鈴のフィールドに舞い降りたのは1体の美しい竜。その姿に居合わせた誰もが息を飲んだ。デュエルモンスターズにおける“力の象徴”とも言える青眼の名を冠しながらも、通常の青眼とは一線を画すどこか妖艶な雰囲気を纏っていたからだ。
「《深淵の青眼龍》(ディープ・オブ・ブルーアイズ)……これが、鈴の精霊か……」
《深淵の青眼龍》(ディープ・オブ・ブルーアイズ)
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻2500/守2500
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、自分フィールドまたは自分の墓地に「青眼の白龍」が存在する場合にしか発動できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから儀式魔法カードまたは「融合」1枚を手札に加える。
(2):自分エンドフェイズに発動できる。デッキからレベル8以上のドラゴン族モンスター1体を手札に加える。
(3):墓地のこのカードを除外して発動できる。自分フィールドの全てのレベル8以上のドラゴン族モンスターの攻撃力は1000アップする。
「あれが鈴の精霊……やった、これで……!遊希を助けられるのよね!?」
「まだなんとも言えませんが……でも、これは大きな一歩になるはずです!」
皆の希望を一心に集められた深淵の青眼龍であるが、そんな彼女は召喚されてからかどこかもじもじと身体をくねらせていた。
「……青眼?」
―――……うう、なんか一斉に多くの人に見られてて……恥ずかしい……
―――あー、なんか気持ちわかるわー……今でこそ平然としていられるけど初めてデュエルで召喚された時はマジ違和感半端なかったもん。
光子竜やスカーライトを見てわかるように、精霊には個々に自我がある。深淵の青眼龍は鈴との出会いの時といい、他の2体と比べて内気な性格のようだった。
「大丈夫だよ、青眼。これからはあたしと二人三脚で戦うんだから!」
―――鈴……うん、ありがとう。私、頑張るね。
「その意気だよ! 深淵の青眼龍はフィールドまたは墓地に青眼の白龍が存在する場合、1ターンに1度、発動できる3つの効果がある! あたしは1つ目の効果でデッキから儀式魔法もしくは融合1枚を手札に加える。デッキから儀式魔法、カオス・フォームを手札に加えるよ!」
「……儀式軸、融合軸どちらでも活用できるということか。いいだろう、ならばエンドフェイズにアルティメット・ファルコンの効果を発動する。RRモンスターをX素材として持っている場合、相手フィールドのモンスターの攻撃力を1000下げる!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000→ATK3000
深淵の青眼龍 ATK2500→ATK1500
「青眼たちの攻撃力が……」
「これで私はターンエンド。次のターン次第で全てが決まる。それをよく考えておくことだな」
鈴 LP3200 手札3枚
デッキ:26 メインモンスターゾーン:2(ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン、深淵の青眼龍)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:11 除外:0 EXデッキ:11(0)
エヴァ LP7600 手札5枚
デッキ:23 メインモンスターゾーン:1(レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト)EXゾーン:1(RR-アルティメット・ファルコン ORU:1)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 墓地:12 除外:2 EXデッキ:8(0)
鈴
□□□□□
□深M□□□
□ ア
□□□□レ□
□□□□□
エヴァ
「互いの1ターン目なのに二人ともかなり動いたわね……」
「はい。そしてお二人とも1ターン目で互いの精霊を顕現させている……お二人の思いが伝わってきます」
「思い?」
「はい。このデュエルに勝って精霊との絆を深めたい、そして遊希さんを助けたいという思いが……」
そう言いつつも皐月はぎゅっと拳を握りしめる。彼女の中には、精霊を持たない自分と千春が置いてきぼりにされているのではないか、という思いがあったからだ。
☆TURN03(鈴)
「あたしのターン、ドロー!」
―――鈴、このターンはどうするの……?
(……攻めなきゃいけないけど、エヴァちゃんのフィールドには幻影霧剣がセットされている)
《幻影霧剣》(ファントム・フォッグ・ブレード)
永続罠
フィールドの効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターは攻撃できず、攻撃対象にならず、効果は無効化される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。
(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「幻影騎士団」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。
(あのカードを上手くすり抜けないと、何もできずに終わっちゃう可能性が高い。こうなったら……!)
―――こうなったら……?
(一か八かの賭けよ! 女は度胸!)
―――えええ……
「あたしは手札から魔法カード、トレード・インを発動! 手札のレベル8モンスター、青眼の白龍をコストにデッキからカードを2枚ドローするわ!」
「2枚目のトレード・インか。3積みしているとはいえ、さすがに悪運が強いな。どこまでも運に賭けるか」
「結局最後は神様頼りになっちゃうんだよね。まあいいや、ドロー!!」
このドロー次第で全てが変わる。運を天に任せ、鈴は決意と共にカードをドローした。
「……都合よすぎるって言われないかな? まあ、運のおかげでも勝ちは勝ち、だよね? あたしは手札から速攻魔法、コズミック・サイクロンを発動! ライフ1000をコストに、エヴァちゃんのセットカードをゲームから除外する!」
「ここでそのカードを引くだと!?」
鈴 LP3200→LP2200
「っ……通常のサイクロンならいざ知らず、コズミック・サイクロンか。幻影騎士団の墓地効果をも使わせないとはな」
「そしてもう1枚のカード! マンジュ・ゴッドを召喚! 召喚に成功したマンジュ・ゴッドの効果であたしはデッキから儀式モンスターまたは儀式魔法1枚を手札に加える。あたしが手札に加えるのは儀式モンスター、青眼の混沌龍。そしてあたしは、深淵の青眼龍とマンジュ・ゴッドをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! リンク召喚! お願い《クロシープ》!」
《クロシープ》
リンク・効果モンスター
リンク2/地属性/獣族/攻700
【リンクマーカー:左下/右下】
カード名が異なるモンスター2体
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのリンク先にモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
このカードのリンク先のモンスターの種類によって以下の効果を適用する。
●儀式:自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を2枚選んで捨てる。
●融合:自分の墓地からレベル4以下のモンスター1体を選んで特殊召喚する。
●S:自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力は700アップする。
●X:相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は700ダウンする。
「クロシープだと!?」
「そして手札から儀式魔法、カオス・フォームを発動! 墓地の青眼の白龍をゲームから除外し、手札の青眼の混沌龍を儀式召喚するわ!」
墓地に眠る青眼の白龍の魂を糧として儀式召喚される青眼の混沌龍。鈴のフィールドには2体のカオスの名を持つ青眼が揃い踏みした。
「青眼の混沌龍……だが、青眼の混沌龍はアルティメット・ファルコンに攻撃力で劣っている。そのモンスターで何ができるというんだ!」
「リンク先に儀式モンスターが特殊召喚されたことでクロシープの効果が発動するわ。儀式モンスターが特殊召喚された場合、あたしはデッキからカードを2枚ドローし、手札を2枚選んで捨てる。そしてあたしは墓地の深淵の青眼龍の効果を発動! 墓地に青眼の白龍が存在する場合、このカードをゲームから除外することで、あたしのフィールドのレベル8以上のドラゴン族モンスターの攻撃力は1000アップする!!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK3000→ATK4000
青眼の混沌龍 ATK3000→ATK4000
「なっ……!?」
―――あっちゃー……そう来るかぁ……
「バトル! 青眼の混沌龍でRR-アルティメット・ファルコンを攻撃! 青眼の白龍を生贄に儀式召喚されている青眼の混沌龍の攻撃宣言時に効果が発動! 相手フィールドの全てのモンスターの表示形式を変更する!」
「アルティメット・ファルコンは相手のカードの効果を受け付けない……だが」
「スカーライトにはその効果を受けてもらうよ! そして、スカーライトの守備力は0になる!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト DEF2000→DEF0
「青眼の混沌龍でアルティメット・ファルコンを攻撃!“混沌のカオス・ストリーム”!」
青眼の混沌龍 ATK4000 VS RR-アルティメット・ファルコン ATK3500
エヴァ LP7600→LP7100
「……見事だ、鈴。まさかここまで強くなるとはな。だが、次はこうはいかない! 次のデュエルではきっちりこの借りを返させてもらう!」
「……ありがとう、エヴァちゃん。ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンでレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトを攻撃!“混沌のマキシマム・バースト”!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 VS レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト DEF0
「カオス・MAXの攻撃は貫通し、そのダメージは倍になる!!」
エヴァ LP7100→LP0
*
「勝った……? あたしが……エヴァちゃんに……??」
鈴は自分の手の中に握られている深淵の青眼龍のカードを見つめる。このカードが自分の力。自分だけの力。
「へへ、これから、宜しくね―――」
鈴は深淵の青眼龍のカードににっこりと微笑みかけると、ぱたりとその場に倒れてしまった。
―――鈴。
「……青眼?」
眼が覚めた鈴は青眼の住まう世界にいた。デュエルが終わった後に鈴は意識を失って倒れてしまっていたのだ。それは入学式直後の遊希と鈴のデュエルの時と同じであり、当時デュエルのブランクがあった遊希はデュエルの後に精神と身体の過度な疲労により保健室に運ばれた。その時のことはそのデュエルの相手だった鈴もよく覚えており、その時看病したことがきっかけで遊希と鈴は無二の親友となったのである。
「あの時の遊希もこんな気持ちだったのかな……」
―――鈴……その遊希って子のこと大好きなんだね。
「はあっ!? べっ、別にそんな関係じゃないし……あっ、でも好きか嫌いかというと大好き……あああ」
青眼の何でもない質問に勝手に紅潮しては勝手に混乱する鈴。その様を見て青眼は口元を手で押さえながらクスクスと笑う。しなやかながらも厳ついドラゴンの姿をしている青眼であるが、スカーライト同様人間の世界で生まれた精霊であることから所作の所々が何処か人間染みたものになっていた。
―――私は……まだその遊希という子に会ったことが無い。
「……そりゃあ、あの子が攫われてから目覚めたんだもの。あなたが知ってるはずないじゃない」
―――でも……鈴が好きってことは……凄くいい子なんだと思う。
まだ見ぬ遊希のことを好意的に捉える青眼。自分のことについて喋っているわけでもないのに鈴は何故かくすぐったくなってくる。
―――だから……早く助けようね。
「青眼……うん」
鈴が目覚めたのはエヴァとのデュエルが終わった翌日だった。あのデュエルの後丸一日を眠って過ごしたのである。起き抜けの身体はどうにも気怠く、起きてすぐに彼女は動くことができなかった。しかし、だからといっていつまでもベッドに横になっているわけにはいかない。身体の自由は完全に利くわけではないが、まるで寝たきりの病人がリハビリをするかのように少しずつ身体を慣らしていく。
「はぁ……遊希やエヴァちゃんも最初はこんな感じだったのかな……」
「エヴァはそんな様子見られなかったけど、遊希はどうだったのかしらね。子どものころから精霊と一緒にいたからだいぶ身体が慣れていたとか?」
「それでも気を失ったり目に見えて疲れていましたから……鈴さんも動けなくなるのは仕方ないことかと」
千春や皐月はフォローしてくれたが、鈴自身はまだまだ納得がいっていなかった。確かに鈴は目覚めさせたその日にエヴァにデュエルで勝利するなど、遊希やエヴァにはない精霊使いの才能の一端をのぞかせたかもしれない。それでも、精霊を使うたびにこうして倒れてしまっては元も子もないため、遊希を助ける前にまずは自分が精霊使いとしてレベルアップしなければいけない、ということを実感させられることとなった。
「取り敢えず少しずつ身体を慣らしていきましょう。デュエルを通して耐性をつけられるなら私たちも協力しますので……」
「困ったことがあったら隠さずなんでも相談すること! いいわね! 親友なんだから!」
改めてこの二人と親友になれてよかった、と鈴は心の底から思った。