イノチの理解者は猫と寄り添う   作:shin-Ex-

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とうとうコカビエルとの戦いが始まりましたが・・・・戦闘描写はほぼありません

それを考慮して本編どうぞ


恐れられる者

 

そいつはあまりにも異様だった。

 

俺と悪魔、そして教会の戦士との戦いに乱入してきた人間。はじめは人間風情、早々に処理してしまおうと思っていたが・・・・・・それができなかった。

 

あの人間は止まらなかった。槍で何度貫かれようとも、槍を引き抜いて向かってくる。内蔵を損傷しているはずなのにそれを全く感じさせない動きで。

 

ならばまずは動きを封じようと四肢を剣で斬り飛ばしたが・・・・・・それでも止まらなかった。斬り飛ばした四肢は、瞬く間何事もなかったかのように再生した。

 

正直に言えば・・・・・あの人間を俺は恐ろしいと思った。何をしても止まらないあの人間を。そしてなにより・・・・・自らが傷つくことを一切ためらわないあの人間を。

 

どれだけ傷を癒す力があろうとも、痛みはあるはずだ。やつはそれを恐れていない。戦士であるならば、戦士であるからこそ、時に死につながる痛みを恐れなければならないにも関わらず・・・・・奴からは一切の恐れを感じない。

 

一切恐れず・・・・・この俺に立ち向かってくる。拳を振るい、蹴りを放つ。なんでもないような顔をして。息切れ一つすることなく。

 

「何なんだ・・・・・・貴様は一体何なんだ!?」

 

気がつけば、俺はその人間に向かって叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐い・・・・・・恐い恐い恐い。私は命さんの戦いを見て恐怖を抱いた。

 

コカビエルの槍で何度も貫かれる命さん。コカビエルの剣で何度も斬り裂かれる命さん。普通の人間なら耐えられない。良くて気を失うか、悪ければ・・・・・死んでしまう。

 

それなのに、命さんは何事もないかのように振舞っている。貫かれても斬られてもその傷はすぐに癒えてしまっていた。そして命さんはまたコカビエルに立ち向かう。傷つき、傷が癒え、立ち向かう・・・・・さっきから

その繰り返し。

 

「小猫・・・・・彼は一体何者なの?」

 

命さんの戦いぶりを見て、部長が私に尋ねてくる。その声色から恐怖心が伺えた。あんな戦いをする人間を間近で見ているのだからそれは仕方ないと思う。

 

けれど、私には部長の問いかけに答える余裕はなかった。私も・・・・・恐いと感じていたから。

 

それは命さん自身に対する恐怖心じゃない。命さんが平然と自分が傷つく戦いをしてしまっていることに対する・・・・・そんな命さんをこの目にしていることに対する恐怖だった。

 

「命さん・・・・やめて」

 

そんな戦い方はやめて欲しい。傷つくところを見たくない。

 

だって・・・・・だって私にとって命さんは・・・・・・

 

「命・・・さん」

 

頬に冷たいものが伝うのを感じる。

 

気がつけば、私は命さんに向かって手を伸ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに聖書に名を記されるだけあって、コカビエルは強かった。仙術で気脈を乱しているというのになかなか倒れない。いや、そもそも俺の攻撃事態がなかなか当たらなかった。

 

隙なく攻撃するためにコカビエルの攻撃をほとんど躱さずにいるのだが、それでも俺の攻撃の多くは躱される。捨て身とも言える俺の戦い方にコカビエルからは動揺が見て取れるというのにだ。これに関しては戦闘経験の差なのだろうな。

 

率直に言って、コカビエルは俺よりも強い。生命力を活性化させて身体能力を向上させているが、戦闘経験の差は明確。その差があまりにも大きすぎた。

 

(このままやってたら持久戦になるか・・・・・まあ、その方が俺としては都合がいいか)

 

何度も槍で貫かれた。何度も剣で斬り裂かれた。内蔵を損傷したり四肢が飛ばされたりしたが・・・・まあ問題ない。俺はその程度では死ぬことはないし、すぐに傷は癒えるのだから。痛みはあるけれど、この程度の痛みは集落で皆から受けた仕打ちで慣れている。

 

ならばやはり持久戦の方が都合がいい。どれだけ傷つけられようが生命力が尽きない限りは基本的に俺は死なない。そしてこの調子で戦い続ければ・・・・・生命力が尽きるのは一週間といったところだろう。コカビエルがどれだけ強かろうが、そんなに長い期間今のパフォーマンスを維持し続けることなどできるはずがない。

 

俺がコカビエルに勝つには・・・・・現状それしかない。

 

「何なんだ・・・・・・貴様は一体何なんだ!?」

 

顔を動揺に染めて、コカビエルが俺に向かって叫んでくる。いいぞ・・・・それだけ動揺してくれれば俺としてもやりやすいからな。

 

「さっきも言っただろ?俺は悪魔と契約している人間で、これからあんたをタコ殴りにして倒す人間でもあるって。そんなことより戦いを続けようかコカビエル」

 

「・・・・・貴様ごときが俺を倒せるとでも思っているのか?実力は認めよう。身体能力ならば俺と同等で、そして傷を癒す力もあるようだが・・・・・それでも俺と貴様には埋めようのない差がある。貴様では俺には勝てない」

 

「勝てるさ。貴様を倒すまで戦い続ければ勝てる。それが丸一日かかろうが、二日かかろうが三日かかろうが・・・・・俺は貴様と戦い続けるぞ」

 

「ほう・・・・・そこまで戦い続けることができるのか貴様は。それは大したものだ。確かにそれだけの時間をかければ俺を倒せるかもしれないな。だが・・・・・くくくっ」

 

先程まで見て取れたコカビエルの動揺が薄らいでいく。その代わりに、コカビエルからはどこか余裕を感じられた。

 

「残念だがそこまで戦い続けるのは不可能だ。なにせこの町はあと10分もしないうちに崩壊するからな」

 

「なに?」

 

「そういう術式を張っていてな。あと少しでそれが発動する。どれだけ治癒力に自信があろうとも、街もろとも消滅してしまえば貴様とて生きてはいけまい」

 

コカビエルの言うとおりだな。いくらなんでもその規模の崩壊に巻き込まれれば俺でも死ねる。コカビエルからすればその時まで凌げば俺を倒せるのだから余裕を見せるのも当然か。どうあがいてもあと10分弱で俺がコカビエルを倒すのは無理だからな。

 

だったらまあ・・・・・先にそっちから処理するか。

 

「・・・・・これが術式か」

 

俺は校庭に張られた術式に近づいた。どういう原理で張られた術式なのかはわからないが・・・・・

 

「・・・・・このぐらいならまあ、どうにかできるかな?」

 

俺は術式に触れ、仙術で術式の気脈を乱した。どういう原理で張られたものかはわからないが、人為的に張られたものだというなら気の流れというものがある。我流だが、それを乱して解呪するのは俺のおはこ。術式は俺の目論見通り、消滅した。

 

「術式が・・・・・消えただと?」

 

「これで制限時間はなくなったな。存分に戦おう」

 

「貴様、どうやって消した?」

 

「敵であるあんたに、それを教えると思ってるのか?」

 

奴はまだ俺が仙術使いであることに気がついていない。この情報アドバンテージは戦いを有利に進めるには必要なものだ。教えるわけがない。

 

ともかく、これで思う存分戦えるんだ。どれだけ時間がかかろうとも・・・・・必ず倒して見せる。

 

だが・・・・俺が戦いを再開しようとしたその瞬間、俺の動きは妨げられてしまった。背後から俺に抱きついてくる小猫によって。

 

「命さん・・・・・もうやめてください」

 

小猫が震える声で俺に告げてくる。一体どうしたんだ?

 

「もう・・・・嫌なんです。命さんが傷つく姿を見たくありません」

 

「小猫・・・・・俺は大丈夫だよ。たとえ貫かれようと斬り裂かれようと俺は死なない。それは見ていてわかってるだろう?」

 

「そんなの関係ありません!」

 

珍しく、小猫は声を張り上げた。

 

「たとえ死ななくても、たとえ傷が言えるとしても・・・・私は命さんが傷つく姿を見たくありません。命さんが傷つく姿を見るのは・・・・・・・恐いんです」

 

涙を流しながら、俺に訴えかけてくる小猫。

 

俺が傷つく姿を見るのが恐い・・・・・・小猫の言っていることの意味がわからなかった。傷はすぐに癒えるし、俺は死なないのに・・・・コカビエルと戦うには傷つき続ければならないというのに、なんで小猫はそれを恐がるんだ?どうして小猫は涙を流すんだ?

 

わからない・・・・・わからないわからないわからない

 

わからない・・・・けど・・・・・

 

(ああ・・・・・なんか、嫌だな)

 

嫌だった。小猫が恐ることを、小猫が悲しむことをするのが嫌だった。俺のやり方は間違ってないと思いつつも・・・・それでも俺の心は罪悪感で埋め尽くされた。

 

元々小猫を助けるために来たのに、俺は小猫を悲しませてしまっている。恐がらせてしまってる。俺は・・・・本当にどうしようもないな。情けなくて悔しくなる。

 

「小猫・・・・・すまなかった」

 

俺は小猫の頭に手を置いて謝罪する。

 

俺の中にあったコカビエルへの戦意は・・・・・失われてしまった。

 

 

 




ほぼほぼ不死身とはいえ、大切な人が捨て身で傷つくのは見ていて辛いでしょうね・・・・・命さんはそう思ってくれる存在がこれまでいなかったのであまり理解できていませんが

それでは次回もまたお楽しみに!
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