緋弾のアリア―β―   作:もみもみじ

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《前回までのあらすじ》仙台武偵校からとある少年を求めやってきた少女、水戸 朱里は、その少年を見て失望する。しかし、彼女にはまだ奥の手があり……


第二弾 HSS

 翌日。私はいつも通りに起き、銃器の整備を済ませてから学校へ行った。まだあいつは来ていないらしい。やはり理子の情報通り、あまりエリートという感じではなさそうだ。

 あいつとはクラスが違うのだが、さて、どうやってアプローチするか。いや、むしろどうやってハメる、か。

 あいつの行動に関しての情報は、最強の内通者、理子に協力を得ている。どうやら、アリアがいない時に話したほうがいいらしい。ついでに、レキと白雪、という少女にも注意が必要のようだ。

 さて、あいつがやってくるまでの間、何をしておこうかと悩んでいた所、私はふと、この計画の内容を振り返ることにした。

 あいつを貶め……本気にさせるこの作戦は、言うなれば依頼をこなすことだ。ただ、この依頼はS級のものである。

 現在E級のあいつも、入学当初はS級だったらしい。ならば、大丈夫だろう。と、踏んだわけだ。

 それで、あいつの力量を測る。それが目的だ。

 作戦を振り返終わると、理子からタイミングよくメールがきた。

 さぁ、作戦開始《ミッションスタート》だ。

 

 

 

「…………」

 

 最初に言っておくが、私はこいつとは初対面ではない。だが、いきなり失望した、と言って去ったので、恐らく印象は最悪だろう。初対面の印象が悪いと、響くってのはあながち間違ってないらしい。気をつけないとね。

 まぁそんなこんなで、こう沈黙しているのだ、こいつは。

 

「もう一度言うけど、依頼を一緒にしてくれ」

「いや、そのなんつーか……」

 

 まだ逃げるか。ならば、取っておきの単語を出してやろうじゃないか。

 

「HSS」

「いっ……!?」

 

 思った通りだ。こいつはこれに弱い。なぜなら、こいつはこれを隠しているからな。……理由は納得いくけど。

 

「『性的興奮』をトリガーとし、一時的に能力をあげ――――」

「な、なんで知ってんだよ!」

 

 ……こいつの慌てようは何だか楽しいな。もうちょっといじめたいものだ。

 

「理子から聞いた」

「理、理子のやろぉ……」

 

 恨むような目で、今この場にいないロリ少女の名前をしばらくあげていたが、懲りたのか、今度は私の方を見た。

 

「……解った。依頼でも何でも受けてやるよ。だから、そのことは秘密にしろ。特に、アリアな」

「何で?」

「あいつには、このヒステリアモードのことを教えてないからな。教えたその日には、俺の身体は風穴だらけだ」

「ふ~ん……まぁ、解った。じゃ、来て」

 

 思った以上にあっさり来てくれた。まぁ、アリアがうんたらとかは、また次の機会に詳しく聞かせてもらおう。

 では、早速依頼と行きますか!

 

 

 

 さて、作戦フェイズ2だ。

 今回の依頼は、『殺人グループの確保』と一見簡単そうに聞こえるが、この殺人グループは約60年の罪を持つ大罪人集団だ。

 それだけ強い。情報によれば、武偵10人がかりでも返り討ちにあったらしい。尚且つ、死者も出たとか。非常に強敵だ。正直、私とこいつでは手数的には厳しいと思っている。

 別に、私とこいつで勝てるとは思っていない。ピンチになれば、応援要請はする。面子はアリア、理子、情報科(インフォルマ)のジャンヌ辺りがいいだろう。

 ついでにジャンヌという人間は、私はよく知らない。理子からのオススメで教えてもらったのだ。彼女は情報科でありながら超能力が使えるらしい。これほど心強い味方はいないだろう。

 

「ここか……」

 

 情報科からの情報で場所を把握できていた私達は、殺人グループの拠点となっている廃工場の近くのコンテナで張っていたが、どうやらあいつが標的を見つけたらしい。

 

「水戸。最初に言っておくが、今の俺は役に立たないぞ」

「それぐらい知ってる。でも、どうにか役に立ってよ」

 

 ……無理難題、かもしれないが。

 でも、こいつはHSSじゃないと役に立たない。意地でもなってもらわないと。

 

「い、いきなり難しいこと言うな……。第一、俺はヒステリアモードにはなりたくない!」

 

 それは困る。こっちの命にも関わる事項だ。

 

「死にたいの?」

「そういうわけじゃないが……。だが――――」

 

 こいつが何か言おうとした瞬間、遠くから銃声が聴こえた。その銃撃は近くのコンテナに当たり、銃弾は砕け散った。

 バレた? いや、バレるには距離が離れすぎている。いや、敵は集団。それほど眼は多い。だが、ここなら相手とは死角のはず……。じゃあ、何故……。

 

「あぶないっ!!」

「きゃっ!?」

 

 突然の言葉と抱きつきという行動で、私は悲しくも女々しい声を出してしまった。

 しかし、その避けた私の頭上を銃弾が通り抜けていく。間一髪であった。こいつに助けてもらわなければ……。

 い、いや、これは失態だ。まさかこいつに助けられるとは。

 

「――――なるほどな」

 

 私が何かモヤモヤした感情で苦しんでいる中、先程私を助けてくれたこいつは冷静に敵の情報を分析をしていた。

 

「監視カメラで敵を探ってそこを撃ち抜いていく、というわけか……」

 

 確かに、よく見るとコンテナとコンテナとの間に監視カメラが複数存在した。何故、気づかなかったんだろう。

 

「射的能力は相当だな……。監視カメラで空間的に相手を把握して撃ち抜くなんて、レキでも厳しい芸当だな」

 

 私は未だに抱き着かれたまま動けないでいた。もがこうとするが、体が思ったように動かない。

 って、こいつ、何気に体術をかけている。でも、痛くはない。

 

「落ち着いてくれ、水戸。ここは監視カメラからは死角の場所に位置しているんだ。だから、動いたら君を傷つけてしまう」

 

 と、私の頭を優しく撫でてきて、気持ちを落ち着かせてくる。うっ……、悪いとは言えない。

 それよりも、……明らかにおかしいと思っていたが、やはりHSSになっている。しかしなんだろう、反抗感情が全然湧かない。言うことを素直に聴いたほうがいい感じする。

 

「今からシザースをする」

「し、シザース?」

 

 シザース。英語ではハサミという意味だが、武偵の中では挟み撃ちを意味する。

 だが、これは基本、二対一で行う戦法だ。集団であるやつらには、あまりにも不利すぎはしないだろうか。

 

「先程からの銃撃は、たった一人によるものだ。これほど銃声が鳴り響いている、他の仲間は一切手を出さないのはおかしい。となると、敵は一人であると考えたほうがいい」

 

 確かに。こいつの言葉には一理ある。というよりも、恐らく正しい。

 

「水戸。君の銃は自動拳銃のデザートイーグルだったよね」

「え、う、うん」

 

 未だに抱き着かれたままでいるために、心臓の鼓動がおさまらない私をよそに、こいつは話を勝手に進めていく。

 しかし何だろうか? 悪い気が全くしない。逆に、こいつについていかないといけない気がする。

 

「情報科の情報によると、敵は高性能の防弾チョッキを着ているらしい。そのため、君を切り札にする」

「……た、確かに、私のデザートイーグルは威力が高くて防弾チョッキからでも衝撃は与えられるけど……。でも、」

「俺のベレッタは少し改造していてね。最悪の場合、武偵憲章を違反してしまう」

 

 武偵憲章。それを違反すること、即ち殺人。殺人を犯してはならないのが武偵である。それを私のせいでさせるのは……駄目だ。

 私はそう思い、こいつを振り切って銃を構えた。どうやら、体術を途中からかけていなかったようだ。

 だ、だが、まだ心臓の鼓動がおさまらない……。大丈夫なんだろうか。

 

「こっから推定80メートル。二手に別れて一気に狙う。いいかい?」

 

 私は無言でコクンと、頷いた。そのだな……どうやら私もスイッチが入ったらしい。

 私がこいつと似ている部分。それは、HSSに近い力を持つことを指している。

 名はメサイアコンプレックス。略してMCだ。

 とある対象を守りたい。救いたい。助けたいという感情によって発動するもので、HSSと互角の能力を得ることができる。と、科学的には言われている。

 今回は、こいつに死んでほしくないと思って発動したらしい。不服だが、これで勝つ要素は増えた。

 

「3、2、1……行け!」

 

 コールで行動を始める。あいつは右側、私は左側からだ。

 作戦としてはフィニッシャーは私らしいのだが、殺すのではなく、あくまで逮捕なので左から撃って気絶させることになったのだ。

 銃弾が横腹を掠める。しかし、防弾性の制服を着用しているので外傷はない。

 私は銃を構えつつあいつを見た。恐らくHSS状態であるあいつは余裕の笑みを浮かべつつ、銃弾を避けていた。いや、たまに銃をバタフライナイフで斬っている。ナイフでよくやるよ。

 

「水戸、行くぞ」

 

 あいつの声が聞こえた。私はそれに従い、まだ幾つか弾が残っていたマガジンを捨て、リロードする。

 犯罪者の方も弾を充填していた。しかし、その狙撃銃は意味を成さなくなる。狙撃手の弱点は近距離戦だ。狙撃は遠くからでしか意味を成さない。なので、接近戦にさえすれば、勝機はある。

 だが、私達の作戦は一瞬の判断によって破れた。

 

 

 なぜ、向こうが狙撃銃しかないと考えたのだろうか?

 なぜ、他の武器を持っていないと判断したのだろうか?

 

 

 そう。相手は狙撃銃だけではなかったのだ。その左手には、ワルサーが存在していた。

 敵は私の頭を目掛けて撃ってくる。ヘッドショット狙いっ! 万事休すか。私はせめて相打ちを狙って敵の胴を撃とうとした。

 しかし、その瞬間、私の眼前まで来ていた銃弾があらぬ方向へ飛んでいったのだ。常人なら解らない。 だが、メサイアコンプレックスを発動している今は、その弾道、そしてそれをした原因が解った。

 

「遠山……」

 

 遠山キンジはそのベレッタで一瞬のうちに敵から標準を変え、私の眼前に迫った弾丸を撃ったのだ。弾丸撃ち(ビリヤード)。HSSだからできる芸当。理子が前に言っていた、こいつの技の一つ。

 しかし、そこで唖然としてしまっていた私は、銃で撃つのをできていなかったことに今更気がついたのだった。遠山には撃ち終えたベレッタ。敵には装填済みの狙撃銃。形勢は逆転。

 

「遠山!」

 

 私はいつのまにか叫んでいた。それと同時に狙撃銃の引き金が引かれる。銃弾は真っ直ぐに遠山の頭へ飛んだ。

 しかし、遠山はそんな状況下でも笑っていた。まるで、その状況すら想定していたように。

 

「っ!!」

 

 遠山は瞬間的に身体を反らし、ヘッドショットを回避した。そして、その銃弾を挟み込むように二本の指で銃弾を挟み込む。そして、その銃弾の進行方向を約150度変更させた。

 銃弾は真っ直ぐに狙撃手の胴体の当たる。防弾チョッキのお陰で肉体的損傷はなさそうだが、それでも衝撃は強いようで、敵は腹を抱えながら倒れ込んだ。

 勝利した。そう、こいつに助けられて。

 遠山キンジに助けられてだ。

 

 

 

「ふーっ」

 

 遠山はベレッタを直しながら息を整えていた。恐らくはHSSが解けたのだろう。

 周りに気配はない。私はそれでも警戒し、銃を構えながら罪人を逮捕し、ケータイで情報科へ連絡する。

 一通りのことをしたあと、遠山の方へ目を向ける。

 

「遠山……」

「ん?」

 

 ありがとう。

 と、伝えようとしたが、舌が上手くまわらなかった。私は諦め、一つの疑問をぶつけた。

 

「あの銃弾を指で跳ね返すのはなに?」

「あれか? あれは/(スラッシュ)って言って、指で銃弾を跳ね返す技だ。痛いけどな」

 

 なるほど。納得した。あんな命がけの技、よく考え付くものだ。

 

「んじゃ帰るか」

 

 遠山は、そうつぶやくように言ってこの場から立ち去ろうとした。私も彼のそんなつぶやきを返そうとした。

 

「そうね。遠や――」

「ん?」

「い、いや。何でもない」

 

 今更ながら、こいつのことを遠山と呼んでいたことに気がついた。

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