―――《No.107 銀河眼の時空竜》(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)!!―――
「銀河眼……光子竜以外の銀河眼ですって!?」
―――っ……!
遊望がX召喚したモンスター、No.107 銀河眼の時空竜。No.であることはもちろん、この世界では遊希のみが所持する【ギャラクシーアイズ】の名を冠するモンスターを目の当たりにした遊希たちは動揺を隠せなかった。
ギャラクシーアイズの名を持つモンスターは遊希が所持する精霊・光子竜およびその派生系統のみである―――遊希はもちろん鈴たちもそれを信じてやまなかったからだ。しかし、光子竜とは似て非なる姿をした銀河眼の時空竜は確実に目の前に存在している。嘘まやかしではない真実がそこにはあった。
《No.107 銀河眼の時空竜》
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
レベル8モンスター×2
(1):自分バトルフェイズ開始時に、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化され、その攻撃力・守備力は元々の数値になる。この効果を発動したターンのバトルフェイズ中に相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動する度に、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000アップし、このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
「うふふ、どうですかお姉さま? 私の精霊……いや、私の新しい姿は?」
「新しい姿……光子竜、それって」
―――……さっき言っていただろう。一度死んでしまったが、精霊として蘇ったと。彼女はもはや人ですらないということだ。
光子竜はどこか苦しそうに、言葉を搾りだすようにして遊望の現状を話す。今の遊望は姿形こそ遊希の知る最愛の妹のものであるが、人としての天宮 遊望という存在はもういない。今の彼女は心と記憶は遊望であっても、その命を入れるための器が時空竜になっているのだ。
(光子竜、どうしたの?)
―――すまない、あの精霊……時空竜が現れてから頭が割れそうなほど痛いんだ。
(大丈夫なの……?)
―――気にするな、この戦いくらいは……乗り切ってやる。
光子竜が苦しんでいる。自分が苦しんでいる時に光子竜は絶えずそばにいてくれたことでいくつも助けられたが、自分から光子竜に対してできることはほとんどない。唯一できることは光子竜のその言葉を信じてあげることだけだった。
「ごめん、遊望。悪いけど今のあんたを見て綺麗、とか可愛いなんて言葉は出てこないよ」
「そうですか……私はこんなにも気持ちいいのに」
そんな遊望の言葉に呼応する形で時空竜は咆哮と共に翼を羽ばたかせる。遊望=時空竜という形式が成り立つならば、今二つの存在は確かに繋がっているということなのだろう。
「でも、この力を見ればお姉さまのその認識も少しは改まるのではないでしょうか? メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移ります」
「……そのままバトルフェイズ? 煌星竜はともかく、光波刃竜には攻撃力で劣っている。悪戯に攻めても無駄よ!」
「だめ……遊希、気を付けて!!」
「鈴!?」
これまで何も言わず、虚ろな目でデュエルを見つめていた鈴が叫ぶ。彼女は身をもって味わっていたために知っていたのである。時空竜と銀河衛竜の2体の秘められた力を。
「ええ、わかっています。なのでバトルフェイズ開始時に時空竜の効果、そしてその効果にチェーンする形で銀河衛竜の効果を発動します!」
「時空竜と銀河衛竜の効果!?」
チェーン2(遊望):銀河衛竜
チェーン1(遊望):No.107 銀河眼の時空竜
「まずチェーン2の銀河衛竜の効果。フィールドもしくは墓地のこのカードをゲームから除外し、私のフィールドの元々の種族・属性がドラゴン族・光属性のNo.Xモンスター1体を対象として発動します。バトルフェイズ終了時までそのモンスターの攻撃力をそのモンスターの持つNo.の数字×100ポイントの数値に変更します」
「No.の数値……まさか……」
「はい、対象は時空竜。よってその攻撃力は……」
No.107 銀河眼の時空竜 ATK3000→ATK10700
「攻撃力10700!? そんな、こんなことが……!!」
―――ちぃっ……!!
「あらあら……驚き、恐怖するお姉さまの顔も愛らしくて素敵ですわ。人間は心の底から恐怖した時に最も美しい顔を見せるというのもあながち間違いではないのかもしれませんね。最も、そこに倒れている星乃 鈴のそれはお姉さまに遠く及ばないですが」
遊望の言っていることの意味ははっきり言って理解できないし理解したくなどはない。だが、この銀河衛竜の効果によって鈴が敗れたということは伝わってきた。攻撃力10700のモンスターを出されること自体そうはないことだろうが。
「そしてチェーン1の時空竜の効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールドに表側表示で存在する時空竜以外の全てのモンスターの効果を無効化します!“タキオン・トランス・ミグレイション”!!」
時空竜の身体が召喚時に現れた黒い四角錐が戻った瞬間、そこから放たれた摩訶不思議なオーラが周囲を包み込む。遊希はまるで時の流れが逆行していくような妙な感覚に包まれた。
そして、時空竜の身体が四角錐から竜の姿に戻った瞬間、光り輝いていた光波刃竜と煌星竜の身体が黒くくすんでしまっていることに気が付いた。時空竜の効果により、その効果を無効化された2体の銀河眼は何の効果も持たないモンスターへとされてしまったのである。
「光波刃竜、煌星竜!」
「これでお姉さまの銀河眼たちはただ滅ぼされるのを待つだけの惨めな存在に成り下がりました。銀河眼の時空竜で、銀河眼の光波刃竜を攻撃!!」
攻撃力10700となった時空竜と攻撃力3200の光波刃竜の攻撃力差分は7500。遊希はまだライフダメージを受けていないためワンショットキルこそは免れるものの、精霊の攻撃によって一気に7500ものライフが削られるのだ。デュエルにおけるライフ以上の衝撃が襲い掛かってくるのは誰の目にも明らかだった。
「遊希!!」
「遊希さん……!!」
―――“殲滅のタキオン・スパイラル”!!―――
No.107 銀河眼の時空竜 ATK10700 VS 銀河眼の光波刃竜 ATK3200
「―――きゃあっ!!」
遊希 LP8000→LP4250
「……えっ?」
時空竜の攻撃を受けた遊希は思わず周囲をきょろきょろと見回す。遊希のライフは7500ではなく、その半分の3750しか減っていなかった。
「ああ、そうそう。言い忘れましたが……銀河衛竜の効果を発動したターン、私のモンスターが与えるダメージは全て半分になってしまうんです。なのでお姉さまのライフはオネストのような戦闘補助のカードはない限りはどう頑張っても3750しか削れないんです」
「……」
「説明をしなかったことは謝ります。ですが、大ダメージを受けたと思って可愛らしい悲鳴を上げたお姉さまの姿はしっかりと脳に刻ませて頂きました♪」
そう言って儲け者、といった微笑みを浮かべる遊望。昔から仲のいいことで有名な姉妹であったが、時折遊望は姉の色々な姿を見たいということで軽い悪戯をすることが多く、そのことが原因での姉妹喧嘩もまた少なくなかったのだ。精霊となっても根幹は変わっていない、ということの表われでもあるのだが、この状況でそのようなことをしてきた遊望に対し遊希は明確に怒りの感情を打ち出した。
「遊望……私は今真剣にこのデュエルに臨んでいるのよ! ふざけた真似をするなら本当に容赦しないわよ!!」
「あら、私だって真剣です。真剣だからこそ、このようなふるまいができると思わないのですか?」
「だったら、勝ってそんな態度を取ったことを反省させる。懺悔の準備をしておきなさい!」
―――……遊希落ち着け。熱くなりすぎると勝てるデュエルも勝てなくなるぞ!
(っ……)
興奮する遊希を光子竜が苦しみながらも宥める。勝負事においては先に熱くなりすぎた方が負ける、というのは歴史が証明している。しかし、それがわかっていても実行できないのが心を持った生き物というものだ。
「さて、私はバトルフェイズを終了します。時空竜の攻撃力は元に戻りますわ」
No.107 銀河眼の時空竜 ATK10700→ATK3000
「お姉さまも銀河眼を使っている以上、私がこのカードを使わない理由はないですよね? 私は銀河眼の時空竜でオーバーレイ・ネットワークを再構築。エクシーズ・チェンジ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンをX召喚します」
「FA・フォトン……」
「FA・フォトンの効果を発動します。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドに表側表示で存在するカード1枚を対象として発動。そのカードを破壊します。対象はもちろん銀河眼の煌星竜です」
煌星竜が破壊されたことで、今度は遊希のフィールドからモンスターが消滅してしまった。どちらも高い攻撃力のモンスターを多数擁しているデッキのため、如何にフィールドを空にしないかが重要になる。
「攻撃力を下げてしまうのは惜しいですが……そのセットカードを見過ごすわけにはいきません。私はFA・フォトン・ドラゴンでオーバーレイ・ネットワークを再構築。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! ランク9の銀河眼の光波刃竜をX召喚します」
「……どこまでも私の真似をするのね」
「取れる最善の手を取っているまでの事です。まあ、お姉さまとお揃いになれるなら真似呼ばわりでも一向に構いませんが。光波刃竜のオーバーレイユニットを1つ取り除き、効果を発動。フィールドのカード1枚を破壊します。破壊するのはそのセットカードです」
光波刃竜の効果によって遊希のフィールドに残された最後のカードが破壊された。
「速攻魔法・破滅のフォトン・ストリーム……光子竜がいない状態では自分のターンにしか発動できないカード。これは放っておいても良かったですね。私はこれでターンエンドです」
遊望 LP5800 手札0枚
デッキ:30 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(銀河眼の光波刃竜 ORU:1)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 墓地:11 除外:5 EXデッキ:7(0)
遊希 LP4250 手札0枚
デッキ:31 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:12 除外:0 EXデッキ:10(0)
遊望
□□□伏□
□□□□□□
刃 □
□□□□□□
□□□□□
遊希
☆TURN04(遊希)
「私のターン、ドロー!」
(……ライフが心許ないけど、もう手は残されていない)
―――もうライフを気にしている場合ではない、ということだな。
「ええ。私はライフ2000を支払い、手札から魔法カード、銀河天翔を発動!」
遊希 LP4250→LP2250
「銀河天翔……コストこそ重いですが、1枚のカードでX召喚を行えるカードですか。今のお姉さまからしてみれば、喉から手が出るほど欲しかったカードと言っていいでしょう」
「私は墓地からフォトンモンスター、銀河眼の光子竜とデッキから同じレベルのギャラクシーモンスター、銀河剣聖の2体を効果を無効にし、攻撃力を2000にして守備表示で特殊召喚する!」
銀河眼の光子竜 ATK2000 効果無効
銀河剣聖 ATK2000 効果無効
「レベル8のモンスターが2体……」
「私はレベル8の銀河眼の光子竜と銀河剣聖でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!“我が心中に燃える強き意志よ。希望をその身に宿し、光子の竜の真の力を解放せよ!!” No.62 銀河眼の光子竜皇!」
遊希のエースモンスター、銀河眼の光子竜皇が現れる。このカードまでもが遊望によって使われてしまっているということを遊希は知らなかったが、遊希のデッキにおいて勝負を決めるカードの1枚であることに変わりはない。
(セットカードは発動されない……なら!)
「バトル! 銀河眼の光子竜皇で銀河眼の光波刃竜を攻撃!」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ATK4000 VS 銀河眼の光波刃竜 ATK3200
「ダメージ計算時に光子竜皇の効果を発動! オーバーレイユニットを1つ取り除き、このカードの攻撃力をそのダメージ計算時だけフィールドのXモンスターのランクの数×200ポイントアップさせる! ランクの合計は17! よって攻撃力は3400アップする!」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ORU:1 ATK4000→ATK7400
「攻撃力7400……!」
「全てを打ち砕きなさい!“エタニティ・フォトン・ストリーム”!!」
No.62 銀河眼の光子竜皇 ATK7400 VS 銀河眼の光波刃竜 ATK3200
遊望 LP5800→LP1600
「……!! ふふっ、今の攻撃はさすがに効きましたよ? お姉さまの想いが込められているいい一撃でした」
「それはどうも。私はあんたの姉として、妹の犯した罪を償わせる義務がある。あんたをみんなの前で謝らせて、然るべき罪を負ってもらう」
「それがお姉さまなりの私に対する愛情というものなのですね……」
「……どうかしらね。バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移行。私はこれでターンエンド」
遊望 LP1600 手札0枚
デッキ:30 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 墓地:13 除外:5 EXデッキ:7(0)
遊希 LP2250 手札0枚
デッキ:29 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(No.62 銀河眼の光子竜皇 ORU:1)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:13 除外:0 EXデッキ:9(0)
遊望
□□□伏□
□□□□□□
□ 皇
□□□□□□
□□□□□
遊希
「二人のライフが少なくなってきたわね……」
「ですが、遊希さんにはエースの光子竜皇がいます。加えて遊望さんの手札は0……仮に除去カードを引かれても、まだ返せます」
「そういえば、光子竜皇は効果破壊されると自己再生できる効果も……」
(確かにライフ、フィールドは遊希くんが有利だ。しかし、それにしては彼女……遊望くんの態度に余裕がありすぎる。あのセットカードといい、彼女は一体何を……?)
このデュエルを見守る千春と皐月、竜司の認識は乖離していた。千春と皐月は親友である遊希の勝利を願い、遊希が勝つことを信じている。一方の竜司は遊希を応援しながらも、このデュエルがこのまま遊希の勝利で終えることができるのであろうかと疑っていた。
「遊希……気を付けて……あいつの力はまだ……」
そして、鈴は恐れていた。遊望のデッキにおいて時空竜をも更に上回るものの存在を。
☆TURN05(遊望)
「私のターン、ドロー。あらあら……」
ドローカードを見た遊望はにやりと微笑む。
「何よ、その顔は」
「お姉さまと私のこのデュエル……どうやら神はどこまでも面白く、ドラマティックなものにしたいようですね。まさかここにきてこのカードを引いてしまうとは……」
そう言って遊望は1枚のカードを遊希に見せる。それは今彼女がドローしたカードだった。
「ちょっと、なんで相手にドローカードを見せて……」
「このカードは―――“ドローフェイズに通常のドローをしたカードを公開し続けることで、メインフェイズ1の開始時”に発動できるカード。私の―――銀河眼の時空竜の真の力をご覧に入れましょう!!」
―――“天に輝け、宿命込められし七つの星よ!!”―――
―――《RUM-七皇の剣》(ザ・セブンス・ワン)!!―――