銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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矛を交える決闘者・4

 

 

 

 

 

 迎える第3試合。クジで振り分けられた対戦カードは紫音と華だった。1戦目の未来対ヴェートは初心者同士のデュエル、2戦目の愛美対橙季のデュエルは六人の中でも特に仲の良い二人による中級者同士のデュエルとするならば、この二人のデュエルはまさにアカデミアの学生のレベルに最も近い、上級者同士のデュエルであると言えた。

 さらにこのデュエルには単に紫音と華のデュエル、という以外にも別の意味合いが含まれていた。それは彼女たちの指導者をする二人、紫音の指導者である鈴と華の指導者である千春にあった。

 この二人の指導方針は他の三人と違ってひたすら実戦を繰り返す方式を取るという厳しいものであるのだが、そんな彼女たちについた二人はもっと自分を高めたいという上昇志向の持ち主であったため、鈴と千春のその指導方針は意外と合っているといえた。

 指導法が肌が合っていることに加え、気性が合ったということもあって紫音と華はそれぞれ鈴と千春に深い恩義を感じており、それが「自分たちを指導してくれた鈴(千春)のためにも負けられない」という気持ちに繋がっていた。それは鈴と千春が知らないところで、紫音と華による代理戦争の意味合いも含んでいたのだ。

 

「なあ、ところでな。うちから提案があるんやけど……」

「……!? 私は大丈夫ですが、お二人が了解してくれるでしょうか?」

 

 デュエルの前に華が紫音に何やら耳打ちする。紫音は最初はおお、という顔をしたがすぐに不安そうな顔に変わる。二人は何を考えているのだろうか、と思った鈴と千春の元に紫苑と華は作り笑いを浮かべながらやってくる。

 

「あのー、ちょっとうちから提案があるんやけど」

「提案? 何かしら」

「自分で言うのもなんなんやけど、うちらってそれなりにデュエルの経験があるねん。4000ライフじゃなくて……8000ライフのデュエルに関しても」

 

 紫音と華の二人の提案は、このデュエルだけでいいのでライフを4000制ではなく8000制でさせてほしい、というものだった。あくまで高みを目指す二人である。4000制のデュエルでは互いに実力を出し切らないうちに終わってしまう可能性があったのだ。

 しかし、開会式の場で説明を受けたようにここでのデュエルは基本ライフは4000制を取っているため、8000制ライフのデュエルは規則違反と捉えられかねない恐れもあった。

 

「あっ、でもルール違反なら無理に変えなくてもええんやで。うちは決められたルールとかを破る、ってのはそんなに気が乗らへんねん」

「……どうでしょうか?」

 

 最もこの二人のこの申し出はダメ元で行ったものである。しかし、それを決める鈴と千春の反応は実にあっさりとしたものだった。

 

「いいんじゃない? 別に」

「そうよね。バレなきゃオッケーよ!」

 

 あまりに簡単にGOサインが出たため、紫音と華は頼んでおきながら唖然とする。

 

「えっ……いやいや、言い出しといてなんやけど、そんな簡単に決めちゃってええんか?」

「別に。バレたところでちょっと校長先生に怒られる程度よ」

「それは……まずいんじゃないんですか?」

「大丈夫よ。それならあたしがパパのケチ、パパ大っ嫌い!ってパパに言うから」

「ああ、そうすれば無罪放免よね!」

 

 いくら娘とはいえ、あの星乃 竜司にそんなことを平気で言ってのけるあたり、改めて鈴という人間の恐ろしさを知った紫音と華であった。そんなことを彼女たちが思っているのを知る由もない鈴と千春は遊希たちにこのデュエルのみ8000制で行うということを告げた。

 特に断る理由のない遊希たちも二つ返事で了承したが、そうなると愛美たちから不平不満の声も少しは出るだろう、と思っていた。しかし、彼女たちもむしろそのデュエルには歓迎といったムードであり、自分たちと同世代ながら8000制のライフでデュエルができる紫音と華の腕に期待の目線を送るほどだった。

 

「ありゃりゃ、思っていた以上に大事になりそうやね」

「ったく……もう少し考えて物を言ってください」

「悪い悪い。でも紫音もそれなりにノリ気だったやん?」

「それは……まあ、鈴さんに成長したところを見て貰って……その、褒めてもらいたいから」

 

 もごもごと口ごもる紫音を尻目に華はデュエルディスクを腕につけてデュエルの準備を始める。華はデュエルディスクにセットしてあったデッキを一度外すと、パラパラとデッキの上から数枚のカードをめくってみた。千春とのデュエル以降、どうすればより高みに達することができるのか。それをずっと考え続けてきた。

 

(……頼むで、うちのデッキ)

「華さん、私は準備できました」

「よっし。ほないくで!」

 

 デュエルディスクを起動させ、デュエルモードに移行する。先攻後攻の決定権はコンピューターによって紫音に与えられた。

 

「先攻後攻の決定権は私にありますね。では先攻を貰います」

「ま、そうやろな。じゃあうちは後攻で行かせてもらうで!」

(【ブラック・マジシャン】……注意すべきカードは当然ブラック・マジシャンに黒の魔導陣に永遠の魂……全部が全部対策できるわけはないからある程度割り切って……)

 

 先攻後攻が決まり、デュエルスペースに向かう二人。しかし、そこに向かうまで何もない場所でつまずいて転びそうになるなど、紫音は目に見えて緊張しているようだった。

 鈴は最初にデュエルした時点で紫音の弱点はデッキ構成やデュエルタクティクスではなく、想定外の事態に弱いところにあると指摘していた。メンタル面の弱点はすぐに治るものではないだろう。しかし、完治させることはできなくとも自身の意識次第でそれを抑えることができる。要は心の持ちようなのだ。

 ここは紫音自身で乗り越えなければならない、と思っている鈴であるが、非情になり切れなかった彼女は緊張した面持ちの紫音の下へ向かい、その肩をポンと叩いた。

 

「わっ、びっくりした……どうしたんですか、鈴さん」

「肩に力が入っているわよ。ほらほら、リラックス!リラックス!」

「す、すいません……」

「でも緊張することは悪いことじゃないと思うな。ぶっちゃけあたしだってデュエルの前はいつだって緊張してるし」

「私とのデュエルの時もですか?」

「ええ。紫音とは昨日5回デュエルしたけど、5回とも緊張してた。でも緊張するってことはそれだけそのデュエルにかける思いが強いってこと」

「思い……」

「まあ、気負いすぎないことだよ! 変に気負うといつも通りの動きができなくなっちゃうしね!」

 

 それだけ言い残すと鈴は先に待っていた千春の隣に座る。鈴の言葉はおおよそアバウトであったが、彼女が何を言いたいのかは紫音には伝わっていた。

 

(気負いすぎるな……そっか。そうだよね、このデュエルは鈴さんのためにするんじゃない。このデュエルは私のデュエルなんだから)

「紫音、準備はええか?」

「はい、いつでも」

「このデュエルは練習と言えば練習かもしれへん。だけど、うちはやれるだけのことをやるから」

「……私もです。練習とはいえ、負けてあげる道理はありません」

「「デュエル!!」」

 

 

先攻:紫音 【ブラック・マジシャン】

後攻:華 【HERO】

 

 

紫音 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

華 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

 

 

☆TURN01(紫音)

 

「私の先攻です。私は《竜魔導の守護者》を召喚します!」

 

《竜魔導の守護者》

効果モンスター

星4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1300

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、このカードの効果を発動するターン、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。デッキから「融合」通常魔法カードまたは「フュージョン」通常魔法カード1枚を手札に加える。

(2):EXデッキの融合モンスター1体を相手に見せて発動できる。そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を自分の墓地から選んで裏側守備表示で特殊召喚する。

 

「召喚に成功した竜魔導の守護者の効果を発動します。手札1枚をコストにデッキから融合通常魔法かフュージョン通常魔法1枚を手札に加えます。私は手札のブラック・マジシャン1枚をコストに融合を手札に加えます。そして永続魔法、黒の魔導陣を発動します」

 

 【ブラック・マジシャン】デッキにおいて必要不可欠なカードの1枚である黒の魔導陣。このカードを初手で引き入れられたことは彼女にとっては幸運であった。

 

「初手で引くとかドロー運ええなぁ。羨ましいわ……」

「偶然ですよ、偶然。このカードの発動時、デッキトップから3枚カードを確認してその中にあるブラック・マジシャンもしくはブラック・マジシャンのカード名が記された魔法・罠カード1枚を手札に加えます。私が手札に加えるのは罠カード、マジシャンズ・ナビゲートです」

 

 マジシャンズ・ナビゲートは手札からブラック・マジシャン1体を特殊召喚し、レベル7以下の闇属性・魔法使い族モンスターをデッキから特殊召喚する罠カードだ。そのため手札にブラック・マジシャンがなければ発動できない。

 

(さっき紫音は竜魔導の守護者のコストでブラック・マジシャンを捨てた。あのカードを選ぶっつーことは手札にもう1枚ブラック・マジシャンがあるってことなんやろか……それとも他に加えられるカードがなかったんか?)

「竜魔導の守護者のもう1つの効果を発動します。EXデッキの竜騎士ブラック・マジシャンを見せることで、その融合素材であるブラック・マジシャンを墓地から裏側守備表示で特殊召喚します」

 

 S召喚やX召喚はフィールドのモンスターが表側表示でなければその素材に使用することはできない。しかし、手札のモンスターを素材にも使用できる融合召喚は素材のモンスターが裏側守備表示であっても融合素材に使用できる。

 

「私は手札から魔法カード、融合を発動! フィールドの裏守備状態のブラック・マジシャンとドラゴン族モンスターの竜魔導の守護者を融合!“古き偉大なる王に仕えし黒き魔術師よ。竜の力を得て全てを守護する騎士となれ!”融合召喚! 現れなさい、竜騎士ブラック・マジシャン!」

 

《竜騎士ブラック・マジシャン》

融合・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター

(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「ブラック・マジシャン」として扱う。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの魔法・罠カードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 

「出たな、ブラック・マジシャンデッキのエースモンスター!」

「このカードがモンスターゾーンに存在する限り、私の魔法・罠カードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されません。私はカードを1枚セットしてターンエンドです」

 

 

紫音 LP8000 手札2枚

デッキ:33 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(竜騎士ブラック・マジシャン)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2(黒の魔導陣)墓地:3 除外:0 EXデッキ:14(0)

華 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

 

紫音

 □□黒伏□

 □□□□□□

  竜 □

□□□□□□

 □□□□□

 

○凡例

竜・・・竜騎士ブラック・マジシャン

 

 

☆TURN02(華)

 

「うちのターン、ドローや!」

(竜騎士ブラック・マジシャンの真価は永遠の魂と組み合わせた場合に発揮される。あのセットカードはきっと黒の魔導陣で手札に加えたマジシャンズ・ナビゲートのはずやから、永遠の魂を引かれる前に倒させてもらうで!)

「行くで! うちは手札から魔法カード《E-エマージェンシーコール》を発動や!」

 

《E-エマージェンシーコール》

通常魔法

(1):デッキから「E・HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

「うちはこの効果でデッキからE・HERO ソリッドマンを手札に加える! そしてソリッドマンを召喚! 召喚に成功したソリッドマンの効果で手札のレベル4以下のHERO1体を特殊召喚できるで! 頼むで、V・HERO ヴァイオン!」

 

 瞬く間に2体のHEROモンスターが華のフィールドに現れる。HEROの下級モンスターは有用な効果を持っているモンスターが多いため、ソリッドマンやヴァイオンのような展開の要となるモンスターを如何にして召喚・特殊召喚できるかが鍵となってくる。

 

「特殊召喚に成功したヴァイオンの効果を発動や! デッキからHEROモンスター1体を墓地へ送る! 墓地へ送るのはもちろんD-HERO ディアボリックガイや! そして墓地のディアボリックガイの効果を発動! このカードをゲームから除外し、2体目のディアボリックガイをデッキから特殊召喚するで! そしてディアボリックガイとソリッドマンの2体をリンクマーカーにセット! 召喚条件はHEROモンスター2体! サーキット・コンバイン! 行くで! X・HERO クロスガイ!」

 

 X・HERO クロスガイ。このカードの登場で【HERO】デッキは大幅に強化されたといえる。モンスターの名前こそ命名規則からD-HEROのサポートカードであり、効果もD-HEROとの併用が前提であるものの、E、D、VなどのHEROを併用する華のデッキにはこれ以上ないほどマッチするモンスターだ。

 

「リンク召喚に成功したクロスガイの効果を発動するで! 墓地のD-HEROモンスターを特殊召喚―――」

「クロスガイがHEROデッキの軸なのはわかっています! なのでクロスガイの効果にチェーンしてリバースカードを発動します! 永続罠、永遠の魂!!」

「んなあああっ!?」

 

チェーン2(紫音):永遠の魂

チェーン1(華):X・HERO クロスガイ

 

「チェーン2の永遠の魂の効果を発動します! 墓地のブラック・マジシャンを特殊召喚です!」

「なんで永遠の魂を伏せとんねん! 紫音が黒の魔導陣で手札に加えたのはマジシャンズ・ナビゲートのはず……まさか!」

「そのまさかですよ。永遠の魂は最初から手札にあったんです。ですが、それをわかっているのは私だけ」

 

 華は黒の魔導陣でマジシャンズ・ナビゲートを手札に加えていることを知っているため、どうしても意識はそのカードに向いてしまう。それを逆手に取った紫音は敢えてカードを1枚だけセットすることで、華の注意を反らしたのだ。紫音の手札には永遠の魂はなく、セットしたカードは間違いなくマジシャンズ・ナビゲートである、と。

 

「見えている情報に気を取られ過ぎてしまいましたね。デュエルは駆け引きが大事なんです、それを私は鈴さんから教わりました」

「……うちをハメたってことか。ええやん、だったらその借りをこっから返させてもらうからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

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