銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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デュエル始める前はまだ発売前でしたけど、もう発売してるので使ってもいいですよね?
デュエル前に返したのはドラグーン・オブ・レッドアイズだけっていうことで勘弁してください(ガバガバ


決戦の決闘者・3

 

 

 

 

☆TURN07(紫音)

 

(……永遠の魂を除去されてしまいましたか)

 

 永遠の魂は1ターンに1度、とはいえブラック・マジシャンを何度も蘇生させることができるカードだ。このカードがあるからこそ、効果を持たず他のカードを絡めなければフィールドに出すことが難しいブラック・マジシャンを各効果のコストやリンク素材などに充てることができるのだ。

 しかし、そのカードが除去されてしまえばブラック・マジシャンデッキは一気に動きづらくなる。そのため何を差し置いても永遠の魂を除去されることだけは防がなければならなかった。

 

(白き霊龍は私のフィールドにモンスターが存在する場合、自身をリリースすることで手札から青眼の白龍1体を特殊召喚できる。でも、手札の青眼の白龍を鈴さんは前のターンにトレード・インのコストにして墓地へ送っている……おそらく、白き霊龍の効果は発動できない)

 

 白き霊龍の攻撃力は青眼の白龍より500低い2500。差分はわずか500であるが、その500の差が大きい。500低いことで突破の難度は大きく変わるのだ。リンクリボーがいるため一度の攻撃は防がれるとはいえ、複数回の攻撃手段さえ用意できればボード・アドバンテージで優位に立つことができる。

 

(このドロー次第で……全てが変わる。お願い、私のデッキ!)

「私のターン、ドローです!……手札のマジシャンズ・ソウルズの効果を発動します!」

 

 マジシャンズ・ソウルズはデッキからレベル6以上の魔法使い族モンスター1体を墓地へ送ることで自身を特殊召喚するか、自身を墓地へ送り、墓地のブラック・マジシャンまたは《ブラック・マジシャン・ガール》を特殊召喚できる効果を持ったモンスターだ。自身の効果で展開できないブラック・マジシャンおよびブラック・マジシャン・ガールを容易に特殊召喚できるモンスターである。

 

「デッキからレベル6のブラック・マジシャン・ガールを墓地へ送り、このカードを墓地へ送ります! そして墓地のブラック・マジシャンを特殊召喚します!」

「ブラック・マジシャン……!」

「ブラック・マジシャンの特殊召喚に成功したことで黒の魔導陣の効果を発動します! リンクリボーをゲームから除外します!」

 

 黒魔導の力がリンクリボーを次元の彼方へと消し飛ばす。これで鈴のフィールドに残ったのは攻撃力がブラック・マジシャンと互角の白き霊龍のみになってしまった。

 

「永遠の魂を除去できたから早々ブラック・マジシャンを出されることはないって思ってたんだけどなぁ……でも、ブラック・マジシャンと白き霊龍の攻撃力は同じ2500。相討ちでも狙うの?」

「……相討ちなど、そんな無駄なことはさせませんよ。私は、リバースカードを発動します!」

 

 ずっと伏せていた紫音のセットカード1枚が明らかになる。永遠の魂と黒の魔導陣に気を取られて鈴はそのカードのことをあまり気に留めていなかった。

 

「速攻魔法―――《魂のしもべ》!」

 

《魂のしもべ》

速攻魔法

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札・デッキ・墓地から、「魂のしもべ」以外の「ブラック・マジシャン」のカード名または「ブラック・マジシャン・ガール」のカード名が記されたカード、「ブラック・マジシャン」の内、いずれか1枚を選んでデッキの一番上に置く。

(2):自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。お互いのフィールド・墓地の、「守護神官」モンスター、「ブラック・マジシャン」、「ブラック・マジシャン・ガール」の種類の数だけ自分はデッキからドローする。

 

「手札・デッキ・墓地から魂のしもべ以外のブラック・マジシャンのカード名またはブラック・マジシャン・ガールのカード名が記されたカードまたはブラック・マジシャンのうちいずれか1枚を選んでデッキの一番上に置くことができます。私がデッキトップに置くのは……ブラック・マジシャンのカード名が記された《守護神官マハード》です!」

「守護神官マハード……ドローすることで特殊召喚できるモンスターか。でも、そのコンボを決めるには1ターン待たなきゃいけないんじゃない?」

「1ターンも待たせません。墓地の魂のしもべの効果を発動します。このカードをゲームから除外し、お互いのフィールド・墓地の守護神官モンスター、ブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールの種類の数だけ私はデッキからドローすることができます!」

 

 紫音のフィールドにはブラック・マジシャンがおり、墓地にはブラック・マジシャン・ガールが存在する。よって紫音はカードを2枚ドローする。そして守護神官マハードの特殊召喚に必要なドローは通常のドローに限られていない。

 

「ドローされた守護神官マハードの効果を発動します。このカードを相手に見せることで、手札から特殊召喚します!」

 

《守護神官マハード》

効果モンスター

星7/光属性/魔法使い族/攻2500/守2100

(1):このカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが闇属性モンスターと戦闘を行うダメージステップの間、このカードの攻撃力は倍になる。

(3):このカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。

 

「そして……このカードが全てを終わらせる一枚です! 魔法カード発動!《円融魔術》(マジカライズ・フュージョン)!!」

 

《円融魔術》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分のフィールド・墓地から、魔法使い族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

「円融魔術……!」

「私は墓地のブラック・マジシャン・ガールと幻想の見習い魔導師をゲームから除外し、融合!“愛らしき魔術師の弟子よ。古の魔術師の弟子の力を受け継ぎ、超越なる力をその身に宿せ!”融合召喚!《超魔導師-ブラック・マジシャンズ》!」

 

《超魔導師-ブラック・マジシャンズ》

融合・効果モンスター

星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2300

「ブラック・マジシャン」または「ブラック・マジシャン・ガール」+魔法使い族モンスター

(1):1ターンに1度、魔法・罠カードの効果が発動した場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。そのドローしたカードが魔法・罠カードだった場合、自分フィールドにセットできる。速攻魔法・罠カードをセットした場合、そのカードはセットしたターンでも発動できる。

(2):このカードが破壊された場合に発動できる。「ブラック・マジシャン」「ブラック・マジシャン・ガール」を1体ずつ自分の手札・デッキ・墓地から選んで特殊召喚する。

 

「……まさか、0からモンスターを3体も出してくるなんてね。それにしても……布石はとっくに打たれてたのかー……」

 

 鈴の視線の先にはおどろおどろしい世界を作り上げるシャドウ・ディストピアがあった。最初はスターヴ・ヴェノムの融合召喚のために入れていた、とばかり思っていたが、このカードの力が活きる機会はそれ以外にも存在していた。

 

「バトルです! 守護神官マハードで白き霊龍を攻撃!“ガーディアン・オブ・ファラオ”!」

「白き霊龍とマハードの攻撃力は同じ……だけど」

「シャドウ・ディストピアが存在することで白き霊龍は闇属性です。そして、闇属性モンスターと戦闘を行うダメージステップの間、守護神官マハードの攻撃力は倍になります!」

 

 古代の王に仕え、王を守護する神官の魂が具現化したモンスター・守護神官マハードは闇を祓う力を持っているのだ。闇黒の世界において、闇に染まった白き龍を神官の魔術が打ち破る。

 

守護神官マハード ATK2500→ATK5000 VS 白き霊龍 ATK2500

 

鈴 LP6200→LP3700

 

「っ!」

「続けて、超魔導師-ブラック・マジシャンズでダイレクトアタック!“ダブル・ブラック・マジック”!」

 

超魔導師-ブラック・マジシャンズ ATK2800

 

鈴 LP3700→LP900

 

 2体の魔導師の攻撃を受けて、鈴の残りライフはわずか900。対して紫音のフィールドにはまだ攻撃力2500のブラック・マジシャンが残っている。勝敗は火を見るよりも明らかだ。しかし、後一撃を決めれば勝てる、という場面であるにも関わらず、紫音は中々攻撃を宣言しなかった。

 

「……紫音? どうしたの?」

「……私はここに来てからずっと鈴さんの背中を追ってきました。鈴さんは私にとって憧れの人で、とても頼りになって……そんな人に土をつけるなんて……」

 

 今の自分が鈴に勝っていいものなのだろうか。紫音の自己評価の低さがここにきて迷いとなって現れてしまったのだ。そんな彼女を見て鈴は小さくため息を付く。

 

「ははは……ねえ、紫音。紫音はデュエリストだよね?」

「えっ、はっ、はい!」

「本当に強いデュエリストになりたいなら、こういう時に迷っちゃいけないんだよ。今のあたしとあんたは真剣勝負をしてるんだから」

 

 鈴の脳裏に浮かぶのは竜司や遊希ら自分が目標としているデュエリストたちの姿。鈴が憧れたデュエリストたちは、皆自分の信念に従い、勝つためには一切の迷いと容赦を捨てていた。

 

「ま、あんたの気持ちもわからなくはないけれさ……この場面で迷っちゃうようじゃ本当に強いデュエリストになんてなれない。だから今の自分を変えたい、デュエリストとしてもう一段階上に行きたいって思ってんなら……そんな甘い考えは捨てなさい!!」

 

 今まで見たこと無いようなすごい剣幕で怒鳴る鈴の姿を見て紫音の身体に震えが走る。しかし、鈴がそこまで怒りを露わにするのも無理はない、と紫音は自分で気づいた。何故なら今自分が持ち掛けたのは下手すれば故意の敗退行為に抵触しかねないもの。真剣勝負、という名目で今デュエルをしているのにそれを覚悟していた紫音は自分自身にすらも嘘をついてしまうことになる。

 

「……はぁ、ったく。まだまだ精神的には未熟だねあんたは、でも……」

 

 小さくため息をついた鈴の顔からは怒りが消える。そして浮かぶのは太陽のような眩しい笑顔だった。

 

「……そんなあたしもまだまだ未熟者なんだけどね、それでも紫音の想いは十分に受け止めてあげることはできる。だから……持てるもの、全部ぶつけてきて! あたしの可愛い、お弟子さん」

 

 鈴は例え負ける時であっても、最後の最後までデュエリストとして堂々とありたいと願う。そしてその願いは目の前で対峙する弟子に届いた。

 

「り、鈴さん……! ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!―――“黒・魔・導”!」

 

ブラック・マジシャン ATK2500

 

 紫音の思いが、決意が乗り移ったかのような一撃が炸裂した。

 

鈴 LP900→LP0

 

 

 

 

 

 

「勝った……私が……鈴さんに……?」

 

 幾度かの苦杯を舐めた後の勝利。実感がいまいちわかず、その場にへたり込んでしまった鈴の元に遊希と未来が駆け寄ってきた。

 

「おめでとう、紫音。あなた勝ったのよ」

「紫音おねえちゃん、すごくかっこよかったよ!」

 

 二人にこの勝利を褒め称えられる紫音であったが、これは現実なのだろうか? 実は夢なんじゃないだろうか、と思って呆然としていた彼女はふと自分の頬を思い切りつねってみた。痛い、これは夢ではない。現実なのだ。

 

「紫音!」

 

 そんな彼女の元に歩み寄ってきた鈴がそっと手を差し伸べる。敗れた鈴であるが、その顔はとても爽やかだった。

 

「……さっきはきついことを言ってごめんね。でも、これだけは言わせて。そのデッキに使われる青山 紫音はもういない。今のあなたは、そのデッキを完璧に自分のものにした。だから、おめでとう。紫音」

「鈴さん……りんさぁぁん!!」

 

 鈴の胸に飛びつき、子供のように泣きじゃくる紫音。今まで張りつめていた緊張の糸が切れたのだろう。その涙は一点の澱みもない美しいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、紫音の勝利を祝ってー! かんぱーい!」

 

 デュエルが終わった後、遊希から鈴と紫音のデュエルの経緯について聞いた千春の提案で、祝勝会が行われることになった。

 

「あ、ありがとうございます……」

「いや待って。なんであたしが負けたことでパーティーやってんのさ!」

「まあいいじゃないの。このイベントの主役はあくまで紫音たち小中学生よ。私たちはいわばケーキの上のイチゴ……付け合わせに過ぎないわ」

 

 その例えはどこかおかしいんじゃないのか、と思いつつも皆触れることはなかった。

 

「そういえばさっきから皐月と橙季くんの姿が見えないけど」

「ん、そういえば……どこへ行ったのだ?」

「まさか、皐月が橙季を略奪―――!」

「えっ、そんなぁ!」

 

 滅多なことを言うもんじゃない、と遊希・鈴・エヴァが千春に総ツッコミを入れる中、皐月が部屋に戻ってきた。この時の彼女はまさに仕上げを御覧じろといったような笑みを浮かべていた。

 

「お待たせしました。不肖、織原 皐月。一世一代の大仕事を成し遂げてきましたよ」

「一世一代の大仕事? なんだそれは」

「それを今からお見せします。ということで、どうぞ」

 

 皐月がそう言ってドアを開けると、そこから入ってきたのは少女漫画でヒロインが恋する王子様と言っても差し支えないような美少年の姿をした橙季であった。コスプレという隠れた趣味を持つ皐月は、橙季の性別が明らかになってからというものの、是非とも彼をメイクアップしたいという気持ちを抱いていた。

 そもそも女装姿が全く違和感のない橙季である。そんな彼に本気の男性用メイクとオシャレをさせればどうなるかなど容易に想像できることであった。

 

「と、橙季くん!?」

「うわぁ、それはアカンって……」

「橙季おにいちゃんかっこいい……」

「馬子にも衣裳、というものでしょうか」

「紫音さん、その日本語が的確ではないのはフランス人の私にもわかりますよ」

 

 あまり褒められ慣れていないのか、それともコスプレに緊張しているのか頬を僅かに紅潮させながら橙季は愛美に隣に座る。もちろんそんな橙季が隣に座ったことで愛美の体温も急上昇する。

 

「愛美ちゃん」

「な、何かな橙季くん……? そんなに見つめられるとボクおかしくなっちゃうよ」

「僕はまだ洋服に着られているし、立ち振る舞いも男としてはまだまだだけど……いつかきっと、君の恋人として、恥ずかしくない男になってみせる。だから、少しだけ待っててくれるかな?」

 

 そう言って手に取った愛美の手の甲にそっと口づけをした。その瞬間、茹蛸のように真っ赤になった愛美はその場にぱたりと倒れ込んでしまった。橙季は少なくともこのような行為を公衆の面前で行わないように、という最低限の常識を学ばなければならないようだった。

 

「あー、面白かったわー」

「何が面白かったよ。宥める方の気持ちも考えなさい。あと、皐月もなんて教育してるのよ」

「ご、ごめんなさい……」

 

 パーティーが終わり、寝室に戻った遊希たちは今日一日、そしてイベント最後の夜を懐かしんでいた。長いように思えた三日間のイベントも残すは明日の朝を迎えるのみ。終わり良ければ総て良し、という言葉があるように遊希たちは最後の瞬間まで指導者として相応しくあらなければいけないのだ。

 

「まあ良かったのではないか、雨降って地固まるという言葉もあるだろう? 紫音はデュエリストとして殻を破ることができて、橙季と愛美は無事カップルになれたのだから」

「そうよね! 未来ちゃんみたいに今後が楽しみな子も出てきたわけだし!」

「そうね……ふわぁ」

 

 さすがに色々あって疲れた様子の遊希は欠伸混じりに返答する。今までは教えられることはあっても教えることは初めてだっただけに神経を色々とすり減らしていたようだった。

 

―――普段他人とあまり交わらないようにしていたツケが来たようだな。

(うっさい、これでも改善された方でしょう?)

―――お前にしてはな。だが、人間はもっと交流を深める生き物だ。今のお前などまだまだ人間の平均値には程遠いぞ。

(人間でもないあんたが人間を語らないで頂戴。ほら、私もう寝るんだからあんたは黙ってて)

 

 そう言って布団に潜り込もうとする遊希。そんな時、遊希たちの部屋のドアが小さくノックされた。なんだろう、と思ってドアを開けてみると、そこに立っていたのは枕を持ったパジャマ姿の未来だった。

 

「未来ちゃん、どうしたの?」

「あ、あのね……ちょっとこわいゆめをみちゃって……だから、遊希おねえちゃん、いっしょにねてほしいな、って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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