現在時刻、午後2時をまわった。私はそんなに来たくはない超能力育成科(SSR)に来ていた。ここは胡散臭いし、調子が狂う。でも、来ないと行けない用事があった。
「失礼します」
私はそう言いながら扉を開ける。中には巫女服を来た黒髪のロングヘアーの少女と、白い髪でポニーテール状ににしている眼鏡をかけた綺麗な少女がいた。
「来たか」
白い髪を持つ少女――――ジャンヌはそう短く言った。私とジャンヌは初対面だ。理子から色々話は聞いていたが……美人だ。女として悔しい。
逆に巫女服少女――――白雪とは何度か顔を会わせている。先日、遠山に学校の案内という意味で同行してもらった際、刀を持って襲われたのが印象深い。……本気で殺されると思った。
「何でここなの? あと、何で白雪?」
個人的な話だが、できればこの二人――――胸が大きい組とは会いたくなかった。自分の貧相な胸と較べてしまい、テンション下がる。アリアと較べてならまだ勝てる(しかも余裕で)が、この二人と比べてしまうと……はぁ。
巨乳二人と微乳一人……欝だ。
「いや、深い意味はない。ただ、さっきまで話し合いをしていてな」
「超能力の話を少ししていまして……」
なるほど。理子から話を聞く限り、ジャンヌは情報科(インフォルマ)に入っているが、超能力を使えるらしい。しかも、白雪と互角――――それ以上とも聞く。相手にしたくない相手だ。
「そう。んで、話って?」
「この間、お前と遠山が捕まえた犯人が吐いたんだが、他のグループの拠点が判明した。複数あるらしく、手分けで一気に落とす作戦を立てているのだが、お前にも参加してほしい」
なるほど。さすが尋問科(ダギュラ)と言うべきか。まさかこんな早くにも拠点を吐かしてしまうなんて……。あぁ、怖い。
とりあえずそれはいいが、ジャンヌが遠山の名を出した瞬間、肩をビクリと震わせたぞ。こ、怖い……。何か、私へ私怨でもあるのだろうか。うーん……何かしたっけな。
「それは、まぁ、いいけど……やはり応援がほしい。いい?」
「元よりそのつもりだ。メンバーはお前と遠山だ」
またビクリと白雪が反応する。殺気が怖い。今や蛇に睨まれた蛙の気分だ。
「な、なんで遠山なの?」
アリアとかいるだろうに。あと、ここの殺気放ちまくりの巫女も。
「一度戦果をあげているからだ。他のメンバーも考えないわけではないが、やはり、共犯者なら、最後まで同じメンバーのほうがいいだろう?」
確かに、依頼が延長しているのなら、そのままのメンバーがいいだろう。でも、前回の私と遠山のコンビネーションでは危険性が高い。やはり、遠山を活かせるメンバーのほうがいいのだ。
「アリアか、理子を頼みたい。連携しやすいし」
私も遠山も知っているメンバーだ。この二人がいれば、心強いのだが……。
「二人とも駄目だ。アリアは今回、別の場所で戦姉妹(アミカ)が所属しているグループと別事件の犯人を捕まえることになっている。理子は、何か用事があるようで、参加不可だ」
……この間のあれか。
私はつい先日、理子からコスプレの大会に参加しないか、と言われた。私は即刻拒否したが、どうやら自分で参加するようだ。
というより、依頼よりもコスプレを優先するって……。彼女も変わっている。
「ジャンヌは理子の用事知ってる?」
「一応、な」
「……ジャンヌは参加しないの?」
ふと、そう頭で考えたことを口走ってしまった。
すると、ジャンヌは異常なほどに汗をかき始めた。その顔は、羞恥というか、なんというか……判断しがたい表情で、顔を真っ赤にしていた。そして、その行動が異常に乙女らしい。
「い、いや。わ、私は、む、むむむ無理だ!?」
何でそこまで動揺するのだろうか。
動揺は興味がある、と捉えることもできるのだが、まぁ、彼女に限ってはないだろう。
……と信じたい。彼女のイメージのために。
「私は情報科だからな! 無理だ!!」
いや、それは理由になってないよ。しかも、そこまで大声を出さなくても。
そして、何を話しているのか全然解っていない白雪は、うーっ、と唸っていた。どうやら、先程の会話で、どんな話をしていたか当てようとしているらしい。
白雪には無理だと思うよ。ジャンヌとはまた違った気品を持っているし、なんか世間知らずな印象を受けるし。そんな彼女から、コスプレという単語が出るかどうか。
「しかしどうする? お前と遠山だけでは厳しいだろう」
ジャンヌはこほんと咳払いをしたあと、そう言った。その表情からは羞恥は見られない。この切り替えの速さ。私にも譲ってほしいものだ。
さてどうするか……。戦力的にはあと二人いてくれると嬉しいのだが。
そういえば、遠山には妹がいたな。彼女に力を借りるのも一個の手か。
いや、だが連携がとれるかは不安だな……。遠山は私に合わせてくれるが、その子が合わせてくれる保証はない。
となると、どうするか……いや。
「ジャンヌ。その作品の決行日は、いつ?」
「今日……と言いたいが、こちらも準備がいるからな。明日になるだろう……」
「了解。それじゃ、メンバーはたぶん集まる」
私はそれだけ言うと、そそくさとその部屋から立ち去った。ジャンヌが何か言おうとしたが、私にちゃんとした考えがあると解ったのか、何も言わずに私が立ち去る姿を見ていた。
そして、相変わらず白雪は何の話をしていたのか、考えていた。
「さて」
SSRと巨乳部屋から退散した私は、すぐさまポケットの中に入れていた携帯電話を出す。そして、私はとある電話番号を打ち、耳に当てる。
「お久~。元気にしてるー?」
「せ、先輩っ!?」
いきなりの電話に、相手はとても驚いているようだった。
まぁ、彼女らに何も言ってなかったからなぁ……。
「ど、どこにいるんですかっ!!」
「んー、東京の武偵校に来てる」
「えぇっ……あ」
そう言うと、電話の相手はすごく驚いたようで、一瞬耳障りな音が聞こえた。
どうやら、携帯電話を落としたらしい。はぁ、我が妹分ながら、ドジやってるなぁ。
「そうそう。私、使ってた武器、一振りだけ忘れてたんだ。だからさぁ……持ってきてよ」
「え、あ、はい。この無銘の刀ですね……え?」
さて、本題に入る。
としたのだが、どうやら相手が意味を理解したらしく、しばらく絶句していた。代わりに、もう一人のほうが出てくる。
「代わりました」
「話聞いてたよね? うん。お願い。あなた達の力が必要なの」
「……それはそちらに行け、ということですか?」
「そうね」
「……うぅ」
そう言うと、電話の相手は唸り声を出し始めた。その声を聴いて、相手の正体がやっと掴めた。
はぁ、この二人は本当に見えないと扱いに困るわ……。声の違いは判らないし、携帯電話は二人で共用だし。ちょっとした仕草でしか判別できないのである。あぁ、厄介厄介。
さて、どうやら結論を出してくれたらしい。
「解りました。とりあえず、無理やりにでも説得させます」
ふむ、納得してくれたようだ。やっぱり妹分2の方が、話が通りやすくて楽だなぁ。さすが、情報科と尋問科をしていただけはある。
まぁ、そこから強襲科(アサルト)に引き抜いたのは私なんだけどね。
「では、いつまでにそちらへ行ったらいいでしょうか?」
「明日」
「え?」
「明日」
「……もう一度お願いします」
「明日。トゥモロー。ネクストデイ」
そう言うと、また唸り声を出し始めた。まぁ、いきなりで悪いことは解っているんだけどね、でも、頼れるのってあなた達しかいないのよね。
私が戦闘上、最も信頼できる仲間である、戦姉妹しか。
「はぁ……。解りました。明日、東京へ行きます。手続きなど、早急にお願いしますね」
「解った。無理なこと、ごめんね」
「解っているのなら、言わないでください。でも、またお願いします」
そう言って、通信が途切れた。やっぱり、この一方的に切るのは、白の方だね。
さて、ならば私も準備しなくちゃ。大事で、大切で、大好きな後輩たちのためにも。
「さ、準備しますか」
そう言って、私は教務科(マスターズ)に向かうのだった。
……怒られないといいんだけど。