銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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千春の決意・2(修正版)

 

 

 

 

 

「あらあら、お嬢ちゃんにはやり過ぎだったかしら?」

 

 2体の捕食植物の攻撃で一気にライフを5500も失ってしまった千春。もちろん、次の自分のターンでパープルへの壁となっているトリフィオヴェルトゥムとキメラフレシアをなんとかしなければ確実に負ける。

 

「……別に、こんなんどうってことないわ! ちょうどいいハンデよ!」

「そう。でも、空元気はいけないわ。隣で戦っているお友達をますます心配させちゃうから」

 

 パープルに指摘され、千春は自分と全く同じタイミングでデュエルを行っている皐月の方を横目でちらりと見る。自分とは違い、皐月なら精霊相手であっても楽勝―――ということはなかった。皐月の【ヴァレット】デッキのエースモンスターの1体であり、自分が幾度となく痛い目に遭わされてきたヴァレルソード・ドラゴンが、ホワイトのクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンに蹴散らされていたところだったのだ。

 皐月の顔に余裕はない。しかし、ここで千春に彼女を助けてあげられるだけの余裕もない。ならば千春がすべきことはなにか。

 

(皐月……ごめん、今の私には何もしてあげられない。こんな時は……祈るだけ)

「大丈夫よ、だって皐月は強いもの! もちろん、この私もね!」

 

 今の千春にできること。それは少しでも諦めるような素振りを見せないことだ。ここで自分が折れずに立ち向かっていれば。それが友への力となるのだ。

 

「……強いのね。さっきは侮るようなことを言ってごめんなさい。でも、このままだとあなた、負けちゃうわよ。バトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移行。私はカードを1枚セット。これでターンエンドよ」

 

 

千春 LP2500 手札0枚

デッキ:34 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1(未来融合-フューチャー・フュージョン)墓地:8 除外:0 EXデッキ:12(0)

パープル LP8000 手札0枚

デッキ:33 メインモンスターゾーン:2(捕食植物トリフィオヴェルトゥム、捕食植物キメラフレシア)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 墓地:6 除外:0 EXデッキ:13(0)

 

千春

 □□未□□

 □□□□□□

  □ □

□□トキ□□

 □□□伏□

パープル

 

○凡例

未・・・未来融合-フューチャー・フュージョン

ト・・・捕食植物トリフィオヴェルトゥム

キ・・・捕食植物キメラフレシア

 

 

☆TURN03(千春)

 

「私のターン、ドロー!……スタンバイフェイズに未来融合の発動後1ターン目の効果が発動するわ!」

 

 未来融合-フューチャー・フュージョンは発動後1ターン目のスタンバイフェイズにEXデッキの融合モンスターを相手に見せることで、その融合素材をデッキから墓地に送ることができる。以前は発動と同時に融合素材を墓地へ送っていたのだが、その強力無比な墓地肥やし効果が祟って禁止カードに指定されてしまっていた。

 

「私が指定する融合モンスターはキメラテック・オーバー・ドラゴン! よってこのカードの融合素材となるサイバー・ドラゴン1体と機械族モンスターを任意の数まで墓地に送るわ! 私は―――サイバー・ドラゴン1体、サイバー・ドラゴン・コア2体、サイバー・ドラゴン・ヘルツ3体、サイバー・ドラゴン・ネクステア2体、サイバー・ドラゴン・フィーア2体、サイバー・ドラゴン・ドライ1体を墓地に送るわ!!」

 

 未来融合の効果で墓地に送られたモンスターは合計12体。次のターンになれば、12体のモンスターを融合素材にキメラテック・オーバー・ドラゴンが融合召喚される―――というのは大きな間違いだ。

 

「ねえ、キメラテック・オーバー・ドラゴンのために墓地肥やしをしたのはいいけれど……キメラテック・オーバー・ドラゴンは融合召喚されると同時にフィールドの自分以外のカードを全て墓地に送ってしまうわ。未来融合がなくなるとキメラテック・オーバー・ドラゴンも破壊されてしまうんじゃない」

「ええ、そうよ。そんなの私が知らないわけがないじゃない」

「……そうよね。愚問だったわ」

 

 だが、皐月の今ドローしたカードによってはそれは問題にすらならない。墓地の機械族モンスターを除外することで闇属性・機械族モンスターを融合召喚できるオーバーロード・フュージョン。それさえあれば、未来融合のデメリットを気にせずにキメラテック・オーバー・ドラゴンを融合召喚できるのだ。

 

「でも、残念なことにこのカードはオーバーロード・フュージョンじゃないのよね。もしこれが遊希とかエヴァだったらここでオーバーロード・フュージョンを引けたのかしら? そこも、まだまだ成長途中ってことよね。ということで、メインフェイズ1の開始時に魔法カード、強欲で金満な壺を発動! EXデッキの裏側表示のカードを3枚または6枚を裏側表示で除外し、除外したカード3枚につき1枚ドローするわ!」

 

 千春は強欲で金満な壺の効果でEXデッキのカードを6枚除外し2枚のカードをドローする。もちろん、強欲で金満な壺の発動条件によってキメラテック・オーバー・ドラゴンが除外されてしまえばオーバーロード・フュージョンを引いても元も子もない。そんな膨大なリスクを抱えてもなお、千春は強欲で金満な壺というハイリスクハイリターンのカードを切ったのだ。

 

「窮地だというのに……随分危ない橋を渡るのね」

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、だったかしら。時には危険な橋を渡らなきゃいけないのよ! 私は!《サイバー・ヴァリー》を召喚!」

 

《サイバー・ヴァリー》

効果モンスター

星1/光属性/機械族/攻0/守0

以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。

●自分のメインフェイズ時に発動できる。このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。

●自分のメインフェイズ時に、自分の墓地のカード1枚を選択して発動できる。このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す。

 

「サイバー・ヴァリー……遅延カードを引き当てるなんて、運がいいのね」

「遅延? 何言ってんの? このカードは反撃への、勝利への第一歩よ! 手札から―――魔法カード《精神操作》を発動するわ!」

 

《精神操作》

通常魔法(準制限カード)

(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。この効果でコントロールを得たモンスターは攻撃宣言できず、リリースできない。

 

「精神操作!?」

「この効果で私はあんたのフィールドのトリフィオヴェルトゥムのコントロールをエンドフェイズまで得る。攻撃宣言もリリースもできないけど、サイバー・ヴァリーの効果には使えるわ! サイバー・ヴァリーの効果を発動! 私が選択するのは2つ目の効果よ!」

 

 サイバー・ヴァリーの力によって、サイバー・ヴァリー自身と千春にコントロールの移ったトリフィオヴェルトゥムが異次元へと消えていった。トリフィオヴェルトゥムは相手フィールドに捕食カウンターが置かれたモンスターが存在する場合、墓地から守備表示で特殊召喚できる効果を持っている。そのため、仮に破壊してもパープルが捕食カウンターを能動的に置ける手段を持っていれば、トリフィオヴェルトゥムはまさに刈り取っても刈り取っても生えてくる雑草のように蘇るのだ。

 

「サイバー・ヴァリーとトリフィオヴェルトゥムを除外したことで私はデッキからカードを―――2枚ドローする!!」

 

 強欲で金満な壺に反撃への命運を、サイバー・ヴァリーに勝利への階を。千春は全神経をデッキに伝え、カードを引いた。

 

「……自分の手札を補うだけではなく、私のエースモンスターの1体を封じるとはね。でも、手詰まりというものじゃないかしら?」

「……手詰まり?」

「私のフィールドにはまだキメラフレシアが残っている。それにキメラフレシアはその効果で攻撃力4500までのモンスターには一方的に破壊されないわ」

 

 【サイバー・ドラゴン】デッキの売りと言えば、やはり高い攻撃力を誇る機械族モンスターであるが、パワー・ボンドやキメラテック・オーバー・ドラゴンのようなカードを駆使しない限りはサイバー・エンド・ドラゴンの4000やサイバー・ドラゴン・ズィーガーの効果で強化された4200が限界と言っていいだろう。

 一方でキメラフレシアは攻撃宣言時に相手モンスターの攻撃力を1000下げ、キメラフレシア自身の攻撃力を1000アップさせる効果を持っている。そのため、これらのモンスターではパープルのライフを削るどころか、キメラフレシアを戦闘破壊することすらも不可能なのだ。

 

「確かに、力攻めが通用しない、ってのは厳しいわね。でも、私たちが攻撃一辺倒だなんて思わないでほしいわね! 私は―――墓地の光属性・機械族モンスターを全て除外する!!」

 

 千春の墓地からは、サイバー・ドラゴン3体、サイバー・ドラゴン・ドライ2体、サイバー・ドラゴン・コア3体、サイバー・ドラゴン・ネクステア3体、サイバー・ドラゴン・ヘルツ3体、サイバー・ドラゴン・フィーア3体、サイバー・ドラゴン・ノヴァ、サイバー・ドラゴン・インフィニティ、サイバー・ドラゴン・ズィーガーの計20体の光属性・機械族モンスターが除外される。そして巨大な竜の頭部を模したサイバーモンスターが天空より舞い降りた。

 

「さあ星満ちる天空より現れなさい、サイバー・エルタニン!!」

 

 サイバー・エルタニン。それは融合にも、Xにも、リンクにも頼らない【サイバー・ドラゴン】デッキの切り札の一つ。サイバー・ヴァリーの効果でこのカードを引き当てられた千春は、まさに勝利の女神に愛されていたと言っていいだろう。

 

「サイバー・エルタニン!?……ここでそんなカードまで!!」

「サイバー・エルタニンの攻撃力・守備力はこのカードを特殊召喚するために除外したモンスターの数×500ポイントの数値になるわ!」

 

サイバー・エルタニン ATK10000/DEF10000

 

「攻撃力10000!?」

「そしてエルタニンの特殊召喚に成功した場合に効果を発動! このカード以外の表側表示モンスターを全て墓地へ送るわ。消えなさい、キメラフレシア!“コンステレーション・シージュ”!!」

「その効果は通させないわ! カウンター罠発動! 神の通告!」

 

チェーン2(パープル):神の通告

チェーン1(千春):サイバー・エルタニン

 

パープル LP8000→LP6500

 

「神の通告……」

「チェーン2の神の通告によって、サイバー・エルタニンの効果は無効になり破壊されるわ!」

 

 天空から振り下ろされた神の力によってサイバー・エルタニンの身体が粉々に砕け散る。サイバー・エルタニンの効果を通せれば、攻撃力10000のダイレクトアタックが通っていただけにここでエルタニンを無力化されてしまったのは千春にとってはあまりにも痛すぎた。

 

「まさかサイバー・エルタニンまで仕込んでいたとは驚いたわ。でも、これで万事休すね。切り札を失ったあなたに勝ち目なんて……」

 

 そう言ってクスクスと笑うパープルであるが、すぐに彼女の顔から笑みが消える。パープルは勝利を確信するのが早すぎた。何故なら、千春の手の内にはまだ1枚、カードが残っていたのだから。

 

「悪いけど、あんたに次のターンは回ってこないわ! これが! 私の最後の一手!」

 

 

 

―――速攻魔法、発動!!―――

 

 

 

 

―――サイバーロード・フュージョン!!!―――

 

 

 

「サイバーロード・フュージョン!?」

「サイバー・ヴァリーの効果で引けた2枚がエルタニンとこのサイバーロード・フュージョン……どうやら、最後の最後で私も遊希並みの引きの強さを発揮できたみたいね!!」

 

 千春はわかっていた。この勝利が自分一人の力ではない、ということを。

 

「私はゲームから除外されているサイバー・ドラゴン1体を含む全ての機械族モンスターを墓地に戻し! 融合召喚! 吠えなさい、キメラテック・オーバー・ドラゴン!!」

 

 融合素材となったのは元々素材となっているサイバー・ドラゴンに加えてエルタニンの効果で除外された20体、そして自身の効果で除外されていたサイバー・ヴァリーの計22体。巨大な心臓のような身体からは計22本もの首が生えた、あまりにも異様な姿のキメラテック・オーバー・ドラゴンが咆哮した。

 

「特殊召喚されたキメラテック・オーバー・ドラゴンの効果。このカード以外のフィールドのカードを全て墓地へ送る。未来融合は墓地に送られてしまうけど、キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃力は融合素材にしたモンスターの数×800ポイントになる!」

 

キメラテック・オーバー・ドラゴン ATK17600

 

「攻撃力、17600……!?」

「これが、私……いや私たちと遊希の絆! 私の決意の力!! キメラテック・オーバー・ドラゴンでキメラフレシアを攻撃!!」

「っ!……キメラフレシアの効果を発動! 相手モンスターの攻撃力を1000ダウンし、自身の攻撃力を1000アップするわ!」

 

キメラテック・オーバー・ドラゴン ATK17600→ATK16600

捕食植物キメラフレシア ATK2500→ATK3500

 

キメラテック・オーバー・ドラゴン ATK16600 vs 捕食植物キメラフレシア ATK3500

 

 キメラフレシアは自身の身体から蔦を伸ばし、キメラテック・オーバー・ドラゴンの身体を絡めとろうとするものの、あまりに力が違いすぎた。

 

(ダメ、止められない……!!)

 

 

 

 

―――“エヴォリューション・レザルト・バースト”!!―――

 

 

 

 

 

パープル LP6500→LP0

 

 

 

(これが……人の力……? 人が人を想う力……そう、なのね―――)

 

 

 

 迸るエネルギーの奔流の中に飲み込まれていくパープルの脳裏には一人の青年の姿が浮かんでいた。誰からも愛され、誰からも慕われたあの微笑みが。

 

 

 

 

(“我が君”―――いつか、私たちも―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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