めぐみ…俺がきっと…。   作:たけぎつね

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また遅れました…。
呼び方はブルー、ブルー様に統一します

誠司のお母さんのキャラがあんまり分からないので想像ですご了承下さい


それぞれの想い。

ガチャ。

 

ただいま、と小声で呟き、玄関の鍵をしめた。

時刻は深夜午前一時半くらい。

当然ながら、部屋は暗い。ベランダから入る月明かりがリビングを薄く照らしているくらい。静かで、勿論誰も起きている筈がない。

 

冷蔵庫から缶ビールを取り出し、忍び足でソファに腰かける。

 

「ふぅ」

 

ぼーっとしながらおもむろにカレンダーを見つめて、明日はクリスマスイブかぁ、なんて考えたりする。

子供達のプレゼントはどうしようかな…。

二人とも自慢のいい子達だが、いい子過ぎるところがちょっぴり寂しく感じたりもする。

 

もっと甘えてもいいのに、なんてね。

とはいえ、もともと不定期な帰宅でなかなか会えないので仕方ないのかも。

そういえば最近会えてないけど、かおりは大丈夫かなぁ。いつもお世話になっちゃってごめんなさいね、と心の中で感謝。

 

いつも通り。

いつも通りの日課。ビールを飲みながら考え事をして、家族の顔を眺めてから、寝る。

今日もそのつもりだったが、二十分ほど経った頃、予想外のことが起こった。

 

静まり返っていた空間に、小刻みな呼吸音が響く。

それと、ゆっくりとした足音も聞こえる。

ドアノブを掴んだ音が聞こえたので、何となく物陰に隠れて、様子を伺う。

 

──怖い。

ふと、感じた。

張りつめた空気と呼吸音の緊張感が自分の身体を縛り、その場から動けない。

泥棒かと思ったが、部屋から出てきたのは誠司だった。

ひろ子はほっと胸を撫で下ろすも、ならば何故私は息子に恐怖を抱いてしまったのかが分からなかった。

 

やがて、誠司はダイニングのテーブルに何かを置いて立ち去り───玄関から出ていった。

僅かに見えた誠司の横顔は、普段あまり見せない強い目で、何かを追うような、必死な顔だった。

 

こんな顔見たことあっただろうか。

知らない間に変わってしまったのか…?

 

訳がわからない。

状況を確認しようと、恐る恐るダイニングのテーブルに近づく。そこには、誠司の字で書かれたメモが置いてあった。丁寧な字で書かれたメモ──否、書き置き。

 

別れを告げる、手紙。読んでみると、ただの家出ではないらしい。よっぽどの覚悟があったのだろうな、と立派に成長した息子の姿に─決して家出が嬉しいのではない─喜びを感じる。

 

 

「どういうことよ…!?」

 

 

──────────────

メリークリスマス

いままで育ててくれてありがとう

具体的に言おうとすると難しいかも

感謝してるのは本当だけど

みらいのまおが見てみたかったなぁ

それと、ごめんなさい

ガキのまま全然せいちょうしてないな…

これからやることは

すべてを壊すことです

でも俺は大切なひとを大切にしたいので

傷ついてほしくないその人のために

自分の信念を貫ぬこうと思います

ダメダメだな…最後まで心配かけて…

 

さようなら

どうかおげんきで

最後のメッセージが青春の報告になるなんて

思ってもなかったよ…

 

最後まで間抜けな誠司より

 

────────────

 

さようなら?

どうかおげんきで?

 

分からない。分からないことばっかだ…。

それに、青春の報告なんてどこにも書いてないじゃないか。

玄関出るとき止めておけばよかったのかも、と一瞬よぎったが、誠司のあの顔を見たらやっぱり止めなくて良かったと思ってしまう。全てを壊す、とか物騒なこと書いてあるけれど、それはどういう意味なのだろうか。

 

犯罪を犯すとしたらやっぱり止めるべきだったけど…私は息子を信じている。

正しいと思ったことしかしない優しい子だと信じている。

誠司が犯罪を犯すとしたら何かを守るときだということを信じている。

めぐみちゃんのことになるといつもと違う表情になることも知っている。

 

ん、めぐみちゃん…?

 

もしかして…。

ひろ子は数枚の紙とペンを机に置いた。

☆☆☆

 

誠司は、自身の上着をかけためぐみをお姫様抱っこして、レッドの鏡の中へ。

 

「…なんだここ」

 

「小娘の部屋を再現した疑似空間だ。部屋だけだからそれより先にはいけない」

 

「すげぇ…。──そういえば、作った空間って鏡と鏡の間の異空間何だろう?入口と出口が一つずつ必ずいるんじゃなかったか?」

 

「ああ。だが大きさは変えられるからな、俺達が出たらすぐに人も通れないほどの小さい鏡にする」

 

「なるほどな」

 

ベッドにめぐみを寝かせて布団を被せ、鏡から出る。

ここまで再現できるんだ…。

 

だが、俺達に感動している暇は無い、とぶんぶん頭を振り、レッドは先程まで座っていた椅子に、誠司はソファに座る。

 

「…ふぅ……」

 

レッドが大きな息を吐き、先程まで座っていた、小さな背もたれつき木製椅子に座る。

ソファの方が楽な気がするが、先にレッドが小さな椅子に座ったのだからそんなに気にする必要もないか、とか呑気なことを考えてみる。

 

「──さて、これから誠司はどうするつもりだ?」

 

少しの間流れていた静かな空気をレッドが遮る。

 

「正直言うと、まだ決まっていないんだ…。先のことなんて考えずに来ちゃったからな…」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

「それで、質問なんだが、今、世界のプリキュアはどうなっているんだ?」

 

「赤いサイアークと戦っているはずだ。世界中に送り込んでいる」

 

「赤いサイアーク?」

 

「普通のサイアークと違い、元になる人間はいない。それに、戦闘力も今までの何倍にも値する」

 

「さすがラスボスだな。なら、世界のプリキュアが応援に来ることは…いや、一部は来るかもしれないな…」

 

「世界中のプリキュア全員倒すと言い出す訳ないよな?」

 

「流石にそこまではしないが…どうにかしないとな。そもそも地球上に一体何人いるんだ…?」

 

「さあな」

 

不特定多数の人数か…。

どこか、一つの場所に集めてからエターナルゲージを使えればいいのだが。

サイアークを出現させればいいのか。大量、あるいは強力な。

だが一つの場所だけだと恐らく怪しまれるだろう。日にちを置いてからだとしたら、最初のやつらと連絡が取れない時点で分かるし、鏡でブルーも発見するかもしれないし…。

どうすれば効率よく…?

 

「おい、誠司。こっちも気になっていたことがある」

 

「?何だ?今ちょっと考えて───」

 

「──何故ブルーを殺さなかった?」

 

「何言ってんだ?俺はあいつを斬った!死んでないのか?」

 

「無自覚か?心臓の位置よりかなりズレてたぞ。いくら血が出たとしても、回復はするだろうな。殺す覚悟でなければ無理だろうさ」

 

「………殺す…か」

 

倒す、壊す、ではなく、殺す。

命を消す、ということ。人を死なせるということ。

レッドや世界中の人達に比べれば、平和で平凡な日々を送ってきた俺には全く関わりがないようなこと。

それを今、やろうとしているのだ。

 

自分に、人が殺せるだろうか。ただの中学生が。

 

「まだ迷いがあるようだな。どうせ世界中のプリキュアのことがある。考えるのはそれからでもいいが、なるべく早く決着をつけといたほうがいいぞ」

 

「────ああ」

 

まだ、決意が曖昧だったっていうのか?

また俺は直前になって怖じけずくのかよ?

もうそんなのは嫌だ、だけど…。

誠司ば膝の上で拳を握りしめた。

 

☆☆☆

 

「めぐみが…っ!めぐみがぁぁっ!!誠司ぃい!」

 

ひめがぽろぽろと涙を流し、服の袖で拭い続ける。

赤くなった目はとても痛々しく、震える声もまたこの場の雰囲気を一段と暗くさせる。

 

そんな中、ゆうこは責任感というか、使命感のようなものを感じていた。

ゆうこは、幼い頃から誠司とめぐみを常に見守ってきた。物心ついたときには既に、めぐみに対する誠司の想いには気付いていた。

応援しつつ、なかなか進展しない二人にむずがゆい感覚を覚えたりしていた。

 

めぐみが早く誠司の気持ちに気付いてほしいと願っていた。本人は隠そうとしていたが。

そして、めぐみは誠司の気持ちに気づくことなく、ブルーに恋をしてしまった。

親友の恋を応援してあげたい気持ちもあったけれど、やっぱり誠司とめぐみが結ばれてほしかった。

 

誠司はいつもめぐみのことを考えていた。

めぐみは誠司のことを兄弟みたいなものだと思ったままだと知っていても、好意を向けられているのがブルーであると分かってしまっても、誠司は変わらず、めぐみを支え続けていた。

決してめぐみと自分が結ばれることだけを望まず、めぐみの幸せだけを望んだ。

 

 

 

 

 

本当に優しいのだ。

 

 

 

 

 

───自分以外に。

 

だから、溜め込み過ぎてしまったのだろう。

誰にも打ち明けられず。守るはずだっためぐみに守られてしまって。

ブルーへの怒りもつもって。

 

ガスが溜まって、レッドによって火がついてしまった。

今まで誠司のことを見てきたのだから、同情だってしたくなる気持ちもある。だけど。

 

負の感情は自身を破滅に導いてしまう。

気づいたときには手遅れになってしまうかもしれない。

 

なんとかして説得しなければ。

めぐみと誠司は正面から自分達の気持ちを語り合うべきなのだ。

 

私がこの空気を打開してみんなを引っ張っていかなきゃ!

 

「──私達で絶対、めぐみちゃんを助けよう!!」

 

「そう、ね、ゆうこ。相楽くんのことも何とかしなきゃだけど、まずはめぐみを取り返さないとね!」

 

いおなも同意して俯いていた顔をあげる。

 

「僕も何か手伝っ──うぐっ」

 

ソファに寝かせられているブルーが起き上がろうとするも、慌ててミラージュに止められる。

上半身に巻かれた包帯は赤く染まっており、微量だが未だに出血している。

 

「ブルーは無理せずに安静にしてなきゃだめよ!──皆さん、私も出来るだけ力を貸すわ」

 

「ありがとうございます、ミラージュさん」

 

「無理だよ…だって誠司たち何処にいるのか分かんないもん!」

 

「僕、の、鏡で…まずは回復しないと…取り敢えず、今日一日あれば…っ…。君たちはもう帰った方がいい…ご家族も心配されているだ、ろうし…」

 

「分かりました…。では、お大事に…ほら、ひめちゃんもいおなちゃんも行こう?」

 

「え?私の家ここだけど…?」

 

「準備して?学校、行かなきゃ」

 

「ゆうこ…今日、どうしても行かなきゃ駄目…?」

 

「強制はしない。でも私はめぐみちゃんと相楽くんが帰ってきたときのためにも学校に行っておきたいな」

 

「ゆうこ…私も行くわ。ひめは?」

 

「そうだね…!行く!」

 

三人は学校に向かう。

道中の人々の笑い声が三人の胸を苦しませた。

 

 

 

 

 

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