禁書の新刊の表紙、またまた謎のコンビですね。
ヅラと悪魔がどう絡むんでしょうか。とても気になる。
新校舎は三階建てで、登るのが大変だ。身体が悲鳴をあげるのを精神でなんとか引っ張って、上条はやっと目の前にしたドアノブに手を伸ばす。月光のみが場を照らす屋上、そこに彼女はいた。
「当麻!」
目を潤ませながらこちらに駆け寄ってくるのはグレモリー眷属の主人、リアス・グレモリー。そして、その後ろからやれやれと言うように肩をすくめる男が一人。
「おいおい、未来の夫を放置して人間に迫るなよ……
よく来たな、魔術師。レイヴェルとぶつかった時は残念だと思ったが、まさかアイツを乗り越えてくるとは」
ライザー・フェニックス。上条が倒さなければいけない相手は、落下防止のフェンスから身体を離すと、上条達に二歩近づいた。
「アイツらは強敵だったさ。俺も傷だらけだ」
喋っている今も傷は疼く。それを聴くとライザーは懐から何かの容器を取り出し、上条に放り投げた。投げられた物は落ちぬように取ってしまうのは上条の貧乏性ゆえ仕方ないことだ。
「これは…なんだ?中に水が入ってる…」
「『フェニックスの涙』だ」
その言葉にリアスが、そしてユーベルーナまでも目を見開く。
「ライザー様!なぜフェニックスの涙を人間ごときに!?」
「フェニックスの涙?なんだそれ?」
価値をわからない上条に、怒り気味にユーベルーナが告げる。
「フェニックスの涙はフェニックス家のみが作れる秘薬!いかなる傷をも即座に癒すその力のために魔界でも高値で取り引きされており、レーティングゲームでもその反則級の速度から一試合に二つまでしか使ってはならない、というルールが設定されたほどの超高級回復薬ですわ!
それを敵の、それも人間などになぜ!?」
「理由は三つある」
ライザーは翼で空にゆっくりと浮かびながら、口を開く。
「一つ目は外聞的な理由。俺様がほぼリタイア寸前の傷を負った、悪魔でもなく神滅具を持ったわけでもない人間を燃やし尽くしたと言われれば人聞きが悪い。グレモリー家との仲が拗れるのも困る。グレモリー家も『フェニックスの涙』のお得意様の一つだからな。
二つ目は、交渉的な理由。
リアスやその眷属に『万全の状態なら勝てた』などとゴネられるのも厄介だし、そのせいでもう一戦などとズルズル先送りにされるのも面倒だ。
そして三つ目……それはお前ならわかるだろう?ユーベルーナ」
ハッ、と目を伏せるユーベルーナ。彼女に向かってライザーは続ける。
「俺の眷属は『
それほどまでにお前を信頼している……だが今回はどうだ?
お前以外の全ての駒を取られ、さらにお前は敵女王と相討ち寸前にまで行った。そして『フェニックスの涙』を使用した……」
言われてみれば確かに、ユーベルーナの服には所々に大小様々な穴や切れ目がついている。しかし、その下から現れている肌色に傷や腫れはなく、何かしら回復したのだとも言えそうだ。
「グレモリー眷属は今回が初レーティングゲームのルーキー、そんなチームにこの実質無敗の俺達が。残り二人になるまで追い込まれ。フェニックスの涙を使い。その上で傷だらけの人間を燃やしてなんとか勝利した。そんなのは俺のプライドが許さんと言うのだ!
せめて一つでも挽回しておかなければならない。お前がフェニックスの涙を使用しなければ起きなかったことだ、ユーベルーナ。
……退がれ」
「……はっ、出すぎた真似を致しました」
ユーベルーナの身体が光に包まれていく。先ほどまでよく見た現象と同じ、リタイアの合図だ。上条は消え行くユーベルーナを見ながら、『フェニックスの涙』を使用するか否か逡巡する。ライザーに視線を送られ、やっと容器の蓋を開けた。左手に涙をかけると、なるほど確かに一瞬で引っかき傷や腫れがなくなり、戦闘前と変わらない肌に戻ってしまった。傷跡を右手で触っても傷が戻ったりはしない。どうやら魔術的に見せかけているだけでなく、本当に回復しているようだ。それを確認した上条は上着を脱ぐと、上半身に涙を全てかける。脇腹の傷はなくなり、背中の痛みも一気に引いた。脱いだ上着を再び着ながら、上条は漏らす。
「すごい回復速度だな……アーシアの神器以上だ」
「え、その話詳しく聞」
「回復したようだな……ならば喰らえっ!!」
リアスの言葉を遮るように、ライザーは炎の塊を上条に飛ばす!レイヴェルの火球より大きく、そして速い!上条は右手でギリギリ炎を受け止める。やはり炎は消えていった。
「なるほど、レイヴェルの言うとおり右手で触れた魔力を打ち消せるというのか。厄介だな。
ではこちらも本気で行くぞ!!」
そう言うとライザーは翼を広げて高く飛び上がる。月と重なったそのタイミングで、ライザーは十個の炎球を繰り出す!!
「こんなもん……」
上条は右手を前に出し、一気に二、三個の炎を打ち消す!その後左のほうから迫ってきている一つを避け、右側から来る炎を消す……とここで。
避けたはずの炎が弧を描き、再び上条に向かって迫って来る!視界の端に映る炎に気づいた上条は慌てて方向転換し、何とか炎に触れる。が、無理な方向変換のせいでバランスを崩し、転倒する!
「喰らえ、魔術師!!」
残り全ての炎が迫ってくる!上条は背を地面につけ、右手を顔の前に持ってくる。顔面以外の火傷は覚悟して、目を瞑る上条。
「……おいおいリアス。これが終わったらすぐに構ってやるってのに、もうちょっと待っててくれよ」
上条が目を開けると、炎は全て消えていた。上条の目の前には黒く禍々しい謎の物体。いや、上条は特訓の中で一度見せてもらったことがある。滅びの魔力だ。
「何よライザー。さっきまで数で有利だったくせに、ちょっとでも不利になると焦っちゃう訳?
この戦いは私の結婚を賭けた戦いよ。なら私だって最後まで戦わせてもらうわ!」
リアス・グレモリーは真紅に染まった髪をかきあげると、ライザーに滅びの魔力を打ち出した。
次回、破損。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!