暇だったからキルケー怪文書作った   作:茶鹿秀太

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お 一
ま か
た 月
せ 経ってたわ


脱水症状に負けたキルケー

聞いてくれメディア!

 

私も同人誌? というものを作ろうと思うんだけど、きみのチマチマとした趣味を生かして手伝ってくれないかい?

 

痛っ!? え、なんでキレたのさ!?

 

メディア、きみもいい大人だろう?

 

淑女としてそれはどうなんだい?

 

そんなんじゃきみは結婚すらできないぞ!!

 

手遅れになってからだとダメなんだぞ!!

 

はぁ、はぁ、あぁごめん。思わず熱が入ってしまったんだ。

 

仕方ない、アイシングキュケオーンだ。

 

夏場に効くんだよこれが。

 

さて本題なんだけど、同人誌を作ろうと思うんだ。

 

え、経緯?

 

……必要かい?

 

しょうがないなぁメディアは。魔女のやることなんかに理由を求めるだなんて。

 

ほら、今って世間一般でいうと夏休みじゃないか?

 

勿論魔女業界は年がら年中休日みたいなところがあるから有ってない様なものなんだけどさ。

 

大事なのはマスターだ。

 

私が手に入れた情報によると、マスターはこの後ハワイに行くらしい。

 

そしてそこでは同人誌なるものを頒布するイベントがあるそうな。

 

つまり、同人誌とかいう魔導書を作ればマスターに接客と称して握手とか飲み会とかアフターキュケオーンが可能なんだろう?!

 

最高のイベントじゃないか!

 

まぁそれで黒ひげ船長に聞いたんだよ同人誌どうやって作るのかって。

 

そしたらかつてないほどブチギレられたよ。

特にマスターと同人誌を通して仲良くなろうとした計画を告げたら一番キレてたね。

 

別に良くないかい? あ、ダメ? そんなー。

 

くそぅ〜一回豚にしたから大人しくしてくれるものだと思ったけど、別にそんなことなかったようだ。

 

それでメディア、きみに頼ったという訳さ。

で、同人誌ってなんなんだい?

 

……絵物語?

 

うへぇ冗談だろ?

 

マジ?

 

キュケオーンなら自信あるんだけどなぁ。

 

まぁいいか。これも全部マスターとオフキュケする為だしね。

 

 

※オフキュケ

オフでキュケオーンをするということ。

オデュッセウスが犠牲になった。

オケアノス出版『世界キュケオーン大全』より引用

 

 

 

さて内容だ。

 

やっぱりラブロマンスがいいと思うんだ。

 

ほら、最近はぽっと出の女に誘惑される男を見て悲しい思いをする女性っていると思うんだよ。

 

やっぱりそこは純愛とか、心を通わせ合う人間を描きたいね。

 

メディア。

 

慰めないでくれ。キュケオーンでも対処できなくなるから。

 

まぁそこは大魔女。もうストーリーの構築は出来ているんだ。

 

間違いなく超大作さ。マスターが見れば一撃で私を求めてしまうほどに衝撃作だね。

 

……え、一応聞きたいって?

 

しょおおおがないなぁああメディアは!

 

じゃあまぁ仕方ない。

 

そこまで期待されてしまったら答えてあげるが世の大魔女さ。

 

まず主人公は女の子なんだ。

 

可愛らしくも美しい女性でね。

 

非常に繊細でいじらしいんだこれが。

 

失恋してしまい髪を短くしてしまうあたりがポイント。

 

名前はキルケー。

 

……。ん?

 

名前は、キルケー。

 

待ってよメディア急に崩れ落ちないでくれないか。

 

え、すべてのオチが予想できたって?

 

いやいや、私を舐めてるだろそれは。

 

とりあえず話を聞こう?

 

今なら特殊トッピング可能なキュケオーン付きだよ?

 

いらない?

 

アイシングキュケオーンは、あ、いらない。

 

……そう。

 

わかったとりあえず続きを言うよ。

 

読み人がめちゃくちゃ共感出来るように工夫したんだぜ?

 

まず、主人公は無人島で豪遊してたんだ。

 

失恋しつつも相手の男に恨み言を綴る日々だったんだ。

 

そんな時海からやってきた超絶胸キュンフェイスのマスターがやってくる。

 

マスターは令呪を使って私を弄ぶ。

 

わけもわからないままの私をこうグイッと!顎とか! グイッとするわけ!

 

欲望のままに、こう、意地悪ばかりして反応を楽しむんだ。

 

でもこれって嫌よ嫌よも好きのうちってやつでね、満更でもないわけ。

 

それでも抵抗はしないと。やっぱり成されるがままっていうのは私を見てもらえないのと同義だしね。

 

可能な限り自分を出していく私、そこに苛立ちと恋情を募らせるマスター。

 

そして明かされるマスターの過去。マスターの隣には私がいないといけないという妻としての決意。

 

始まる神々との争い、オデュッセウス追放ざまぁ展開、最後は幸せなキュケオーンで……。

 

なんで止めたのメディア。

 

一般受けしない展開だって?

 

え? 時代を反映して欲しいって?

 

状況を想像できないって?

 

ダメ出しばっかりかよ!!

 

うそ、私のトキメキポイント古すぎ……?

 

あと普通に聞いててシンドいって?

 

そんなバカな! 私の脳内だと超名作なんですけどー!

 

くっ、わかったよ。

 

やっぱりマスターには可能な限り共感してもらって私の気持ちを理解して欲しい。

 

何が必要なのか……。

 

学校? にマスターは通ってるから

 

制服? を着てマスターに会いにいくって?

 

あっはっは!

 

そんな事する魔女は流石に恥ずかし過ぎるでしょ!! あっはっは!

 

ぎゃんっ!? 殴った! チョキで殴った!!

 

え、まさかメディアやったの?

 

……うん。

 

……。うん。

 

ごめん。もう聞かないから。

 

許して。もうほんと聞かないから。

 

それじゃあ制服? も取り入れるね。

 

他にもあるかい、現代要素。

 

へぇー、マスターくらいの年齢だと料理とかが趣味なんだ。

 

八百屋で値切ってくれたり? 結構家庭的なんだねぇマスターの年代って。

 

そういうのは将来も楽しみだよねぇ想像すると。

 

え、嫌? 皮肉がうざい? 弓を使え?

 

ごめんメディア今なんの話ししてる?

 

あぁ脱線したけど、もう内容は大丈夫。うん。

 

とりあえず現代要素を取り入れるよ。

 

絵については二人で頑張ろう。

 

え、もちろんメディアもやるよね?

 

ね?

 

よーし、マスターとの恋愛をネッチョリ描くぞぉ!

 

そして、二人で夜の本気キュケオーンだ!!

 

あーっはっはっは!!

 

 

*****

 

イベント当日。

 

マスターの手の中には一冊の同人誌がある。

ページ数は20。コピー本だった。

 

マスターは知っている。

 

同人誌作成の苦労を。

 

だからこの本は、大切に読まなければならない。

 

これを渡してくれたキルケーは、想像以上の作業量の余波で、目の前で気絶し車椅子で運ばれていった。

 

おそらく水分補給を怠ったのだろうと、知り合いのヤバい女医が告げた。

 

しかし、それでもなお顔を青ざめているのは、その内容ゆえか。

 

 

*****

 

【タイトル】

 

流されろ、アイアイエー島

〜愛しい豚に命令されて私の中の私がすっごいなんか禁断なる狂宴(メタボ・ピグレッツ)〜

 

【作者名】

 

葛木メディア

(マスターの苗字)キルケー

 

【内容】

 

キルケー「いっけなーい! キュケオーンキュケオーン! 私キルケー! ちょっぴり繊細でいじらしくて可愛くて美しい大魔女!」

 

キルケー「今日も今日とて無人島で制服を着て呪詛を振りまいてるの!

あーなんかいい出会いないかなぁー!」

 

直後海から学校がどかーんと出現ッッッ!!

 

マスターがキラメキ笑顔とえっち目に描かれた体でキルケーに向かってセクシーポーズをする。

 

一目惚れをしたキルケー。

しかしマスターは鬼畜外道ッッッ!!!

 

キルケー「うわー!(棒読み) そんなー! マスターやめてー!(棒読み) ひゃん!(ガチ声) や、やめてー!」

 

しかしマスターはキルケーを求める!!!

 

以下6pほど二人が絡み続ける!!!

 

凄く美しい作画!!!

 

躍動感ある描写!!!!

 

そして明かされるマスターの壮大な過去!!

 

実は昔マスターは八百屋で値切り交渉中に紙幣をトレース・オン!

 

皮肉にも八百屋はその紙幣を弓にしてしまう!!!

(この辺りでキルケー、メディア、何を描いているか理解できなくなって思考放棄)

 

 

大体の話をまとめると、罪を償うため学校ごと流刑に処されていた!!

 

制服を着たキルケーに心惹かれつつ引いたマスターを愛し抜くと決めたキルケー。

 

だがッッッ!!!!

 

突如として100円食玩の微妙にクオリティ低めな人形みたいな作画のオデュッセウスが現れる!!!

 

(作画に影響が出るレベルでキルケー、メディア死亡)

 

オデュッセウスはキルケーとマスターの仲に嫉妬!!

 

でもザマァ展開でオデュッセウスは豚にもなれず、穴という穴から変な液体を噴出し死亡!!!

 

 

しかしこれが後に神々との争い、マスターは全知全能の神となる契機となる!!

 

レッツゴー黙示録!!

 

創世記よろしく二人はアダムとイブとキュケオーン。

 

メディアが幸せそうに拍手をして「おめでとう」と告げてキルケーが「ありがとう」して終了!!!

 

 

 

【後書き】

 

 

 

くぅ~疲れましたw これにて完結です!

 

実は、マスターが恋しすぎてキュケオーンしたら同人誌の話を持ちかけられたのが始まりでした 。

 

本当は話のネタなかったのですが←

 

ご厚意を無駄にするわけには行かないので現代を反映したネタで挑んでみた所存ですw

 

以下、私が考えたマスターと私の子ども達のメッセジをどぞ

 

長女「パパー! 見てくれてありがとう!

ちょっと私の出生の秘密が見えちゃったけど……気にしないでね!」

 

次女「いやーありがと!

ママの可愛さは二十分に伝わったかな?」

 

長男「見てくれたのは嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいね……」

 

次男「見てくれてありがとな。正直、作中でのママの気持ちは本当だよ!」

 

赤ん坊「……ばぶっ」(イケボ)

 

では

 

子どもたち、キルケー「皆さん見てくれてありがとうございました!」

 

 

子どもたち、キルケー「って、なんで赤ん坊が普通に挨拶してる!?

改めまして、ありがとうございました!!」

 

赤ん坊「ばぶっ」(cv:言峰綺礼)

 

本当の本当に終われ(メディア痛恨の誤字)

 

 

*****

 

「おいおいマスター、なんでぇ面白そうなモン見てんじゃねぇか。ちょいと貸しな」

 

突如として現れたのは、お栄さんと北斎。

 

「へぇ、トンと来たもんだ。これはこれで味があるいい作品じゃねぇの。愛されてるねぇ、ますたあ殿? くっくっく」

 

「いいじゃねぇか。話が一貫してないとか、作画が一定してないとかどうでもいいさね。技術じゃない、描きたいモンを描くって気概が伝わってくる名作さ。ますたぁ殿もそう思うだろ?」

 

「そう照れるもんじゃないさ。絵描きってのは、本気でぶつかって絵を描くから、人を揺さ振れんのさ。これを見て「痛い」だの「美しい」だの、何か感じまった時点で魂こもってんのサ、こいつは」

 

「ところで……ますたあ殿も同人誌を手伝ったそうじゃねぇか? なぁなぁ見せておくれよ! なんでぇ減るモンじゃないし! いいから、ほら!」

 

ハワイの夜はとても綺麗で、星は今にも落ちて着そうなくらい明るい。

潮の匂いが、静かに揺れる水面と一緒にやってくる。

少女と蛸、そしてマスターは一緒に同人誌を楽しむ。

 

そして二人と一匹は、語りつくせぬ思いの丈を共有すべく、落ち着いて腰を置ける場所を求め、仲良くホテルの中に消えていった。




同人誌作りってマジで大変。特に印刷所との戦いが(素人)

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