ランサーは向かってくる敵に対し刀を振り続けた。
1人、また1人とHPが全損していき、その場から消えていく。
「何やってるんだ!相手は1人だぞ!」
「死ねぇ!!」
ランサーは刀剣技《五月雨》と《浮舟》を交互に使いながら斬りつけていく。
ランサーはふと人質がいる方を見るとアサシンの第6隊と第1隊が敵に気づかれないように人質を解放していた。
「(もう少しか。)」
ランサーは思った。
少しでも注意を引き続ける為、《迅雷》を繰り出し敵を吹き飛ばした。
「何だ!こいつは⁉︎」
「この化け物が‼︎」
ランサーは剣を振りがぶってきた敵を《絶空》を使い一刀両断した。
するとアサシンから連絡が入った。
「こちら人質を全員確保。現在、第2隊と合流中。20秒後に第2隊の援護射撃を行います。」
「了解。」
ランサーは刀を納刀し構えた。そして抜刀術重範囲剣技《烈山》を繰り出し周囲にいた敵を上半身と下半身に一刀両断した。
その直後、第2隊からの援護射撃が入り多数の弓矢がランサーの周囲にいた敵に命中した。ランサーは敵が怯んだ隙を逃さず、一気にその場から第2隊がいる方へと走った。
第2隊がいる地点では馬車が用意されランサーを除く全員が乗っていた。
「第2隊は射続けろ!1人たりとも敵を近づけさせるな!アサシン、先に脱出しろ!ランサーは俺たちが連れて行く!」
アーチャーが叫んだ。
「わかった!」
アサシンが乗っている馬車は第1層ボス部屋へと向けて走り出した。
「ランサー、こっちだ!」
ランサーは馬車に飛び乗りすぐに馬車を走らせた。
「アーチャー、状況は?」
「人質は全て確保。こちらの被害0。そちらは?」
「問題無い。」
ランサー達はグランザムに着き《KoB》のギルトハウスにてシーカーとキバオウから話しを聞いていた。
「シーカー、そいつに見覚えはないんだな。」
「ああ、無い。」
「わかった。ここで休んでろ。後は俺達が片付ける。」
ランサーが部屋を出ようとした時、
「ランサー、仲間を助けてくれ。」
「任せろ。」
ランサーは部屋を出た。部屋の前にはアーチャーが立っていた。
「どうだった?」
「内容はそちらが聞いていた事と同じです。」
「そうか。各隊と攻略組の集結状況は?」
「全隊、集合完了。攻略組はもう20分てところですかね。」
「わかった。集合が完了次第、ブリーフィングを始める。」
「了解しました。」
KoBギルドハウスにある会議室。そこには《桜花》と主要な攻略組が集まっていた。暫くすると2人の男が入ってきた。それはランサーとアーチャーだった。ランサーはアーチャーとともに部屋の正面にあるボードを使って何故、攻略組全員を呼び出したのか話し始めた。
「では時間が無いので概要を説明する。尚、質問や意見などは説明後に受け付ける。」
ランサーがそう言うとアーチャーはボードに第1層はじめりの街:主街区の地図を張った。
「現在、《笑う棺桶》がはじまりの街を占拠。主街区において殺戮を続けている。構成員は約150名、軍またプレイヤーに変装しているのもいる。そこで我々は、はじまりの街に残っているプレイヤーの救出ならびに敵の殱滅を行う。プレイヤーの救出については攻略組で手分けして行なってもらいたい。尚、転移結晶などの移動アイテムは第1層では使用できない。質問は?」
攻略組の何人からか手が上がった。
「何で転移結晶が使えないんだ?」
「こちらもまだ詳しい理由は分からない。何らかのイベントが発生、またはシステムの不具合などが考えられる。それと転移門も使用出来ない。」
「第1層まで行くには?」
「第1層ボス部屋を通る。そこから我々が用意した馬車に乗って、はじまりの街に移動する。」
「いつ開始するんだ?」
「今から40分後。貴官達なら30分もあれば準備出来るだろう。集結場所は第1層ボス部屋。」
攻略組は準備の為、一時解散した。
部屋には《桜花》のメンバーが残っていた。
ランサーは部屋にいる全メンバーに向けて話した。
「我々はこれより第1層ボス部屋、ならびにその周辺の確保に向かう。交戦規定は自由、捕虜は捕るな。」
「その場で斬れと?」
「いや、無力化すればそれで良い。捕虜が多くなる程、撤退時に割かなければならない人員が増える。それに降参したと見せかけて戦闘となり戦死者が出るのは許容出来ない。他に質問は?」
ランサーは全員を見渡した。
「全員、生きて帰るぞ。行くぞ!!」
ランサーは兜を被り、面頬を付けた。
第2層
第1層ボス部屋に繋がる道には《笑う棺桶》のメンバーが使っていたであろう武器が多数転がっていた。
「ランサー、第1層ボス部屋とその周辺を確保した。」
「数は?」
「30人から40人程だ。内2名が逃走、他は殺害した。こちらの被害は無し。」
「わかった。引き続き警戒を頼む。」
「了解。」
ランサー達、第1隊は第1層ボス部屋へと向かう道で攻略組が来るのを待っていた。すると足音を鳴らしながら重装備で歩いてくる集団がいた。
ランサーは集団の先頭にいたプレイヤーに話し掛けた。
「一番乗りは《聖竜連合》か。」
「早く来すぎてしまったか?」
「いや、時間通りだ。それにしてもよくこれだけの人数集められたな。」
「上の連中と話しはつけてきた。《桜花》ギルドハウスに20人、こっちに30人だ。」
「それは有難い。なあ、エリック戻ってくる気は無いか?」
「すまんがあれはもう懲り懲りだ。」
「そうだな。このまま真っ直ぐ行ってくれ、ライダーが馬車の準備をしている。」
エリック達、聖竜連合のプレイヤーはライダーの元へ向かった。その後、他の攻略組プレイヤーが続々と集まり始めた。
それから10分後、ランサーはもうこれ以上、時間的にも来ないだろうと思い、第1層ボス部屋に向かおうとした時、隣にいたアンタレスがランサーを呼び止めた。
ランサーが振り返ると遠くからキリトが歩いて来ていた。ランサーは一瞬驚いた表情をしたが直ぐにいつもの冷静な表情に戻しキリトに話しかけた。
「遅かったなキリト。」
「いろいろ準備しててな。」
そう言ってキリトは第1層ボス部屋へと向かっていった。ランサーとアンタレスも第1層ボス部屋へと向かった。
ランサーがボス部屋に入ると攻略組は馬車への乗車を始めていた。ランサーはキリトとアスナを呼んだ。
「引き返すなら今だぞ。」
「ランサー、何を言って……」
ランサーはアスナの言葉を手で制した。
「お前達はまだ子供だ。副団長だから、攻略組だからと言ってわざわざ行く必要は無い。この先の相手はモンスターでは無い。人間だ。」
ランサーは続けて、
「いくら俺達が護衛にあたると言っても完全に出来るわけではない。それに敵の数はこちらの倍、攻略組にも戦闘を行なってもらうことになるかもしれんし最悪の場合、戦死も覚悟してもらう。」
「ランサー、俺はここまでソロでやってきた。そしていつも死と隣り合わせだった。だから敵が人であろうと覚悟は出来てるよ。」
キリトは言った。
「ええ、私もよ。副団長だからと今までのラフコフ討伐戦に参加してきたわけでは無いわ。全て自分の意思で此処に来てるの。こんなの間違ってるから……。」
アスナも続けて言った。
ランサーは2人の言葉を聞き、大きな溜息をついた。
「わかった。ただし無茶はするなよ。」
「ランサー、出撃準備完了した。」
ライダーが言った。
「わかった。」
「全隊、出撃!!」
ライダーが叫んだ。
全員から雄叫びが上がり、全速力で駆けていった。
十数分後、《桜花》と攻略組は“はじまりの街”に到達。戦闘の開始は、《桜花》の騎兵突撃で始まった。
「突撃隊形、横隊2列!」
「突撃‼︎」
ランサーは叫んだ。
第5隊を除く戦闘員、計36騎が“はじまりの街”に布陣していた《笑う棺桶》に向けて突撃した。
《笑う棺桶》のメンバーはこの時を待っていましたと言わんばかりに奇声を発し始め、迎撃態勢をとったが、ライダーはこの時、ある条件下で発動する剣技を使って《笑う棺桶》の陣形を大きく崩して突破した。
それは馬に騎乗した時のみ発動する《槍騎兵》というスキルだ。このスキルを使用し槍騎兵突撃剣技を行うと同様に騎乗しているパーティーメンバーとギルドメンバーにもこの剣技が発動される。その為、ライダー単体で突撃剣技を行うよりも威力は倍増した。
「止まるな!このまま主街区に向かう!」
《桜花》と攻略組の合同部隊はこの日、初めて対人の大規模戦へと突入した。