「他の駒と違ってあなたがそのような傷を負ってもリタイアできないのは、あなたに転送システムが反応していないから、でしょう。おそらくあなたは無意識的に魔力を打ち消している」
レイヴェルは炎の矢を放つ。その速さに反射的に右手が前に出た。掌に触れた瞬間、炎の矢は霧散する。
「なるほど、その右手に触れると魔力を消せるのですか。その能力……神器かしら?その為に転送されない。となればタネの割れたあなたが取れる手は、ただいたぶられながら王が取られるのを待つのみ。それではあまりにも可哀想だと思いましたの。
あなたがここで棄権する、とそう言ってくださるなら、私達はあなたに一切の攻撃を加えませんわ。私達としても最優先は王。ここで時間を食っては先を越されてしまいますので」
上条はレイヴェルの表情を見る。彼女はにこやかに笑っていて、その裏が読めない。
「先を越される、なんて余裕面してるが、うちの大将だってそんなに弱くないぜ?お前らがここで止まってる間に、そっちのチームが全滅してるかもしれねぇ」
その言葉にレイヴェルはクスクスと音を漏らす。
「なるほど確かに、リアス様の滅びの魔力を使われては私達とは別に進んでいる兵士達が
ですが、彼女は我が兄には勝てませんわ。いえ……
悪魔の最上級貴族、フェニックス家。その身体は炎で出来ており、その生命は寿命を全うするまで消えはしないという、不死身の一族。
リアスは事前にライザーについてそう語っていた。
「我らフェニックスの不死の炎はリアス様の滅びの魔力とは圧倒的に相性がお悪いのですわ。身体が一片でも残っている限り炎と共に再生する。それがフェニックス。リアス様が兄を存在ごと消滅させる気であれば可能性は幾らかあるかもしれませんが、今回は両家の交友もある手前、そのようなことはできない。
となれば我が兄は無限に再生を繰り返します。それが続く限り……王が蘇る限り、我々に負けはありませんの」
「そんな……じゃあ俺たちは最初から……」
乾いた喉から出る掠れた声を、レイヴェルは強い言葉で肯定する。
「あなた方は
レイヴェルに向けられていた右手が、ダランと下がった。
少しして、上条の口が開き、ポツリポツリと言葉が流れ出る。
「塔城に言われたんだ……この戦いは火の粉を払うようなもんだって。俺自身が、自分を守るために戦うんだって、そう思って戦ってきた。その結果がこれだ。初めから負ける為の戦いで、多勢に無勢でぶっ潰されてK.O.負けかここで尻尾を巻いて逃げるか選ぶハメになっちまった」
折れた。レイヴェルは心の中でほくそ笑む。
しかし、その心に冷や水を浴びせるように、上条の声は続く。
「こうなったのも……いや、この戦いが始まったのも、俺の
なにより、ここでアンタの兄貴を倒せばお姫様の結婚は破棄、だろ?そうなれば俺への依頼は達成だ。
ここでお前らをぶっ飛ばして、不死身男をぶっ倒して、そして二人に土下座して、それで全て解決。
そうしないと、ダメなんだ。
そうしないとあの天然お姫様や、お姫様を守るって言ってた先輩や同級生や、俺を見送ってくれた居候に、顔向けできないだろうがよ!」
拳が握られているのを、レイヴェルは見た。彼女は仲間達に、目で合図を送る。
「それが答えならば、残念という他ありませんわ。今のあなたでは台をひっくり返す力さえ残っていないことに気づいていないのは、もはや哀れ。
しかし、その王に対する忠誠心は賞賛に値しましてよ」
イザベラが上条の真正面からまっすぐ、勢いよく飛び出す。狙いは上条の顔面、一発で意識を刈り取る事。同時に背後からは、ニィの爪牙も迫る。
上条はただ真っ直ぐ、目の前の敵を見た。一番最初と同じ、後の事を考えない全力のストレート。大振りで避けやすく反撃も容易いが、おそらく後ろから何度も自分の肉体を抉った爪が来ているだろうとわかる。どちらかを対処しても残った方にやられるだろう。
「逆に言えば、背中の攻撃を喰らう覚悟があれば正面をぶっ飛ばせるって事だ!!」
眼前に広がっていく拳を、ギリギリで避け、同時にカウンター気味に彼女を狙う。わずかに掠った頰から、紅い血が滲んだ。
避けられてなお余裕を持った表情のイザベラ。上条にもその意味はわかった。背後に迫る気配、しかしそれを上条は無視する。
「たった一人に大勢で、タカってんじゃないわよ!!」
バリッ、と空気を裂く電撃の音が上条の耳に届き、イザベラの仮面に隠されていない、晒された方の顔が驚愕に歪む。上条はその顔面に向かって、全力の一撃を叩き込んだ。
『ライザー・フェニックス様の「
次回、対峙。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
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