駒王学園旧校舎、オカルト研究部室。リアス・グレモリーの根城に今、二人の女が乗り込んでいた。栗毛をツインテールにまとめている女に、短髪の青髪に緑のメッシュを一筋入れた女。どちらも若々しく高校生のように見える。
栗毛の女が真剣な面持ちで口を開く。
「私はローマ正教の紫藤イリナ、こっちはフランス聖教のゼノヴィアです。以後、お見知り置きを」
「ローマ正教…イギリス・ロシアと並ぶ十字教三大勢力の一角がどうしてわざわざこんな東方の島国に?名前からしてあなたは日本人かハーフのようだけれど……」
上座に座るリアスはゆっくりと脚を組み替えながら、彼女らにここに来た理由を問うた。対して栗毛…イリナの目が細まる。
「先日、我々十字教の各派閥に置いて保管、管理されていた聖剣エクスカリバーのうち三本が奪われました」
「……?エクスカリバー三本?聖剣ってのは大体一本なんじゃ?」
「あらあら、美琴ちゃんはエクスカリバーの話をしていなかったですわね」
御坂の疑問に、その側についていた朱乃が答える。
「エクスカリバーは大昔の戦争で四散してしまったのですが、折れた刃の破片を集め、錬金術によって七本の新たな聖剣として生まれ変わったのですわ」
「その代わり性能は落ちてしまったが、ね」
先程までだんまりを決めていたもう一人の少女……ゼノヴィアが、背に抱えていた巨大な物体の封を解く。
そこから溢れてくるのは、悪魔にとっては禍々しいほどの聖のオーラ。御坂はブワッ、と全身から汗が流れるのを感じた。
「これは『
ゼノヴィアはそれだけ言うと、再びエクスカリバーを布で覆う。よく見るとその布にも呪術的な文字列が並んでいた。普段はその布によって封印されているのだと御坂はわかった。
「そしてこちらにもう一本!」
イリナが懐から長い紐のようなものを取り出す。それはうねうねと独りでに動き出し、やがて一本の刀へ姿を変えた。
「私の方は『
少し自慢げに鼻を鳴らすイリナ。彼女にリアスが苦言を呈す。
「こちらは悪魔になって年若い者が多くいるの、できればいきなり聖剣を取り出すのはやめてほしいものね」
その言葉にハッとしイリナは剣を元の紐状に戻すと、エヘヘと頬をかいた。
「……それで、奪われたエクスカリバーがこんな極東の島国の、一地方都市とどう関係があるのかしら?」
淡々と話すリアス。それに対しゼノヴィアが口を開く。
「エクスカリバーはイギリスに二本、ローマに二本、ロシアに二本……あったが特例でロシアとフランスで一本ずつ。残りの一本は先の大戦で何処かに消えてしまい行方不明となった。
そのうち、イギリスとローマのエクスカリバー一本ずつ、そしてロシアのエクスカリバーが奪われた。奪った連中は日本に逃れ、そしてこの地に持ち込んだという」
リアスは額に手を当て息を吐く。最近この領地はこういったトラブル続きだ。
「エクスカリバーを奪った者に検討は?」
問いにゼノヴィアは目を細める。
「奪ったのは『
言葉にリアスは目を見開いた。
「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?失態どころではないわね。でも確かに、奪うとしたら堕天使くらいだわ。上の悪魔にとって聖剣は興味の薄いものだもの」
「奪った連中は把握している。グリゴリの幹部、コカビエルだ」
「コカビエル……古の戦いで生き残った、堕天使の幹部じゃない!聖書にも記された者の名前が出てくるとはね」
リアスも流石に大物の登場に冷や汗をかいた。ゼノヴィアもため息をつく。
「上も大した任務を押し付けてくれるよ……先日からこの町に神父--エクソシストを秘密裏に潜り込ませていたんだが、ことごとく始末されている。おそらくコカビエル陣営の者による犯行だ」
「なるほど。異種狩りの専門家、エクソシストが根こそぎやられた原因は確かにコカビエル……もしくは、エクスカリバーの力でしょうね」
ゼノヴィアは話を終えたとでも言うように、出された紅茶と茶菓子に手をつける。それを見て横のイリナがハッキリと言う。
「そこで私達はあなた方に依頼……いや、注文しておきます。今回起きているのは私達教会と堕天使のエクスカリバー争奪戦。それにこの町の悪魔が一切介入してこないことです」
「つまり、そちらに今回の事件に関わるな、と言いにきた」
「えっ……私達に協力しろと言いに来たんじゃ……?」
疑問に感じ、口に出す御坂。その言葉にゼノヴィアが答える。
「私達教会は君達悪魔の事も多少疑っている。もしや堕天使と協力しているのではないか、とね。聖剣を教会側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう?堕天使と同様利益はある。それ故に手を組んでいてもおかしくない……上はそういう考えのようだ」
その言葉を聞いて反論しようとする御坂。しかしそれを朱乃が抑える。朱乃はリアスを見た。イリナとゼノヴィアも、彼女に視線を戻す。
「……」
リアス・グレモリーは困り顔だ。精悍な顔つきがこの話で崩れた事にイリナは驚いた。
「……結論から言うと、私達グレモリー眷属はそちらの戦いに手を出すことはないわ。魔王の妹として、そしてこの地を守る領主として約束してもいい。
--ただし、おそらく私の眷属はすでにこの事件に関わってしまっている」
イリナの表情が驚きに変わる。リアスは朱乃とこ猫の間に空いた間を見た。
「今日ここにいない私の眷属の一人、木場祐斗。彼はエクスカリバーに対し、並ならぬ『憎しみ』がある--」
〜〜〜〜〜〜〜
一方その頃上条家。ここには教会の者が三人、集っていた。
上条家の居候、アーシア・アルジェント。現在は駒王町の監察任務を任されている。彼女の側にはこの家の現家主、上条当麻も侍っている。
駒王学園の高校に通う教会の戦士、土御門元春。現在は堕天使側への諜報活動を行なっている。
そして、イギリスからやってきた少年、兵藤一誠。彼は今日ここに来た理由をその場にいる者達に伝えた。
「いやー。しかし今日この場に、グレモリー眷属の悪魔がいるなんて運がいいぜ。一応王のリアス・グレモリーのところには人を寄越しているんだけど、末端にも知らせておいた方が全体に行き渡りやすいだろうし……」
エクスカリバー奪還作戦について喋り終えた一誠はホッと一息つく。その胸ぐらを掴む者がいた。
「……なんだよ?末端って言われて怒ったか?悪い、そう言う意味で言った訳じゃ……」
「三本のエクスカリバー、それに僕達が関わるな、だって?
ふざけるな!!」
木場は一誠を床に叩きつける。一誠は受け身を取りながら木の板を転がった。
「エクスカリバー……あれは絶対に僕が破壊する!破壊しなければならないんだ!それを邪魔するようなら、教会の人間だって容赦はしない!」
木場は空中に手をかざす!彼の右手から、鉄の刀が顕現する!
と、同時に。
木場の体幹がふらりとブレた。彼はそのまま床に倒れこむ。それを見て一誠は、安心したように太い息を吐いた。
「センキューな、助かったよ……土御門」
上条がそちらを振り向く。土御門元春は床に小さな箱を置き、何かの呪文を唱えていたようだ。それが終わると彼も小さく息を吐いた。
「やはりこうなるか……木場祐斗。こいつの因縁と怨念は相当に深いようだ」
「因縁…?土御門、木場先輩について何か知ってるのか……?」
「ああ、そうだ。この機会だ、お前達に話しておく」
土御門はズレたサングラスをかけ直しながら、ゆっくりと口を開いた--
次回、過去。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!