消灯まであと1時間といった時、紫音は一人バルコニーでデッキ調整に明け暮れていた。明確な実力差があったとはいえ、鈴相手にデュエルで5戦5敗というのはデュエリストとしてさすがに受け入れがたいことであった。
鈴から貸して貰ったカードケースからカードを取り出してはデッキに入れて一人で回し、抜くことの繰り返し。一見意味のない行動のように思えるが、それでも今日1日で紫音のデッキおよび彼女のタクティクスは見違えるほど上達していた。
(こんな感じかしら……いや、ここで妥協しちゃダメ。鈴さんみたいに、私は……)
「おつかれ」
考え込む紫音の首筋に冷たいものが当てられる。ひゃっ、と変な声を上げて振り返ると、そこには湯上り姿の鈴がスポーツドリンクの缶を2つ持って立っていた。
「これ飲む?」
「あ、ありがとうございます……」
「頑張っているようだけど、無理をしちゃダメだからね」
「ですが……」
「ほら、よく言うじゃん……なんとかは一日で……」
「ローマは1日にしてならず、ですか?」
「そうそう、それそれ! 強いデッキもそう、長い時間をかけてやっとひとつのデッキが出来上がるの。少なくともあたしはそうやってきた」
デュエルの時は元プロの娘らしく、とてもまじめな鈴であるが、今結衣を見ている彼女の眼はまるで妹を見る姉のように優しい顔をしていた。この瞬間の鈴も、デュエルの時の鈴も、美味しいものを食べて顔を綻ばせている鈴も。全てが星乃 鈴という一人の人間から醸し出されるものなのだ。
(鈴さん……こんなにも色んな表情をする人なんだ……)
「ねえ、紫音。ちょっと歩かない? 気分転換も必要だよ?」
鈴は紫音をロッジの外へと連れ出した。ロッジから少し歩くと、湖の湖畔に出る。湖畔から望む湖の湖面には都会ではまず見れない月と満面の星空がまるで鏡のように映し出されていた。
「綺麗……」
「パパがこのイベントの場所をここにした理由がわかるなぁ。普段便利なものに囲まれた生活を送っているとどうしてもこういうものに触れる機会は減っちゃうし」
「まるでヴェートさんみたいなこと言いますね」
「イメージにそぐわなかった?」
「いーえ」
そう言って悪戯っぽく舌を出して笑う紫音。彼女もこの1日でだいぶ表情が豊かになっており、これも成長の1つであった。
「ねえ」
「何ですか?」
「あの……橙季くんのことなんだけど」
鈴の口から橙季の名前が出た瞬間、それまで朗らかだった紫音の顔が曇る。彼女もまた橙季のことを快く思っていない人物の一人だった。
「事情はわかっているんです。でも、それだったら自己紹介の時に言ってくれればいい話じゃないですか」
「まあ、そうよね……」
「自分から言えないなら皐月さんや愛美さんに言って話を切り出してもらうなりやりようはあったはずです! それなのに嘘をついて問題を大きくして……それに、私は生まれたままの姿まで見られたんですよ……」
紫音の正論に次ぐ正論に鈴は言葉に詰まる。紫音の言うことは最もである、と危うく流されかけてしまうところだったが、ここで自分を見失ってはいけないと首をぶんぶんと横に振る。
「うん、確かに紫音の言うことが正しい。嘘をつくのはいけないことだよね」
「で、ですよね!」
「でもそれだったら……あたしも紫音に嫌われちゃうなー?」
「えっ」
「ねえ、紫音。あたしのこと、どう思う?」
鈴の意図が読めない質問に困惑しながらも、紫音は今日1日で感じた鈴のことを1つ1つ言葉にして出す。そのほとんどが「強くてカッコいい」だの「明るくて優しい」だの「スレンダーで美人」といった鈴からしてみれば歯の浮くような褒め言葉であった。
「そう、あんたはそう思ってるんだ……でもね、それは間違いよ。あたしね、ずっと嘘をついていたんだ。紫音の言うように強くてカッコいいだなんて真っ赤な嘘だよ?」
「……どういうことですか?」
「よく言われることだけど、あたしは強くも無ければカッコよくなんてない。あたしが髪の毛を金色に染めている理由はね、パパやママの期待を受けたくなかったからなんだ。あの星乃 竜司の娘として【青眼】を使うことを許されているけど、パパみたいな凄いデュエリストになれるなんて思ってなかったし、バッシングを受けてパパたちの名誉に傷つけたくないから、不良みたいな髪の色をしてるんだよ? それのどこがカッコいいの? むしろダサいって思わない?」
「そんな、そんなことはありません! わ、私が今日1日感じた鈴さんは……鈴さんはぁ……」
ちょっと意地悪な質問をしてしまっただろうか、と思いながら紫音の頭を撫でる鈴。撫でられた瞬間はまるで飼い主に懐いている子犬のようにうっとりとした表情を浮かべた紫音であったが、我に返った彼女には「撫でたら喜ぶと思わないで下さいっ」とその手を払われてしまった。
「ねえ紫音。確かにあんたは間違っていない……でもね、だからこそ橙季くんのことも考えてあげてほしいんだ。彼女、いや彼もずっと悩み苦しんできた。だからこそあたしたちが彼の気持ちを汲んであげなきゃ、って思わない?」
「……裸を見られたことは忘れません。ですが……いつまでも今のままでいるというのは非生産的です」
言葉尻は強いが、彼女も今のままでいることを望まない。それを確認できた鈴はほっと一安心する。
「ありがと、紫音。それでちょっとあんたに聞きたい事があるんだ。愛美ちゃんについてなんだけど……一緒にご飯食べたよね? 何か橙季くんについて話していなかった?」
「愛美さんは……私以上に怒っていました」
紫音と愛美は別の部屋で夕食を食べた時、ほとんど無言だった。やがて沈黙が苦になりつつあった紫音が橙季について切り出す。
「二宮さんについて、どう思います? 正直私は許せないです」
「……ボクは、橙季ちゃんのことを友達だと思ってた。橙季ちゃんには橙季ちゃんなりの苦しさがあったんだと思う。でも、それだけの悩みがあるならボクに相談してほしかった……せっかく友達になれたと思ったのに。ボクの思い違いだったの? 橙季ちゃんはボクのことを信頼してくれていなかったのかな……?」
そう言ってすすり泣く愛美に紫音は暖かい言葉をかけることができなかった。もし自分が気の利いた言葉をかけてあげられれば愛美と橙季は仲直りできていたのではないか、と後悔の念が渦巻いていた。
「そう……辛いことさせちゃってごめんね」
「いえ、私こそ……」
「それでさ、さっきお風呂に入っていた時に私と千春でこんな作戦を思いついたんだけど……紫音、協力してくれない?」
その計画を打ち明けられた紫音は思わず「ええーっ」と素っ頓狂な声を上げてしまった。最初はそんな作戦上手くいくわけない、と思った彼女だったが、鈴に説得される形でその計画に加担することになった。
*
時計の針は22時30分を指していた。中学生ならともかく小学生の未来はとっくに眠っている時間であった。未来と同室、ということも考えて同じ部屋で寝る四人は少し早めの消灯時間を設ける。
「ほら、もう時間だから早く寝なさい! 明日は今日学んだことを活かすためにみんなでデュエルをしてもらうから、しっかり身体を休めとくこと!」
「なんか千春さん先生みたいやな」
「まあ私は一番お姉さんだからね! みんなを統括する立場にある、いわばリーダーよ!」
「ま、背は一番低いやけどなー!」
「華ー? 寝れないんだったら私が寝かせてあげようか? 永遠に……」
「うち寝るわ!!」
華が布団に飛び込んだのを見て紫音、愛美、ヴェートの三人も布団に入る。未来は既に眠っているのか深々と布団を被っており、橙季は自分から1階の別の部屋で睡眠を取ることを希望した。三人が布団に入ったことを確認した千春はおやすみ、と言って部屋の明かりを消した。
千春が階段を下りていき、1階にある遊希たちが寝泊まりする部屋に入ったのを確認すると、暗闇の中、紫音・華・ヴェートの三人による作戦が始動した。
「ふっふっふ……さあ、うちらの夜はこれからやで」
「で、何をするつもりなんですか?」
「もしかして恋バナ? ボクみんながどんな恋してるのか興味あるかな」
「甘いわ愛美。今は夏、夏の夜といえば……怪談に限るやろ」
布団の中にあらかじめ仕込んでおいた懐中電灯のスイッチを入れて顔を照らし出す華。その姿を見て愛美が少し慌てだす。鈴と千春が考えた作戦―――それは愛美に対して怖い話をすることだった。
皐月が昼間の時に聞いていたのだが、愛美はホラー系統のものが大の苦手であり、ホラー映画など見ようものなら錯乱して大泣きしてしまうほどなのだとか。紫音は鈴を通じてその作戦を聞き、華・ヴェートと事前に打ち合わせをして怖い話をする。その話に怯えてしまった愛美を橙季が励ますことで、仲直りのきっかけにするというのが作戦の概要であった。
「ボ、ボク怖い話はちょっと……」
「おっ、いいリアクションしそうなのがおるな? だったら愛美を一番怖がらせた奴が勝ち、ってのはどうや?」
「ええっ!?」
「面白そうですね。勝負事なら負けるわけにはいきません」
「フランスの怖い話……今日は皆さんにそれを披露する時ですね」
「紫音やヴェートまで……怖すぎるのは無しだからね……」
じゃんけんをして怪談を披露する順番は紫音→ヴェート→華の順番になった。愛美は無理やり審査員にされてしまい、布団から顔だけを出しながらも既にとても怯えているようだった。
「じゃあ私からですね。これは私の小学校時代の友人が体験した話です」
皆さんは“金縛り”って聞いたことありますか? 寝ている時とかに身体の自由が利かなくなる現象なんですが、あれは本当は心霊現象でもなんでもないそうなんです。テレビで偉い専門家の方がそう仰っていました。私もそれを聞いて「なんだ、怖いものじゃないんだ」……と思っていました。この話を聞くまでは。
これは私の小学生時代の友達が体験したことです。その友達は水泳を習っているんですが、水泳って全身の筋肉を使うから身体の疲労感がもの凄いんです。だから学校の授業とスイミングスクールで1日に2回も泳いだ日、とかはそれはもう疲れてしまったそうでお風呂に入って夕ご飯を食べたその友達はすぐ寝てしまったそうです。
早く寝すぎてしまったのか、その友達は夜中の3時ごろでしょうか。目が覚めてしまって、まだ起きるには早すぎると思って二度寝しようとして目を閉じたんですが……なんと身体の自由が利かないんですよ。脳が手を動かそう、と判断しても手はピクリとも動かない。足を動かそう、と指示を出しても足はまるで強い磁石に引かれているように動かない。それでいて目もまるで接着剤でくっつけられたようにして開かないんです。
これはおかしい!と思ったその友達は必死に身体を動かそうとするんですがまるで効果がない。全身からは汗が滝のように出てくる。混乱してお父さんやお母さんを呼ぶための声も出せない。助けて、助けて、と強く心の中で念じていたら、なんと息まで苦しくなってきたんです。首を絞められている……このままだと死んでしまう!と思った友達はもう全身全霊、全力の力をもって身体を動かし、金縛りから脱出したんです。
助かった……と思ってその友達は目を開ける。すると、その友達が眠っている布団の上には真っ黒で2本の鋭く伸びた牙が特徴的な鬼のような生き物が跨っていて、「うがあああっ!!」とうなり声を上げながら鋭い爪で友達の顔をズパッ、と切り裂いて、血が噴水のように飛び出たんです。
友達はそのまま気を失ってしました。ですが、次の日の朝、その友達は普通に目を覚ましました。目を覚まして友達は「なんだ夢か」と思ったそうなんです。悪い夢を見たな、と思って起き上がろうとした友達は布団の中が濡れているのに気づきました。汗をいっぱいかいたから? それとも怖い夢を見ておねしょをしていまったのかな? どちらにしても濡れたままでいるのは気持ち悪いので、起き上がって何が濡れているのが確認したんです。
友達は悲鳴を上げました―――濡れたものの正体は汗でもおしっこでもありませんでした。それは―――真っ赤な血だったんです―――
「うわっ!うわあああん!!」
最後まで話を聞いてしまった愛美は早速赤ん坊の如く喚き泣いていた。
「……中々やるな、紫音」
「こういうのはあまり得意じゃないんですが……自信がつきました」
「日本のホラーは欧米のものとは違って霊的現象があるからまた別の怖さがあるんですね。次は私の番ですね。怖い話、というのにはあまり明るくないので、フランスの歴史上の人物にまつわるお話を」
皆さんは“ジャンヌ・ダルク”をご存知でしょうか? ジャンヌ・ダルクはフランスとイングランド、今のイギリスとの間で勃発していた百年戦争において「フランス領を奪還せよ」という神の言葉を受けてフランスの軍に従軍し、イングランドに奪われていたオルレアンという地を奪還させることに成功したフランス史に残る英雄です。今でもゲームや小説の題材としてよく取り上げられますね。
さて、フランス軍を率いて戦争を有利に進めたジャンヌですが、最終的に彼女はイングランド軍によって火あぶりの刑にされてしまいます。ただ、そんな彼女がオルレアンを奪還するにあたって協力した貴族や騎士のことも忘れてはいけません。
その中の一人に“ジル・ド・レ”という人物がいました。ジル・ド・レは貴族の身でありながら、軍人としても才覚を発揮し、ジャンヌ・ダルクと共にイングランドからオルレアンを奪還し、人々からは「救国の英雄」と讃えられたそうです。
しかし、ジャンヌ・ダルクがイングランドによって処刑されると彼は精神を病んでしまい、戦争終結後に自分の領地に戻ったジル・ド・レは凶行に及びます。財産目当ての詐欺師に唆された彼は私財を投じて錬金術に傾倒し、その錬金術を成功させるために黒魔術を執り行うようになりました。
そして……ジル・ド・レは錬金術成功のための生贄ならびに自分の性的欲求を満たすために、手下に命じて少年たちを拉致・虐殺しました。「救国の英雄」として讃えられた彼は少年に対する凌辱と虐殺に性的興奮を得るようになってしまい、結果ジル・ド・レの手によって150人から1500人の犠牲者が出たと言われています。最終的にジル・ド・レは逮捕され、絞首刑ならびに火あぶりの刑に処されました。
ジル・ド・レが何故そうなってしまったのか……真相はわかりません。そういえば皆さんは彼が崇拝したジャンヌ・ダルクにはどのようなイメージを抱いていますか? 一般的には華奢な乙女のイメージがあるようですが、研究によると女性にしては大柄で男性のような外見をしていたという説もあります。更に女性であることを隠して男装をしてということもあって、ジル・ド・レは自分たちが凌辱・虐殺した少年たちにジャンヌ・ダルクの姿を重ねていたのではないでしょうか。
ジル・ド・レが処刑される際に民衆たちは彼の魂が救われるように祈りを捧げたといいます。しかし、そのような許されざる凶行に走ったジル・ド・レを神は許すのでしょうか? 恐らく神による救済も得られぬまま、彼の霊は彷徨っているかもしれません。
例えば―――愛美さんのようなジャンヌ・ダルクに似た明るい少年のような女の子を求めて―――地を越え、海を越えてきているかもしれません。そして彼は愛する者の名を叫ぶのです。
―――ジャャアアンヌゥゥゥ!!!―――とね。
「嫌、嫌、嫌ぁあああ!! 来ないで、ボクのところに来ないでえええっ!!」
「ジル・ド・レに関してはうちも聞いたことあるで。そんなんが実在した中世ヨーロッパってマジでアカンやろ」
「凄くリアルなお話でした。怪談とはまた少し異なりますが、真に迫るものがありました」
(どうしましょう。これフランスで放映されていた日本のアニメのネタなんですけど……あのアニメ凄かったですね。ジル・ド・レを目玉も飛び出した狂人のように描いて手)
そんなヴェートのみが知る真実を知る由もない三人の怪談はいよいよ最後の話となる。
「よし、じゃあ大トリはうちやな。二人の話が面白かったから、負けてらんないで!」
夕飯の時も言ったけどな、うち関西出身やねん。関西って江戸幕府ができるまで政治の中枢だったんやけど、政治の中枢ってことは色々と曰く付きの地なんや。例えば今家電量販店になっとる店は火災のあったデパートの跡地に立っててな? 今でもその影響で心霊現象が絶えないんや。まあ、近年のネタならともかく、関西で心霊の代名詞と言えば京都やねん。
まず1つ目は「貴船神社」って神社のすぐ近くにある「深泥池(みどろがいけ)」っていう場所なんやけど、そこは京都のタクシー運転手さんなら誰でも知ってるスポットや。京都市内で女の人を乗せたタクシーが行き先を尋ねて深泥池って言うとな……その人は幽霊なんや。深泥池に着くと後ろに乗っていたはずの女の人はいなくなって、タクシーの座席はびっちょりになってるんや。ちなみにその池では近くにある精神病院の入院患者が何人も身投げしてるねん……あれ、そんなに怖くなかった? まあこれは比較的最近の話やから。じゃあリクエストに答えて2個目行くで。
今となってはカップルのデートスポットになってる京都鴨川の「三条河原」ってところなんやけど……昔は戦争に負けた人とか罪人が処刑されて晒し首にされたのがその場所なんや。
で、これはうちの親友のお姉さんから聞いた話なんやけど、ここで特に惨たらしく殺されたのがあの豊臣秀吉の甥っ子だった人なんや。元々は子どものいない秀吉の後継者だったらしいんやけど、秀吉に子どもが生まれてから次第に疎まれるようになってな、最終的に秀吉に罪をでっち上げられて切腹させられたんやと。だけど、その人たちの悲劇はそこで終わらなかったんや。
秀吉はな……その甥っ子の一族郎党、男はもとより老人から子供までみんな皆殺しにしたんや。処刑は正午ごろから始まって最初に殺されたのは幼い子どもたちやった。50人近くの髭面の男たちが愛らしい子どもたちを犬をぶら下げるように扱って刺し殺したんや。抱きしめる母親から子供を奪い取ると胸を二突きにして殺してもうた。子どもたちが全て殺されるとやがて大人たちの処刑に及んで、泣きわめく人たちを処刑人たちは次から次へと殺した。処刑が終わるころには鴨川の水は処刑された人の血で真っ赤に染まってたって記録が残ってるんや。そして処刑された人の身体は一つ掘った大穴に次から次へと投げこまれて、全部埋めると、秀吉はそこに「畜生塚」と書かれた石碑を建てたんや。
当時その処刑には地元の京都の人たちが見物に来てたんやけど「ここまで惨たらしい処刑と知っていれば見になど来なかった」とみんながそう言ったらしい。そして当時の京都の街にはこんな言葉も広まった。
「秀吉、本当の畜生は貴様だ!」とな。まあ後にその人たちは後世の人たちによって供養されたんやけどね、今でもその恨みは残っていて、京都の人たちはそのことを忘れないようにしてるんやって。
まあ、今の話でもあるように京都って世界でも有数の観光地なんやけど色々とまあ……ヤバい場所やねん。光あるところに影がある?みたいな。でも本当に気を付けなきゃいけないのはこっからや。怖い話をしていると幽霊が寄ってくる、というのはよくある話だけど、もしかしたら……今この部屋にもいるかもしれんな……例えば、畜生として惨たらしく殺された人が愛美の後ろから血で真っ赤に染まった手を振りかざして――――首を――――!!
「……」
「なーんてな、なんかヴェートのと被ってもうたわ」
「日本も日本でとっても怖いことしてるじゃないですか……」
「中世というのは色々と陰惨な時代でしたからね。あれ、愛美さんどうしたんですか?」
「うわああああん!! もうやだよおおお!!!」
錯乱した愛美は暗い部屋の中を悲鳴を上げながら駆け回った。部屋から出たい、と思っているようだが混乱して何処かドアなのかすらもわかっていないようだった。さすがに騒ぎ過ぎたのか、階段をドスドスと駆け上がる足音が近づいてくる。華たちがやばっ、と思った瞬間、ドアが開くとそこは青筋を立てている千春の姿があった。