デュエルモンスターズには数多くのカードが存在する。そんな中、デュエルモンスターズの黎明期に登場し、かつては世界に4枚しか存在しなかったとされる青眼の白龍は一際特別な存在であり、未だに通常モンスターの攻撃力最高の地位を持っている。高い攻撃力で圧倒するのが青眼というデッキの最大の特徴だ。
(あたしのターンに動かれまくったのはきっついなぁ……さて、スターヴ・ヴェノムをどう対処しようか)
しかし、効果を持たない青眼の白龍は攻撃力を自分の力だけで上げることはできない。そのため、一度相手に攻撃力で上回られてしまうと自慢の打点で押すことができなくなってしまうのだ。
(でも、今は悩むよりやることがあるよね。さて紫音……どう来るかな?)
そのため、青眼を使うデュエリストは火力でこちらを超えてくる相手にどのようにして対処するか、ということを考えていなければいけない。最も、それができるデュエリストだからこそ鈴は青眼を使うことが許されるのだが。
☆TURN03(紫音)
「私のターン、ドローです。一気に行きますよ、バトルです! ブラック・マジシャンでシャドウトークンを攻撃します!“黒・魔・導”!」
ブラック・マジシャン ATK2500 VS シャドウトークン DEF1000
「シャドウトークン、撃破。そしてスターヴ・ヴェノムでディアボロスを攻撃!」
スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン ATK5800 VS 闇黒の魔王ディアボロス ATK3000
鈴 LP8000→LP6200
「っ、いきなりデカいの貰っちゃった……でもモンスターを召喚したりはしないんだね」
「二の矢を放てないのが残念ですが、まあ仕方ないですね……バトルフェイズを終了します。私はカードを1枚セットしてターンエンドです」
「ストップ、じゃあそのターンエンドの前にリバースカードを発動するよ。永続罠、リビングデッドの呼び声。墓地の青眼の亜白龍を攻撃表示で特殊召喚する」
「……亜白龍ですか」
紫音 LP8000 手札2枚
デッキ:31 メインモンスターゾーン:1(ブラック・マジシャン)EXゾーン:1(スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):4(闇黒世界-シャドウ・ディストピア-、黒の魔導陣、永遠の魂)墓地:3 除外:6 EXデッキ:8(0)
鈴 LP6200 手札2枚
デッキ:27 メインモンスターゾーン:1(青眼の亜白龍)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1(リビングデッドの呼び声)墓地:7 除外:1 EXデッキ:15(0)
紫音
伏永黒□□
□□□□ブ闇
□ ヴ
□□□亜□□
□リ□□□
鈴
―――リビングデッドの呼び声を伏せていたか。これでわからなくなったな。
(ええ、青眼の亜白龍はモンスターの除去効果を持っている。これでスターヴ・ヴェノムを破壊すればある程度覆すことはできるわね)
遊希は光子竜と会話しつつ、隣でデュエルを見守っている未来の方を見た。未来は何も言わず、二人のデュエルに集中しているようだった。
「未来ちゃん、大丈夫? ついてこれてる?」
「ふぇっ!? う、うん! なんとか……」
「そう、もしわからないことがあったら遠慮しないで聞いてね?」
―――お前は相変わらず甘いな。もっと突き放すと思ったが。
(……そんなこと、できるわけないじゃない)
☆TURN04(鈴)
「あたしのターン、ドロー。墓地の太古の白石の効果を発動。このカードをゲームから除外して墓地のブルーアイズ1体を手札に戻す。あたしはカオス・MAXを手札に戻すよ。そして青眼の亜白龍の効果を発動! このカードの攻撃権を放棄することで、相手フィールドのモンスター1体を破壊する! 対象はスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」
青眼の亜白龍から放たれた光弾がスターヴ・ヴェノムを貫いた。如何に高い攻撃力を持っていようと、破壊耐性を持っていなければモンスターなどこうもあっさり除去されてしまう。しかし、スターヴ・ヴェノムはただで破壊されるモンスターではなかった。
「破壊されたスターヴ・ヴェノムの効果を発動します! 相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊します! 青眼の亜白龍も道連れです!」
破壊されたスターヴ・ヴェノムは身体の触手を伸ばすと、青眼の亜白龍を飲み込み、ガブリと噛み砕いた。紫音は攻撃力5800と化したスターヴ・ヴェノムを失ったが、鈴もまた攻撃力3000の青眼の亜白龍を犠牲にする形となったのだ。しかし、復活の福音などのカードによる蘇生や太古の白石のようなサルベージ手段も豊富な亜白龍に対してブラック・マジシャンとのシナジーは闇属性であることくらいしかないスターヴ・ヴェノムと比べれてしまうとどちらの方が損失が大きいかといえばそれは比べるまでもない。
「ま、スターヴ・ヴェノムをなんとかできたのはおっきかったかな。じゃあ反撃開始、手札から魔法カード、トレード・インを発動するね。手札のレベル8、青眼の白龍をコストに2枚ドロー。そして儀式魔法、高等儀式術を発動! デッキの通常モンスターをリリースして手札から儀式モンスター1体を儀式召喚するよ!」
「……儀式魔法を素引きしていましたか」
「デッキの青眼の白龍をリリースし、手札からカオス・MAXを儀式召喚! そして、バトルだよ! カオス・MAXでブラック・マジシャンを攻撃!“混沌のマキシマム・バースト”!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 VS ブラック・マジシャン ATK2500
紫音 LP8000→LP6500
「っ……!」
「今度こそ、形勢完全逆転だね。まあ永遠の魂でブラック・マジシャンを蘇生することはできるけど……黒の魔導陣の除外効果は対象を取る効果。カオス・MAXは相手の効果の対象にならないからね。メインフェイズ2に移るよ。とはいえ、もうできることはないんだけど。ターンエンド」
「ではターン終了時に永遠の魂の効果を発動します。墓地のブラック・マジシャンを特殊召喚します。黒の魔導陣の効果は発動したところでカオス・MAXを対象に取れないので発動はしません」
紫音 LP6500 手札2枚
デッキ:31 メインモンスターゾーン:1(ブラック・マジシャン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):4(闇黒世界-シャドウ・ディストピア-、黒の魔導陣、永遠の魂)墓地:4 除外:6 EXデッキ:8(0)
鈴 LP6200 手札2枚
デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:11 除外:2 EXデッキ:15(0)
紫音
伏永黒□□
□□□□ブ闇
□ □
□□□M□□
□□□□□
鈴
☆TURN05(紫音)
「私のターン、ドローです……!」
「あらら、良いカード引けたみたいだね」
「ええ!……ってそんなことはないですからね」
癖というものは一朝一夕で直るものではない。真面目でしっかり者な紫音であるが、どうにも思っていることが顔に出てしまうようである。
「バトルです! ブラック・マジシャンでブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンに攻撃!」
「攻撃力が下のモンスターで攻撃……ってことはあのカードだね」
「私の魔法使い族・闇属性モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に手札の幻想の見習い魔導師を墓地へ送って発動します! 戦闘を行うそのモンスターの攻撃力・守備力はそのダメージ計算時だけ2000ポイントアップします!」
ブラック・マジシャン ATK2500/DEF2100→ATK4500/DEF4100
「これでカオス・MAXの攻撃力を上回りました!“黒・魔・導”!」
ブラック・マジシャン ATK4500 VS ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000
鈴 LP6200→LP5700
「今度は真正面から超えられるとか……攻撃力4000でも安心できないよね」
「それも鈴さんが教えてくれたことですから」
「そうだったっけ……まあ、紫音がそう言うんだからそうなんだろうね。でも、ただでは転ばないのもまた強いデュエリストの証だよ。あたしのフィールドに表側表示で存在するブルーアイズモンスターが戦闘または相手の効果で破壊された時、手札のディープアイズ・ホワイト・ドラゴンの効果を発動するわ!」
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン。本来は遊希から鈴への誕生日プレゼントとして贈られるはずだったカードである。初のお披露目となった時は遊希の手によって操られた鈴にとどめを刺すために用いられてしまったが、今では正式に遊希から鈴へと贈られた。遊希と鈴の絆を表わすカードである。
「ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン!?」
「手札からこのカードを特殊召喚し、墓地のドラゴン族の種類×600のダメージを相手に与える。あたしの墓地に存在するドラゴン族モンスターは青眼の白龍、亜白龍、ディアボロス、カオス・MAXの4種類。よって2400のダメージを受けてもらう!」
紫音 LP6500→LP4100
「っ!」
「そしてディープアイズの特殊召喚に成功した場合にも墓地のドラゴン1体を対象にして発動できる効果があるわ。このカードの攻撃力はその対象にしたモンスターの攻撃力と同じになる。対象はもちろんカオス・MAX!」
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン ATK0→ATK4000
「やっとカオス・MAXを撃破できたと思ったのに……」
「一応教える側としても、そう簡単に超えられてもらうわけにはいかないからね。まあカオス・MAXと違って効果耐性は持っていないからさ。そんなに悲観することはないんじゃないかな?」
「……バトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移行します。私はこれでターンエンドです」
紫音 LP4100 手札2枚
デッキ:31 メインモンスターゾーン:1(ブラック・マジシャン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):4(闇黒世界-シャドウ・ディストピア-、黒の魔導陣、永遠の魂)墓地:4 除外:6 EXデッキ:8(0)
鈴 LP6200 手札1枚
デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:12 除外:2 EXデッキ:15(0)
紫音
伏永黒□□
□□□□ブ闇
□ □
□□□デ□□
□□□□□
鈴
○凡例
デ・・・ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン
☆TURN06(鈴)
「あたしのターン、ドロー。太古の白石を召喚。そしてレベル1の太古の白石をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! リンク1のリンクリボーをリンク召喚するよ! そしてバトルフェイズ! ディープアイズ・ホワイト・ドラゴンでブラック・マジシャンを攻撃!“深愛のディープ・バースト・ストリーム”!」
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン ATK4000 VS ブラック・マジシャン ATK2500
紫音 LP4100→LP2600
「っ!」
「リンクリボーでダイレクトアタック!」
リンクリボー ATK300
「させません! 永続罠、永遠の魂の効果を発動して墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚します! そしてブラック・マジシャンの特殊召喚に成功したことで永続魔法、黒の魔導陣の効果が発動! ディープアイズ・ホワイト・ドラゴンをゲームから除外します!」
漆黒の魔導陣に包まれて消滅するディープアイズ・ホワイト・ドラゴン。攻撃力4000ながら何の耐性も持ち合わせていないため、こうなることは仕方ないのであるが、遊希との友情のカードをこうもあっさり除去されてしまうことは鈴にとっては二重の意味で辛かった。
「むー……」
―――遊希、黒の魔導陣の効果から逃げられるモンスターの方が少ないのだからそうむくれるな。
(でも、それならサイクロンとか羽根帚で予め脅威を払っておくべきじゃない?)
―――それもそうだが……そう上手く行かないのがデュエルモンスターズだ。
ちらりと横目で見た遊希はやはりムッとしていた。こうなると思いの外面倒なのが天宮 遊希という人間である。後でのフォローは骨が折れるとはいえ、今は目の前のデュエルに集中しなけれなならなかった。
「モンスターの数が変化したことで戦闘の巻き戻しが発生するよ。あたしはリンクリボーでの攻撃を中止。ターンエンドだよ。そしてエンドフェイズにリンクリボーのリンク素材となって墓地に送られた太古の白石の効果を発動。デッキから白き霊龍を攻撃表示で特殊召喚!」
「白き霊龍ですか……」
「特殊召喚に成功した白き霊龍の効果を発動! 永遠の魂をゲームから除外する!」
「……表側表示の永遠の魂がフィールドから離れた時、私のフィールドのモンスターは全て破壊されます……」
紫音 LP4100 手札2枚
デッキ:31 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):3(闇黒世界-シャドウ・ディストピア-、黒の魔導陣)墓地:5 除外:7 EXデッキ:8(0)
鈴 LP6200 手札1枚
デッキ:22 メインモンスターゾーン:1(白き霊龍)EXゾーン:1(リンクリボー)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:13 除外:3 EXデッキ:14(0)
紫音
伏□黒□□
□□□□□闇
リ □
□□□霊□□
□□□□□
鈴
○凡例
リ・・・リンクリボー
霊・・・白き霊龍