登場するキャラクターは非公式なりきりをモチーフに描かれているため原作のキャラクターからは大きくかけ離れている場合があります。また、身内ネタやメタ発言なども多く、なりきりに理解がある方でも不快に思われるかもしれません。以上のことが了承できる方のみ、本作をお読みいただけるようお願いします。
ミスタルシア最大の大陸にある魔法学院『マナリア魔法学院』。大陸最大の魔法研究機関であり、種族の差はなく、人、神、魔族に分け隔てなく知識が授けられている。魔術の研究機関としてのイメージが先走っている事もあり、厳格なイメージを持たれているが、入学に厳しい条件は無い。ただ一つ『魔法を学びたい』という意志があれば種族は問わず入学は可能だ。そのため、幾多の種族が互いに友好関係を結び、共に学問に勤しんでいる。
その学院の名の由来である『熾天使・マナリア』。姉妹校のルナル魔術協会との対抗戦以来、生徒として学院のいたるところに出没するようになった。容姿と少々おちゃめな性格、カリスマ性にすぐれ男子生徒からも女子生徒からも秀では教師からも尊敬される人物である。ええ、少しも盛って話してないですよ、もちろん。
そんなマナリアは今日も、学院の超凄い魔術の研究しちゃってる研究室へ訪れていた――――わけではなく。
「――――!」
悲鳴を発する事さえ許されず、マナリアは後方へと飛ばされた――魔術による衝撃波でも爆発でも無い。今まで経験したことのない感覚。
しかし、その勢いには抗う事が出来た。いや、出来てしまった。
踏みとどまるために無理に体制を整えようとし、湿り気を含んだ地面にまんまと足を取られガクッと状態が仰け反った。この隙は見逃されるわけがない。そして、次の攻撃は躱すことは不可能だ。ならば――――
瞬間襲い来る眼前への一撃を、ほぼ反射的に結界で受け止めようとする。
「――っ! 馬鹿っじゃないの!?」
「はぐっ――――!!」
いきなり真横に気配が現れたかと思えば、脇腹に美しいフォームの跳び蹴りをくらい、派手に吹き飛ばされ地面を転がる。
「ばっ、馬鹿とは何ですか!!」
「いやいや、貴方自分で魔術使えなくしたんでしょうが! あのままだったら無抵抗でナイフがグサーよ! 流石の私でも顔でナイフを受け止めようとする馬鹿はほっとけなかったの!!」
「はっ! そうでした!」
鬱蒼と茂る森の中に佇む小さな小屋。その正面の空き地でギャーギャーと喚く小柄な少女。
そう、マナリアは最近ツイッターという便利なアプリで知り合った友の元を訪ねていた。
「もう……いきなり押しかけてきて何かと思えば『近接戦の練習だ!』なんて言うから何かと思えば、アナタ魔術が使えないとほんっとーに何もできないのね」
「失礼な! 私はスパタクス師匠とウィリーに指導受けてきたんですからね!!」
「ねえ、付焼刃が一番危ないって誰にも言われなかったの?? アナタに付き合わされたあの人たちに同情するわ……」
「そんな……もしかして、私……もしかして、ウザがられて……」
精神への会心の一撃(驚異の防御無視1.5倍ダメージ!!)を受けて項垂れるマナリアを見て、仕方なしとメイジーは小屋の中へと入っていき、すぐに愛用のコップと来客用のコップを手に戻ってくる。
「ほら、休憩しよっ? 水は魔法で出せるんでしょう?」
「メイジーさんが優しい! 優しい! はいはい今出しますよー」
「さっきまでしょげてたくせに、相変わらず切り替え速いわね……」
マナリアは魔術を使えなくしていた手の甲の魔術紋をゴシゴシと擦って無効化し、魔術によって水を作り出す。作り出すと言ってもゼロからの創造ではなく、大気中の水蒸気を集め凝縮、水に変換するというものだ。魔術の仕組みは科学に通じるところもあるため、学院には科学実験を行う研究室も存在する。
メイジーは一息で水を飲み干すと、嬉々として追加をしようとするマナリアを制止する。
「私は全然疲れてないから、折角だし特訓してるわ」
「では、見学してますね!」
思いのほか凝視され少しやりにくそうに顔を顰めるもすぐに切り替えてメイジーは真剣な顔つきでどこからか一瞬でナイフを抜き放つと、一度の動作でえーっと、1、2、3、4……5本ですね! 5本のナイフを投げるとナイフは物理法則にに逆らい自由に宙を飛び回る。
「あれはインメルマンターン!! それにエルロン・ロール! そして出るか大技! スプリットS!!」
「ちょっとうるさいんだけど!? あと、私の意志で制御しきれてるわけじゃないから解説されると恥ずかしいんだけど!!」
自由自在……と、大げさに解説してみせたが、実際は制御下から離れつつあるほどおぼつかない様子で飛び回っている。
ナイフはどうやらマジックアイテムのようだ。魔法を付与された道具で、魔法の心得が無くとも魔力操作さえできれば扱える代物。確かにあれならば、魔法を使えないと言っていたメイジーにも練習さえすれば、すぐに完璧に扱えるようになるでしょう。魔法が使えなくとも、誰でも魔力は持っているからだ。
魔法は誰でも学べば使えるようになるものなので、思い込みで諦めてしまっている人が多くいるのは少し寂しいです。魔法に興味がある皆さん、一度は学院を訪ねてみてくださいね。マナリアお姉さんとの約束ですよ。『はい、宣伝乙』……ってメイジーさん!? 余分なこと書き込まないでくださいよ!!
「そっか……魔術を戦闘に利用するんだ」
「いやいや、何? いきなりどうかしたの? さっきの宣伝、駄々洩れすぎて脈略無さ過ぎて唐突過ぎて意味が分かんないんだけど??」
「いや、私も魔術を使って戦えばいいんだって思ったんです。あと、ツッコミ追いついてませんねメイジーさん」
メイジーは「ついに頭がイカレたのね、この熾天使……」と冷たい目を向けて、ツッコミを入れる事さえ放棄して絶句する。集中力が乱されたようで制御が緩まったナイフはついに木に衝突し突き刺さる。
「わわっ、誤解ですよ! 近接戦でも魔術を使えばいいのではないかと思いまして。えーっと、例えば……えーっと」
具体的な案は考えていなかったようでマナリアは焦りの表情を浮かべる。見かねたメイジーは、これ以上この熾天使のペースに乗るわけにはいかないと、更なる妨害が行われる前に助け舟を送る。
「殴る代わりに衝撃波飛ばしたりは?」
「あー、というより一瞬で発動できる衝撃波系の魔術を細かく使って行けそうですね。だとすると、あれも、ウィリーさんの空手を組み合わせて……あれも上手く利用できそうですね……そこにスパルタクスさんに教えて貰った金的……じゃなくて脚技も加えて……」
「上手い事考えれてるみたいで良いんだけど、金的はおふざけでも止めなよ? あれ女の私でも普通に痛いと思うし、やったら私囲ってるやつらが騒ぎ出して炎上しかねないからね!」
「それは、怖すぎますね!」
メイジーのナイフ空中演武を眺めながら色々と考えた案の中から実用的なものに目星を付け試し打ちをしてみる。今まで近接戦なんて考えてもいなかったので気づかなかったが、利用できる魔術は沢山ある。
「……ッ! ちょっと、あんたら何なのよ!」
メイジーの声にバッと振り向く。黒いローブを羽織った何者かが小柄なメイジーを抑え込んでいた。
はっ、といち早く二人目の気配を察知して身を躱し翼を広げ空中へと離脱する。……いや、気配は一切なかった。もとより気配がある相手にたとえ不慣れな魔力制御に集中していようがメイジーが捕まる筈も無い。
二人の黒ローブ。顔は影になっていて見えない。メイジーが反撃せず捕まったままというのもおかしい。
(魔力の残滓……? あれは、人じゃない……)
「いっ――ッ!?」
背後から衝撃を受けて地面に叩きつけられる。目の前から迫ってくる黒いブーツのつま先を冷静に結界で受け止めようとするが、黒ローブが展開した結界に触れた瞬間、結界が右手に吸い込まれていくような形で崩壊し、ブーツのつま先が深々と鳩尾に突き刺さる。
「カハッ……このッ!」
痛みで怯んでしまいそうなのを気合で誤魔化し、スパルタクス式熱血指導でものにしたキレのある回し蹴りを放った。極限の状態で繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し練習した回し蹴りは無駄な動作が消え去っており鞭のようにしなやかに敵の顔面を打つ――――筈だった。
「すり抜けてた!? って、やばい――ッ!!」
顔面を真正面から殴られて、痛みに思わず顔を抑えながら翼を羽ばたかせて離脱する。
マナリアの回し蹴りは相手の側頭部を的確に捕えていたはずなのに、文字通り“すり抜けて”しまい当たらなかった。足には何の感触も無かったのに、殴られた顔面には痛みがある。
「またっ!」
二度目はそうそう喰らわない、今度は何者かを視界に捉える。空間が歪みそこから黒い影がぬるりと這い出てくる。姿は他の黒ローブと同じ。これが先ほど空中のマナリアを地面へと叩き落とした相手だった。
空中で宙返りして振り回された腕を躱して見せ、反撃で光の熱線を放つが手のひらで受け止められると力なく消滅した。すぐに空間の歪みは閉じ、姿を隠される。
「魔術の無効化、そして不自然な回避……それに加えて空間跳躍……? しかも、疑似ではないゲート型ときましたか……」
黒ローブは隙だらけで攻撃もこちらのほうが早かったのに向こうの攻撃だけが当たる。
「まさか、現代で“幽体化”をそのレベルで使いこなし、門すら形成してしまう集団がいるとは思いませんでしたね」
マナリアは深呼吸をして、静かに敵の動向を探る。地上に2人。片方がメイジーを捕らえ、片方はこちらをじっと観察している。姿が見えないもう一人は空間跳躍で隙を狙っているのだろう。
「――――で、貴方がたの力はこの程度なのですか?」
普段の態度からは想像もできない冷酷な表情へと変わったマナリアは、呆れたように愚かな者達へと問いかける。
「はぁ……存外、面白みがありませんでしたね。あなた方など、私の知り合いの皆さんには到底及ばない……メイジーさん、この方々、まず生きていないので手加減は無しでも大丈夫ですよ」
瞬間、メイジーを拘束していた黒ローブがズタズタに引き裂かれる。その手の中にはマジックアイテムのナイフがあった。
「……クハハッ! ったく、やっていいならもっと早く言えってんだ、この駄天使ィ!! 残りの二人もズタズタに切り殺してやんよッ!! かかってこいや陰キャ黒ローブ共ッ!!」
「ひぃ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! この状態のメイジーさんは苦手です……」
などと優雅に掛け合いをしている隙をついて、背後から腕が伸びてくる。
――――おやおや、またそちらから訪ねてくれたのですね♪
バシッと腕を掴み引きつけ、振り返る勢いを使いウィリー式空手の肘打ちを黒ローブの額に撃ち込む。流石に頭蓋骨などと言う固い骨を拳で殴るほど馬鹿ではない。
ドゴッという音が遅れて聞こえ、ギシギシと大気が圧縮されていく。
「あらあら、当たらないと思って油断してましたかぁ? 今の“魔術”ですよ♪ 手のひらの魔術無効化、もう間に合いませんね♪」
全力で煽りをかますと同時に黒ローブの頭が拉げ、細かな影となって消えていく。返り血を浴びないようにすぐに距離を取っていたが無駄だったようだ。
「メイジーさーん! 最後の一人はどちらがやりますー??」
「あー、獲物は奇数じゃしょうがねえなッ! 今回はお前に譲ってやんよッ!」
「はーい♪」
空間転移で奇襲をしかけてきた、地上にいた黒ローブにカウンターで回し蹴りを命中させる。
「少し魔力を纏うだけで当たるなんて不完全すぎますねぇ。もっとマナリア魔法学院とかで有能な魔術を学ぶことを進言いたします。では必殺――――裁断脚!」
天使の翼による空中機動によって真上から振り下ろされる光の刃を纏った鋭い一撃が、黒ローブを真っ二つに切り裂く。
「マナリアァ! ユルサナイ! オマエヲ……オレタチハ、ユルサナイ!!」
怨嗟の声を上げながら、黒ローブは消滅していく。
「なんだ、喋れたんですか。それならばもっと煽って差し上げたのに……」
念願の必殺技が見事に決まってしたり顔で地上に降り立つ。すると、不満げにしているメイジーさんと目が合う。
「ねえ、最後のあいつのセリフ……完全にアナタを狙った襲撃だよね? 私、巻き込まれたんだよね?」
「な、何のことでしょうね……おかしな連中でしたねー」
メイジーの冷たい目線を防ぐように目を両手で覆って隠すと、膝をガシガシと蹴られる。
「ちょ、痛いっ。ごめんなさいって! 私のせいでした、止めて、分かったって!」
しばらくすると、メイジーは飽きがきたようで蹴るのをやめ、ふぅと息を吐いた。
「まあ、何。幽体っていうの? あーゆー奴には魔力を込めた攻撃しか効かないのね。まさかマジックアイテムがここまで有能だとは思わなかったわ。今後も見据えて、すぐに手元まで引き寄せられるように練習しておかないといけないわね。いい経験だったし、仕方ないから今回の件はチャラにしてあげるわ」
「メイジーさん! それでこそメイジーさんです!」
「ちょっとウザくなってきたわね」
「そんなっ!?」
――――しかし、この二人に訪れた安息など束の間のことだった。
伝書鳩ならぬ伝書梟がマナリアの手元に丸められ糸でくくられた一つの手紙を届けると元の方角へと飛び去って行く。
「何でしょうか……学院からですね、えーっと『非常事態、早く戻ってきて -アン-』。って! ヤバいじゃないですか!! 早く戻りますよメイジーさん! 緊急事態なので、転移魔術を使用します! さあ、私の手を!」
「いやいや、私は知らないよ? って、ちょっと何勝手に手を取っ――――
To Be The Continue
次回について
構成は
登場人物紹介(明日にでも)、1話(これ)、2話(一週間以内を目指す)~5話、プロローグ?、エピローグ
と予定しております。
内容は考えて有るのであとは私の執筆速度ですね。寿命が短い人の皆さんとは時間間隔が違うことに留意して気長にお待ちください。熾天使ジョークでした♪
(感想を書いてくれると嬉しいな!)