「全員集まったな。訓練内容はソードスキル無しでの対人戦闘、これからの戦いは対人戦闘が主になっていく。ソードスキルを使用すると数秒間だけだが硬直が発生する。もし俺が敵だったらその隙を狙い確実に仕留める。その隙を防ぐため今回は全員に集まってもらった。」
今、《桜花》が集まっているのはギルドハウス内にある修練所である。この修練場は100人が一斉に模擬戦を出来るほど広い。普段は基礎体力向上やソードスキルによる《剣技連携》が殆どである。
「今回教えるのは、剣道にある基本の技だ。これから教える技を戦闘の際に応用してもらいたい。技は、払い技、返し技、すり上げ技、鍔迫り合い、抜き胴だ。だいたいの技は戦闘中に行っていると思うが今回はより無駄が無い動きを教える。」
ランサーが訓練内容を話すと後ろに立っていたアーチャーが前に出て、
「訓練をする前に剣道有段者は前の方に集合。他は現在、装備している木刀に自分が普段装備している剣の情報を入力し隊ごとに待機。質問が無ければ休憩したのち訓練を始めます。」
休憩に入るとアーチャーの周りには有段者が集まり、訓練の再確認をし誰がどこの担当をするかの振り分けを行なっていた。
休憩が終わり、まず始めにランサーとアーチャーで模擬戦を行う事になった。アーチャーが仕掛け側で刀単発剣技《絶空》を受けて側のランサーに縦振りで放ち、ランサーはそれを刀身で受け流し一気に前に出て、刀の切先をアーチャーの首元に向けた。
周りからは驚きの声が上がった。
ランサーは、
「まあ、このような感じでやってもらう。わからないことや質問があったら直ぐに指導官に聞け。絶対にわからないままにするな。」
「「「了解。」」」
ランサーは後ろに下がり後のことはアーチャーに引き継いだ。修練場を後にしようとした時、ライダーから呼び止められた。
「ランサー、客だぜ。」
「誰だ?」
「《黒の剣士》と《閃光》だ。待合室に案内しといた。」
「わかった。」
ランサーは待合室に向かった。
待合室の扉を開けると椅子に腰をかけたキリトとアスナがいた。
「こちらを訪ねて来るとは珍しいな、何の用だ?」
アスナが、
「謝罪と抗議に来ました。」
「抗議ねえ。」
「こちらの不手際で団員の中に“ラフコフ”のメンバーが入り情報が漏れていたことがわかりました。この度は申し訳ございませんでした。」
「前置きはいいから本題に入ろう。1番は謝罪ではなく抗議だろう。ここに来た理由は。」
「では、何故団員の中に“ラフコフ”のメンバーがいるとわかっていながら黙っていたのですか?連絡を貰えればこちらで対処することも可能でした。」
「その連絡をしたら何処からか情報が漏れる可能性がある。もしかしたら俺たちの中にも血盟騎士団の幹部の中にもラフコフの内通者がいるかもしれない。それを防ぐ為に敢えて連絡を入れてないだけだ。」
ランサーは続けて、
「先日の件に参加していたメンバーも聞かされたのは直前だ。それなのに情報が漏れた。どうしてだと思う?」
アスナは少し考えて話し始めた。
「そちらにも内通者がいるということですか?」
「そうだ。こちらも調査を始めているが内通者を突き止めるのは、ほぼ困難だ。誰かを疑い始めたら、きりが無いからな。」
「では放置すると?」
「そこまでは言ってない。その時が来たら捕まえるだけだ。」
ここで今まで話しを聞いていたキリトが話し始めた。
「ランサー、あの会議で行なった尋問の事何だが一部の攻略組から「《桜花》も“ラフコフ”の仲間ではないのか?」ていう声が上がり始めている。」
「あれは反省している。俺もやり過ぎた、すまない。」
「それと圏内での………。」
「HP減少か?」
キリトは頷いた。
「いつかは知れ渡る事だから先に教えておくが、この情報は《桜花》において第一級機密事項にあたる。お前達も時が来るまでは黙っててくれ。」
ランサーは前置きをして話し始めた。
「あれは第1クォーターポイント、第25層の主街区から北東に8キロの地点にいるあるNPC剣士からのクエストで取得可能なスキルだ。取得すれば圏内だろうと人を殺めることが出来る。俺たちが最初に見つけたのは第70層が攻略されてから1ヶ月後の事だ。うちの第3分隊がある鉱石を探しに第25層に向かい捜索中に偶然、森の中にただひたすら剣を振るうNPCがいた。分隊長が話し掛けると突然そのNPCがその分隊と同じ人数まで分裂し切り掛かってきた。直ぐに応戦し幸い死亡者は出なかったもののその時の分隊長の話しだと自分のステータス値をほぼ倍にしたやつと戦っているみたいだったと聞いている。実際の所、その通りだったがな。」
「んでその時、取得したのがそのスキルだったと。」
「そうだ。スキル名は“覚悟”。俺はそのNPCと対峙した時、“死ぬ覚悟がない者は来るな。誰かを護る為に殺す覚悟が無い者は今すぐ立ち去れ。”と言われた気がした。」
「ラフコフもそのスキルを持っているのか?」
「情報では名前は違うが内容は同じのを取得している。ラフコフのメンバー全員がな。まだ表だった行動はしてないが警戒は必要だ。」
「ランサー、俺をその場所まで案内してもらえないか?」
「駄目だ。相手はモンスターじゃない自分自身だ。対人戦闘を殆どやった事がないお前が行っても死ぬだけだ。それに覚悟はあるのか?もしもの為に取得しておくのはいいが覚悟が無いやつが持っていても無意味だ。」
「ならラフコフが襲撃して来たらどうすればいいんだ⁉︎」
「何も取るなとは言ってない。覚悟を決めろと言ってるんだ。」
アスナが何とかキリトを落ち着かせようとした時、部屋にあった時計から11時半を告げる音が鳴った。
「もうこんな時間か、お前ら飯まだだろう食ってけ。」
アスナが、
「良いんですか?」
「ああ。今から作るんで少し時間がかかるがな。」
「えっ⁉︎もしかして全員分作るんですか?」
「ああ。いつもは外食なんだが今日は全員、ギルドにいるからな。」
「私が作っても良いですか?」
「いいよ。食材は地下に保管されているから好きなだけ使ってくれ」
「キリトくんは食材運びお願いね。」
「え?何回往復しないといけ……………。」
「キリトくんお願いね。」
キリトは苦い顔をして急いで首を縦に振った。そして一部始終を見ていたランサーは、アスナから出ていた殺気を感じ立っていた。
この時、ランサーの顔は少し引きつっていた。
保管所の扉を開けると多くの食材が所狭しに並んでいた。
キリトは肉が保管されている方へと足を進め、ある食材を発見した時、
「ランサー⁉︎これ、どうした?」
「何々?」
アスナがキリトの側に行き食材名を確認した瞬間、驚愕の声を上げた。
「ちょっ!ランサー、これどうしたの?それにこの数!」
「ああ。ラグー・ラピッドかこの前、探索に出た時に群れに遭遇してな狩ったまではよかったんだが調理しようにも熟練度が足りなくて出来なかったんだ。売ろうにも知り合いはいないし。」
「使っても?」
「構わない。存分に使ってくれ。」
「なら決まりね。私とランサーで調理するから。キリトくんはこれとこれ、急いで取ってきてね。出来るだけ多く、お願いね。」
「アーチャー、隊を連れてキリトの手伝いを頼む。」
キリトは心の中で思った。
40分後
ギルドハウス内にある食堂に全員が集まり食事を始めた。メインとして出されたのは“ラグー・ラピッド”のシチューだ。《閃光》のアスナが作った料理という事もあって飛ぶように売れたが、皆が1番美味いと言ったのは魚と一緒に出てきた“醤油”だった。
日本人には、これだと言わんばかりの調味料の一つだ。すぐにランサーはアスナのところに行き売ってくれと頼んだ。アスナからの返事は条件付きでの了承だった。その条件は材料との交換だった。アスナ自身も迷宮区攻略やギルドの仕事で忙しいからである。
ランサーもそれに同意した。食堂では昼食から一転して宴に変わり、どんちゃん騒ぎになっていた。
ランサーは、
「午後からも訓練があるから遅れずにな。」
そう言い残し1人外に向かった。
外に出たランサーは懐から煙草を取り出し口にくわえようとした時、後ろから人の気配を感じ咄嗟に構えたが後ろにいたのはキリトだった。
「隠蔽スキル、それなりに高いと思ったんだけどな。」
「用件は?」
「ひとつ手合わせお願い出来ないか。もし、ランサーに勝ったら例のスキルを取りに行っても構わないんだろう。」
「理にかなってるな。だが、ただ俺に勝てたからといってその時もそうであるとは限らない。一戦だけ付き合ってやる。」
キリトはランサーにデュエルを申し込んだ。モードは《初撃決着》、相手のHPを一撃でイエローゾーンまで落とす事が出来たら勝利することが出来るモードである。
ランサーはキリトから5mの位置で刀を抜き上段の構えをとった。キリトも剣を構え、デュエルスタートのカウントダウンが始まる。
その場に静寂が訪れる。
カウントダウンがゼロになった瞬間、キリトは大きく前に出てランサーに対し上段突進技《ソニックリープ》で攻撃を開始した。ランサーの方は剣にライトエフェクトがなっていたが上段の構えで動かずにいた。キリトの切っ先がランサーから1mの付近に到達した時、ランサーが動いた。
構えていた刀を一気に振り下し、キリトの左半身を切り裂いた。
キリトは何が起こったのか分からなかった。気づいたら左半身を切り裂かれていたからだ。キリトのHPは3分の1まで減少し出血ダメージのマークが出ていた。
ランサーは刀を鞘に収めヒールをキリトに投げつけた。
「回復しろ。」
キリトは回復結晶を手に取りやっとのおもいで回復した。
「わかったか、これが対人戦と対モンスター戦との違いだ。」
ランサーは少しおいて、
「これでもまだ、あのスキルが欲しいと言うならこっちで稽古をつけてやる。命の保証は出来ないがな。」
ランサーはその場を去ろうとした時、キリトが声を上げた。
「やる。このままで終われるか。」
ランサーはキリトの目を見て、
「時間が惜しい今からやるぞ。アサシンいるか?」
「はい。」
「第3、4隊に召集命令。その他の隊も待機。即応は………。」
「即応の10名のうち2名はこれより護衛任務の為いません。第6隊も情報収集任務に就く為、無理です。」
「即応はそのまま待機。」
「場所は修練場で?」
「そうだ。アサシン、キリトを案内してくれ。」
「わかりました。」
アサシンはキリトを連れ修練場へと向かった。
ランサーも後を追った。
ランサーは幹部を全員集め話しをしていた。
「最初は第4隊から頼む。次から第3、5、2、1で行く。」
「わかりました。これより第4隊は準備に入ります。」
「頼む。他の隊も準備してくれ。」
「「「了解。」」」
ランサーはキリトの方へと向かった。
キリトはアスナと話しをしていた。
「キリト、準備は?」
「大丈夫だ。ただ…………。」
「ただ?」
「私も参加させて下さい。」
アスナが会話の中に入ってきた。
ランサーは理由を聞こうとしたがアスナの目を見た瞬間、動きが止まり目を瞑った。そして目を開き、
「わかった。ただし手加減はしない。」
ランサーはを2人を見ながら、
「勝ち抜き戦だ。第1隊から第5隊までの全隊員と戦ってもらう。最後に俺を倒して稽古は終了。モードは《初撃決着》、一つの隊毎に5分の休憩を取る。その間に回復を行なってくれ。質問は?」
アスナが手を上げた。
「休憩に入る前にレッドゾーンになったら……。」
ランサーはアスナの言葉を遮り、
「続行だ。レッドゾーンは戦闘になればザラだ。特に新兵はな。言い忘れていた事だが、始める前に遺言を残してもらう。」
アスナは唖然としていた。
「辞めるなら今だ。」
「いえ、やります。」
「なら最初はキリトからだ。キリトが勝ったらアスナがキリトの相手と戦ってくれ。開始は5分後、何か必要な物があったら、そこにいる通信士に言ってくれ直ぐに用意する。」
ランサーはキャスターの方へと歩いていき何かを話した後、即応隊の元へと行った。
「レオン、何かあれば直ぐに連絡をくれ。念のためアサシン達第6隊も周辺で活動している。」
「わかりました。護衛対象についたら一度連絡を入れます。では即応隊所属レオン並びにアルトこれより護衛任務に着きます。」
「よろしく頼む。」
5分後、
修練場の中心にはキリトと第4隊所属オルドルが立っていた。双方、抜刀しいつでも戦える状態だった。
カウントダウンが開始され、その場の空気が変わった。修練場にいた全員が2人を見ていた。カウントダウンがゼロになりデュエルが開始された。
それから数時間後
現在、キリトは第5隊まで行き、アスナはキリトを追い越し第2隊隊長アーチャーと殺り合っていた。
「アーチャーも苦戦しているようですね。」
ランサーに対しライダーが話し掛けてきた。
「そうだな。予想以上の速さだ。感想は?」
「剣が全く見えません。それに感じとしてはあの人に似ています。だからあの時、理由を聞かず許可を出したんでしょう?」
「そうだ。」
「化けますよ。あの娘は。」
「なあライダー、もしあいつらが俺に勝ったらあの称号与えようと思うんだがどうだ?」
「実戦を経験し生き残ったら考えます。」
「そうだな。」
ランサーとライダーが話しをしているとアスナとアーチャーの戦闘が終わった。勝ったのはアスナだった。アスナの表情からは疲労が見てとれた。キリトの方はこれからバーサーカーと戦うところで顔色を全く変えず戦闘を行なっていた。それを見ていたランサーは何かあると思い警戒した。
アスナの休憩が終わりランサー率いる第1隊との戦闘が始まり、キリトはバーサーカーとのデュエルが終わり休憩をしていた。そこにアーチャーが近づいて行った。
「キリト、第2隊の奴とのデュエルは免除するから俺とやってしまおうぜ。」
キリトは驚いた顔をしていた。アーチャーは続けて、
「俺の“二刀流”とお前の“二刀流”どちらが強いか?」
「何でその事を?」
「優秀な情報屋から仕入れたんだ。遠慮はいらない。ぶっつけ本番で使うよりだったら練習しといた方がいいんじゃないか?」
「わかりました。周りの口止めはお願いします。」
「わかってる。」
アーチャーはキリトから少し離れ、装備していた刀を抜いた。キリトも2本目の剣を装備し抜剣し数秒後、デュエルが始まった。
キリトとアーチャーの戦闘はどのデュエルよりも激しかった。剣と剣がぶつかるたびに火花が散り全員がそのデュエルを観ていた。そんな中、ランサーはアスナの戦闘を観ていた。
「(抜刀術を使っても厳しいか、最初の一撃で決めなければ勝てないな。)」
ランサーは少し考えた後、キリトを見た。
「(隠していたのは二刀流か、アーチャーがどれだけついていけるか見ものだな。)」
ランサーは装備を変えようと装備画面を開いた時、アスナとのデュエルを終えたアンタレスが声を掛けてきた。
「ランサーさん、次お願いします。」
「もう3人は?」
「グレンとカムイは注文していた装備品の受領へ、イェーガーさんは現実世界での親の命日だとかで先日作った墓へ墓参りに行きました。」
「ああ、そうだったな。完全に忘れてた。アーチャーとキリトのデュエルが終わったらここにいる全員に2人のスキルについての緘口令を。」
「了解しました。」
ランサーはアスナの元へ向かった。アスナは持っていたレイピアを地面に突き刺し、杖代わりにしてランサーが来るのを待っていた。
「さあ、始めようか。」
アスナは無言でレイピアを構えた。ランサーは柄に手を添え、いつでも抜ける状態に構えた。
無言のまま時が流れる。
観ている側からは数秒だが、対峙している2人の感覚では物凄い時間が経っていた。約20秒による沈黙はランサーの攻撃で破られた。ランサーは抜刀術最上位単発剣技《紫電》をアスナの首元に向け放ち、アスナは右斜め前方向に身体を動かしランサーに向け細剣単発剣技《リニアー》を放った。
2人は最初に立っていた位置が逆になり、残心を取っていた。するとランサーが持っていた刀にひびが入り真っ二つに折れ、全損状態になり光のエフェクトとなり消えた。ランサーは後ろに振り返るとアスナを見た。アスナは今まで張っていた緊張の糸が切れ倒れそうになったが間一髪でランサーが受け止めた。
ランサーは小さな声で、
「よくやった。」
少し置いて、
「何ぼっさとしている⁉︎担架だ!」
我に返ったキャスターが部下を引き連れランサーの元へ向かった。
「相当疲れたんでしょう気絶してるだけです。来客用の宿舎に運びます。」
「頼む。」
キャスターは部下と協力してアスナを担架に乗せ宿舎に運んでいった。
ランサーは今も続いているキリトとアーチャーのデュエルに眼を向けた。どちらとも徐々にではあるがHPが減りはじめていた。制限時間は残り5分をきっていた。ランサーはもっと近くで見ようと場所を移動しようとした時、左後ろにライダーが立っていた。
「どうした?」
「護衛部隊より連絡です。無事に目的地に到着との事です。」
「そうか。アサシンからは?」
「いえ、何も。」
「わかった。」
残り数十秒になっても勝負が決まらなかった。後は、どちらかのHPが多いほうが勝ちとなる。ランサーはこれほどまでに勝負が決まらないとは思っても見なかった。
「(さあ、どうなるかな。)」
カウントがゼロになりデュエルを終了する音が鳴った。勝ったのは僅かな差でキリトだった。ランサーはアーチャーの元へと行き、
「どうだった?」
「強いですね。背筋がヒヤリとする時が多々ありました。《閃光》もそうでしたけど、こいつも中々やりますね。」
「わかった、ゆっくり休め。キリト、休憩が終わったら第1隊とやってもらう。色々あって2人しかいないから同時にやってもらうがいいか?」
「構わない。さっさとやろうぜ。」
「その意気だ。アンタレス、クロー準備しろ。」
「「了解。」」
デュエルのカウントダウンが始まる。
キリトは二刀流から片手剣に戻していた。片手剣の良いところは片方の手に盾を持ってる事、そうすれば1対多数の戦いも出来るがキリトは違う。極限まで身軽にし瞬発力を最高値まで上げたその姿勢はソロとして導き出した答えなのだろう。
だが、ランサーの見解は違った。アーチャーからは相手が2人以上なら二刀流の方が戦いやすいと聞いていたからだ。乱戦になれば、ほぼ全方向から剣が向かってくる。その多数の剣をさばくには明らかに一本では手が足りないからだ。2本ならば一本で防御をしもう1本で攻撃でき、また2本同時攻撃する事も可能だからだ。これらを踏まえれば今回のデュエルは二刀流を使用した方が断然、戦いやすい。
デュエル開始のカウントダウンが開始され、ランサーはまた時間がかかるだろうと思い休もうとしたがその考えは直ぐに打ち消された。カウントがゼロになった瞬間、キリトは現在いた位置からアンタレス、クローの後方3メートルの位置に動いていた。アンタレスとクローのHPは半分以下まで減少し勝負が着いた。
ランサーは今のキリトの動きを見てある答えを出した。形や仕様が異なる剣で“二刀流”というスキルが存在するようにランサーが得意とする剣技《紫電》が片手剣でも似たような剣技としてあるということ。
ランサーはその真意を確かめるべく新たに装備した刀の鞘に手を掛け、キリトにデュエルを申し込んだ。キリトはそれ承諾しランサーに体を向け剣を構えた。
カウントダウンがゼロになった瞬間、ランサーとキリトは同時に動き剣を振った。甲高い音が修練場に響き渡り、音源では火花が散った。周りにいる者達は何が起こったのかわからなかった。唯一、わかっていたのはアーチャーだけだった。だがアーチャー自身もこの速さには驚いていた。
「(俺の時とは比べものにならない速さだ。もしかしたらランサーの《紫電》よりも早いかもしれない。)」
ランサーとキリトの長い残心が終わり、互いに向き直った。ランサーは刀を上段に構え、キリトが仕掛けてくるのを待った。キリトはそれに応じるかのように剣を構え、仕掛けた。ランサーはキリトと初めてやったデュエルで使用した剣技、刀上位単発剣技《鬼斬》をキリトに向けて放ったが0.1秒遅くキリトの斬撃がランサーの身体を貫いた。
周囲から驚きの声が上がった。
「これで取りに行っても構わないだろう、ランサー?」
キリトは壁にもたれかかっているランサーに話し掛けた。
「ああ、構わない。ひとつ教えてくれ最初に使用した剣技あれは何だ?」
「使うのは始めてなんだが、片手剣単発重突進剣技《シデン》だったかな。さっきデュエルが終わって確認してみたら解放されてたんだ。」
ランサーは口元に笑みを浮かべ、
「じゃあ、俺が使った剣技を教えとく。最初に使ったのは抜刀術最上位単発剣技《紫電》、最後に使ったのが刀上位単発剣技《鬼斬》だ。」
キリトは驚いた顔をしていた。何故なら二刀流の他に剣技もあったからだ。
「俺も聞いて、びっくりだよ。」
ランサーが答えた。続けて、
「キリト、用心しろ。最悪の場合、ラフコフにもその剣技を取得している者がいるかも…………じゃないな。いるだな。キリト程の瞬発力は無いかもしれないが気をつけろよ。」
「わかった。そういえばアスナは?」
「流石に疲れたみたいでな別の部屋で寝ている。お前も泊まってけ、帰路に襲われたらひとたまりもないぞ。」
「ならお言葉に甘えて。」
キリトはキャスターに連れられ部屋に案内されていった。
ランサーも自室に戻ろうとした時、後ろから声をかけられた。振り返るとアーチャーとライダー、バーサーカーが立っていた。
アーチャーが、
「最後の最後、手抜きましたね?」
続けてライダーが、
「他の奴らは気が付いてなかったみたいですけど、補佐クラスは全員気付いてましたよ。」
ランサーが溜息をついて、
「バレたか。」
「あんな遅い振り久しぶりに見ましたよ。」
「でどうだったんですか、太刀筋は?」
バーサーカーが聞いた。
「及第点てところかな。もっと実戦を積めばここにいる誰よりも良くなる。」
「次が楽しみですね。」
「ああ。」