(っ……こんな時にプレイングミスを続けちゃうとかありえないんだけど)
鈴はここに来て自分の判断の甘さを悔いた。強靭!無敵!最強!をカオス・MAXに対して発動していれば、より攻撃力が高く、ライフを大きく削れるカオス・MAXを残すことができたのだ。
(本当に強いデュエリストならここで間違えない。間違えないはずのに……)
悔いるのは後。まだデュエルは続いている。鈴は自分にそう言い聞かせ、自分を奮い立たせた。
☆TURN05(鈴)
「あたしのターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズに前のターンに墓地に送られたアークブレイブドラゴンの効果を発動するわ」
《アークブレイブドラゴン》
効果モンスター
星7/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2000
(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの表側表示の魔法・罠カードを全て除外し、このカードの攻撃力・守備力は、この効果で除外したカードの数×200アップする。
(2):このカードが墓地へ送られた次のターンのスタンバイフェイズに、「アークブレイブドラゴン」以外の自分の墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
「墓地のレベル8・ドラゴン族の銀河眼の光子竜を特殊召喚するわ。今度はこっちが墓地から蘇らせる番よ」
「2体目の光子竜……メインフェイズ1に移るわ」
「さて、あなたのフィールドには青眼の白龍が1体で手札が1枚。それでいてこっちには同じ攻撃力の光子竜が2体存在している。その1枚の手札で何ができるかしら?」
遊希の言う通り、状況は鈴が圧倒的不利と言っても差し支えないだろう。しかし、鈴はそんな中においても何処か楽しそうな面持ちでこのターンに臨んでいた。
「……確かにあたしの手札は1枚しかない。でも逆に考えてみなよ。まだ1枚あるってね。さて、あんたには少しゲームに挑んでもらおうかしらね」
《ビンゴマシーンGO!GO!》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):デッキから以下のカードを合計3枚選んで相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚選ぶ。そのカード1枚を自分の手札に加え、残りのカードはデッキに戻す。
●「ブルーアイズ」モンスター
●「ビンゴマシーンGO!GO!」以外の、「青眼の白龍」または「青眼の究極竜」のカード名が記された魔法・罠カード
「ビンゴ、ビンゴ、楽しいビンゴ……ってね。あんたはあたしがデッキから選んだカード3枚のうちランダムに1枚を選ぶ。そのカード1枚をあたしの手札に加え、残りをデッキに戻すわ」
「……どこかの星の王子みたいな言い回しをするのね。強がっている割に実はヘタレなところはあなたそっくりね」
「はぁ? あたしはあんなツンツンしてないし! ヘタレなのはあんたじゃないの!?」
「馬鹿は休み休み言うことね。まあいいわ、で……私はどのカードを選べばいいの?」
「じゃあ……このカードから選んでもらおうかな」
鈴が提示したのは3枚の魔法カードだった。
《カオス・フォーム》
《カオス・フォーム》
《カオス・フォーム》
「……全部同じカードにしか見えないんだけど」
「同名カードを選んじゃいけないって制約はないわ。さあ、選んでちょうだい」
「一番右のカードを」
―――どこを選んでも全部同じだがな。
(でもあのカードを確実に手札に加えるってことは……)
「選んだカードを手札に加えて、残りのカードはデッキに戻してシャッフルするわ。そして墓地の太古の白石の効果を発動! このカードをゲームから除外し、墓地のブルーアイズモンスターを手札に加える。あたしはカオス・MAXを手札に戻すわ! そして儀式魔法、カオス・フォームを発動!」
《カオス・フォーム》
儀式魔法
「カオス」儀式モンスターの降臨に必要。
(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地から「青眼の白龍」または「ブラック・マジシャン」を除外し、手札から「カオス」儀式モンスター1体を儀式召喚する。
(カオス・フォームは墓地の青眼の白龍を除外して儀式のためのリリース代わりにすることができる……)
「墓地の青眼の白龍1体をゲームから除外し、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを儀式召喚するわ! あんたの頼みの綱の光子竜皇もFA・フォトンもダークマターも全部墓地にいる! このモンスターの攻撃を防げるかしら? バトルよ! ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンで銀河眼の光子竜を攻撃! 混沌のマキシマム・バースト!!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 VS 銀河眼の光子竜 ATK3000
「言っておくけど、カオス・MAXは相手の効果の対象にならない。つまり対象にできないということは光子竜の効果は発動することすらできない!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 VS 銀河眼の光子竜 ATK3000
―――ぐっ。
カオス・MAXの攻撃を受けた光子竜は顔の前で両腕を交差させて防御の態勢を取るが、攻撃力の差は如何ともしがたく、破壊される。あまり戦闘で破壊されることのない光子竜の呻き声が遊希の脳裏に響いた。
(光子竜、大丈夫?)
―――流石に攻撃力4000のモンスターの攻撃は堪えるな。だが、墓地に送られるのは慣れている。お前はデュエルに集中しろ。
遊希 LP5000→4000
「続いて青眼の白龍で銀河眼の煌星竜を攻撃! 破滅の爆裂疾風弾!」
青眼の白龍 ATK3000 VS 銀河眼の煌星竜(+フォトン・オービタル)ATK2500
遊希 LP4000→3500
「煌星竜はフォトン・オービタルの効果で戦闘破壊されないけど、その前にカオス・MAXを倒せるモンスターを用意できなければ先にあんたのライフが尽きちゃうかもね。バトルフェイズを終了。メインフェイズ2に移るわ。でも手札は使い切ったし発動できるカードはない。あたしはこれでターンエンド」
鈴 LP4000 手札0枚
デッキ:21 メインモンスターゾーン:2(ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン、青眼の白龍)EXゾーン:0 魔法・罠:0 墓地:14 Pゾーン:青/赤 除外:6 エクストラデッキ:11(0)
遊希 LP3500 手札2枚
デッキ:26 メインモンスターゾーン:1(銀河眼の光子竜)EXゾーン:1(銀河眼の煌星竜)魔法・罠:1(フォトン・オービタル→銀河眼の煌星竜)墓地:10 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラデッキ:10(0)
□□□□□
□M□□□
□ 煌
□□□光□
□□オ□□
―――遊希。認めたくはないが、このままでは圧し切られるのが関の山だ。
(……)
―――決めるのであればそろそろ決めてしまわなければならないが?
(光子竜、あんたもいい性格してるわよね。全部わかっているくせに。大丈夫よ、次のターンで終わらせるから!)
☆TURN06(遊希)
「私のターン、ドロー」
遊希はデッキからカードをドローすると、再び鈴に向かって右手を突き出す。そして立てた人差し指を折った。
「ねえ、さっきからなんのつもり? 言っとくけど今の状況わかってんの?」
「ええ。少なくとも今はボードアドバンテージ、ライフアドバンテージ共に私が不利ね」
「だったらそんな余裕ぶっこんでる暇ないんじゃないの?」
「……ねえ、鈴。あなたはさっき青眼を強靭にして無敵、そして最強って言ったわよね」
「……それがどうしたというの?」
「少なくとも私が共に歩む銀河眼はあなたの青眼のように強靭にして無敵、最強とは言えないかもしれない。でもね、銀河眼は例え倒れたとしても―――私からは決して離れないの。ずっと私と共にある存在なのよ!!」
遊希がそう言い放った瞬間。彼女の背後の次元が歪み始め、そこに大きな穴が開く。そしてその穴からは強靭!無敵!最強!の効果で破壊されたはずの銀河眼の光子竜皇が現れたのだ。
「光子竜皇!? なんで……さっき破壊されたはずなのに!!」
「相手の“効果”で破壊された光子竜皇は破壊されたターンから2ターン後の自分スタンバイフェイズに特殊召喚されるの。私が単にあなたを挑発する目的で指を立てていたと思った? そんな訳ないじゃない。あれは光子竜皇が戻ってくるまでのカウントダウンだったのよ」
「っ……でも銀河眼の光子竜をX素材にしていない光子竜皇は攻撃力4000のバニラに過ぎないわ! カオス・MAXと相討ちしたところで……!」
「相討ち? カードの効果は最後まで読みなさいな」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ORU:0 ATK8000
「攻撃力……8000!?」
「自身の効果で特殊召喚に成功した光子竜皇の攻撃力は元々の倍になる。更に墓地の銀河眼の雲篭の効果を発動!」
《銀河眼の雲篭(ギャラクシーアイズ・クラウドラゴン)》
効果モンスター
星1/光属性/ドラゴン族/攻300/守250
このカードをリリースして発動できる。自分の手札・墓地から「銀河眼の雲篭」以外の
「ギャラクシーアイズ」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚する。「銀河眼の雲篭」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、このカードが墓地に存在する場合、自分のメインフェイズ時に自分フィールド上の「ギャラクシーアイズ」と名のついたエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。墓地のこのカードを選択したモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。「銀河眼の雲篭」のこの効果はデュエル中に1度しか使用できない。
「銀河眼の雲篭を光子竜皇のX素材にする! これで光子竜皇は自身の効果を発動できるようになった! バトルよ! 光子竜皇でカオス・MAX・ドラゴンを攻撃! そして光子竜皇のX素材を1つ取り除いて効果を発動! このダメージステップの間だけ、このカードの攻撃力をフィールドのXモンスターのランクの数×200ポイントアップさせる!」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ORU:0 ATK8000→9600
「消え去りなさい! カオス・MAX! エタニティ・フォトン・ストリーム!!」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ORU:0 ATK9600 VS ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000
「銀河眼の光子竜をX素材に持っていない光子竜皇の与える戦闘ダメージは半分になる。でも十分よ!!」
光子竜皇の放った光の一撃が、闇に染まった白龍を貫いた。迸る光に飲み込まれたカオス・MAX・ドラゴンは断末魔の叫びを上げて消えていった。
鈴 LP4000→1200
「きゃああっ!!」
「続けて1体目の銀河眼の光子竜で青眼の白龍を攻撃。自身の効果を発動して、光子竜と青眼をゲームから除外する。これで終わりよ。2体目の銀河眼の光子竜でダイレクトアタック」
「あはは……このデュエル、あたしの負けか……あんた、本当に強いのね。本当に、本当に……あたしなんかより、ずっと……」
光子竜に最後の攻撃を指示しようとした遊希であったが、それを途中で取りやめた。彼女の瞳に映ったのは目を真っ赤にしながら、大粒の涙を零す鈴の姿だった。
「ねえ、遊希……どうして、約束を守ってくれなかったの? どうして、デュエルやめちゃったの? あんたがずっとあたしと一緒に頑張ってくれたら……あたしだってもっと……」
敗北が嫌で流す涙であれば遊希は容赦しなかっただろう。しかし、鈴のこの涙はそんなことで流されたものではない。その見た目は大きく変わり、口調も接する態度も汚かった鈴であるが、この時の彼女はかつて遊希と―――“無二の親友”―――であった頃の彼女に戻っていた。
「……銀河眼の光子竜でダイレクトアタック!! 破滅のフォトン・ストリーム!!」
しかし、そこで手心を加えてしまうのは真のデュエリストたり得ない。鈴を真のデュエリストとして認めているからこそ、最後まで全力を以て臨むのだ。
銀河眼の光子竜 ATK3000
鈴 LP1200→0
「―――っ!」
(しまっ……)
光子竜の攻撃を受けてライフが0になった鈴の身体が大きく吹っ飛んだ。遊希は精霊である光子竜を10年以上もその身に宿しているため、精霊の力を制御することはできていた。しかし、鈴の見せた涙。鈴の言葉が彼女の心を最後の最後に乱した。
その結果、光子竜を始めとしたギャラクシーモンスターと精霊を宿す遊希の力に強く共鳴したため、力が逆流し鈴に危害を加えてしまったのだ。
「鈴……!!」
―――大丈夫だ、遊希。吹き飛ばされたりはしたが、彼女に大きな怪我はない。
「そう……よかっ……た……」
―――遊希? 遊希!!
ミハエルをはじめとした教職員が鈴の元に駆け寄っていく。彼女に大きな怪我がないことを光子竜から聞いた遊希は、安心したような笑みを浮かべながら、その場に力なく崩れ落ちた。
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感想を頂いた方からのご指摘により、一部デュエルの展開を修正しました。
修正前:相手のカード効果の対象にならないブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンの攻撃に対して銀河眼の光子竜の(2)の効果を発動。対象に取れないため光子竜のみを除外。
修正後:相手のカード効果の対象にならないブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンの攻撃に対して銀河眼の光子竜の(2)の効果は発動不可。そのため、戦闘破壊される。