めぐみ…俺がきっと…。   作:たけぎつね

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多分これから週一くらいのペースになります


それぞれの意味。

キーンコーンカーンコーン

 

今日も、学校が始まる。

誠司とめぐみを置き去りに、チャイムが時間を無慈悲に告げる。

 

「「「起立気をつけ、お願いします」」」

 

いつもと同じ。みんな、いつも通り。

ひめ達にとってそれは、非常に辛いものがあった。

勿論他言する訳にもいかないので、めぐみと誠司が何故休んでいるのかと問われても、分かんないよとしか言えなかった。

 

二人のいない教室というのは、色が無くて白黒だ。

楽しくない。あんなにいつも楽しく学校に通っていたのに。何でだろう。あ、また。

 

───最近、疑問ばかりが浮かぶようになっている気がする。だって、分からないことだらけだ。

 

何で誠司は私達と戦おうとするのか。

何で誠司は地球や世界を壊そうとしているのか。

何でブルーを殺そうとするほどになってしまったのか。

めぐみを連れ去って何をする気なのか。

めぐみと誠司とレッドは何処にいるのか。

誠司のあの力は何なのか。

本当に洗脳じゃないのか。

 

予想くらいはあるが、本当のところはどうなのか分からない。

 

やっぱり、私がアクシアの箱を開けなければ良かったのかなと思う。

もしも私が箱を開けなければ、世界が幻影帝国に侵略されることもなかった。

 

プリキュアも、そして勿論いおなの姉のような、ファントムにハントされた世界のプリキュア達もいなかった。

 

めぐみがプリキュアになってなければ誠司は傍観者になってしまうこともなかった。

こんなに辛くなかったはずなのだ。

 

ブルーが斬られることも、誠司が誰かを殺そうとするほどに絶望することもなかったはずなのだ。

 

確かに、私は箱から助けて、と叫ぶ声を聞いて開けてしまった。中に封印されていたのがそんな悪者達だったなんて知らなかった。だけど、そんなの屁理屈に過ぎない。

 

話を聞く限り、根本はブルーとミラージュの失恋、隕石衝突による惑星レッドの破滅からの妬み。

 

私に原因の一つがあるのだから、私が責任を取るべきだと思うけど、どうすればいいのか分かんないよ…。

 

「…し…き?」

 

皆は、助けてと言われたから助けたんだからひめが優しいだけだよ、と言ってくれるけど…私はやっぱりそれでは納得出来ない。めぐみと出会いたてのときはそう思うことにして逃げていたけど、もう逃げたくないから。

とはいっても、私は誠司を倒して、止めるくらいしか考えが思いつかない。んー。

 

「……白雪?」

 

「ひ、ひゃぃっっ!?」

 

いつの間にか先生に当てられていたようだった。

考えていて全然気づかなかったが。

 

「ぼーっとするな。珍しい。今日は愛乃も相楽も休みでこっちは驚きで参ってるんだよ…。さ、早く答えろー、一次関数の基本式は?」

 

「えっと…y=axで………あ、+bです」

 

「白雪、一発じゃないとは珍しいな。どーしちまったんだ?クリスマスイブで浮かれてるのか?確かに本当なら冬休みだったがな!まさか学級閉鎖のせいで延期とはな!残念だったな!んじゃ、次、椎名!Xが2、yが4のとき…」

 

あー、そういえば今日はクリスマスイブだっけ。

きっといつもだったらもっと楽しい一日だったろうな…。白馬の王子様とクリスマスデート!とか言って騒いだりして。そんなことを考えている余裕はないけど。

 

溜息。

 

いっつも私、ダメダメだ…。めぐみだったら、ゆうこだったら、いおなだったら、どうしてたのかな。

もし私が誠司の立場になってたら誠司はどうしたのかな。

 

皆みたいに出来たら。もし私が、

めぐみみたいに、明るくて、自分のことなんてかえりみないほどに誰かのためにいつも何かしてて、周りを引っ張っていってくれるような人だったら。

ゆうこみたいに、いつも皆を見守って、優しく包んでくれるような人だったら。

いおなみたいに、強くて、冷静に周りを見て判断できるような本当に賢い人だったら。

誠司みたいに、他の人の思いを汲み取って、アドバイスしたり励ましてくれて、自分の気持ちを押さえてでも他人を思いやれるような人だったら。

 

もっと状況は良くなってたのかな…。

あー!もう!分かんないよー!!

こんな自分、だいっ嫌いだ。

少し開いた窓から、そよ風がひめの頬を撫でた。

 

『ひめは凄いね』

『ええっ!?どこが…!?』

『だって、何回倒されちゃっても諦めずにサイアークと戦ってるもん!凄いし偉いよっ!』

 

まだ出会って間もない頃、めぐみに言われた言葉だった気がする。あの日もこんなそよ風が吹いてたっけ。

すごごごーく嬉しかった言葉だ!

 

『ひめちゃんはひめちゃんらしくいればいいのよ?みんな違うのは当たり前。いい意味でも、悪い意味でも。自分の苦手なところを自覚してるひめちゃんなら、きっと乗り越えてもっと良くなれると思うの』

 

『他人みたいになりたいって、それだけ他の人のことを見れてるってことでしょ?とっても良いことよ?それに、私はお姉ちゃんのことがあってひめのこと、恨んでた…。でも、ひめは悪くないわ。事実、幻影帝国は復活しちゃったけれど、助けてって悲鳴が聞こえたから助けた、それだけのことなのよね?優しいのよ、ひめは。それに、ひめの元気なままでいてほしいわ』

 

ゆうこと、いおなに励まされたときの言葉!

いつの間にか消えかかっていた言葉。

そうだよね…。

前を向け、私!誠司を止めるんだ!

 

悪口を言う人は、悪口が自分に帰ってくるように。

誰かを傷つければ自分も罪悪感で傷つくことになるように。

悲しいことを考えていたら、それこそ最悪な気分になるだけだ。

復讐は悲しみしかうまない。

自分で自分を傷つけてしまわないように。

手遅れになる前に。

誠司を止める!誠司を、受け止めるんだ!

 

 

☆☆☆

 

誠司は埃まるけの仮拠点を後にし、ぴかりが丘の図書館に来ていた。あんな埃じゃ考えれるものも考えられない。万が一知り合いがいてバレルことがないように、深くフードをかぶって。帰りにお掃除グッズでも買っとくかな、とか思いながら、格闘術や世界の歴史、戦略系の小説を読み漁る。

 

今頃学校行ってるかなー、あいつら。

ブルーが生きてるなら、多分あいつも流石に家に返すだろうし。めぐみもまだ寝てるはず。

 

まさかクリスマスに学校があるなんてうちの中学くらいなので、他の学生や大人達が結構いて割と混んでいる。

多くの人が集まっているのに、館内にはずっと静寂が続き、ゆっくりとした時間を過ごすことができる。

 

参考に、と読んでいた戦略系の小説は、なかなか真似出来ない気がしたが面白かった…。

世界の歴史も、中学校で習ったことなんてこんな僅かな切れ端のところだけだったのか、と驚くほどに歴史は奥が深かった。そして、残酷で冷酷だった。

 

知れば知るほど人間には溜息がでるもんだな…。

愚か者しかいねぇのかよ。勿論、俺も含めて。

 

優しさはときに無慈悲に牙を向き、仲間は裏切る。

信じていたやつが、嘘をつく。

こちらがどれだけ相手を想っても、相手はこっちには見向きもせずに、他の人に『ありがとう』と感謝をする。

優しくて良い子だと思っていたやつが陰口を言い、悪い噂を広め、噂が一人歩きする。

守ろうとしても、つかもうとしても、するするとほどけてしまう。

 

今も昔も変わらない。

こんな連鎖を終わらせる。

めぐみにこんな汚い世界にいてほしくない。

傷ついてほしくない。

 

未だに自分に人を殺す覚悟があるのかは定かではないけれど…。

 

──さ、考えはまとまった。

作戦もある程度形になったし、百均にでも寄って帰ろうかな。

誠司の背中を夕陽が照らす。真冬とは思えないほどポカポカと暖かい光が、誠司に色濃く影をつくらせる。

 

☆☆☆

 

「プリキュアがいる学校ってここであってるの?」

 

本当にぃ?と青年が笑いながら少女に問う。

至って普通の、極平凡な学校。こんなとこに伝説の戦士がいるって?はは、そんな一般人かよ。

 

「あってるよー!!私の情報収集能力は凄いんだかんね!!えっと、確か情報によるとそろそろ…ほら来た!」

 

少女はふふん、と澄まし顔で三人組の少女の方を見やる。

「あれが?んじゃ作戦間違えないでよ?君、うっかりとかまじで勘弁してよね?」

 

「大丈夫だって!」

 

一瞬で制服に着替えて少女達に声をかける。

 

「あの、すみません、行きたいところがあるんですけど、ここって来たことないからあんまり分かんなくて…テレビで見ただけだから何ていう名前なのかすら…」

 

「それで!色んな人に聞いて回ってたんですけど!複雑な地形だから口で説明されても分かんなくて!教えて、くれませんか!?」

 

「うーん。どうしよう。今日って多分大使館集まるよね?」

青い髪の少女が心配げに後の二人に小声で言う。

対して紫の髪の子が、

 

「街で困ってる人を見かけたら助ける!きっとめぐみならそうするわ。きっとブルー様も許してくれるわよ」

と微笑み返し、茶髪の少女が、

 

「そうだね、私少し遅れるって連絡するねー。それに私、弁当配達でぴかりが丘の道は大体分かるからそんなに長くはならないはずだと思うよ?」

 

と言ってくる。

良かった良かった。計画通り。

「そうだね…。じゃあ私達が案内しまーす!!」

「ありがとうございますー」

「よろしくですよぉ!!」

少年と少女は笑顔でお礼をする。

この二人が後に、──もしくは前に、関わる重要な人物だということは、まだこの三人は知らない。

 

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