音が消えるほどの雨が降り注ぐ。
その中で1人の絶叫した声が響く。
周りには無数の剣が落ちていた。
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あの日から全てが始まった。
日常が変わった。
歯車が狂い出した瞬間だった。
あの日、仕事仲間とともに始めたVRMMORPG"SAO"。休み中の気分転換になればと買った。
感想は“仮想世界ではなく現実にいるようだっだ”。
今まで感じた事のない体験に心を躍らせ子供のようにはしゃいだ。ただし、あの鐘が鳴るまでは………。
鐘が鳴り突然、その場にいたプレイヤーとともに始まりの街に強制転移した。回りを見るとほぼ全てのプレイヤーが転移してきていた。
それから始まったイベントムービーいや、犯行声明とも言えるホログラムは信じ難いものだった。
《プレイ中にHPがゼロになった場合、アインクラッドと現実世界から永久的にログアウトされる》
理解するまで時間はかからなかった。
《ゲームがクリアされればこの世界から無事にログアウトできる》
周辺からは説明を要求する声が上がっていたが答えは同じだった。つまり、HPがゼロになった時点で現実でも死亡ということだ。また、現実世界からの介入も永久的なログアウトに繋がる。殺り方はいたってシンプルだった。
高出力の電磁パルスで脳を破壊する。
苦しまずに死ねるてのいい点だろう。痛みと苦痛に満ちた表情をして死ぬよりかは、だがそんな事はあってはならない事だ。
これは完全なる無差別なテロ行為だ。
俺は現実世界での職業柄、こういう事案に対して対処しなければいけない組織に所属している。これも職業病の一つだろうか、既にやる事は決まっていた。
《全100層からなるフロアボス討伐》
自分1人では無理だろう。だが同じ組織に所属している仲間もいる。他のプレイヤーの中にもいるだろう。まずは仲間を集め力を付けなければならない。このゲームクリアに向けて。
現在、デスゲーム開始から1ヶ月後
ゲーム開始から既に1ヶ月が経ち既に2000名ものプレイヤーが死んだ。モンスターとの戦いで死亡する者、自ら命を絶つ者、この1ヶ月死者が絶えなかった。
俺はこの1ヶ月で仲間となった者たちと第1層ボス攻略会議に参加していた。その場には大勢のプレイヤーが集まっていた。途中参加だった為、ちょうどパーティーを組んでいる最中だった。正面にいたリーダー格からパーティーは組んだかと聞かれたが既に組んでいたので大丈夫だと答えた。この1ヶ月で10名の仲間が集まった。自分を入れ元からいた4名と一緒に戦闘を行ったり、意気投合した6名だ。この6名は現在、スキルを獲得するため一時パーティーを離れている。
リーダー格か中央にあったステージに上がり、現在元ベーターテスターが公開しているベーター時のボス情報を言おうとした時、突然、頭に角が生えているようなプレイヤーが大声を上げて何かを言い始めた。
「俺はキバオウ、ボス攻略前に言わせてくれや!この中に今まで死んでいった2000人に詫びを入れなきゃいれんやつがおるはずや!」
集まっていたプレイヤー達に向け指をさした。
「このゲームが始まった時、ビギナーを見捨てて自分達だけうまい狩場や弱いクエストを独り占めして自分達だけ強くなっていった。その後も他のプレイヤーは知らんぷりや!この中にもおるはずやクソみたいなベーターテスターが!そいつらに土下座さして溜め込んだアイテムやら装備を出してもらわなパーティーメンバーとして命は預けられんし預かれん!」
「ちっ!たかりが……。」
仲間の1人が呟いた。
それを聞き漏らさなかったのかキバオウはこちらを向き大声で話しはじめた。
「お前がベーターテスターか⁉︎よくもビギナーを見捨てくれたのう。今すぐ侘びを入れて装備を出せや!」
他のプレイヤーからも視線が感じられる。
俺は手を挙げた。
「すまんな。仲間の1人が間違われるような発言をして、ここにいるのは俺の仲間でビギナーだ。後で謝らせる。その前に俺からも一言言わせてくれ。お前ここに集まってるプレイヤーは一体何のために集まっていると思う?」
「はぁ⁉︎それはボス攻略をするためだろう。何を言うてんねん。」
「それを分かっていて、何で全体の士気を落とすような発言をする?」
少し殺気を出しながら話した。
「この会議はゲームクリアの為の最初の一歩だ。無下にできないことぐらいわかるだろう。それが分からないならとっとと出て行け。」
「何やと⁉︎、もういっぺん言ってみろや!」
するとそこに身長2メートルあるような大男が割って入ってきた。
「まあまあ、そこら辺にしたらどうだ?」
「何やねん、あんたは?」
「俺はエギル。なあキバオウさん、これ何だか分かるか?」
エギルという大男は腰に付いている袋から小さな手帳のような物を取り出し攻略戦に参加するプレイヤー全員に見えるよう持った。
「これは元ベーターテスターが露店などで無償で配っていたものだ。これにはベーター時の第1層から第9層の情報、そしてフロアボスについて書いてある。この情報を元に助かった者も多くいるはずだ。俺はこの事が言われると思っていたんだがな。」
そう言い元の場所に戻っていった。
俺はリーダー格の元に歩いていった。
「すまなかった。逆に士気を落としてしまったかな?」
「いえ、大丈夫です。そういえば途中からいらしたんで自分の名前わかりませんよね。自分、ディアベルといいます。」
「俺はランサー、よろしく。あっちにいるのが俺の仲間だ。さっき舌打ちしたのがライダーだ。それからアサシン、アーチャーだ。」
「よろしくお願いします。」
ディアベルは握手を求めてきたので応じた。
攻略当日
攻略パーティーはフロアボスがいる部屋の前に集合していた。士気は良いが何となく嫌な気配がしていた。昔からこの気配がすると何かしらの事が起こった。バディが階段で足を滑らせて落ちて骨にひびが入ったとか、演習場に行く途中、事故ったとかなどなど。
だか今回のは訳が違う。扉の向こうから死の気配を感じた。誰かが死ぬのは明白だった。
扉が開かれ攻略パーティーは部屋に雪崩れ込んだ。300m先にボスと取り巻きモンスターが出現した。
ボスの名は"ILL Fang The Cobalt Load(イルファング・ザ・コボルド・ロード)”、武器は見える限りだと斧とバックラー、腰にベータテスターの情報だと曲刀を装備している筈だったが腰の武器は別な物に見えた。一応、パーティーメンバーには注意するよう伝えた。
ディアベルの合図とともに攻撃が始まった。
俺のパーティーは主に取り巻きモンスター、センチネルを引きつける役目をしていた。
「倒しても倒してもで出来ますね。隊長。」
「文句は後にしろ。その前にここではランサーだ。アサシン。」
「へいへい。」
ここでボスモンスターのHPゲージがレッドに入り、持っていた斧とバックラーを投げ捨て腰に付けていた剣を取り出した。それは刀だった。
その瞬間、誰かが叫んだ。
「駄目だ!全力で後ろに飛べ!」
叫んでいた人を見ると中学生くらいの少年だった。ボスモンスターの方に目を向けると、何故か指揮をしていたディアベルが前に出で攻撃を行おうとしていたがボスモンスターが頭上高く飛び上がり今までにはない速さで壁を蹴り移動し始めた。そしてディアベルの真上に来ると剣を振った。そして続けざまに剣を振るいディアベルは吹っ飛んで行った。
するとさっき叫んだ少年が走って近寄り回復アイテムを渡そうとしたがディアベルは手で止めた。何かを話しているようだったがここからは遠く聞こえなかった。
ディアベルがやられたことにより攻略パーティーに動揺が走った。既に戦線は崩壊していた。
「全員行くぞ!攻撃パーティーを一旦下がらせる!」
「「「了解」」」
「ライダー、動けなくなった奴を頼む。アサシン、タンク系の奴らを連れて来い防衛線を張る。アーチャー、俺とお前でスイッチによる攻撃を仕掛ける。」
「ライダー、了解。」
「アサシン、了解。」
「俺、後衛役ですよ。」
「それでも格闘徽章持ちか⁉︎弱音吐いてないでさっさとやるぞ。」
「了解です。」
ソードスキルを使いボスを吹き飛ばし、その隙にアーチャーがソードスキルをぶつけていき、それを交互にやった。3回程行うとさっき叫んでた少年がパーティーとともにこちらへ向かってきた。
俺とアーチャーで呼吸を合わせボスを弾き飛ばしスイッチした。少年も攻撃を加えパーティーの1人が攻撃しようとしたところ突然、ボスモンスターが空中で剣を振るった。
間一髪のところで避けた。攻撃は羽織っていたローブに当たり破壊された。出てきたのは少年と同じくらい少女だった。
全員が驚いていた。また攻撃が再開された。徐々にではあるが確実にボスモンスターのHPか減っていた。
「アーチャー、準備は?」
「いつでも。」
「行くぞ!」
戦っていた少年がボスの攻撃を捌ききれず一撃を胴体にくらってしまい後方にいた少女にぶつかり倒れ込んだ。ボスは攻撃をくらわせようと剣を構え下に振り落とそうとした瞬間、エギルがボスの攻撃を弾き返していた。
「こちらアサシン、タンク系連れてきました。」
「ギリギリだぞ。もっと早く連れて来い。」
「ライダーも来ましたね。」
少年のパーティーが最後の攻撃を加えようと剣を構えていた。
ランサーは少年の横に立ち、
「俺達があいつの攻撃を全て防ぐ。お前らは遠慮なく叩き込め。」
「わかった。」
「アーチャー、アサシン左側を。俺とライダーは右側だ。いいかアイツに指一本触れされるな。」
「「「了解。」」」
ボスに向けて一直線に走っていった。ボスは攻撃させるかと言わんばかりに剣を振るい始めたが全て受け流したり弾き飛ばした。少年達の連携はさることながらこれが昨日作ったばかりのパーティーかと言わんばかりのスピードだった。
そして少年の放った一撃がボスのHPを全て削り、ボスモンスターは小さな結晶となり消えていった。
そしてフロア中央にフロアクリアが映し出された瞬間、歓喜が湧いた。少年は片膝をつき荒く呼吸していた。ランサーは少年に近づき、声を掛けた。
「大丈夫か?」
「ああ。」
話をしているとエギルとパーティーメンバーが近づいてきた。
「お疲れ様」
「見事な剣技だった。この勝利はあんたのものだ」
他のプレイヤーも讃えた。
すると奥の方から、
「なんでや!なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」
声の主はキバオウだった。
少年が答えた。
「見殺し?」
「そやろうが!自分はボスの使う技知っといたんやろうが!最初っからあの情報伝えっといたらディアベルはんは死なずに済んだんや!」
プレイヤー達が騒めく、そしてプレイヤーの1人が他のプレイヤー達に向けて叫んだ。
「あいつきっと元ベータテスターだ。だからボスの攻撃パターンも全部知ってたんや。知ってて隠してたんだ!」
続けて
「他にいるんだろうベータテスターどもが出て来いよ!」
プレイヤー達がざわつき始めた。
「なら問おう!今ここで元ベータテスターが出てきたらどうするつもりだ?また昨日の攻略会議と同じ事を要求するのか。」
突然、ランサーが話し始めた。
「ああ、そうだ。それに今すぐ謝って死んでもらう。死んだディアベルさんのために。」
「それでディアベルが喜ぶとでも。」
「そうだ!元ベータテスターを殺せと叫んでいるに違いない。」
ランサーは溜息をついた。そして周りにいる者しか聞こえない声で、
「死人に口なし。」
ランサーのパーティーメンバーを除いて聞こえた者はランサーの方向いた。
「あの時、理由はどうあれディアベルは1人でボスに挑んだ。それは覚悟があったからだ。戦う覚悟がだ!お前らに覚悟は無いのか!既にこれはゲームじゃない、実戦だ!ここは戦場!犠牲者を他人のせいにするなら今すぐここから出て行け!」
続けて、少年の方に身体を向けた。
「少年、ディアベルは最後に何て言ってた?」
「“皆んなの為に”」
「“皆んなの為に”か………。指揮官らしい言葉だな。」
「それが何だったいうんだ!」
「分からないのか!ディアベルはこの少年に“頼む”と告げたんだ。全員を引っ張ってクリアしろと。その意味がわからないならもう一度考え直すことだな。」
ランサーはパーティーメンバーを率いて次の階層への階段へと向かっていった。
第49層
「ランサー、引っ越し終わったぞ。」
「了解。机の配置とかは任せたぞキャスター。」
「了解です。さっきアサシン、第4分隊連れてどっか行きましたよ。」
「ああ!あいつ、サボりやがって。」
「ランサーもそろそろ時間じゃ無いのか?」
「やべ⁉︎すまん、行ってくる。何かあれば連絡をくれ。」
「了解です。」
デスゲーム開始から1年と数ヶ月が経ち攻略は第74層まで進んだ。
俺は仲間とともにギルドを立ち上げた。
《桜花》