レーティングゲームに巻き込まれる事になった
「当麻君、少しいいかしら」
そんな上条を見て、リアスが声をかける。渋い顔の上条はそちらを向いた。
「今回こうしてあなたを巻き込んでしまった事、深く謝罪するわ。経緯はどうあれ人間のあなたをレーティングゲームに、ましてや私事に巻き込んでしまうなんて……これじゃあ、上級悪魔失格よね」
頭を下げるリアス。年上の女性に頭を下げられた上条は慌てて告げる。
「そんな、謝らないでくださいよ。リアス先輩と婚約者の約束をしたのもこっちですし、相手さんを怒らせたのも……こんな状態を作っちゃったのも上条さんですから。もうこうなったら腹を括ってやってやりますよ!」
無理やり作った笑顔は引きつっている。それを見たリアスはパチン、と指を鳴らした。何もない空間に黒い穴が現れ、中から小さな箱が落ちてくる。
「当麻君……あなた、悪魔に転生してみない?」
そう言ってリアスは箱の中から紅い物を取り、上条の前に置いた。チェスの駒……
「これは
まずはパワーアップ。視力や聴覚なんかの五感に、筋力や脚力。身体能力が著しく上昇して、怪我もし辛くなる。
次に長寿化。人間の寿命は長くて百年くらいだけれど、私達悪魔は一万年近くの時を生きられるの。
更に私の眷属になれば、冥界……悪魔達の住む世界に、土地を持てるわ!その土地の収入の一部はあなたに渡るし、その土地自体を自由に改造できるわ!!
他にもメリットが盛りだくさんよ!どう?私と眷属契約してみないかしら?」
詰め寄るリアス。それを手で静止しながら上条は質問をする。
「そ、それだけ聞くとすごく良く聞こえるけど、デメリットなんかもあるんでしょ?流石にそんなうまい話に乗せられる上条さんではありませんのことよ!」
そう返されたリアスは少し動きを止める。
「デメリット……デメリットと言ったら三つくらいね。
一つは昼間、太陽が上がっている時なんかは少し弱くなるわ。とは言っても眠くなるくらいで大したことではないかしらね。
二つ目は神社やお寺、教会なんかに行く時には許可が必要な事。天使は私達悪魔にとっては敵だから、敵の本拠地に行ったらダメージを受けてしまうの。同じような理由で神頼みなんかもできないわ。聖書の神に祈ると、かなりの頭痛がするらしいわ。試したことは無いけれど。
三つ目、あなたが私の眷属になったら、少なくともレーティングゲームには参加しなくてはならないわ。私はこう見えて、レーティングゲームの王者を目指しているの。だから将来的に、今回のような戦いに幾度と参加してもらう事になるわ。レーティングゲームは絶対に死にはしないけれど、それでも痛みや怪我はある。
これくらいかしら。どう?メリットとデメリットを踏まえて、考えてみてほしいところね」
上条はそれを聞いて目を閉じ、熟考する。正直戦いなんかに巻き込まれたくない。平和に暮らしていくのが上条の本来の目標だ。
しかし、アーシアと関わり、世界の裏を知ってしまった。実際に堕天使達と戦った。教会の使いであるアーシアを家に泊めているし、戦士である土御門とも仲が良い。こうして悪魔達とも縁を持った。これからもトラブルに巻き込まれる可能性はかなり高い。
先日逃した白髪の神父を思い出す。堕天使達とは違いあいつは依然逃げたままらしい。いずれ襲撃されてもおかしくはない。
先程敵視された炎を操る悪魔を思い出す。
最後に、アーシアとの約束を思い出す。上条当麻に期待し、その身を預けてくれた少女の笑顔を、脳裏に浮かべた。
「どう、とは聞いたけれど、別に今すぐに答えが聞きたい訳ではない……」
「いや。俺、決めました」
リアスの言葉を遮って宣言し、目を開ける。紅髮の少女と視線がぶつかった。
その目を真っ直ぐに見返して、上条は言う。
「俺は、悪魔になりません!!」
「よろしく、トウマ……え゛っ!?」
両手を広げて歓迎の意を表したリアスは、そのまま固まる。そんな彼女に向かって上条は続けた。
「よく考えたら俺、修学旅行で京都の寺とかに行ったりするから、そんな時に悪魔だと他の奴らと一緒に楽しめないし。それにレーティングゲーム?ってのもよくわからないけど危なそうだ。土地とか貰っても俺が指示なんかしたらあっという間に荒野になっちゃうだろうし。上条さんの夢は管理人さん的ホンワカお姉さんキャラと結婚することですから、悪魔にならなくてもいいかなーって」
真っ直ぐリアスを見て理由を言い放つ上条。最も心の中では別の理由も存在していた。
(アーシアや土御門達教会の戦士は人外を敵と考えてる。俺が悪魔になっちゃったら、アーシアを敵に回してしまうかもしれない。逆に、人間のうちは恐らく俺達は教会の庇護対象になれるはず。悪魔になって教会側と敵対するより、どっちとも付き合って双方の援護を受ける方が良いはずっ!)
そんな上条の心中には気付かず、リアスは上条を説得する。
「し、修学旅行の件は大丈夫よ。私が寺院の参拝許可証を貰うから。そ、それに土地だって専用のプロを付けるし、レーティングゲームだって慣れれば熱いバトルになるはずよ!!」
まさか断られるとは、という顔でリアスは上条を説得する。対して上条は頭をガシガシと掻きながら言う。
「それに、悪魔になったらうちにある大量のお土産が一気に牙を剥くという不幸に見舞われそうなんで、やめときます」
リアスは言葉をなくす。お土産というものは時たま、異常なくらいに神聖なものや、途轍もなく禍々しいものもある。それこそ、並みの悪魔なら触れるだけで消滅するようなものだ。しかもそれは魔力や魔法の力ではないので、幻想殺しで防げるとも限らない。それを理由にされたらこれ以上引き下がれなくなる。
「……眷属になりたかったらいつでも言っていいのよ。困った時に私達の誰かを呼べる魔法陣を渡しておくから」
魔法陣は一瞬で粉砕され、リアスは泣き崩れた。
次回、今度こそ特訓。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!