「チェーン1のクロスガイの効果を発動や! 墓地のD-HERO1体を特殊召喚するで! 特殊召喚するのは2体目のディアボリックガイ!」
ディアボリックガイは墓地の自身を除外することでデッキから同名カードを特殊召喚することができる。かつてはその効果の汎用性から準制限カードに指定されていたが、今は無制限カードであるためその力を最大限活用できるようになっている。だからこそ、HEROデッキを相手取るのであればこのカードに気を付けなければならない。
「ブラック・マジシャンの特殊召喚に成功したことで永続魔法、黒の魔導陣の効果を発動します! 相手フィールドのカード1枚をゲームから除外します! 除外するのはディアボリックガイです!」
「っ!?」
ブラック・マジシャンの持つロッドの先から放たれた黒魔術によってディアボリックガイが異次元に消える。当然のことながら除外されてしまった場合、ディアボリックガイは異次元からの埋葬などのカードによって墓地に戻らない限りは効果を発動できないのだ。
「薄々感付いとったけど、やってくれるわぁ……」
「ディアボリックガイの強さはよくわかっていますから。クロスガイのもう一つの効果はフィールドのD-HERO1体を墓地へ送ることでデッキからHERO1体をサーチする効果。あなたのフィールドにいるヴァイオンはV・HERO。クロスガイの効果でリリースすることはできません!」
「……その通りや。だけど、みんな同じHEROであることには変わりないってことを教えたるわ! ヴァイオンの2つ目の効果を発動や! 墓地のソリッドマンをゲームから除外してデッキから融合1枚をサーチする。そしてうちは―――《E-HERO アダスター・ゴールド》の効果を発動する!!」
《E-HERO アダスター・ゴールド》
効果モンスター
星4/光属性/悪魔族/攻2100/守800
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。「E-HERO アダスター・ゴールド」以外の「ダーク・フュージョン」のカード名が記されたカードまたは「ダーク・フュージョン」1枚をデッキから手札に加える。
(2):自分フィールドに融合モンスターが存在しない場合、このカードは攻撃できない。
「い、E-HERO!?」
E-HEROは【HERO】の名こそ持つが、種族は悪魔族で統一されているなどその名が示す通り、悪のHEROだ。千春のアドバイスを受けた時に華はE-HEROはHEROであってHEROにあらず、という価値観からデッキに入れることを拒んでおり、それを紫音たちも知っていた。知っていたからこそ、華の手札にこのカードがあることに驚きを隠せなかった。
「華さん、あなたはE-HEROは邪道って散々言っていたじゃないですか!!」
「確かにうちの価値観とは相容れないカードやった。だけど、いくら悪に染まったとしてもHEROの名を持つってことはHEROたる資格があるんじゃないか。昨日夜寝る時にそんなことを考えてたんや」
華にとって英雄とは正義の象徴だ。しかし、ただ清いだけで世界を救うことはできない。綺麗ごとばかりでは済まされないこの世界、清濁併せ呑むだけの覚悟があるからこそ本当に正しい道を貫くことができるのではないか。そんな気持ちも多感な時期を迎えたこの少女の中には間違いなく芽生えていた。
「うちには正義も悪もない。全て受け止めたる! 全てを受け止めてこそ、うちのデッキは本当の力を発揮する! アダスター・ゴールドの効果でうちはデッキから《ダーク・コーリング》を手札に加える!」
ダーク・コーリングはフィールド・墓地のモンスターを除外することで《ダーク・フュージョン》の効果で融合召喚できるモンスターを融合召喚する言わば【E-HERO】版《ミラクル・フュージョン》のような効果を持ったカードだ。このカードを発動する場合、墓地に必要なカードが揃っている必要がある。
「そして融合を発動! 手札の《D-HERO ダイナマイトガイ》と《E-HERO シニスター・ネクロム》を融合!“その身に全てを破壊する力を秘めた英雄よ。邪悪なる死霊術師と交わり神たる崇拝を集めし英雄となりて新生せよ!” 融合召喚! 《V・HERO アドレイション》!!」
《V・HERO アドレイション》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/戦士族/攻2800/守2100
「HERO」モンスター×2
(1):1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体と、このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、その自分のモンスターの攻撃力分ダウンする。
「アドレイションはHEROモンスターならなんでも融合素材にできるカードや。うちが墓地融合できるダーク・コーリングをサーチした理由がわかったやろ?」
「っ……」
「ということで、続けてダーク・コーリングを発動や!」
《ダーク・コーリング》
通常魔法
(1):自分の手札・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できるその融合モンスター1体を「ダーク・フュージョン」による融合召喚扱いとしてEXデッキから融合召喚する。
「うちは墓地のE-HEROモンスター、アダスター・ゴールドとレベル5以上のダイナマイトガイを除外して融合!“暗黒に染まりし黄金の反英雄よ。運命の力与えられし英雄と交わり邪悪なる力を奮って破滅をもたらせ!”融合召喚!《E-HERO マリシャス・ベイン》!!」
《E-HERO マリシャス・ベイン》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守3000
「E-HERO」モンスター+レベル5以上のモンスター
このカードは「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードは戦闘・効果では破壊されない。
(2):自分メインフェイズに発動できる。このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て破壊し、このカードの攻撃力は破壊したモンスターの数×200アップする。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「HERO」モンスターでしか攻撃宣言できない。
「まだや! うちはリンク2のクロスガイとヴァイオンをリンクマーカーにセット! 召喚条件はHEROモンスター2体以上! サーキットコンバイン! リンク3! X・HERO ドレッドバスター!」
ドレッドバスターは自身およびリンク先に存在するHEROモンスターの攻撃力を墓地のHEROモンスターの数×100ポイントアップさせる効果を持っている。ヴァイオン、黒の魔導陣、そしてダーク・コーリングの効果で華の墓地からはHEROが4体除外されているものの、マリシャス・エッジ、クロスガイ、ヴァイオンの3体がまだ残っていた。
「墓地のHEROは3体! よってドレッドバスターとマリシャス・ベイン、アドレイションの攻撃力は300アップ!」
X・HERO ドレッドバスター ATK2500→ATK2800
E-HERO マリシャス・ベイン ATK3000→ATK3300
V・HERO アドレイション ATK2800→ATK3100
「マリシャス・エッジは全体除去効果を持っていましたね。ですが、永遠の魂が存在する限りブラック・マジシャンは効果では破壊されません!」
「そんなんわかっとる。でも、永遠の魂はもう使わせへんで! うちは墓地のシニスター・ネクロムの効果を発動!」
《E-HERO シニスター・ネクロム》
効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻1600/守1800
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):墓地のこのカードを除外して発動できる。手札・デッキから「E-HERO シニスター・ネクロム」以外の「E-HERO」モンスター1体を特殊召喚する。
「墓地のこのカードを除外してデッキから同名カード以外のE-HERO1体を特殊召喚するで! うちが特殊召喚するのは《E-HERO ヘル・ゲイナー》や!」
《E-HERO ヘル・ゲイナー》
効果モンスター
星4/地属性/悪魔族/攻1600/守0
(1):自分メインフェイズ1にフィールドのこのカードを除外し、自分フィールドの悪魔族モンスター1体を対象として発動できる。その自分の悪魔族モンスターは、フィールドに表側表示で存在する限り、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(2):このカードが(1)の効果を発動するために除外された場合、2回目の自分スタンバイフェイズに発動する。このカードを攻撃表示で特殊召喚する。
「うちのフィールドの悪魔族モンスター、マリシャス・ベインを対象にヘル・ゲイナーの効果を発動! このカードをゲームから除外し、マリシャス・ベインに1度のバトルフェイズに2回の攻撃を可能にするで!」
「攻撃力3300の2回攻撃……っ!」
「永遠の魂を伏せていたことには驚いたわ。だけど、使うタイミングはしっかり見極めなきゃアカンで? ってことでバトルフェイズや! ドレッドバスターでブラック・マジシャンを攻撃!“ドレッドクロス・ストライク”!」
X・HERO ドレッドバスター ATK2800 VS ブラック・マジシャン ATK2500
紫音 LP8000→LP7700
「っ、ブラック・マジシャン……!」
「アドレイションで竜騎士ブラック・マジシャンを攻撃!“アンビション・サンクションズ”!」
V・HERO アドレイション ATK3100 VS 竜騎士ブラック・マジシャン ATK3000
紫音 LP7700→LP7600
「これであんたのフィールドはがら空きや! マリシャス・ベインで一度目のダイレクトアタックや!“マリシャス・ヘル・スラッシュ”!」
E-HERO マリシャス・ベイン ATK3300
紫音 LP7600→LP4300
「もういっちょ! マリシャス・ヘル・スラッシュ! そしてマリシャス・ベインを対象に手札の《E・HERO オネスティ・ネオス》の効果を発動や!」
《E・HERO オネスティ・ネオス》
効果モンスター
星7/光属性/戦士族/攻2500/守2000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。
(1):このカードを手札から捨て、フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2500アップする。
(2):手札から「HERO」モンスター1体を捨てて発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、捨てたモンスターの攻撃力分アップする。
「っ……!!」
「オネスティ・ネオスの効果でマリシャス・ベインの攻撃力をターン終了時まで2500アップするで!」
E-HERO マリシャス・ベイン ATK3300→ATK5800
「……華さん」
「なんや、紫音」
「次は、負けません」
「……ああ、その意気や。またデュエルすることを楽しみにしとるで? ほな!」
紫音 LP4300→LP0
*
「ま、まさか後攻ワンキルとは……」
「華おねえちゃん、すごい……」
自分たちとは倍のライフで始めたのにも関わらず、わずか2ターンで決着が付いた紫音と華のデュエル。その様にヴェートや未来はただただ圧倒されるばかりであった。
「ボクたちもあんなデュエルができるようになりたいね♪」
「えっ、う、うん!」
しかし、このデュエルを見て尻込みするようであれば、そもそもこのイベントには参加しない。紫音と華のデュエルを見た未来たちはより一層の闘志を燃やすのであった。
「これは……8000ライフでのデュエルにして正解だったな」
「はい、皆さんもやはりデュエリストですからね。あのような刺激的なデュエルを目の前で見せられて燃えないはずがありません」
「そうね……あっ、そうだ。鈴、ちょっと」
デュエルが終わった後、遊希は鈴にそっと耳打ちをする。鈴は右手の親指と人差し指の先を合わせて○を作ると、呆然と立ち尽くしている紫音のところへと駆け寄った。このデュエルを見た皆が盛り上がる中、後攻ワンターンキルを決められてしまった紫音の気持ちは如何許りか。
「紫音」
「鈴さん……あの、すいませんでした」
「どうして謝るの?」
「だって、私は……」
「デュエリストに勝ち負けはつきもの。一回の負けでしょげてたら身が持たないわよ? ほらほら、次!次!」
鈴はそう言って明るく慰める。自分もそうだ、これまで何回の負けも経験してきた。しかし、その負けから学び、その負けを次に繋げてきたからこそ今がある。今勝てなくてもいい。最後に笑っていられるかどうかが大事なのだから。
これで午前中に予定されていたデュエルはこれで全て終了した。ちょうど正午まであと1時間、といったところだったため皆は昼食作りに移る。そんな中、デュエルを見ていた遊希、皐月、エヴァの三人から鈴と千春にある提案がなされた。
「……面白そうね。じゃあ少し早いかもしれないけど、他の子たちにもやってもらう? ライフ8000制のデュエルを」
*
「ヴェートおねえちゃん、おはしはこうやってもつんだよ?」
「んん……中々難しいですね。未来ちゃん、教えてくれてありがとうございます」
2日目はまさに日本特有の真夏の暑さが襲ってきた、というレベルの気温となった。暑さで体力を奪われては元も子も無いということで昼食は日本の夏を代表する食べ物である素麺となった。
しかし、箸を使い慣れていないヴェートが食べるのに一苦労していたため、隣に座っていた未来が手取り足取り箸の使い方をレクチャーしていたため、全く食べることができないわけではないようだった。そんな微笑ましい光景を尻目に遊希の口から出された衝撃の提案に愛美と橙季は驚きを隠せないようだった。
「ボクたちもライフ8000でデュエルするんですか!?」
「ええ。最初はずっと4000でやるつもりだったんだけど、あなたたち私たちが思っている以上に飲み込みもいいしデュエルのセンスもあるわ」
「だから午後は組み合わせを変えて8000ライフでデュエルをやってもらおうってことになったのよ。ほら、紫音と華にできるんだからあんたたちにだってできるでしょ?」
千春のその言葉に紫音と華が凄いだけなんじゃ、と思う愛美と橙季であったが、二人はそれを後ろ向きではなく前向きに捉えることとした。逆を返せば「それだけ自分たちがデュエリストとしての才能に溢れている」ということになるのだから、喜ばない理由はない。
「でも組み合わせを変えるってことは橙季ちゃんにリベンジする機会が無くなっちゃうね」
「ま、まあ……さっきのデュエルの勝利は私がリベンジする側だったからね」
「うちらは別に構わへんけど、未来ちゃん大丈夫なん? 小学校低学年でライフ8000のデュエルはさすがにしんどいんやないの?」
華の問いに遊希とエヴァが口を揃えて「私たちは小学生の頃から8000ライフのデュエルをしていた」と答えるが、デュエルを始めたばかりの未来をプロ二人人と同一視するのはさすがにどうなのか、と全員からツッコミが入る。
「でも一つだけ言えることがある。未来ちゃんは小学校2年生ながら皆とデュエルができているんだ。年齢を考えると、一番すごいことだと思わないか?」
「良かったですね、未来ちゃん。皆さんが褒めてくれていますよ?」
「ふぇっ!? あうう……そんなわたしすごくないよ……」
照れる未来の愛らしさに場が和む中、素麺を流し込んだ一同は午前中のように鈴自作のクジで再度組み合わせの抽選会を行うことになった。しかし、その前に愛美から一つのリクエストが入る。
「あの、やっぱりボクは橙季ちゃんとデュエルがしたいんだけど……」
「また? まあ別に構わないと言えば構わないけど……」
「愛美ちゃん、どうして私と……?」
「それは、ヒ・ミ・ツ♪」
そう言ってどこか悪戯っぽく笑う愛美。愛美と橙季のマッチアップが変わらない、ということは自然と残る二組の組み合わせも決まる。ライフ8000でのデュエルの組み合わせは以下のように決まった。
第一試合:未来 VS 華
第二試合:紫音 VS ヴェート
第三試合:愛美 VS 橙季
「じゃあ今から1時間後にデュエル開始よ。それまで食休みするなりデッキ調整するなり好きに過ごしてくれていいわ」
遊希の指示を受けて全員がそれぞれ動き出すが、皆が皆デッキを取り出して一人で回してみたりデッキ改造に勤しんでいた。やはり遊希たちと一緒に過ごしたのが大きいのか、全員が第一にデュエルのことを考えるようになっていた。
「あ、あの……遊希おねえちゃん」
その中で第二試合に華とデュエルをする未来は遊希の元にやってきていた。未来は昨日と比べて大幅に成長したといっていいが、さっきのデュエルを見て華の強さに少し及び腰でもあった。
未来はデュエル初心者とはいえ、今の今までデュエルをして一回も勝つことができていない。イベントに参加して、遊希たちと出会って芽生えたデュエリストとしての自我が彼女に「勝ちたい」という思いを強く根付かせていたのだ。
「あのね、未来ちゃん。勝つことだけが全てじゃないのよ? 負けてそこから何を学べるかも大事なの」
「うん、それは……わかっているんだけど。でもわたしがかったら遊希おねえちゃんをもっとよろこばせてあげられるから……」
「未来ちゃん……」
しかし、そう諭しながらも健気な未来の姿に遊希はその頭を優しく撫でる。
「……おねえちゃん嬉しいわ。わかった、じゃあ未来ちゃんに……このカードをあげる」
遊希から手渡されたカード。それは間違いなく未来の行き着く希望を指し示すカードだった。
○修正箇所
アドレイションの融合素材をダイナマイトガイ+マリシャス・エッジからダイナマイトガイ+シニスター・ネクロムに変更
シニスター・ネクロムの効果でヘル・ゲイナーのSSし、マリシャス・ベインに2回攻撃を付与
もし効果の誤用がありましたら、改めてご指摘いただければ幸いです。