「鈴さん、顔に出てますよ?」
ワイバースターの特殊召喚を許してしまったことが響いていたのか、デュエルの相手である皐月から見ても鈴が動揺しているのがわかった。精霊使いとして成長を遂げたとしても、その人間の性格まではそうは変わらない。どちらかと言えば素直な方である鈴の悪いところが出てしまっていた。
「……その有様で遊希さんを助けることができるんですか?」
「皐月っ……!」
―――鈴、落ち着け。あれは挑発だ。
(わかってるけど……)
光子竜が諫めるが、言葉とは裏腹に動揺を隠せない様子の鈴。そんな彼女の様子を見て、小さく息を吐いた皐月の目が鋭くなった。デュエルは精神の戦いでもある。相手の動揺に付け込むのは最早当たり前のことであった。
「私は輝白竜ワイバースターをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク1のストライカー・ドラゴンをリンク召喚します!」
先日マスタールールの変更が適用され、これまではリンクモンスターが存在しなければメインモンスターゾーンに特殊召喚できなかった融合・S・Xモンスターはリンクモンスターがいなくてもメインモンスターゾーンに特殊召喚できるようになった。それでも、リンクモンスターはこれまでと変わらずEXゾーンに特殊召喚しなければならない。ストライカー・ドラゴンのリンクマーカーは左に向いているため、更にリンク召喚をする場合はストライカー・ドラゴンを素材にするか、除去しなければリンク召喚をすることができないのだ。
「リンク召喚に成功したストライカー・ドラゴン、フィールドから墓地に送られた輝白竜ワイバースターの効果を発動します」
チェーン2(皐月):輝白竜ワイバースター
チェーン1(皐月):ストライカー・ドラゴン
しかし、皐月の【ヴァレット】は連続リンク召喚を行いやすいデッキである。そのため、新ルールの施行は逆風どころか追い風にもなっていた。
「チェーン2のワイバースターの効果で暗黒竜コラプサーペントを手札に加え、チェーン1のストライカー・ドラゴンの効果でフィールド魔法、リボルブート・セクターを手札に加えます。竜の渓谷からリボルブート・セクターにフィールド魔法を貼り換えます。そしてリボルブート・セクターの効果を発動します。手札のヴァレットモンスターを2体まで特殊召喚です。私はヴァレット・トレーサーとヴァレット・シンクロンの2体を特殊召喚します! 更に墓地の光属性モンスター、輝白竜ワイバースターを除外し、暗黒竜コラプサーペントを手札から特殊召喚」
これで皐月のフィールドにはリンク1のストライカー・ドラゴンに加えて下級ドラゴン族3体が居並ぶ。そして、そのうち2体はチューナーモンスターだ。
「私はリンク1のストライカー・ドラゴンと、チューナーモンスターであるヴァレット・トレーサーをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れなさい、リンク2! 水晶機巧-ハリファイバー!」
「……やっぱり出てきたか」
「まあ、このカードを採用しないデッキの方が少ないですからね。リンク召喚に成功したハリファイバーの効果でデッキからレベル3以下のチューナーモンスター1体を特殊召喚します。私はジェット・シンクロンを特殊召喚します。そしてヴァレット・シンクロンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚! 残されし最後の竜。守護竜ピスティ!」
守護竜のリンクモンスターはピスティ以外にはアガーペインとエルピィが存在していたが、その2体は強力な効果も相まって禁止カードに指定されている。そのため守護竜というカテゴリーにおいて唯一残されたリンクモンスターがこのピスティなのだ。ただ、禁止指定から免れているとはいえ、その効果が決して弱いわけではない。
「ピスティが存在する間、私はドラゴン族モンスターしかリンク召喚できません。なのでリンク2のハリファイバーとジェット・シンクロンをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! 現れなさい、スリーバーストショット・ドラゴン! これでピスティの効果を発動できるようになりましたね」
スリーバーストショット・ドラゴンのリンクマーカーは上・左・下の三か所であり、ピスティはスリーバーストのいるEXゾーンの左下のメインモンスターゾーンに存在している。ピスティの効果を発動するには2体以上のリンクモンスターのリンク先になっているメインモンスターゾーンが必要になるため、リンクマーカーが右を向いているピスティの効果を発動することができるのだ。
「ピスティの効果を発動します。墓地またはゲームから除外されているドラゴン族モンスター1体を2体以上のリンク先になっているモンスターゾーンに特殊召喚します。私は、墓地からこのモンスターを特殊召喚します!!」
ピスティの力によって蘇ったのは、鋼鉄の身体を持った黒き竜。かつてドラゴン族主体のデッキには確実に採用されていたモンスターだった。
「蘇りなさい!《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》!!」
《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》
効果モンスター(制限カード)
星10/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードは自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスター1体を除外し、手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・墓地から「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外のドラゴン族モンスター1体を選んで特殊召喚する。
「レッドアイズ……!! いつの間に墓地に……」
―――竜の渓谷の手札コストか……あの時既にピスティの効果で墓地から蘇生させる算段が立っていた、と。
「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果を発動します! 墓地のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚します。私はストライカー・ドラゴンを特殊召喚。そしてフィールドのピスティと墓地のヴァレット・トレーサーを対象にストライカー・ドラゴンの効果を発動します。ピスティを破壊し、トレーサーを手札に加えます。今手札に加えたトレーサーを通常召喚。ピスティがフィールドを離れたことで、私はドラゴン族モンスター以外を特殊召喚できるようになりました」
灰流うらら以外の手札誘発はない。皐月はそれを確信した。特殊召喚を抑制する増殖するGもなければ、特殊召喚を多用する相手に対するメタカードとも言える原始生命態ニビルも持っている気配はない。それならば、先攻制圧盤面を作るまで。
「ヴァレット・トレーサーの効果を発動します! リボルブート・セクターを破壊し、デッキから同名カード以外のヴァレットモンスター1体を特殊召喚します。私はマグナヴァレット・ドラゴンを特殊召喚です! 鈴さん……今の私の一番の力をあなたにお見せします!」
「皐月の一番の力……?」
―――……彼女の決意が、想いが伝わってくる……鈴、気を付けて……!
「私はスリーバーストショット・ドラゴン、ストライカー・ドラゴン、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの3体をリンクマーカーにセット!!」
リンク3のスリーバーストショット・ドラゴンの魂が3つのリンクマーカーを埋め、ストライカー・ドラゴンとレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの魂が残り2つのリンクマーカーに光を与える。点灯されたリンクマーカーは上、左、左下、右下、右の5か所だった。
「これは……リンク5!?」
「アローヘッド確認。召喚条件は効果モンスター3体以上!! サーキットコンバイン! リンク召喚!」
―――“暗黒に閉ざされた世界を貫くは己が決意。銃よ、剣よ、盾よ! 三つの力を今一つとし、最終にして最強の竜となれ!!”―――
現れたのはヴァレルロードでもヴァレルソードでもヴァレルガードでもない全く新しいヴァレル。他のヴァレルリンクモンスターよりもさらに巨大かつ強大なその竜は三つの頭と口内の銃口、そして六つの眼で対峙する鈴を撃ち抜かんとばかりに睨みつける。
「現れなさい! リンク5《ヴァレルエンド・ドラゴン》!!」
《ヴァレルエンド・ドラゴン》
リンク・効果モンスター
リンク5/闇属性/ドラゴン族/攻3500
【リンクマーカー:上/左/右/左下/右下】
効果モンスター3体以上
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードは戦闘・効果では破壊されず、モンスターの効果の対象にならない。
(2):このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。
(3):フィールドの効果モンスター1体と自分の墓地の「ヴァレット」モンスター1体を対象として発動できる。対象のフィールドのモンスターの効果を無効にし、対象の墓地のモンスターを特殊召喚する。この効果の発動に対して相手はカードの効果を発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。
「ヴァレルエンド・ドラゴン……これが、皐月の切り札……?」
「このモンスターの初お披露目の相手が鈴さんで良かったです。そうすれば、あなたに私の力を思い知らせることができますから。もちろん、これで終わらせるつもりはありません。私はレベル4の暗黒竜コラプサーペントに、レベル4のチューナーモンスター、ヴァレット・トレーサーをチューニング!“雄々しき竜よ。その獰猛なる牙を今、銃弾に変え撃ち抜け!”S召喚! ヴァレルロード・S・ドラゴン!! S召喚に成功したヴァレルロード・S・ドラゴンの効果を発動します。墓地のリンクモンスターを装備カード扱いとして装備し、そのリンクマーカーの数だけこのカードにヴァレルカウンターを置きます。対象はスリーバーストショット・ドラゴンです」
ヴァレルロード・S・ドラゴン ヴァレルカウンター:3
「そして、S・ドラゴンの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの攻撃力の半分アップします。スリーバーストショット・ドラゴンの攻撃力は2400。よって1200アップです」
ヴァレルロード・S・ドラゴン ATK3000→ATK4200
「これで私はターンエンドです。さあ、鈴さん。あなたのターンですよ」
皐月 LP8000 手札1枚
デッキ:27 メインモンスターゾーン:2(ヴァレルロード・S・ドラゴン(ヴァレルカウンター:2)、マグナヴァレット・ドラゴン)EXゾーン:1(ヴァレルエンド・ドラゴン)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1(スリーバーストショット・ドラゴン)墓地:11 除外:2 EXデッキ:9(0)
鈴 LP8000 手札4枚
デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:1 除外:0 EXデッキ:15(0)
皐月
□□□□ス
マ□S□□□
□ エ
□□□□□□
□□□□□
鈴
○凡例
エ・・・ヴァレルエンド・ドラゴン
S・・・ヴァレルロード・S・ドラゴン
マ・・・マグナヴァレット・ドラゴン
ス・・・スリーバーストショット・ドラゴン
(っ……!!)
―――破壊耐性持ちかつ全体攻撃が可能な攻撃力3500のモンスター、そして効果を2度まで無効にできる攻撃力4200のモンスター……相当厳しい布陣だな。
―――……突破、できるのかな……?
精霊たちをもってしても苦心する皐月の布陣。これも彼女の覚悟が為せる技なのだろう。取り分け守備力を持たないために守備表示にならないヴァレルエンド・ドラゴンの存在はカオス・MAXによる貫通ダメージを主なダメージ源とする鈴にとっては目の上のタンコブと言っても差し支えない。
(光子竜、青眼……あたしね、突破できるできないじゃないと思うんだ)
―――鈴……?
(突破する。あたしたちにできるのは、それだけ!!)
☆TURN02(鈴)
「あたしのターン、ドロー!!」
鈴はドローカードを見て、不思議なものを感じた。デッキが、カードがデュエリストの想いに応える、というのはあくまで真の強者のみが到達できる境地であると思っていた。
―――このカードは……!
―――これなら行けるぞ、鈴!
「うん!……ごめん、皐月。あんたの覚悟、このカードで打ち破ってみせる!」
「ヴァレルエンドとサベージの布陣を打ち破る? そんなカードなど……!」
「あるんだよ! あたしは手札の伝説の白石と深淵の青眼龍の2体を墓地に送り、速攻魔法《禁じられた一滴》を発動!」
《禁じられた一滴》(きんじられたひとしずく)
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の手札・フィールドから、このカード以外のカードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。その数だけ相手フィールドの効果モンスターを選ぶ。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。
このカードの発動に対して、相手はこのカードを発動するために墓地へ送ったカードと元々の種類(モンスター・魔法・罠)が同じカードの効果を発動できない。
「禁じられた一滴!?」
「禁じられた一滴は手札・フィールドのこのカード以外のカードを任意の数だけ墓地へ送って発動できるカード。発動のために墓地に送ったカードの数だけ相手フィールドの効果モンスターを選び、そのモンスターはターン終了時まで攻撃力が半分になる、そしてその効果は無効化される!」
「ヴァレルロード・S・ドラゴンの効果で無効、にはできない……んですよね?」
「うん。相手はこのカードの発動に対して、このカードを発動するために墓地へ送ったカードと元々の種類が同じカードの効果を発動できない。だから、ヴァレルロード・S・ドラゴンでも止められない」
ヴァレルエンド・ドラゴン(効果無効)ATK3500→ATK1750
ヴァレルロード・S・ドラゴン(効果無効)ATK4200→ATK1500
「これで心置きなくあたしはカードを使うことができる。まずは墓地へ送られた伝説の白石の効果でデッキから青眼の白龍1枚を手札に加える。そして、青眼をコストに魔法カード、トレード・インを発動。デッキからカードを2枚ドローする。手札から魔法カード、復活の福音を発動! 墓地のレベル8・ドラゴン族の深淵の青眼龍を特殊召喚するわ!」
―――鈴……! わたし、頑張る!
「墓地に青眼の白龍が存在する時に特殊召喚された深淵の青眼龍の効果を発動! デッキから儀式魔法、高等儀式術を手札に加える。そして儀式魔法、高等儀式術を発動! デッキの青眼の白龍を墓地へ送り、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを儀式召喚!」
「カオス・MAX……出てきましたか」
「バトル! ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンでヴァレルエンド・ドラゴンを攻撃!“混沌のマキシマム・バースト!”」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 VS ヴァレルエンド・ドラゴン ATK1750
皐月 LP8000→LP5750
「きゃあっ!!―――ヴァレルエンド……!」
「続けて深淵の青眼龍でヴァレルロード・S・ドラゴンを攻撃!“ディーブ・カオス・バースト”!」
深淵の青眼龍 ATK2500 VS ヴァレルロード・S・ドラゴン ATK1500
皐月 LP5750→4750
「……さすがですね。私が作り上げた盤面をこうも容易く」
「運が良かったから、って言っちゃうとそうかもしれないけど……あたしにだって皐月と同じくらい負けられない理由がある。今更だけど、手加減なんてしてあげないから」
「それはこっちの台詞ですよ。このターンでライフを削り切れなかったことを後悔させてあげますから」
「言うじゃん。じゃあやってみなよ。あたしはバトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移る。カードを1枚セット。そしてターン終了時に深淵の青眼龍の効果を発動。デッキからレベル8以上のドラゴン族1体を手札に加える。あたしが手札に加えるのはレベル10のディープアイズ・ホワイト・ドラゴン。これでターンエンドだよ」
皐月 LP4750 手札1枚
デッキ:27 メインモンスターゾーン:1(マグナヴァレット・ドラゴン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:14 除外:2 EXデッキ:9(0)
鈴 LP8000 手札1枚
デッキ:28 メインモンスターゾーン:2(ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン、深淵の青眼龍)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 墓地:8 除外:0 EXデッキ:15(0)
皐月
□□□□□
マ□□□□□
□ □
□□□M深□
□伏□□□
鈴
○凡例
M・・・ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン
深・・・深淵の青眼龍