☆TURN01(エヴァ)
先攻決定権を得たエヴァは迷わず先攻を取る。相手が尋常のデュエリストではないということ、相手のデッキがわからないことを考えるとじっくり様子を見ていられる余裕などない。鈴たちが捕らえられてしまっているということもあって、この時のエヴァは自分が思っている以上に焦っていた。
「先攻は私だ! 手札から魔法カード、闇の誘惑を発動! 手札の闇属性モンスター、BF-そよ風のブリーズをゲームから除外し、デッキからカードを2枚ドローする! 更に私は手札のBF-毒風のシムーンの効果を発動! 私のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札のBF-精鋭のゼピュロスをゲームから除外し、デッキから私の魔法・罠ゾーンに永続魔法、黒い旋風1枚を表側表示で置く!」
BFのキーカード、黒い旋風を早くも展開するエヴァ。【BF】デッキの王道とも言える展開だが、相手を選ばず強いからこそ王道たり得る戦法なのだ。
「黒い旋風をデッキから直接……なるほど、言うだけのことはあるということか」
しかし、エヴァと対峙するブラックという青年はそんなエヴァの戦法を見ても驚きこそしても怯みはしない。むしろそんなエヴァを見て感心している、という様相だった。
「随分と余裕だな。うかうかしていると、ライフなど1ターンで吹き飛ぶぞ! 黒い旋風を置いた後、シムーンはリリースなしで召喚するか墓地に送る。もちろん私はシムーンを召喚する! BFモンスターが召喚されたことで黒い旋風の効果が発動! シムーンの攻撃力1600以下のBFモンスター1体を手札に加える。私は攻撃力1400のBF-南風のアウステルを手札に加える。そして、今手札に加えたチューナーモンスター、BF-南風のアウステルを召喚!」
シムーンとアウステル、2体のBFがエヴァのフィールドに居並ぶ。その光景を見たブラックは不思議そうに首を傾げていた。
「一つ聞きたい……貴様は既に召喚権を使っているのではないのか?」
「シムーンの効果は効果による召喚。これでは召喚権は消費されない。まあ、これはかなり特殊なケースだがな」
―――まー、そこはわからなくてもしょうがないよね。
「ふん、そういうものがあるのか……」
今やっているのは下手をすれば命のやり取りとも言えるデュエルだ。しかし、そんなデュエルにおいてもブラックからは緊迫感が感じられない。彼が意図してやっているのかどうかはわからないが、エヴァはどこか調子を狂わされているのではないか、と思わざるを得なかった。
(……あの様子だと、デュエルモンスターズというものをあまり知らないのだろうか。ならば、尚更負けられない!)
「召喚に成功したアウステル、そして黒い旋風の効果を発動する!」
チェーン2(エヴァ):黒い旋風
チェーン1(エヴァ):BF-南風のアウステル
「チェーン2の黒い旋風でアウステル以下の攻撃力のBFモンスターを手札に加える。アウステルの攻撃力1400以下のBF-砂塵のハルマッタンを手札に加える。そしてチェーン1のアウステルの効果でゲームから除外されているBFモンスター1体を特殊召喚する! 戻ってこい、BF-精鋭のゼピュロス! そして砂塵のハルマッタンはフィールドにBFモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる!」
エヴァのフィールドにはBFモンスターが4体。いずれもレベルこそバラバラであるが、チューナーモンスターであるアウステルがいる以上、レベル6、8、10のS召喚が可能だ(最もシムーンの効果を発動している以上、エヴァがEXデッキから特殊召喚できるのは闇属性モンスターに限られているが)。
―――うん、いいフィールド! じゃあいっちゃえ、エヴァ!!
「私はゼピュロスとハルマッタンをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」
「リンク召喚だと? デュエルモンスターズのルール改訂により、Sモンスターを展開するにあたっては必ずしもリンクモンスターが不要になったと聞くが」
「ああ、お陰様で今までより自由に動ける。しかし、だからといってリンクモンスターが不要になったわけでもない! 召喚条件は鳥獣族・闇属性のモンスター2体! リンク召喚! 現れよ、RR‐ワイズ・ストリクス!」
エヴァは元々の【BF】デッキに加えて種族属性で共通している【RR】要素を取り入れている。RRはX召喚を主とするテーマではあるが、大半のモンスターがレベル4であることもあって、S召喚の非チューナー枠としても使えるのだ。
「リンク召喚に成功したワイズ・ストリクスの効果を発動! デッキから闇属性・鳥獣族・レベル4のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! BF-黒槍のブラストを特殊召喚! そして墓地のゼピュロスの効果を発動! 私のフィールドの黒い旋風を手札に戻し、墓地から特殊召喚する! その後、私は400のダメージを受けるがな」
エヴァ LP8000→LP7600
「そして私はレベル4のゼピュロスとブラストでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 飛翔せよ、RR-フォース・ストリクス! フォース・ストリクスの攻守の値は自身以外のRRの数×500アップする!」
RR-フォース・ストリクス ATK100/DEF2000→ATK600/DEF2500
「オーバーレイユニットを1つ取り除き、フォース・ストリクスの効果を発動。そしてフィールドのRRXモンスターの効果が発動したことで、更にワイズ・ストリクスの効果も発動する!」
チェーン2(エヴァ):RR-ワイズ・ストリクス
チェーン1(エヴァ):RR-フォース・ストリクス
「チェーン2のワイズ・ストリクスの効果で私は《RUM-スキップ・フォース》をセット。そしてチェーン1のフォース・ストリクスの効果でデッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスター1体を手札に加える。私はBF-残夜のクリスを手札に加える。そしてレベル6の毒風のシムーンに、レベル4のチューナーモンスター、アウステルをチューニング!“その名に宿すは完全にして至高。極光輝く天空を大いなる翼を以て制圧せよ!”シンクロ召喚、現れよ! BF-フルアーマード・ウィング!! そしてセットしていたスキップ・フォースを発動!」
《RUM-スキップ・フォース》
通常魔法
(1):自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが2つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
(2):自分の墓地からこのカードと「RR」モンスター1体を除外し、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「ランク4のフォース・ストリクスを2つ上のランクを持ったRRXモンスターにランクアップさせる! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れよ!《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!」
《RR-レヴォリューション・ファルコン》
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/闇属性/鳥獣族/攻2000/守3000
鳥獣族レベル6モンスター×3
(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。
(2):このカードが特殊召喚された表側表示モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする。
(3):このカードが「RR」XモンスターをX素材としている場合、以下の効果を得る。
●1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える
「私は……これでターンエンドだ!」
―――このフィールド、覆せるものなら覆してみるといいわ!
エヴァ LP7600 手札4枚
デッキ:29 メインモンスターゾーン:2(BF-フルアーマード・ウィング、RR-レヴォリューション・ファルコン ORU:2)EXゾーン:1(RR-ワイズ・ストリクス)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:4 除外:1 EXデッキ:11(0)
ブラック LP8000 手札5枚
デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)
エヴァ
□□□□□
□□B□レ□
□ ワ
□□□□□□
□□□□□
ブラック
○凡例
ワ・・・RR-ワイズ・ストリクス
B・・・BF-フルアーマード・ウィング
レ・・・RR-レヴォリューション・ファルコン
「うん、エヴァちゃんの得意戦術が上手く決まったわね!」
―――……相手が妨害のためのカードを持っていなかったのが……大きい。でも、どうして手札に戻した黒い旋風やサーチした残夜のクリスを手札に……
―――シムーンの効果でエヴァはこのターン、闇属性のモンスターしかEXデッキから特殊召喚を行えない。恐らくあれ以上に出せるモンスターがいなかったのだろう。ワイズ・ストリクスを使って出せる闇属性・リンク3のモンスターは思いの外少ないからな。
「さすがエヴァちゃん……相手の動きを見て次のターンで切り返せるだけの手は残してるってことなのね」
―――それにレヴォリューション・ファルコンは特殊召喚された相手モンスターとの戦闘において、そのモンスターの攻撃力を0にできる。コントロール奪取効果と破壊効果を選んで使えるフルアーマード・ウィングと合わさって、中々強固な布陣を築くことができた。
現役のプロデュエリストだけあって、エヴァはさすがに用心深かった。しかし、エヴァがそれだけ用心深い布陣を引かなければならないほど、目の前に立つブラックという精霊がそれだけ得体の知れない相手ということもであった。
☆TURN02(ブラック)
「私のターン、ドロー。なるほど、万全の布陣を敷いてきた、と見たいが……この世界に完璧なものなど存在しない。必ずどこかに綻びが生じるものだ」
「……何が言いたい」
「その綻び、我が槍で突いてくれよう。私は《幻影騎士団ダスティローブ》を召喚」
ブラックのフィールドには薄汚れたローブのようなものを纏った幽霊のようなモンスターが現れる。彼のデッキは闇属性・戦士族の下級モンスターで統一された【幻影騎士団(ファントム・ナイツ)】。X召喚およびランクアップを多用するデッキだ。
《幻影騎士団ダスティローブ》
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻800/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがフィールドに攻撃表示で存在する場合、フィールドの闇属性モンスター1体を対象として発動できる。このカードを守備表示にし、対象のモンスターの攻撃力・守備力は相手ターン終了時まで800アップする。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「幻影騎士団ダスティローブ」以外の「幻影騎士団」カード1枚を手札に加える。
「幻影騎士団ダスティローブの効果を発動。このカードを守備表示にすることで、フィールドの闇属性モンスター1体の攻守を相手ターン終了時まで800アップする。対象はレヴォリューション・ファルコンだ」
「なんだと?」
RR-レヴォリューション・ファルコン ATK2000→ATK2600
「……ワイズ・ストリクスの攻撃力を上げてどうするつもりだ?」
「これは種を撒いただけにすぎない。芽吹く時を楽しみにしていろ」
「効果を発動したことにより、フルアーマード・ウィングの効果を発動! ダスティローブに楔カウンターを置く」
幻影騎士団ダスティローブ 楔カウンター:1
「楔を打ち込まれてしまったか。まあいい、私のフィールドに幻影騎士団モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。現れよ《幻影騎士団サイレントブーツ》」
《幻影騎士団サイレントブーツ》
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻200/守1200
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに「幻影騎士団」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「ファントム」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
「そして私は、レベル3のダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。現れよ《幻影騎士団ブレイクソード》」
《幻影騎士団ブレイクソード》
エクシーズ・効果モンスター
ランク3/闇属性/戦士族/攻2000/守1000
レベル3モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。そのカードを破壊する。
(2):X召喚されたこのカードが破壊された場合、自分の墓地の同じレベルの「幻影騎士団」モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしか特殊召喚できない。
「幻影騎士団ブレイクソードの効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。そのカードを破壊する。私が対象に取るのはブレイクソード自身と貴様のワイズ・ストリクスだ」
「ちっ……」
ブレイクソードが大剣が振るい、ワイズ・ストリクスの身体を両断する。もちろんその代償は少なくなく、ワイズ・ストリクスを撃墜したブレイクソード自身もその命を捨てた。しかし、死してもなお戦場に舞い戻るのが【幻影騎士団】という戦士たちだった。
「破壊されたブレイクソードの効果を発動。X召喚されたこのカードが破壊された場合、墓地の同じレベルの幻影騎士団モンスター2体を特殊召喚し、その2体のレベルを1つ上げる。戻ってこい。ダスティローブ、サイレントブーツ」
幻影騎士団ダスティローブ 星3→星4
幻影騎士団サイレントブーツ 星3→星4
(幻影騎士団デッキの基本戦術の一つが、ブレイクソードの効果で墓地の幻影騎士団を呼び戻し、ランク4のX召喚に繋げるという動き……ここから主にX召喚されるのは……)
エヴァの脳裏には1体の黒いドラゴンの姿が浮かび上がる。確かにあのカードならフルアーマード・ウィングを突破することも可能。しかし、ブラックがX召喚したのはエヴァの予想を超える、いやエヴァもまた知らないモンスターだった。
「私はレベル4となったダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れよ!」
現れたのはエヴァの想像したモンスター―――《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》ではない、ブレイクソードに酷似した黒衣の騎士のようなモンスターだった。
「これぞ、我がデッキの新たなる力。反逆の騎士と隼を繋ぐ力。ランク4《レイダーズ・ナイト》!!」
《レイダーズ・ナイト》
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻2000/守0
闇属性レベル4モンスター×2
このカード名はルール上「幻影騎士団」カード、「RR」カードとしても扱う。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このカードよりランクが1つ高い、またはランクが1つ低い「幻影騎士団」、「RR」、「エクシーズ・ドラゴン」Xモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは次の相手エンドフェイズに破壊される。
「レイダーズ・ナイト!? そんなモンスター聞いたことがないぞ!!」
「……まあ知らないのも当然だろうな。このカードはI2社で開発中のカードだ。近々【幻影騎士団】のカードが追加されるようでな。そのカードを拝借させてもらった」
―――そんなのあり!?
「非道かもしれないが、戦いとは勝った者が正義だ。手段を選んでいられるほど、こちらも悠長にはしていられない」
「……いいだろう、確かに勝たねばどうしようもないからな」
「感謝する。ではその力をご覧いただこう。レイダーズ・ナイトの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、このカードをランクが1つ高い、またはランクが1つ低い【幻影騎士団】【RR】【エクシーズ・ドラゴン】Xモンスターにランクアップおよびランクダウンさせることができる!!」
「……1体で3つのテーマのXモンスターに変化することができるだと!?」
―――インチキ効果もいい加減にしなさいよ!!
「これぞ、精霊の力の為せる技だ。私はレイダーズ・ナイトでオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!」
レイダーズ・ナイトの魂が天に昇り、現れるのは1体の黒き竜。その牙は愚鈍なる復讐の牙。その翼は数多なる朋友の想いを乗せた翼。
「現れよ!! ランク5!!」
―――《アークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!―――