めぐみ…俺がきっと…。   作:たけぎつね

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綺麗事というのはあまり好きではないのですが、小説書いてるといつの間にか綺麗事ばっか叫んでました。何でだろう…。
という訳で綺麗事のオンパレードです。

【訂正】クリスマスなのにせみが鳴いてる異常気象はただの私のミスです。冬です。すみません…。


明日も、一緒に。

──運命の刻。

 

「誠司~!お待たせっ」

 

「俺も今来たところ。めぐみ、どこ行きたい?」

 

「え?いいの!?えっとね…」

 

めぐみの嬉しそうな顔を見て、ホッとする。

最近見ていなかった、心の底からの笑顔。

めぐみが、笑ってくれた。

それが何よりも嬉しかった。それだけでもう充分だと思えるほどに尊かった。

 

そして、めぐみの好きなところ、行きたいところを巡る。スケートとか買い物とか、イルミネーション見たりとか。ほんとに、デート…みたいだ。

 

 

 

「次はあの観覧車乗らないか?」

 

「おーっ、いいねー!久しぶりに乗ろう!」

 

 

七色に変化し続ける観覧車からはぴかりが丘の夜景を一望できた。すげー。再現度高い。

 

「──ねぇ、誠司」

 

「今日は、ほんとありがとね」

 

「…こちらこそ」

 

「───一つ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

「ん、何だ?」

 

「……………やっぱ、いいや。何でもない。それより、今日は誠司にプレゼントがありますっ!はい、これ!」

 

めぐみは紙袋を差し出してくる。これはもしかして…。

可愛らしいシールを丁寧に剥がして中を確認。

……手編みのマフラーだ。とっても長い。

 

「誠司のこと考えてたら、いつの間にか長くなっちゃつた。まあ今年のことあんまり思い出せなくって、ずっと思いだそうとしてたってのもあるんだけどね。何でだろう。ここ一年くらいの記憶が全然無いんだよねー。不思議なこともあるもんだよね。…あ、そのマフラー、使いずらいだろうし使いたくなかったら使わなくても別にいいからね?捨てたりはしないでよぉっ!?」

 

「誰が捨てるかっつの!ありがとな!んじゃ、俺からもプレゼント」

 

そう言って俺は行く前に買ってきた小さな木箱を取り出す。

 

「おっ、これオルゴール?すっごい可愛い!綺麗…!ありがと、誠司!」

 

めぐみは嬉しそうにネジを回し、箱をあける。オルゴールの音が時間とともにゆるやかに流れる。瞼を閉じて耳を澄ませているめぐみを見て、あぁ好きだなぁとまた思う。

 

めぐみの笑顔が俺の心を照らしてくれる。

めぐみの声が俺の心を癒してくれる。

めぐみの優しさが俺に希望をくれる。

めぐみの瞳が俺に輝きを見せてくれる。

めぐみの仕草が。めぐみの性格が。めぐみの全てが。

好きだ。大好きだ。溢れるほどに。

エゴかもしれないが、俺を、俺だけを見てほしい。

みんなの相楽誠司じゃなく、めぐみの相楽誠司になりたい。

 

まあこの世界に他のやつなんていないんだけど。

 

とはいえ、やはりいつか言うべきだろうか。

気持ちを伝えるべきなのだろうか。

でも、怖いのだ。この関係が壊れてしまいそうで。

幼なじみじゃなくなるとこの関係はどうなるのかと。

いつも一歩が踏み出せない。

……もう少しこのままでもいい、かな…?

 

 

 

観覧車を降りて、俺は先ほどもらったマフラーを巻いてみる。あったけ~。ふわりと優しい感触が首を撫でてじっくりあたためていく。

 

その後、クリスマスツリーで記念写真を撮ってから帰宅(めぐみの作った長めのマフラーを二人で巻いて撮ったのだが…これはかなりはずかしかった…)。

 

ひぇーっ。力が抜けてしまいそうだったけど踏ん張って、NPCの妹とご飯を食べた。

街そのものをコピーした(ファントムが使ってた陰を纏う技の応用)ので全く不自由なことはない。人々も、人格が全部プログラミングされており、仕事をし、家庭を持つものもいる、ぴかりが丘の完璧な複製。

 

ただ、誰も何も起こさなかった。明日になっても人々は今日と全く同じことをするだろう。リセットされたかのようにまた同じ時をたどっていく。とはいえ、クリスマスというかなり特別な日のため、流石に何日も同じクリスマスが続くと変なので、俺の権限で日付を更新していくとしよう。勝手に対応してくれるだろう。

 

さ、明日も学校だ。昨日はクリパだったが、結局学級閉鎖のときのやつが尾を引いて一週間登校日になったんだったっけか。

 

明日も無事気づかないでくれよ…。

 

 

☆☆☆

 

今日も学校かぁ~。

まさか冬休みが一週間削れちゃうなんてぇぇぇぇぇぇっ!んもうっ!

 

何かモヤモヤするし!朝から何なんだろう?

いや、正しくは昨日のクリスマスツリーのときからだ。

あの、大きくて派手に装飾されたツリーを見たとき、確かに胸がぎゅってなって、頭がガンガンと痛んだ。

不思議なことばっかだよーっ!分かんないよー!

 

そんな混乱した気持ちのまま学校へ。

 

「おはよう、めぐみちゃん」

 

「おはよっ、ゆうゆう!昨日はお店、どうだった?」

 

「うん。楽しかった。また、良かったよ。けれど、大変だった。ご飯は美味しかった!」

 

「?そっ…そっか…」

 

なんか、ゆうゆうも話し方変わった?

国語全然出来ない私が言うのもなんだけど、なんか日本語がちゃんとした文章にまとまってない…。というか、最後のご飯美味しかった!ってどこからきたの!?

お店の手伝いの途中でご飯食べてたの!?クリスマスチキンを例年通りに売ってたとてっきり思ってたんたけど…。

 

「あっ、誠司だ!」

 

「オッス、めぐみ!今日は大森も一緒か」

 

「うん。何か今日のゆうゆう変なの!」

 

「何言ってるの、めぐみちゃん。私のどこがおかしいの?そして私は今日もいつも通りだよ。ご飯も美味しいし」

 

「確かに変だな…」

 

「でしょ!?」

 

「まぁ話せてるしいいんじゃねぇか?てか学校遅れるぞ」

 

「う、うん」

 

?誠司もちょっと様子がおかしい?気にしすぎかな?

いつもの誠司ならゆうゆうがおかしい原因があるはず、ってちゃんと調べたりしそうだと思ったけど…。

 

慌てて、小走りに進んでいく誠司を追いかけつつ学校へ向かう。

 

*

 

大森NPCの言動がおかしい…。完璧なはずなのに…。

やはりホンモノじゃないと駄目か…。ハピプリメンバーならこの世界に来てもらうのは大歓迎だが現実世界の彼女らが結晶世界に来ようとしてくれないので俺には何も出来ない。人工知能ってのはやっぱ不便だな。

 

*

 

学校へ行き、学校を終え、家に帰り、時々誠司たちと一緒にご飯を食べる。

 

そんな普通の日が何日か続いた。

何か事件が起こったりとかはなかったけど、変な感じがずっと胸から取り去れないまま過ぎていった。

 

 

──そういえばもうすぐお正月だ!

せっかくだからお母さんたちにお守りでも買ってこようかな!

 

「ちょっと出かけてくる!」

 

私は足早に神社へ向かう。寒ーいっ!

ぴかりが丘神社って何のご利益だったっけ?

分かんないけど、ご利益って言うからには良いやつだよね!

 

神社に到着─────ッ!?

 

「これ…これって…!」

 

激しい頭痛と共に鮮明に映像が浮かび上がる。

 

青い髪の少女が鈴を振る姿。

水色の髪の男性がそれを見て微笑む姿。

水色の髪の少女が鈴を振り、舞いをする姿。

赤い髪に水色の瞳をもつ青年が私と戦う姿。

 

他にも、たくさん。

忘れていたものが、忘れさられていたものが、溢れてくる。ゆうゆうと、いおなちゃんと、誠司と、──そしてひめがいる日々。本当の日々。現実。

 

───忘れちゃいけなかった大事なこと。

ここから、脱け出さなきゃ。

……誠司!

 

「そうだ…そうだよ…私は…キュアラブリーなんだ…プリキュアなんだ…みんなを助けなきゃ!みんなを……誠司を!」

 

はぁっ、はぁっ、と息をきらしながら全力で走る。

急がなきゃいけないきがしたから。

 

ここは、多分結晶の中だ。偽物の世界だ。

だからおかしかったんだ。ゆうゆうの様子も。

あの大きなクリスマスツリーを見たときとこの神社に来たときの胸のざわめきも、全部、ハピネスチャージプリキュアとして思い出の詰まった場所だ。

 

五人で過ごすはずだったクリスマス。ぴかりが丘の名物スポットの巨大クリスマスツリー。

 

ファントムと戦ったこの神社。

ひめが舞いを踊り、アクシアをシャイニングメイクドレッサーにした神社。

そして──ブルーとミラージュが会ったところ。

 

たくさんの想いが詰まってた。

なんで忘れてたんだろう。こんなに大切なこと。

 

誠司の家のドアの前で深呼吸する。膝が笑ってる。手の震えが止まらない。意を決してチャイムを押そうと手を伸ばしたその時。

 

「めぐみ…なんで思い通りにならないんだよ。なんで幸せなままでいようとしないんだよ。このまま気づかなければ一緒にいられたのに。苦しまずに生きていけたのに…っ!」

 

ドアが、開いた。誠司がその隙間から私を見つめる。

戸惑いが顔に浮かんでいて、歯を食いしばっているのがわかった。低く、押し殺すみたいな声で、続けた。

 

「いつもお前はそうやって!誰かのためにって!自分のことを考えずに人助けばっかで!誰にも助けを求めずに突っ走って、自分を大切にしないんだ!自分の気持ちを押さえて!だから、そんな危なっかしいお前を守りたいって思ったのに俺はまだお前に守られてばっかだ!」

 

涙ぐみながら誠司が叫ぶ。

 

「命にかえても守りたいっていう決意も、言葉だけの戯れ言になって!

自分の無力さに絶望して!

結晶の力を借りてでも、どんな手段を使ってでもめぐみを幸せにしたいって思って!

周りの邪魔な奴は削除して!戦場になったこの街を捨てて新しい、理想の世界で暮らそうって!

他の奴なんてどうだっていい!それぞれの想いも、それぞれが存在する意味も、俺には知ったことか!

めぐみさえいれば、それでいいんだよ!

いや、これはもう…めぐみのためとか言って理由作ってるだけだ…。本当は俺は…っ」

 

「──いいよ、全部、言って?」

 

「俺は…俺は…っ!お前が好きだ!お前が、愛乃めぐみが大好きだ!お前は俺のことをそうは思ってないだろうけど!俺は、幼なじみとして、友達としてっていう以上に、お前が異性として大好きだ!ずっと前から好きだ!ブルーなんていなければよかった!あいつがいなければプリキュアも幻影帝国もなかった!めぐみがあいつに恋することも、失恋することもなかった。プリキュアにだってなってほしくなかった!俺はお前を守りたいって、そう思ったから空手もずっと続けてこれたのに!でも凡人の俺には何も出来なかった!女の子よりも弱かった!チョイアークくらいしか相手に出来ないほどに!力が欲しかった!こんなに努力したのに、なんで敵わないのか分からなかった!悔しかった!格好よくて優しいとこもすっげー好きだけど、男の俺がめぐみに守られるのは辛かった!努力は、無駄だったんだよ。努力なんてひたところで何も変わらない。力も、関係も!結果が出ないなら努力とは言わないとか、結果が全てじゃないとか、そんな矛盾した言葉でさらに訳がわからなくなった。めぐみが幸せになるという結果を求めた。求め続けてずっと努力してきたつもりだったのにそれを否定された気がした!結局俺はめぐみの為じゃなく自分のために努力してただけだった!めぐみのためにと頑張ってる自分に酔ってただけだったんだよ…!そんなの自分でも分かってる。俺はどんなに最低で最悪な人間で、自己中で、承認欲求の強いやつなんだよ!…なぁ、言ってただろ、元の誠司に戻って、って。俺はもともとこういうやつだ。必死に隠して包んできた、俺の本性がこれだ。失望しろよ。愛なんて微塵もないんだよ。自分の望みの望むまま、欲望のまま動くだけだ。……俺はここでめぐみと暮らしたいんだ!誰も他にいないこの世界で!二人でずっと暮らしたい!ブルーとミラージュのいないこの世界で!邪魔者なんて絶対こないんだ。理想の世界なんだ。思うがままに設定できるんだ。欲しいものも全部手に入れられるんだ。めぐみ、俺を、選んでくれ…」

 

「…確かに、この世界にはブルーはいなくて。私が失恋することも、ミラージュが失恋することもなくて。幻影帝国もいなくて。私が戦わなくても世界は平和。平和は良いこと。分かってる。確かにそれが理想かも。傷つかずに楽しいことだけあって。でも、やっぱり、ここでは暮らせないよ」

 

精一杯の思いをぶつけてくれた誠司に、私も懸命に言葉を紡いでいく。この箱庭に想いの音色を編んで。

 

「……な、んで…?…じゃあ、ひめとか大森とか氷川とかも連れてこよう。それなら──」

 

「ううん。そうじゃないよ。私は本当の世界が好きなの。我が儘だけど、私はこの平和な世界じゃなくて元の世界の方が好きなの。苦しむ人だってたくさんでてきちゃうだろうけど、それぞれの想いがぶつかり合う世界が好き。ロボットみたいな世界じゃなくて。辛いことも、苦しいことも、悲しいこともあるけど、乗り越えたい。楽しいことも、嬉しいこともシェアしたい。みんなが幸せハピネスになることが一番私も嬉しいよ。だけど、この作られた世界には本当の幸せハピネスはない。誰かが幸せになれば誰かが不幸になるかも。それがあの現実の世界。不条理で、矛盾してばっかで息苦しい世界。

 

みんな心に鏡を持ってる。楽しいことがあると不安なこともある。真逆なこと、思い通りにならないこと、たくさんある。特に心は、誰の思い通りにもならないよ。微妙に違うキモチの一つ一つでだんだん世界は変わっていくから。笑い飛ばして前向きに生きていけたらいいな。だけど、どうしようも無くなるときもある。誠司もそう。勿論私だって。自暴自棄になったり、過去の後悔が走馬灯みたいに駆け巡ったりして永遠に抜け出せなくなることが。ひとりじゃ無理かも。二人でも。けど、みんなでお互いがお互いを支え合って明日に踏み出したい。それにね?誠司は確かに、街を壊したり、襲ったり、ブルーに切りかかっちゃったり、悪いこともしちゃったけど、私は信じてるよ。あのとき、ブルーを斬るのを躊躇った誠司を。私達を守ってきてくれた今までの誠司も。

誠司の幸せを否定したい訳じゃないけど、やっぱり、人を傷つけるのは駄目だよ。そこはちゃんと言っとく。迷惑とかかけるくらいなら全然良いんだけどね!むしろ、もっと相談してほしいな。頼ってほしい。抱え込まなくていいよ。伝えてほしい。

 

自分のこと大切にするの、当たり前だよ。

誰でもきっとそういうことはあるし、そういうもんなんだよ。褒められたいとか幸せになりたいとか、願って何が悪いの?責められる必要なんてない。

でもそんな自分の欲望の中で誰かのためを想って行動できる、そんな誠司が大好きだよ。

 

あとね、全部楽しかったら、もう楽しいことじゃなくなっちゃうと思わない?………うーん、上手く伝えられてない気がするけど…」

 

私は大きく息を吸って、うつむきがちの誠司の目を覗きこんで言った。

 

「苦しいことも、楽しいことも、分かち合いたい!幼なじみで、ずっと兄弟みたいなもんだったから…その……誠司をどう見ればいいか分からないけど…。……でも……デデデデ、デート、すっごく嬉しかったよ。誠司と久しぶりにいっぱい話せたし。……ちょっとそれちゃったけど、まとめると…。誠司と一緒に生きていきたいってこと!」

 

「……どうしたらそうなるんだよ。……ったく、まいったな」

 

【挿絵表示】

 

 

誠司が、僅かにしか開けていなかったドアを思い切り開いて、困ったような顔で笑った。

 

私は、誠司に手を伸ばす。

 

「誠司、みんなのところ、戻ろう?」

 

あ、と思い出してポケットから手紙を差し出す。

 

「みんな、信じてるし、待ってるから」

 

それは、誠司のお母さんからの手紙。

誠司はその小さなメモを読んで、潤んだ瞳をパーカーで拭った。

 

「でも俺……」

 

「大丈夫。もうやっちゃったことは仕方ないじゃん。開き直りすぎとか言われるかもだけど…ま、ちゃんと謝れば!」

 

「本当に、いい、のか…?」

 

大きく頷く。

誠司が手を伸ばし、私の手をとる。

その瞬間、ニセモノの世界はまるで鏡が割れるみたいにパリン、パキパキ、と音をたてて崩れていく。

 

*

 

崩壊していく世界を眺める。なんかもう、もやもやしていた心は吹っ切れてしまった気がする。

やっぱりめぐみには敵わないなぁ。

いつも俺を引っ張ってってくれる。

対等な関係でいたい。

俺がやらなきゃとか考えるのはもうやめよう。

あいつがこれをしたらどう思うのかとかちゃんともっと考えよう。力に溺れることなく。

 

男女の関係になるのはもっと先かもしれないし、ならないままかもしれない。そこは俺にも分からないが、時の流れにまかせてみるとしよう。

 

☆☆☆

 

まずい。非常にまずい。

レッド達は一時休戦をしているのだが…。

なんかヤバそうだ。結晶が輝き始めてる。

それも、赤い憎しみの光ではなく、白く輝く光。

結晶が、浄化される…!

 

上手くいったと思ったんだがな…。

どうする…どうする!?

全く思い付かん。普通に、戦うしかないか。

今のうちに三人を片付けておけば、ラブリーが戻り万が一誠司と共に戦うということになったとしてもまだ相手しやすそうだ。

 

「おい、プリキュア。休憩は終了だ」

 

「「「!?」」」

 

レッドは勢いよく床を蹴り、プリンセス達を攻撃する。

不意討ちには流石に対応しきれていないようだ。

とはいえ、なんか想像以上の力だ。恐らくあれだ、仲間とためなら頑張れる!とか、みんなが応援してくれているから!とかいう類いの綺麗事パワーだ。

 

憎い。

 

俺の星は地球のように綺麗じゃないのに。

俺の星は地球のような民はいないのに。

俺のことを信じてくれた人はもう殺されてしまったのに。

滅茶苦茶にしてやりたい。

ブルーもミラージュもプリキュアもその他の人々も豊かな自然も動物たちも街も全部、俺もろとも滅ぼしてやる。

 

「……っぐ!?」

 

「もう諦めろ。お前達の星は滅びる。内部から腐っていくようにしてある。残り時間などほぼ無いぞ」

 

「地球が、内部から…?」

 

突如告げられた無慈悲な現実に、思わずそんなことを呟くプリキュア。

 

「レッド…それでも私は…ラブリーを!誠司を!信じているから!負けない…絶対諦めたりなんて、しない!友達、だもん!」

 

「ほざけ」

 

会話を交わしながらも尚戦闘を続ける。

 

「……レッド。私はあなたを許さない。たくさんの人々を巻き込んで、傷つけて、大切な時間を奪ったあなたを許さない!私はそんなに優しくない。ラブリー達は甘いことを言うかもしれないけど…。きっと世界中が、世界中のあなたに傷つけられた人々が、あなたを恨むでしょうね」

 

「フォーチュン…?」

 

「許さない…許さないけど……助けたいの…。なんかラブリーがうつっちゃったみたい。…ねぇ、苦しいでしょう?人を憎み続けているのも、一人でいるのも。嫌い嫌いって思ってる人も、その人のことを知れば案外いい人かもしれないじゃない」

 

フォーチュンはプリンセスに笑いかける。

 

「…黙れ…お前達に何が分かる!体験したこともないだろう?幸せに普通に暮らしてきたお前達が…!その人のことを知れば案外いい人かも、だと?そんな都合の良いこと、ある方が少ない!幸せは一瞬、愛は幻だ!弱肉強食のこの世では到底不可能だ。ただの理想にすぎん」

「理想…そうよ」

 

フォーチュンに変わってハニーが言葉を放つ。

 

「みんなが幸せ。みんなが楽しくご飯を食べれる世界…平和な世界…それを望んで何が悪いの?誰もが幸せを求めるものよ。欲望や目標がないと誰も成長できないわ。

愛は幻なんかじゃない。愛は見えなくても、確かにそこにあるの。愛の力は強すぎて、時には人を傷つけたりしてしまうこともあるかもしれないけど、でも幸せにすることも、幸せになることもできる諸刃の剣なのよ」

 

「だからなんだというのだ。そんなもの、完全な剣になる前に消し去ってしまえば誰も哀しむ必要はなくなる」

 

「レッドさん、本当はすっごく優しいんだね」

 

「は………?」

 

「ちゃんと、皆のこと心配してるもの。でもね、皆そんなにか弱くなんてないのよ?苦しいことだって乗り越えるの」

 

「……そうだよ!レッド!」

 

「「「ラブリー!誠司!・相楽くん!」」」

 

「わりぃ、待たせちまったな」

 

「相楽誠司…」

 

やつの胸元の結晶は消滅していた。

先に片付けておく作戦は失敗のようだ。

 

「なぁレッド…。俺はお前の苦しみをちょっとは知ってる。お前がもともといいやつだってことも、星を壊された恨みも、大切なやつを目の前で失った辛さも。それに、本当は気づいてるはずだ。……地球に同じことをすればまた同じ運命を辿るやつが増えるだけだってことを」

 

「もう一度、愛を信じて…。幸せになることを、諦めないで!みんな!お願い!力を貸して!」

 

「プリンセス!蒼き風!」

 

「ハニー!大地の光!」

 

「フォーチュン!希望の星!」

 

「ラブリー!ビッグな愛!」

 

「「「「愛と勇気と命と星を聖なる力に!ラブプリブレス!プリキュア!フォーエバーハッピーレイン!」」」」

 

「新しい必殺技か…プリキュア!頑張れー!」

 

「僕も手伝おう。世界のみんな、再びプリキュアに力を貸してくれ!」

 

ブルーが鏡で世界中を中継し、ドール王国のときと同じように、ライトを振るように促す。

 

頑張れ、という声が聞こえてくる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!」

 

あたたかい光が俺を包む。

 

「………愛はやがて消え失せる。永遠なんてない」

 

「だからこそ、いとおしいんだよ。私ね、愛って無限にあると思うの。辞書とかに載ってる意味だけじゃなくて、たっくさんのことを含んでる。みんなで暮らすことも、誰かを守りたいって想うことも、一緒にご飯を食べることも、誰かを信じることも、幸せもみんなきっと愛なんじゃないかな。だからね、レッドも自分の幸せ、ちゃんと見つけてほしい。辛くなったら、私達でもブルーでもミラージュさんにでも相談しにきていいから、ね?」

 

「──俺は……ただ地球が羨ましかっただけなのかもしれない。俺の星、惑星レッドは荒れ果て、民もみんなサイアークになってしまったから…」

 

「レッドさん!見て、あなたが星を想う力が、私達のレインと共鳴して、奇跡が起きたみたい」

 

ハニーが鏡を通して惑星レッドに目を向けるようレッドに促す。

 

「………!」

 

惑星レッドは、星こそ未だに枯れたままだが、徘徊していたサイアークの姿などなく、そこにはえ?と戸惑っている大勢の民の姿があった。

 

先のフォーエバーハッピーレインによりサイアークが浄化されたのだ。

 

「……感謝、する…。本当に…っ!」

 

泣き崩れるレッドに微笑み返す。

 

「…レッドは、これからどうするの?」

 

「星を、復興しようと思う」

 

「兄さんなら、できますよ。できるときは僕達も手伝いますから」

 

「ブルー……すまない」

 

☆☆☆

 

あの最後の戦いからちょっと経って。

 

私達は新学期の学校へ。ひめもまだぴかりが丘に残るみたい。

 

ブルーには、救ってくれたお礼として愛の結晶を貰いました。

とっても綺麗なビー玉みたいなやつ。

大切な人に渡そうかな。

誠司も私と同じみたい。

ひめはぶん投げてお友達をつくるんだって!

最初はあんなに人と喋るの苦手だったのにぃ…ちょっと感激。

 

今は、壊れた街もハッピーレインで元に戻って、みんな普通の生活に戻りました。

 

ファンファンはゆうゆうと同棲して大森ごはんで働いています。腕前も結構いいの!美味しかった…。

 

いおなちゃんは冬休みにお姉ちゃんに会いに行ったんだって!元気そうだったようでなにより!

 

三幹部の人たちも普通にお仕事してて、増子さんに日々追いかけられてます。増子さん、やめてあげてぇぇ!また注意しとこう…。

 

あと、たまに歩いているとつむぎちゃんとすれ違います。この前はつむぎちゃんのバレエの発表会もみんなで見に行ってきたの!凄い綺麗だった!

 

そして、私にとってかなりの出来事。

私のお母さんの病気をお父さんに教えて貰いました。

お母さんは身体が弱いから、長いこと付き合っていかなきゃいけないけど、そんなに重い病気じゃないみたい。サポートさえあれば普通に暮らしていけるんだって。

なかなかお父さん教えてくれなかったから今までで一番何度も頼みこんだよ~。

 

ブルーとミラージュさんは時々レッドの星で復興をお手伝いしに行ってるみたい。

 

レッドとミラージュさんと誠司と幹部とファンファンとかの人達はやはり自責の念を感じてるみたいで、積極的にボランティア活動をしてる。

マダムモメールさんもボランティアで海岸をお掃除してるとか。

 

「おはよめぐみ!ん、何か考えごとかー?」

 

誠司もなんかちょっと変わった、かな。

前よりグイグイくるかんじ?嬉しい限り。

 

「ううん、何でもない!いろいろあったなーって」

 

「だよねーっ!濃い一年でしたぞ」

 

「私も楽しかった」

 

「わ、私も…そのひめが帰らなくて本当に嬉しい──って何よ!?」

 

「へへん、いおな、デレちゃってぇぇぇ!可愛いんだからっ!」

 

えーっ?とか言いながらひめといおながはしゃぐ。

 

「私、本当に良かった!みんなと出会えて、プリキュアやれて!幸せを、ありがとう!」

 

「めぐみ、今のお気持ちはぁぁぁ?」

 

 

 

 

 

「幸せハピネス!」

 

 

【挿絵表示】

 




今まで半年間、応援ありがとうございました!
これで最終回となります!
後半ほとんどテレビ版をなぞる形になりましたが、かなりいい感じにまとまったかなぁと。
最初こそ、悪堕ち闇堕ちが大好きすぎて思わず書いてしまったこの小説ですが、感想をいただいたり、しおりやブクマを多くの方にいただき、あ、これちゃんとやらなきゃって思うようになりまして、行き当たりばったりで突き進んできました。
んで、結局悪堕ちだけでなく、ハピプリテレビ版で批判されたとことか、自分的にふにおちなかったところを自己解釈で補うのがこの小説の目標みたいなのになってました。
みんながどう想ってるのかとか。
誠司くんの葛藤とか、レッドがなぜあんな風に変わってしまったのかとか。
お母さんの病気どうなったのとかひめの成長とかも。

あと、すべて相手に気持ちが伝わっていればこんなことにはならなかった…的なのも軸にしてました。

pixiv辞典の誠めぐの項目はかなりオススメで、読んだあとの感動といったらもう…!
(メサコンとか誠司とめぐみは鏡みたいだとか、ブルーが好きなのは新しいことを見せてくれたからだとかいろいろ吸収しますた)

そして今回はオープニングの歌詞や今までのめぐ俺の話名を使ったりとかも意識したのでそこも気づいていただけたら幸いです。これからは分岐ルートが始まります。もうかなり不定期になると思います。今まで以上に。

まことと知恵のストーリーに関しては、次にリクエストルート編があるのでそれが終わってからとなります。



では、
最後にもう一度。

ありがとうございました!
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