イノチの理解者は猫と寄り添う   作:shin-Ex-

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今回は私の小説の原点となるキャラクター『一夢命』をベースとしたキャラクターを主人公としたハイスクールD×Dの作品を執筆いたしました

完全に私の趣味で書かれたものですが・・・・・どうかお付き合いください

それでは第一話・・・・・どうぞ


かくして少年は旅に出る

日本の山奥の小さな集落。そこには人間でありながら仙術を扱える一族がいた。

 

一族の名は『至黒(しこく)』。一族の者は皆、その名に相応しい漆黒の髪と漆黒の眼を持っている・・・・だが、だからこそそれ以外は認められず許されなかった。それ以外の色を持って生まれた者を、一族は災厄を招く忌子として扱い、蔑み、怒りをあらわにしていた。

 

そして今、その集落には存在していた。黒を片方しか持てずに生まれてしまった・・・・・哀れな忌子が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気味が悪い」

 

「その目を向けるな」

 

「禍の種が」

 

聞き慣れた言葉が俺に浴びせられる。蔑む視線と、暴力と共に。

 

それはいつものことだった。黒ではない、月のように淡い黄金の瞳を持って生まれてしまった俺は、ひたすらに彼らから忌み嫌われ、蔑まれ、暴力をその身に受けることが当然のこととなっていた。

 

全身を殴られる。石を投げられる。それも一人からではなく何人もの人から。男性も女性も・・・・家族であろうと関係なしに、皆が俺を痛め付ける。全身が傷つき、血が流れ、骨もきしんでいる。だが抵抗はしない。抵抗なんてできるはずもない。このような事態に陥ってしまっているのは、俺が黒い眼を持って生まれることができなかったからだ。

 

黒の髪と黒の眼。俺の一族はそれを双黒と呼び、双黒であることに誇りを抱いていた。それは、この集落の開祖の血と力を引き継ぐ証だからだ。だが逆に、双黒を乱すものは災厄を招く忌子として扱われる。かつて、双黒でない者が一族を脅威に晒してしまったという歴史的事実が多数存在しているかららしい。

 

だから俺へ向けられるこの仕打ちは、暴力は正当なものであり・・・・・この一族に生まれた俺には、それを受け入れる義務がある。幸いなことに、俺にはその全てを受け入れることができる力が宿っているのだから。

 

「相変わらず抵抗はなしか・・・・・それでいい。お前はただ、受け入れていればいいんだ」

 

目の前にいる男が・・・・・皆を先導していた俺の兄が農作業用の桑を手にする。それを俺に振り下ろそうというのだろう。本来凶器ではないものだが、それでも勢いよく振り下ろされれば俺の肉をえぐるには十分な代物だ。けれど、別に構いやしない。それもいつものことであり、慣れたことであり・・・・・どうせすぐに治ってしまうのだから。

 

兄さんは手にした桑を大きく振り上げ、俺に向かって振り下ろす。だが・・・・その桑が、俺の体を抉ることはなかった。白銀の閃光が視界を掠めるのと同時に桑は切断されてしまった。

 

「やれやれ・・・・・仙術を使う一族がどれほどのものか見に来たというのに、居たのは到底人とは思えない下衆の集団・・・・・マシなのは一人しか居なさそうだ」

 

覚えのない声が聞こえてきた。声のする方へ振り向くと、そこには・・・・仰々しい槍を手に持つ男がいた。

 

「な、なんだあんたは?」

 

「通りすがりの英雄志願者・・・・・とでも言っておこう」

 

「英雄志願者?まあなんでもいい・・・・よそ者が関わってくるな。これは僕たちの事情なんだからな」

 

「そうはいかないな。確かに俺は君たちからしたら事情も知らないよそ者だが・・・・・だからこそ目の前で起きてる惨状を英雄を志す者としては・・・・・いや、それ以前に人として見過ごしてはおけない」

 

男は兄さんに槍を向けながら言う。笑みを浮かべてはいるが確かな殺気を感じており、それは兄さんだけでなく俺を除く周りの人達にも向けられている。直接向けられているわけではない俺でも寒気がするほどだ。皆の恐怖は相当なものだろう。

 

だから・・・・・見過ごすわけにはいかない。

 

「・・・・・待ってくれ」

 

俺は男の傍まで近づき、今にも槍を振るおうとする腕を掴む。その隙に、兄さん達はその場から一目散に去っていった。

 

「なんのつもりかな?一応俺は君を助けようと思ったのだが?」

 

「そのことに関しては感謝している。けど皆は同じ一族の人間なんだ。だから・・・・・皆が傷つけられるのは見たくない」

 

「同じ一族の人間だから、か。たったそれだけの理由で庇うとは理解に苦しむ。傷つけられているのは君だというのに」

 

「俺は・・・・慣れているからいいんだ。傷もすぐに治る」

 

そう・・・・・俺はいいんだ。あれはいつものこと。傷もすぐに治る。現に先程まで殴られたり石を投げられて付いた傷はとうに癒えていた。

 

「治るからいいというわけではないと思うが・・・・・まあ、君がそれでいいというならこれ以上とやかく言っても仕方がないな」

 

男は殺気を収めた。もう兄さん達を追うこともないだろうと思い、俺は手を離した。

 

「それにしても、本当にこの短時間で傷が治ってしまうとは。桑を振り上げたとき全く動じていなかったということはあれで体を抉られようともすぐに治っていたのかな?」

 

「まああれぐらいなら・・・・・多分頭を潰されたり、全身を塵も残らないぐらい消滅させられでもしない限りは大抵の傷はすぐ治る」

 

「・・・・・驚いたな。予想の斜め上を行く回復力だ。だが・・・・・・だからこそかな」

 

男は俺の回復力の異様さに驚いていたようだが、すぐに妙に納得した顔をした。

 

「一つ聞こう。この集落の人間は皆君のような回復力を有しているのかな?」

 

「いいや。大人から子供まで一族の皆は例に漏れず仙術を使うことはできるが、俺みたいな回復力を持ってる人はいない。俺は生命力が異様に高いらしくて・・・・・仙術も相まってあそこまでの回復力があるらしい」

 

「そうか・・・・・だとしたらやはり君はここに居ない方がいいだろうな」

 

「・・・・・え?」

 

俺が・・・・・ここに居ない方がいい?

 

「どういうことだ?」

 

「彼らが君に対してあのような仕打ちをするのは、少なからず君に原因がある」

 

「それはわかっている。俺は忌子だ。忌み嫌われるのは当然の・・・・」

 

「いや、そうじゃない。正確にはきっかけはそうかもしれないが・・・・・あそこまで悪化させる原因を作ったのは君なんだ」

 

悪化させる原因・・・・・こいつは一体何を言っているんだ?意味が・・・・・わからない。

 

「仙術は扱いを間違えれば邪気や悪意をも取り込んでしまい、そう言った負の感情に飲まれてしまうことがあるという。俺は彼らが君を平然と蔑み、傷つける原因はそこにあるのだと思う」

 

「忌子である俺への憎悪や悪意に皆飲まれているっていうことか?」

 

「ああ。だが、さっきも言ったように忌子であるというのはきっかけだ。あそこまで悪化させる原因を作ったのは君のその回復力にあると推測できる」

 

「なに?」

 

「いくら傷つけても傷つけても君はすぐにその傷を治してしまう。いくら仙術使える一族だからといって、そんな君は彼らからすれば恐ろしく見えてしまうのだろう。そしてそれだけならまだしも、君はその状況を慣れてしまうほどに平然と受け入れてしまっている。普通ならとうに精神が崩壊していてもおかしくないというのに・・・・・はっきり言って常人では考えられない恐ろしいことだ。初対面である俺も、君に対して僅かに恐怖心を抱いてしまっている」

 

そう・・・・なのか?あの状況に慣れてしまっている俺は異常なのか?俺はただ、皆が望むままに抵抗せずにいたのに・・・・・それは間違っていたのか?

 

「君に対する恐怖心は悪意をより増長させてしまったのだろう。普通なら良心が働いてあのような暴力行為に走ることなんて無いはずだ。だが、彼らは仙術使いであるがゆえに、強すぎる恐怖心、悪意に飲まれてしまっている。少なくとも俺の目にはそう見えた」

 

「・・・・だからここに居ない方がいいって言うのか?俺が皆を・・・・・狂わせるから」

 

「そうだ。君がいるから、彼らは平然と非道に身を染める。今はまだ、その対象が君だけで済んでいるが、いずれ君以外の誰かが被害に遭う可能性も十分にある。自分を傷つけるものにさえ情を向ける君に、それは果たして耐えられるかな?」

 

「・・・・・・」

 

俺が居るから、皆悪意に飲まれる。そしていずれは俺以外の誰かが・・・・・

 

けど・・・・俺が原因なら俺さえいなければ皆が悪意に飲まれることはない。こいつの言うとおり、俺がここに居なければ・・・・・けど、どんな仕打ちを受けようとも、ここは俺の故郷だ。ここには家族が、同じ一族の仲間がいる。簡単に離れることなんて俺には・・・・

 

「俺の言うことを理解しているようだが、それでも悩むか。まあ、その気持ちは全く理解できないわけではないが・・・・・・悩むにしても早く答えを出したほうがいい。こうしている間にも、彼らは悪意に飲まれつつあるかもしれないのだからな」

 

そう言った後、男は俺に背を向ける。

 

「どこに行く?」

 

「この集落から離れるのさ。俺は君を庇ってしまった歓迎されないよそもの。俺の存在も、彼らの悪意を増長させかねないな」

 

それだけ言い残し、男はその場から離れていく。俺はただ、その背を見ていることしかできなかった。突然現れて、好き放題言ってくれやがって・・・・・だが、あいつは何一つ間違ったことは言っていないだろう。

 

俺のせいで一族の皆は悪意に飲まれてしまう。そして今も飲まれつつある。全ては俺がここに居るから。今は俺に対してだけで収まっているが、いずれは俺以外の誰かに被害が・・・・・・・

 

決して・・・・決して俺に対して優しい人達ではなかった。俺に対して微笑みかけてくれる人は一人たりともいなかった。けれど・・・・それでも悪意に飲まれつつあるといっても、皆は悪人なんかではない。俺さえいなければ、俺が関わりさえしなければ皆普通の優しい人なんだ。

 

・・・・・何を悩んでいたんだ俺は。そんなのもうどうすればいいのかなんてわかりきっているじゃないか。

 

俺は・・・・・この集落から・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら決心したようだね」

 

深夜になって、荷物をまとめて集落を出た俺の前にあの男が姿を現した。

 

「あんた・・・・・どうしてここに?」

 

「君がどうするのか気になってね。一日はここで待っていようと思ったんだ。俺の忠告を聞いてくれたようで何よりだ」

 

「・・・・そうか」

 

今日会ったばかりのの俺の事を気遣ってくれるなんて、随分と良い奴・・・・・いや、とは限らないか。

 

「何か俺に用があるのか?」

 

「・・・・・なぜそう思う?」

 

「なんとなく。俺の事気遣ってくれた気持ちに嘘はないんだろうけど・・・・・それだけじゃないような気がしてな」

 

どうにもこの男が完全に善意だけで動くように思えなかった。恩人とも言える相手にこんなこと考えるのは失礼だろうが・・・・・打算を感じずにはいられない。

 

「・・・・まあ、君の考えは的を得ていると言っておこう。俺は君に用がある」

 

やっぱりか。問題はその用がなんなのかだが・・・・・

 

「聞くが、集落を出るとして君には行く宛があるのか?」

 

「集落から出るように促した奴が言うセリフとは思えないな・・・・・まあ、確かに行く宛があるわけではないが」

 

「ならば俺と一緒に来ないか?」

 

「え?」

 

ふっと笑みを浮かべ、俺に手を差し出しながら誘ってくる。

 

「自己紹介が遅れたな。俺の名前は曹操。英雄派という組織のリーダーだ」

 

英雄派?そういえば英雄を志しているとかなんとか言っていたな。それに曹操って・・・・

 

「その曹操っていうのは、あの三国志の?」

 

「ああ。俺はその曹操の子孫だ。だが、そっちについては今はあまり考えなくてもいい。俺は君を英雄派にスカウトしたいと思っている」

 

俺を・・・・・スカウト?

 

「・・・・何なんだよその英雄派ってのは?」

 

「英雄派は強力な力を持つ人間だけで構成された組織さ。目的は人間だけの力で異形の者達と渡り合うことだ」

 

「強力な力を持つ人間だけで構成された組織か・・・・・なるほど、集落に来たのはスカウトが目的だったということか」

 

「ああ。人間でありながら仙術を使うことができる一族の噂を聞いてね。良さそうなのがいたら誘おうと思っていた。そして俺の目にとまったのが君ということさ」

 

「・・・・俺の回復力か?」

 

「それもある。だがそれだけではない。君の心は、精神は英雄と呼べるほどに強靱であると俺は感じた。少なくとも今の俺では到達し得ない領域だ。その領域に踏み入れた君は組織に必要だと確信している」

 

随分とまあお高く評価してくれているものだな。俺にはそんな価値なんてないだろうに・・・・・

 

「俺を組織に誘うために、集落から離れるように促したのか?」

 

「・・・・まあ、そういう打算もないと言ったら嘘になるだろうな。だが、あの時言った言葉には嘘はない。君があの集落に居るべきではないと思ったのは事実だ」

 

打算もあったが、俺の事を心配していたというのも嘘ではないということか・・・・・まあ、それぐらいのことはわかってはいたが。

 

「もう一度言う。俺は君を英雄派に招き入れたい。俺と一緒に来ないか?俺には・・・・俺達には君が必要だ」

 

再び、俺を誘う言葉を口にする曹操。確かに行く宛のない俺にとって、その誘いは魅力的ではある。どんな打算があろうとも、曹操が諭してくれたことには感謝しているし、今も俺をこうして必要としてくれている。誰かに必要とされるのなんて初めてのことだから、正直嬉しく思う。

 

だが・・・・・

 

「・・・・すまないな曹操。その誘い、()()()()乗れない」

 

俺は、曹操の誘いを断った。

 

「・・・・なぜだ?君にとってそこまで悪い話ではないと思うが?」

 

「確かに悪い話ではない。行くあてがなく、今後の生活の目処さえ立っていない俺からすれば魅力的な申し出だ。何より、お前への恩もその組織に入れば返せるかもしれないしな」

 

「だったらどうして・・・・・?」

 

「俺は集落から一度も外に出たことがない世間知らずだ。だから俺は旅をして、この目で世界を見て、世界のことを知りたいと思っている」

 

「それは英雄派に属していてもできることだと思うのだが?」

 

「かもしれないな。だが、それでは何も知らないまま英雄派の考えに染まってしまう可能性がある。お前たちの都合のいい考え方をするようになってしまうかもしれない。それは避けたいことなんだ」

 

俺はこれまで、為すがままに生きてきて・・・・・それで失敗してしまった。そのせいで危うく一族の皆を悪意に染め尽くしてしまいそうになってしまった。もうそんな失敗はしたくない。だから俺は・・・・自分の目で世界を見て回る。世界を見て・・・・世界を知って見聞を広げなければならないんだ。

 

「別に英雄派の事を悪く思っているわけじゃないさ。曹操がリーダなんだ、きっといい組織なんだと思う。だが・・・・・だからこそ、その組織に入るかどうかはこの目で世界を見てから決めたい」

 

「なるほど・・・・それで『今はまだ』ということか」

 

「ああ。世界を見て回っていれば・・・・きっといずれまた再会するときも来ると思う。だから、その気があるならその時また英雄派に誘って欲しい。確証はできないけど、その時はきっと俺は・・・・・その誘いに乗るだろうからさ」

 

曹操は恩人だ。俺にとって唯一無二の存在だといっていい。だから・・・・今はまだ無理だけれど、そんな曹操の力になりたいと俺は思う。

 

いつか俺も・・・・英雄派に入って曹操を・・・・

 

「・・・・わかった。君がそこまで言うのなら、今回のところは諦めるよ。だけど・・・・いずれ再会したとき、俺は必ず君をまた誘う。その時には首を縦に振ってもらおう」

 

「ああ・・・・そうなることを俺も祈っているよ」

 

そんな未来が・・・・いつか訪れることを。

 

「・・・・それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。急ぐ旅ではないが出鼻からのんびりするわけにも行かないからな」

 

「そうか・・・・引き止めてしまって悪かったな。と、そうだ。行く前に一つだけ聞かせて欲しいことがある」

 

「なんだ?」

 

「君の名前・・・・・まだ聞いていなかった。教えてくれないか?」

 

・・・・ああ、そういえばまだ名乗っていなかったっけか。

 

だが、名前・・・・か。

 

「・・・・(みこと)一夢(ひとつゆめ)(みこと)だ」

 

「一夢・・・・?ああ、そういうことか」

 

俺の名を聞き、一瞬訝しげな表情を浮かべる曹操だが、すぐに納得したような表情を浮かべる。

 

元々俺の名は『至黒命』・・・・至黒一族の人間なのだから苗字も至黒であるはずだった。だが・・・・俺は集落を離れる。二度と変えるつもりはないし・・・・・そもそも双黒を引き継げなかった俺は、その名前を名乗る資格はない。

 

だから俺は『至黒』でなく『一夢』と名乗った。命という名前を合わせて・・・・俺の願いを込めて。

 

「では命・・・・また会おう。その時までにより英雄らしくなっていることを願っておく」

 

「英雄には興味ないんだが・・・・まあ、期待せずにいてくれ」

 

曹操に軽く手を振り、踵を返して俺はその場を去っていく。

 

さて、俺はこれからどうなっていくのかな・・・・?

 

 




さっそくの曹操さん登場。

仕方ないじゃないか・・・・アニメの曹操さんかっこよかったんだから

それでは次回もまたお楽しみに
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