ハイスクールI×B   作:兵太郎

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もうそろそろ禁書もロシア編ですね。終わりが近づいている……!


不意

「ちょっとアンタ!傷だらけじゃないの!?何でこんな傷で強制リタイアされない訳?」

旧校舎の方から走ってきたのは、リアスの僧侶(ビショップ)御坂美琴。上条は命拾いした、と内心ホッとする。一人よりも二人の方が、心強い。

 

「体育館の作戦は成功したけど、相手の女王に襲われてね!そっちは朱乃先輩が引き受けてくれたけど、今度は敵兵士達と鉢合わせちゃって、遅くなったわ。アンタは休んでて、私が終わらせるわ!」

残った敵から上条を守るように間に割り込みながら、御坂は申し訳なさそうに謝る。

「途中でぶつかったやつらはどうしたんだよ?脱落は聴いてないぞ」

「安心して、もう終わるわ」

上条がその言葉の意味を聞き返そうとした時、アナウンスが半分以上更地となった森林に響く。

 

『ライザー様の「僧侶(ビショップ)」一名、「兵士(ポーン)」三名リタイア』

 

御坂はニッコリと笑って言う。

「さすがは私達の王、よね!

 

これで敵はあと四人!味方もあと四人!互角(イーブン)にまで持ち込んだわよ!」

 

バチバチ、と御坂の身体から電気が漏れる。それらはだんだんと形を為し、彼女の掌で槍の形に変わった。

 

「そこのヘンテコ髮の剣士!私がぶっ倒してやるから覚悟しなさい!」

 

レイヴェルの護衛に入っていた騎士(ナイト)……シーリスは一連の流れに驚く。ネコミミ姉妹とイザベラの連携は(接待レーティングゲームを除いて)抜け出されたことはない。それがただの人間相手に全員をリタイアさせられ、強引に抜け出されたのである。シーリスは驚愕と共に、賞賛を送りたいものであると思った。

 

(しかして抜け出した人間はもうボロボロ、救援が来なければニィの一撃で確実にダウンしていたはず。もう戦力にはなるまい。

 

こちらには女王(ユーベルーナ)が立っている。そして王は恐らく、滅殺姫を捉えた。ここで不穏分子を排除できれば、勝利は揺るがない…)

 

そう考えて、ハッと気づく。

 

 

 

『敗北』、その可能性を自身が考えてしまっている。

 

「…っ!我が名はシーリス!ライザー様の騎士の一人!完全なる勝利の為に、お前達の首を貰う!」

 

嫌な思考を取り払うように、シーリスは高らかに告げる。その名乗りに答えるように電撃が一筋、シーリスに向かって突っ込んでくる。

 

「こんな小細工は効かん!」

シーリスは持っている大剣で電撃を弾くと、二の矢を放とうとする御坂に突撃する!大剣の重量を、御坂は電気の槍を両手で支えてなんとか受ける。力で押し切ろうとするシーリス、それを拒む御坂。そこに--

 

 

「そのまま動きを止めておきなさい、シーリス!」

 

レイヴェルが巨大な火の玉を創り出し、御坂達に向かって飛ばした!

 

「っ!?ちょっと、こっちにはあんたの仲間もいるのよ!一体何考えて…」

「これは『犠牲(サクリファイス)』戦法、立派なレーティングゲームの戦法だよ。うちはこれが十八番でね。悪いが私と一緒に消えてもらう!」

 

御坂は回避を一瞬考えたが、躊躇する。御坂が避けの一手に回れば、騎士のスピードを持つ相手がすぐに追いつき、叩き斬られるだろう。しかし、電気で反撃する時間もない。火の玉は今にも自分達を吞み込もうと迫っている。

 

(何を選択するべきなの…?どうしたら、この場を無事に……っ)

 

炎によって照らされ、シーリスの後ろに影ができていた。自分の影法師の後ろにもう一つ、ツンツン頭の影法師が立っている。

 

「……任せたわよっ!!」

 

御坂は槍を支えながら、電気の魔力を練っていく。火の玉との距離はもう一メートルもない。シーリスの力が少し緩んだその機を逃さず、御坂は電気の槍を……消した!

 

御坂は急いで横に小さく跳ぶ。支えを失った大剣が地面に叩きつけられるのを見ながら、御坂はスカートのポケットからコインを取り出す。

 

ピン、と親指で弾いたコインが静かに宙に舞うのをシーリスは見た。

「攻撃で火の玉を掻き消そうと言うのか!?無駄だ!ここまで迫った炎を攻撃したところで無数の焔となって我々に降り注ぐのみだ!」

 

迫ってくる炎から目を背け、明るく照らされた御坂に攻撃を加えようとするシーリス。

 

その御坂の姿が、急に暗くなる!……いや、炎を出す前に戻ったのだ!

シーリスが振り向くと、あれ程赤々と燃えていた火の玉はすっかりとなくなっていた。そして、

 

「なん……っ!お前!」

 

シーリスから少し離れた左後ろ、火の玉があったら僅かに触れている、そのくらいの位置に上条当麻が立っていた。前に差し出した右手を下ろし、逃げるように後ろに走っていく。

 

「待てっ……いや、それより!」

 

火の玉と上条に気を取られてしまったが、自分の戦っていた相手はすぐ側にいる。

そして彼女は先程、何かを行なっていなかったか?

 

地面に少し埋まっていた剣を土ごと抉り取り、シーリスは力任せに大剣を薙ぎ払う。が!

それより僅かに早く、コインが再び御坂の手元に収まっていた。御坂は親指に力を込め、それを一気に弾く!!

 

 

今まさに大剣の切っ先を御坂に届けようかというシーリスの腹部に、重い衝撃が走る。

 

「ごっ、がああああああああぁぁぁっ!?!?」

 

衝撃をその場で抑えきれず、地面から離れた身体を吹き飛ばしたコインが連れて行く!その直線上には、レイヴェル・フェニックス!!

 

「な、何ですって!?」

レイヴェルは驚く。先程まで離れた位置にいたシーリスが、光に包まれながら目の前に現れたのだから!

 

「電力をありったけ込めた超電磁砲(レールガン)、受け取りなさい!!」

言うよりも早く、レイヴェルとシーリスの身体が衝突し……レイヴェルの右肩から先が持っていかれた!!

 

「……驚きましたわ、レーティングゲームに参戦して早十数度……肉体を失ったことはありませんでした。

 

ですが!我が兄がそうであるように私もフェニックス!これくらいの再生、容易ですわ!」

 

リタイアのアナウンスを遮るほどに燃え盛る炎の音と共に、レイヴェルの右腕が再生される。そのまま両手を前に突き出し再び炎を出す、その時!!

 

「どぉりゃあああああああああ!!」

 

背後の木から飛び出してくる影が一人、上条当麻だ!

 

「っ、あなたの右手に触られれば、確かに再生はうまくいかないかもしれません。ですが!」

 

レイヴェルは地面に草花に火をつける!レイヴェルの足元に炎の柵が現れた!

 

「戦いの場に木々が生い茂っているこの地を選んだのは失敗でしたわね!このようなトラップをいくらでも作れるなんて、私にとっては絶好の狩場ですわ!」

 

(足元にある炎、それを彼が消すためにはしゃがんで炎に触らなければならない。しかしそれでは走った勢いが消されるし右手で叩けなくなる。彼はそのような愚を犯しませんわ。

 

となると彼が取れる手は一択、柵を飛び越えてその勢いで私を殴りつけることのみ。そして、そう来るとわかっていれば対処も容易い!)

 

レイヴェルは既に、宙に火の粉を散らしていた。魔力で作った火の粉は、レイヴェルの任意でいつでも爆発させることができる。女王《クイーン》ユーベルーナの爆発魔力の模倣だった。

 

(あなたが地を離れた瞬間、上空に舞わせた爆弾があなたを焦がす!全方位の攻撃はあなたはきっと対処できない!これまでの傷がそう物語っていますわ!)

 

飛び出してきた上条はレイヴェルにどんどんと近づいていく。そして炎の柵に辿り着き……

 

地に右手をつけ、炎を消した!

 

「な!?なぜ跳ばないの!?それでは攻撃できないはずっ!?」

 

驚愕するレイヴェル、その顔面に拳が迫っていた。右手ではない。左手だ!!上条は地面に手をつけ、側転の要領で勢いよくレイヴェルを殴った!!

 

レイヴェルは大きく吹き飛ぶ!同時に感じたのは、重い衝撃と鋭い痛み!欠損にも痛みを感じずただ再生するだけだった頰から送られてくるのは、SOSの電気信号!

 

そのまま木に叩きつけられたレイヴェルには、なぜ殴られたのか、なぜ痛みを感じたのかわからない。追撃のために迫ってくる上条に怯えながらも、必死に頭を回転させる。

 

「まさかあなた、左手にも神器を……」

 

頭に過ぎった考えを、上条は否定する。

 

「そんなんじゃねーさ。ただ、悪魔に効くっていう聖なるモンを手に付けてぶん殴っただけだ。リアクションからして、どうやら不死鳥にも効果があるみたいだな!」

 

上条の左拳が再び眼前に迫る。レイヴェルは彼の拳に十字架のネックレスが巻きつけられているのを最後に見た。

 

『ライザー様の「僧侶」、一名リタイア』

 

レイヴェルが光となったのを確認した上条は、膝を地に落とす。集中が途切れた途端にダメージが戻ってきたのだ。御坂がすぐに駆け寄ってきた。

 

「大丈夫!?……傷は増えてないみたいね。やるじゃない、アンタ!フェニックスを倒すだなんて!

お陰で状況はだいぶこっち有利だわ。あとは朱乃先輩が相手の女王を倒せば--」

 

 

ドン、という音が遠くで響いた。

『リアス様の「女王」、一名リタイア』

 

「な、朱乃先輩が!?じゃあ今の爆発は…」「ええ、私の魔力ですわよ」

 

空からの声に反応する前に、御坂が吹き飛ばされ光と消えた。

 

「先程の爆発は時限式でして。雷の巫女様にはお二方の気をそらすために今まで少々倒れていただいていたのですわ」

 

空にいたのはライザーの女王、ユーベルーナ。彼女は上条に向かってお辞儀をする。

 

「御機嫌よう、勇気ある人間のお方。我が主が新校舎の屋上にてあなた様をお待ちです。そちらの王もご招待しておりますので、ぜひお越しくださいませ」

 

それだけ言うとユーベルーナは再び飛び立つ。一人残った上条は、拳を地に叩きつけた。

 

 




次回、vsフェニックス!!

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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