八話

スライムオーファンを圧倒する火龍を従えし真紅の騎士、ある者はその戦いを賞賛し、ある者はその圧倒的な強さに唯呆然としていた…彼女達の中で唯一人だけ輝の戦う意味を、目的を、理由を知っている彼女、舞衣だけは…

 

(そんなのって、悲しすぎますよ、楯先輩…。)

 

そう思っていた…

 

自分自身を囮とし、敵の攻撃を自分に引き付けるその戦い方、自分以外の者を守る事を優先するあまり、自分自身の事を一切考えていない

 

彼の戦い方には勇気ではなくどこか自暴自棄なものを感じさせる

 

 

 

 

(ミラーモンスターとは違うけど、十分戦える相手だな。物理攻撃が効き難い体はそれなりにやっかいだったけど、切り札の『サバイブ』を使う様な相手じゃなかったな。)

 

後ろの光景に目を逸らしながら、多少現実逃避も兼ねて、戦況分析を行っている輝であった…

 

(…どうするかな?)

 

だが、何時までも現実逃避していてもしょうがないと考え、後ろを振り向き呆然とした表情で自分を見ている舞衣達を見ながら、輝はふとそんな事を考えてしまっていた

 

1.逃げる

2.話しかける

 

と言う二つの選択肢が頭の中に浮ぶ、1は即、却下し…選ぶべき選択肢は唯一つ、2の『話しかける』だけであった

 

「えーと、君達…どうかしたの?」

 

意を決してそう話しかける

 

「た、楯先輩?! べ、別に何でもないですよ!」

 

「そう、それならいいけど。」

 

舞衣の言葉に笑顔を浮かべてそう返す輝にすでに我に返っていた大剣を持った少女が話しかける

 

「オイ、お前。」

 

「ん? 君は?」

 

「私は『美袋 命』だ。お前は?」

 

「オレは霧し……じゃなかった、オレは楯、『楯祐一』って言うんだ。」

 

慌てて『霧島 輝』と名乗ってしまいそうになった所を取り繕う、まだ、名乗る時や呼ばれる時等《楯祐一》の名を使うのには慣れない

 

「…祐一か。祐一は強いんだな。」

 

「ありがとう、だけど…強いのはオレじゃなく、龍騎とドラグレッダーだけどね。」

 

「そうだ、あれはなんだ!? 何故、お前がチャイルドを呼べる!?」

 

輝の言葉に我に返ったなつきが命との会話を遮って、そう叫びながら問う…他の二人も興味があるのだろう、耳を傾けている

 

「…ああ…チャイルドじゃなくて、あれは…オレの相棒―契約モンスター―の…。」

 

「その話でしたら、是非、私もお聞きしたいですね。」

 

「……………。」

 

その声に反応して、輝が恐る恐る後ろを振り向くとそこには……………

 

(やっぱり。)

 

彼の予想通り、車椅子に乗った少女『風花 真白』とその車椅子を押す女性、二三の姿が有った

 

 

さて、そうして輝は再び理事長室へと連行されて行くのだった…原因は一つ、『龍騎』の事だろう

 

舞衣達、対オーファン部隊の面々も一緒に居るので逃げたくても逃げられない…もっとも、逃げる気もないが…ここまでくれば覚悟を決めた

 

そして、事実『仮面ライダー』の力を隠していたくて、黙っていた訳であるのだから、ある意味それも当然といえるだろう…

 

(…嘘を混ぜた事実でも話すか…。つーか、最初からお前の事、話した方が良かったか…ドラグレッダー?)

 

『…………。』

 

そう心の中で己の相棒へと問いかけるが、ドラグレッダーから帰ってきたのは無言のまま『自分に聞かれても困る』という様な態度だけだった

 

『………。』

 

さらにドラグレッダーからは『心中お察しする、何も出来ない自分を許してくれ、主よ』と言うような視線まで向けてきた

 

(…ありがとう、ドラグレッダー…後は自分で何とかする…。)

 

最後に『がんばってくれ』と言わんばかりの視線を輝へと向け、ドラグレッダーは顔を逸らした

 

「それでは、先程楯さんが使用されていた力についてなのですが…話していただけますか?」

 

「…ええ、『仮面ライダー』の力の事ですね。あれは…。」

 

輝は先程、スライムオーファンの出現前、最初に理事長室に呼ばれた直後、ドラグレッダーの姿見られたと知った時から考えていた…ライダーの事と、自分の過去に似せた嘘を話す…ただ、カードデッキの持つ汎用性の一点だけは迷ったが

 

「…あの姿はあの時名乗った通り、『仮面ライダー』…『ミラーワールド』と呼ばれる世界に存在するモンスターと契約して、このカードデッキを使って変身した姿です。…そこでオレは《龍騎》と名乗っていました。そして、あの龍…ドラグレッダーがオレと契約したモンスターです。」

 

まずは前提としてライダーの事を話す…ポケットの中にある二つのカードデッキの一つ、黒字に金で龍の紋章が書かれたカードデッキを取り出して見せる

 

万が一の際に備えて、彼のもう一つの手持ちのカードデッキ、『騎士-ナイト-』のデッキは隠しておく事にした

 

「…カードデッキですか? 一体誰がそのような物を…何のために…?」

 

真白の言葉に周囲に居る舞衣達も聞き耳を立てている…気になるのだろう、オーファンを圧倒した力を与えた、カードデッキを誰が作り出したのかが?

 

「…オレにカードデッキを渡した奴、オレの物を含め13のカードデッキを作り出した奴はかん…いえ、13人目のライダー《仮面ライダーオーディン》…そう名乗っていました。」

 

神崎の名を出そうと思ったが慌てて《オーディン》の名を言う、そして、一呼吸置き、改めて神埼がカードデッキを作り出した理由を告げる

 

「奴がそれを作り出した目的…それは…………奴を倒した今になっても分かりません。ただ、オレを含め奴を除く12人はミラーワールドに閉じ込められ、カードデッキを渡され、助かりたければ他のライダーと戦い倒せ、勝ち残った一人はミラーワールドから出すと同時に願いを叶えると言っていました。」

 

『The・作り話』…一応、一部真実は入っている、上手い嘘を言うには多少、真実を混ぜるといいのだ

 

別にミラーワールドに閉じ込められてもいなければ、そこから出るのにライダーを倒す必要もない

 

それに知っているが、『18歳-プロローグ参照、輝達の世界では2年ほどタイムリミットが早くなりました-の誕生日になると現実世界に存在できなくなる優衣に『新しい命』を与える事である』と言う神崎の願いは言わない…そんな事をしなくても助ける希望があるとは言え、『兄と妹』と『姉と弟』の違いは有っても舞衣の立場はどこか神崎に近いのだ

 

そんな彼女の事を気遣って、輝はあえてその事は告げなかった…

 

「…そこでオレは戦い、勝ち残り…オーディンを倒しました…多分。」

 

最後に『多分』と一言だけ呟く…実際、あの時、オーディンを倒したかどうかは定かではなく、己の願いが叶ったどうかは今の自分は知る由もない

 

覚えているのはオーディンと龍騎の二人のライダーによる、最後の『ファイナルベント』同士のぶつかり合いまでで、その直後の意識は無いだから、彼には『多分』としか答えようが無い

 

最後の龍騎のファイナルベントは自分の契約モンスター以外の二体のモンスター-ドラグブラッカー、ダークウイング-の力も借りた一撃…それはサバイブでは無く、ボロボロだったとは言っても、その破壊力は確実に『ドラゴンファイヤーストーム』を上回っていたはず

 

もっとも…何故、カードデッキを回収したダークウイングだけでなく、ドラグブラッカーまで力を貸してくれたのかは疑問だが

 

「…以上が、オレの体験した…『ライダーバトル』の説明です。これ以上の事となると…ゲームマスターであった《奴》ならともかく、オレには分かりません。」

 

多少、嘘は入っているが…輝は驚きで言葉を失っている周囲を無視して話を進める

 

「あとは…ライダーについてですが…。このカードデッキを鏡かそれに類似する物に向けて、現れるベルト…それに差し込むことで変身することが出来ます…。」

 

あとはライダーについてのこれまでのライダーバトルで知った記憶を《仮面ライダーがミラーワールドにいられる時間は9分55秒》と言う点を除いて話す…嘘との辻褄を合わせるために…

 

「まあ、オレの持つライダーの能力自体は…彼女達の様に生まれつき持っている物じゃなくて後から与えられた…『特技』になりますね。」

 

「…なるほど、大体の事はわかりました。楯さん、もう一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「いいですよ。」

 

「オーファンを倒された時に使われたカードの様な物も、ライダーの能力の一つなんですか?」

 

「ああ、あれは『アドベントカード』と言って、モンスターとの契約や武器や相棒―契約モンスター―の召喚と必殺技の使用に使うカードです。龍騎は他のライダーに比べて近距離と中距離の戦闘が得意な攻撃型になりますね。まあ、何枚か使っていなかったカードもありますけど…さっきのオーファンとの戦闘に使ったカードが手持ちのカードのほぼ全てです。」

 

『相棒=契約モンスター』 …他のライダーの大半がそんな事は微塵も思っていないだろう、その辺の考え方は流石、輝と言うべきだろうか

 

本人曰く『いや、オレは何度もドラグレッダーに助けられたし』や…契約破棄に関する事も『え? そうなのか?』と他のモンスターを倒さずに居た期間が有ったにも係わらず一度も襲われた事が無い…流石、忠龍『ギャウ(応)。byドラグレッダー』

 

さて、それはさておき…手持ちのカードについては、彼の言葉に何一つ嘘はなく、輝は真実しか言っていない

 

ただ単に戦闘前に聞いた声の主を警戒して、『ファイナルベント』以上に切り札となる『サバイブ―烈火―』の存在について黙っているだけだ

 

『嘘は言っていない=全てを語っている』ではないのだ

 

まあ、真白については信用してはいるが完全に信頼しきってはいないと言った所だろう…『向こうにも自分と同じように何か隠している事がある』と感じ取っていて、多少警戒している

 

『最近、疑い深くなったな~』等と思う事が多い輝だが…ライダーバトルの最中…本編の『城戸真司』同様、味方のふりをしたライダーに何度か不意打ちを受けているのだから、それも無理も無いと言える

 

もっとも、不意打ちされた後で、しっかりと反撃の一つや二つはしている所が真司と輝の大きな差ではあるが

 

「そうですか。それでは、改めてお願いします。貴方の御力を私達に貸していただけませんか?」

 

「…ええ、喜んで…。すでに出来ていますから…戦う覚悟は。」

 

どこか今までの彼からは想像出来ない冷たささえ感じられる程、無表情な輝の声が理事長室に響いた

 

「そう言っていただいて助かりました。」

 

真白のその言葉に『あれを見ろ』と言いたげなドラグレッダーに気が付き、ドラグレッダーが尻尾を指している方に視線を向けるとそこには…

 

『対オーファン部隊出勤表』と書かれた紙の張ってあるボードがいつの間にか運ばれていた

 

「なんでさ?」

 

思わずそう呟いてしまう、輝は気が付かなかったが…舞衣達もそれを見て呆然としていた

 

リーダー『出張中』

 

それはまだいい…輝たちが呆然としているのは…後から張り足された様に貼り付けられていたのは…

 

副リーダー『楯 祐一』

 

であった

 

「何故に…?」

 

「ええ、貴方なら安心して皆さんの事をお任せできますから。」

 

「いや、オレは個人戦はなれているけど指揮とかは…。」

 

戦士として優秀でも指揮官として優秀とは限らない、それを利用して逃れようとしたが…

 

「貴方以外に安心してこの役目をお任せする事の出来る《実力》を持った人は御座いませんので。」

 

どうやら、逃げ場は無いようだ…《楯祐一》、又の名を《仮面ライダー龍騎》…その真名を《霧島 輝》…ここにめでたく、『対オーファン部隊副リーダー』就任

 

 

 

「…余計な権力なんて、要らないのに…。」

 

『ギャウ(まあ、元気だせ、主)。』

 

部屋の隅で落ち込む輝と励ます様に肩を叩くドラグレッダーの姿があったとか…

 

 

 

 

「うわー、大変だね、楯クン。」

 

「…同情するな…。」

 

 

『「「ああ、彼の人生に幸あれ~。」」』

 

 

 

 

 

『大きなお世話だぁー!!!by輝』

 

 

 

 

つづく…

 

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