めぐみ…俺がきっと…。   作:たけぎつね

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取り戻した、はずなのに。

順調に勝ち始めて希望の光が差し込んできたチームハピネスチャージプリキュア。世界のプリキュアたちもそれに影響されたのか、ぐんぐんと力を増していっている。とはいえ、誠司たち──イグニスの猛攻はとどまることを知らず、今尚世界の人々を恐怖に陥れている。

 

力をつけてきたと自負したひめ達は、現状を受け止めながらも、やはりめぐみ救出を優先事項とすることを考えていた。ラブリーはプリキュアとしても強く、取り戻せば戦力になる──というのは建前の理由。友達を取り戻したいといういたって普通の気持ちが彼女たちの心を支配していた。

 

めぐみの居場所は分からない。だが、その手がかりとなるものはあるはずだ。そう考えてたどり着いたのが──

 

「────私たち、イグニスって訳ですか」

 

「そーゆーことっ!!」

 

いおなが肯定しながら技を繰り出す。サイアークを大量に倒した後で体力はかなり削られているが、それはサイアーク達の召喚者──アルバと名乗る、黒いプリチェンミラーを手にした少女も同じだ。

 

「なぜあなたたちはこんなことをしているの!?」

 

攻撃を避けながらフォーチュンが問いかけるも、彼女は顔を歪めて怒りを叫ぶ。

「あなた方には永遠に理解することなんてできない!!!仲間だのチームだの助けるだのほざいているあなた方には!!」

 

「ぐっ………」

 

アルバから放たれた黒く光る光線がフォーチュンを狙い打ちするが、プリンセスがシールドを展開して防ぐ。

 

「………ええ……分からないわ……だって私たち、あなたのことを何も知らない!」

 

「当たり前のことを…何を今さら…ッ!!」

 

「どうしてあなたはプリキュアになろうと決めたの!?守りたかったものがあるんじゃないの!?大切な───そう、大切な家族や友達や仲間、とか!!」

 

自分のプリキュアとしての始まりの決意と重ねてプリンセスが声をあげ、ハニーが、体力を癒しながら背中を支え、ついにシールドで攻撃を跳ね返す。

 

「くはっ……!!!家族……友達………仲間………全部綺麗事よ………すぐ割れて崩れ去る……!!裏切られる!!あなた方もすぐこちら側になる!!妬んで恨んで騙して憎んで…壊してやる……みんなみんな壊してやる……ッッ!!」

 

プリチェンミラーの黒い光が強く、禍々しいものに変化していく。

 

「はああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

絶叫しながら大きなエネルギーが放たれる。

 

「私は──少し前までプリンセスのことを憎んでいたわ。………でも、私は彼女のことを何も知らなかったって知ったの。酷く強く当たってしまっていた私にでさえ優しくしてくれた。勇気をくれた」

 

「……うるさい……」

 

「最初は逃げてばかりだったプリンセスがラブリー達と出会って世界からも自分からも逃げなくなったり。大切な友達と出会うことができたり。ご飯をみんなで食べるのがこんなに美味しいんだって教えてくれたり。……いろんなことがあったしぶつかったりもしたけど、陰っていた私の心に希望の光を射し込んでくれた!」

 

「……」

 

「私たちはあなたも助けたい……出会いは最悪。でも──!!」

 

プリンセスが心への問いかけに加わり。

 

「あなたのこと、たくさん知りたいの……心が苦しんでる……冷たくなってる……あったがご飯でハピネス、したいな…!」

 

ハニーも声を重ねる。そして、3人は変身を解いた。

 

「なんで……なんで……あなた方と私は敵同士なのに………他人以下なのに……」

 

「知らないから、知りたいの」

 

「私…っ……こんなに優しい言葉かけられたこと無い………分からない……分からないよ……」

 

アルバのプリチェンミラーから黒い光が剥がれ落ち、本来の姿を取り戻した。

 

「一緒に、帰ろう?」

 

プリンセスが手をさしのべて笑みを浮かべた。

強い光と朝の澄んだ空気に包まれて。

 

☆☆☆

「死神さんは今更ご帰還か。ずいぶん長かったが…」

 

「………」

 

「……無視か………」

 

久しく来ていなかった誠司に言葉をかけたはいいものの向こうが黙ったままで少しため息をつきながら呟いた。

 

「……俺は……誰と………何のために戦ってる………?分からない………いつの間にか分からなくなってきたんだ………レッド……教えてくれよ……俺は……誰だ……?相楽誠司は……誰になった……?」

 

頭を抱えて自身の胸元を掴んだ拳に力を込めて震えた声で彼は、そう言った。

 

記憶の混濁なんていう容易い問題ではない。戦いに慣れていなかったものが突然こちら側に足を踏み入れたことの精神の混乱。

ただでさえ傷ついた心が日を増す事におかしくなっているのだろう。

 

「俺はお前を手放さない」

 

そう一言告げてレッドはその場を立ち去った。

 

☆☆☆

 

ごめんなさい、と最初に謝ってきた彼女に、じゃあ一緒に世界を救おうよと声をかけて、そのままいろんな話を聞いた。

ファントムに追われた友達や仲間が自分を盾にして逃げたこと。家族が信じてくれなかったこと。そして、イグニスのこと。変身すると憎しみばかりが心を支配すること。

 

「つらかったよね、話してくれてありがとう」

 

とゆうこが微笑みかけるとまた泣き出してしまったのを慰めつつ、めぐみのことを聞く。

 

廃家屋の最上階の部屋にいるはず、だそうだ。

廃家屋までの道は鏡を通っていたため分からないらしいが、窓から見えた景色を元に探してみたらだいたいの位置が掴めた。

決意をあらたに、新しい仲間と共に歩幅を広げる。

 

ぴかりが丘だけでなく幅広い範囲までサイアークを倒しに行けるほどに進歩し、イグニスの幹部である黒いプリキュア達とも対等に戦えるようになった。『倒す』ことは出来ても、心に幸せを届けなられければ『浄化』は出来ず、ワープで撤収されてしまうことがほとんどだった。

 

その点においてはひっかかってはいたが、チームは、世界は、前向きな兆しを見せていた。

そしてたくさんの人が背中を押し───めぐみ救出作戦を実行することにした。

 

☆☆☆

 

ワープをして自分の元部屋に来たアルバ──否、大園硝子は、悟られぬようプリチェンミラーをポケットに隠し、何もない部屋に唯一飾っていた写真を手に取った。

『トモダチ』の顔に大きく赤で×がかかれている写真を。

 

「またいつか…」

 

そう呟いてポケットにしまった。

自室を出、最上階へ向かう。

 

窓の外を眺めるレッドを見つけ、相楽誠司──アビスの居場所を問う。

 

「あいつならフランスで暴れ回ってるはずだ……もう何日もここへは来てない」

 

「そう、ですか」

 

「ところで──プリチェンミラーはどうした」

 

「………どういう意味ですか?」

 

「そのままの意味だ」

 

そうして凍りつくような冷たい視線で一瞬固まった硝子に近づきレッドが囁く。

 

「今度はお前が仲間を裏切るのか」

 

と。

 

「────っ」

 

悪だと分かっているのに。短い間とはいえ同じ目的を共にした仲間。そう言われると少しだけ汗が滴った。

だが。

 

「私は──仲間を裏切りに来たんじゃない!助けに来たの!」

 

ハピネスチャージプリキュアの仲間を。黒いプリキュアの心を助けたいと、自惚れかもしれないがそう思ってしまったから。

 

「プリキュア!くるりんミラーチェンジ!闇をも照らす星々の輝き!キュアアルバ!……レッド!私と勝負よ!!」

 

「最近体も鈍ってきたところだし多少は付き合ってやろう!」

 

窓ガラスを突き破って草むらに着地し、戦闘を開始する。

レッドの猛攻をなるべく避けて、できるだけあの廃家屋から離れる。一発ごとの攻撃が重く速いためだんだん避けきれなくなるが、受け流すにもどうも連続だと上手くいかない。力量差は圧倒的だ。これでも日本のプリキュアの中ではかなり強いほうだと言われていたのだが……。

 

(早く……!このままじゃもたない……!)

 

ハピネスチャージプリキュアの作戦成功を願う。

 

☆☆☆

 

硝子が落ちていくのを見て心が痛みながらもてくれた彼女のためにも作戦を成功させるべくめぐみのいるという部屋を探す。だいたいの場所が分かったところでブルーに調べてもらったが硝子の情報は正しいらしかった。

 

幹部は世界中飛び回っているようで、幸いと言っていいのか分からないが、部屋を見る限り何日も帰ってきていないようだった。

 

鍵のかかった不気味な雰囲気を放つ部屋に近づく。周りを見回し鍵がそこらへんには無いことに落胆するプリンセスだったが、それは思い切ってドアを蹴り破ってしまったフォーチュンによってあっさりと解決された。

 

そんなやわなセキュリティでいいのか、と少しトラップを疑ったが、ここに通じるところにレッドが居たわけだし、そもそもこんな廃家屋に何か施すというのはあまり現実的では無いので余計な心配だ。

 

「めぐみ……?」

 

プリンセスが部屋に駆け出しめぐみの姿を探す。不自然に汚れた壁が、廃屋の元来の不気味さをより増している。ベッドの上に寝かされた彼女の辛そうな寝顔を見て、起こさずに連れ出そうとそっと華奢な身体を持ち上げ、ハニーとフォーチュンと目を見合せて離脱を測る。

キュアアルバに作戦成功を伝えるべく、割られた窓から花火を打ち上げて。

 

☆☆☆

 

「なーんかあっさりすぎてビックリしちゃった」

 

「それでも成功したことは素直に喜びましょう?」

 

「そうだよねーっ!………めぐみは?」

 

「めぐみちゃんは奥のベッドに寝たまま…なかなか目を覚まさないの…」

 

「疲れているでしょうししばらくは安静にしときましょ」

 

「しょーこも無事に帰ってこれたし!めぐみも取り戻せたし!なんかなんか私たちすごごごーいかも!?!?」

 

なんて盛り上がっているハピネスチャージプリキュア陣はまだ、この先の運命なんて知る由もなく。

 

☆☆☆

「どういうことだ………!!」

 

「キュアラブリーが消えた。俺はアルバって奴と戦ってる隙にな。言い逃れはせん」

 

「レッド……まさかわざと…」

 

鋭い視線を送る誠司にレッドがフン、と目をそらす。

 

これ以上あの女といたら余計にこいつが壊れるだけだ、という考え。勿論、彼の堕ちた原因が彼女である以上手元に置いておくのとプリキュアとして戦わせることのどちらがいいのかレッドには分からなかったが、アルバの姿を見て作戦を悟った時、もうそのままの成り行きでいいと思ったのだった。

 

「奴はプリキュアだ。プリキュアは倒さねばならん」

 

「………」

 

☆☆☆

 

「みんな………ありがとう……!今日からは私も参加するよ!」

 

深い眠りについためぐみは鏡の自分───アンラブリーとの対面を果たしていた。それは幸いにもハピネスチャージプリキュアチームの3人がやった精神強化と同じ効果を持っていたため、ひめたちとの共闘および特訓を早い段階で始めることができた。気がかりなのは内側の自分との強制対面、および誠司のあれこれでの様々な悩みによるめぐみの精神状態だった。一見いつも通りに見えるが、ゆうこは悟った。幼なじみの心の不安があまりにも大きいこと。あの廃屋での何かが彼女の心の不安定さを加速させたことを。

 

「無理は……しないでね…傷以外の回復は…私には難しいから…」

 

そう声をかけると彼女は明るい声で大丈夫だよゆうゆう!と返した。

 

最初はめぐみとあとの4人というようにバラバラだったが、特訓と実践を重ねるうちに順調にまとまっていった。こういう時のめぐみのリーダーシップにはやはり適わない。どんとん引っ張って行ってくれる。リーダーの帰還にみなが喜んでいた。

 

そしてそれぞれが溜まってきたプリカードの願いをどうするかについて考え始めていた。




ぽんぽん進めてきます。
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