めぐみ…俺がきっと…。   作:たけぎつね

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絶望。

青空が広がる草むら。

そこに俺は寝転がっていた。

 

風が頬に当たり僅かに髪を揺らす。

そして隣にはめぐみが瞳を閉じて幸せそうに眠っている。

 

あぁ、穏やかな時間だ。

 

何にも邪魔されない時間。

めぐみが泣かずにすむ。絶望もせず。『誰か』を考えることもない。

 

こんな時間がずっと続けばいいのに。

冬とは思えない暖かな日の下で。

ただ風に揺れるだけ。

 

「せーいーじー!めーぐーみー!」

 

ひめが来た。その後にゆうこといおなも続く。

いつものメンバー。うん、この時間も悪くない。

始まりこそ決して穏やかではなかった関係だが、今はもうすっかりそんな隔たりは消えている。

三人が来たことに気付き、めぐみはゆっくりと起きる。

 

「みんな!」

 

「ピクニックって聞いたから、私、気合い入れて作ってきたよ~。パンじゃないけどねー」

 

そう言ってゆうこが大きなお弁当箱を出し、オープン♪と言いながら蓋を開ける。

 

「私はサラダを…」

 

といおながちいさな容器を取り出す。

 

めぐ「いおな、料理とかするんだねー!」

 

いお「まっ、まーーねっ!」

 

ひめ「チッチッチッ…騙されちゃいけませんぜ奥さん!いおなが来るときコンビニでこっそりサラダ買ってましたぜい!この前だって──」

 

いお「あっははははははははは…?ひめ…?」

 

いおなの顔が暗くなり、恐ろしい笑みを浮かべてひめを見つめる。

 

ひめ「あっあー。そんなに怒らなくても…」

 

いお「ふふふ」

 

すみませんでしたぁぁぁーと言いながら、いおなから逃げ回るひめ。

 

めぐゆうせい「ふふふふふあははっ!」

 

そんないつもの愉快な光景に、おもわず三人は笑い出した。

 

楽しい。そう感じる。最近あまり感じてなかった感情だ。

 

そして幸せな時間はあっという間に崩れ去った。

 

「やぁ、みんな。楽しそうだね」

「こんにちは」

 

二人来た。俺にとっては招かれざる客だ。

めぐみはその一人であるブルーを見つめ

「……ブルー!き、来たんだね!」

と明るく振る舞った。

 

顔は曇ったままだ。

 

ブルーはそれに気付いていないのか、普通に俺達の輪の中に入ってきた。

 

見せつけてるのか?

自分の幸せを。

こいつは他人を気遣うことを知らないのか?

俺は気付かれない程度に睨み付けた。

 

腹がたつ。

煮えくり返りそうだ。

 

すると突然、豊かな緑色の草むらが一気に枯れた。

空も暗くなり、木々も朽ち、周りの景色から動きが無くなる。あんなに吹いていた風も全く吹いてこない。

そして、めぐみたちも全く動かず固まっている。

 

なんだ、これは?

まさか、敵か?

 

俺は身構え周りを見回す。

ひとつ、赤い何かが動いている。

その赤いやつ以外は特に動いているものはない。

ならばあいつが敵か?

 

赤い何か───いや、赤い光?

ぼんやりと、だが力強い光。

 

「誰だ!」

 

俺は叫んだ。唾を飲み込む。微量の汗が滴っていく。

 

《そう身構える必要はないぞ》

 

「……」

 

油断など出来ない。そのままの体制で実体の掴めない赤い光の方を見据える。

 

低く響く声だ。最近も何処かできいたような…?

 

《はぁ…。まあいい。俺はお前に協力するためにやって来た》

 

「どういうことだ?」

 

《俺の願いは愛を、ブルーを、世界を消すことだ》

 

「……それが何故俺に協力ということになる?それにまだ質問の答えを聞いていない」

 

《─俺はレッドだ。愛など信用できん裏切られるだけだ。矛盾した感情だ。怒り憎しみ悲しみ妬み嫉み恨み…愛があるから傷つくのだ。貴様の想い人のように》

 

《相楽誠司。わたしと一緒に来い。力を目覚めさせてやる》

 

「愛やブルーや世界を消す?そんなこと俺はしない。悪にだけは染まることはない!めぐみが悲しむ!プリキュアと戦わなきゃいけなくなる!そして俺には力がない。全く歯が立たない。あいつらが目の前で必死で戦って、ボロボロになってもまだ諦めない、って何度も立ち上がっているのを!……俺はいつも見ていることしか出来ない」

 

《いいや。お前には力がある。人並みならぬ力が。まだ隠れているだけだ。躊躇いなど必要ない。全てをさらけ出せばいい》

 

「そんなこと──」

 

《貴様には大切なものがあるんだろう?そして本当は答えは出ている筈だ》

 

「…………」

 

《当初はプリキュアの周りの人間を強制的に洗脳しようかとも思っていたが…。お前は洗脳する必要もなし。そして強い。気に入ったのかもな、はは。》

 

《あと、これをやろう》

 

赤い光の方から何かが飛んできた。慌ててキャッチ。

透明な結晶?何色にも染まっていない透き通った結晶。

 

「なんだ…?」

 

《そのうちわかるさ。──ないとは思うが、誰にも情報は漏らすなよ。決心がついたら○×川のこの前の場所に来い》

 

この前の場所──恐らく先日めぐみに失恋を打ち明けられた時の場所だろう。そうだ、そのときに声を聞いたのだ。

《本当にそれでいいのか?》と。

《この笑顔を奪っていたのは誰だ?》と。

 

 

そうだ。俺はどんな手段を使ってでも守る。

その途中でたとえめぐみと戦うことになったとしても。

結果、めぐみが笑顔になれるのなら。幸せになれるのなら。ブルーを消す。世界を壊す。そして、全ての災厄の根源、愛を、消す。滅茶苦茶にしてやる。今までめぐみがそうされてきたように。

 

ミラージュも。ブルーも。幻影帝国も。光も。希望も。愛も。

 

 

 

あぁ。

 

 

 

 

めぐみ。

 

 

 

 

俺が守ってやるからな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「……………はっ!はぁっはぁっはぁっ…はは」

 

夢オチか。だが現実味のある夢だ。

そして、只の夢では無かったらしい。

手には先程貰った結晶が強く握られていた。

 

レッドとかいうやつと話したことは本当らしい。

夢だと思われないように結晶を持たせたのだろう。

 

時刻は午前二時。

冬の夜中は闇が深い。たしか、丑三つ時だったか。

 

───確かに世界を壊すのはいいかもしれない。

たとえ俺が死んだとしても。

めぐみが幸せになれるならそれでいい。

 

だが、あいつを信用できるのか?

───いや、信用する必要はないか。

そしてあいつの目や話し声には確かに禍々しい感情が渦巻いていたのも分かった。

 

「…………」

 

俺は静かに着替え、足音を潜めて外に出る。

ごめん、と家に別れを告げる。

 

そういえば、明日はクリスマスイブだったな。

町にはいつも以上に灯りが灯っている。

 

めぐみの辛さなど知らずに。

みんな自分が幸せならいいのだ。

誰でも普通そうだけれど。だが、秘密にしているとはいえ、プリキュアだ。

 

あいつはお前らのために、何も見返りなんて求めずに何度も何度も救ってきたのに。

誰も気付かない。

救うのは当然だとでも思っているのか?

 

ふざけるな。

 

 

ぼんやりと光る月の下、俺は拳を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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