☆TURN09(翔一)
「俺のターン、ドロー! バトルフェイズ!」
ドローカードを確認すると同時に即座にバトルフェイズに移る翔一。これまでにない積極攻勢に彼が勝負を決めに来ていることがわかる。
「ガルドニクスでそのセットモンスターを攻撃! 炎王炎翼!」
ガルドニクスの燃え盛る翼が千春のセットモンスターを焼き尽くす。千春のデッキはサイバー・ドラゴンデッキである以上、セットされているモンスターはサイバー・ドラゴン系列のモンスターであり、ただの壁モンスターでしかない―――しかし、ここで翔一は自分が勝ちに焦ったことを思い知らされる。何故ならセットされていたモンスターはサイバー・ドラゴン系列のモンスターではなかったからだ。
炎王神獣 ガルドニクス ATK2700 VS 超電磁タートル DEF1800
「《超電磁タートル》……」
《超電磁タートル》
効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻0/守1800
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
(1):相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。そのバトルフェイズを終了する。
「本当はランぺージの効果で墓地に送りたかったんだけどね。でもここで来てくれたのはラッキーだったわ!」
(ちっ、さすがに急ぎ過ぎたか。だが、超電磁タートルは早めに消費させるに限る!)
「俺は手札から速攻魔法、炎王炎環をフィールドのガルドニクスと墓地のガルドニクスを対象に発動! フィールドのガルドニクスを破壊し、墓地のガルドニクスを特殊召喚する!」
ガルドニクスの身体を焼き尽くして新たなガルドニクスが墓地から蘇る。仮に千春のセットモンスターが超電磁タートルでなかったら、このターンで千夏の残りライフはわずか200にまで減らされていただろう。
「炎王炎環で特殊召喚されたガルドニクスでダイレクトアタック!」
「墓地の超電磁タートルの効果を発動するわ! このカードをゲームから除外して、バトルフェイズを強制終了させる!」
「そう、お前はそうせざるを得ない。バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移る。運良く超電磁タートルでこのターンの攻撃を凌いだようだが、お前は今の状況を理解できているか?」
「……状況?」
「俺のフィールドにはガルドニクスが存在し、そして墓地には効果で破壊されたガルドニクスが存在する。次のターンのスタンバイフェイズに、このターン炎王炎環で破壊されたガルドニクスが蘇り、フィールドのガルドニクスを破壊するのさ」
炎王デッキならではのコンボの一つが、フィールドに1体目のガルドニクスが存在し、墓地に効果で破壊された2体目のガルドニクスが存在する場合に成立するコンボである。効果で破壊された次のターンのスタンバイフェイズに、墓地の2体目のガルドニクスが自身の効果で特殊召喚され、フィールドの1体目のガルドニクスを破壊する。そして墓地には1体目のガルドニクスの蘇生効果時に効果で破壊された2体目のガルドニクスが存在する。その次のターンにはその2体目のガルドニクスが効果で墓地から蘇るのだ。
「……ガルドニクスが毎ターン蘇生するってことね」
「そうだ。つまり俺は毎ターン《ブラック・ホール》を撃てるってことだ」
ブラック・ホールは今でこそ無制限カードであるが、かつては敵味方問わず全てのフィールドのモンスターを破壊することから禁止カードにも指定されていたほどのパワーカードである。千春はそのコンボを止める術を講じなければ、どれだけモンスターを展開したところでガルドニクスの前に焼き尽くされてしまうのだ。
「どうせなら1ターン目から決めたいコンボだったが、残りライフ2900のお前にトドメを刺すには十分なコンボだと思うぜ?」
「……そっか。じゃああなたのメインフェイズ2に私はリバースカードを発動させてもらうわ!」
「リバースカード? このタイミングで……?」
千春のフィールドには彼女の最初のターンからセットされていたカードがあった。ずっと発動されないことから、翔一がブラフのカードだと判断してずっと放置していたカードだ。
「速攻魔法《サイバーロード・フュージョン》を発動!」
《サイバーロード・フュージョン》
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールド及び除外されている自分のモンスターの中から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを持ち主のデッキに戻し、「サイバー・ドラゴン」モンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。このターン、この効果で特殊召喚したモンスター以外の自分のモンスターは攻撃できない。
「サイバーロード・フュージョンは、自分のフィールドもしくは除外されているモンスターの中からサイバー・ドラゴンモンスターを融合素材にする融合モンスターをエクストラデッキから融合召喚するカードよ! 私はゲームから除外されているサイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴン・コア、そしてサイバー・ドラゴン・フィーアの3体をデッキに戻し、融合!!」
次元の狭間から戻ってきたサイバー・ドラゴンを含む3体の機械族モンスターの身体が光の中へ消えていく。そして現れたのは、まるで東洋の龍の如く長い身体を持った神々しさを思わせるサイバー・ドラゴンだった。
「“その名に刻みしは永遠。守護の力を以て私たちに勝利をもたらしなさい!”融合召喚! 舞い降りなさい!《サイバー・エタニティ・ドラゴン》!!」
《サイバー・エタニティ・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星10/光属性/機械族/攻2800/守4000
「サイバー・ドラゴン」モンスター+機械族モンスター×2
(1):自分の墓地に機械族の融合モンスターが存在する場合、このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(2):融合召喚したこのカードが相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「サイバー・ドラゴン」1体を選んで特殊召喚する。
(3):墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分フィールドの融合モンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
サイバー・エタニティ・ドラゴン DEF4000
「守備力4000だと……だが、どんなに高いステータスを持ったモンスターでもガルドニクスの前には灰になるだけだ! ターンエンド!」
翔一 LP5100 手札0枚
デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(炎王神獣 ガルドニクス)EXゾーン:0 魔法・罠:2(炎舞-「天キ」×2)墓地:13 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラデッキ:14(0)
千春 LP2900 手札0枚
デッキ:34 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(サイバー・エタニティ・ドラゴン)魔法・罠:0 墓地:9 Pゾーン:青/赤 除外:1 エクストラデッキ:10(0)
翔一
□天天□□
□□□ガ□□
□ エ
□□□□□□
□□□□□
千春
凡例
エ・・・サイバー・エタニティ・ドラゴン
☆TURN10(千春)
「私のターン、ドロー!」
「このスタンバイフェイズに墓地のガルドニクスは蘇る! そして自分以外の全てのモンスターを破壊する!」
墓地から灼熱の炎と共にガルドニクスが蘇り、全てを炎で包み込む。翔一のフィールドに存在していたガルドニクスがその炎に飲み込まれて消えていく中、同じように炎に包まれたサイバー・エタニティ・ドラゴンはまるで眠る龍のようにとぐろを巻いたままその場に鎮座し続けていた。
「なっ……どうしてサイバー・エタニティ・ドラゴンは破壊されない!?」
「私の墓地に融合モンスターが存在する場合、サイバー・エタニティ・ドラゴンは相手のカードの効果の対象にならず、相手のカードの効果では破壊されないわ!」
千春の墓地には後攻1ターン目に激流葬によって破壊されたキメラテック・ランぺージ・ドラゴンが存在する。そのためサイバー・エタニティ・ドラゴンは自身の効果によって相手の効果による破壊を免れるのだ。
「っ……」
「ねえ、私わかっちゃったわ。ガルドニクスの弱点。ガルドニクスをサイバー・ドラゴン・インフィニティのようなモンスターで墓地に送らせないのはそうだけど、ガルドニクスより攻撃力もしくは守備力が高く、効果で破壊されないモンスターを出されたら、どうするのかしら?」
千春の指摘はまさにガルドニクスを主軸にする炎王デッキの弱点と言えた。ガルドニクスの強みは自身の特殊召喚効果と破壊効果で文字通りフィールドを焼け野原にするということ。仮に攻撃力で劣っていたとしても、自身の効果でそのモンスターを破壊し、そして毎ターン蘇生と破壊を繰り返すことで相手に大型モンスターを出させないことでデュエルの流れを自分のものにする。それが翔一の基本戦術なのだ。
そのため、千春のサイバー・エタニティ・ドラゴンはもちろん、鈴が切り札として愛用しているブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンも効果で破壊されず、ガルドニクスを上回る攻撃力を持っているため、天敵と言える。その対策として彼はそれらのモンスターをリリースすることで間接的に除去できる怒炎壊獣ドゴランを採用しているのだ。
「もちろんさっきインフィニティをドゴランでリリースしたのと同じように、あなたが2体目のドゴランを引ければあなたの勝ちかもしれないわ。でも、どれほど強力なカードであっても手札に引き入れられなきゃ意味がないのよ!」
「ちっ、だったら引き入れられるまで耐えるだけだ!」
「そうね、その意気よ! デッキはデュエリストの闘志に応えてくれる。あなたの勝ちたいという想いが強ければ、強いほどデッキはそれに応えてくれるのよ! ここからは理屈じゃない。私とあなた、どっちの勝ちたいという気持ちが強いかの勝負よ! メインフェイズ1、私は手札から魔法カード《サイバー・レヴシステム》を発動!」
《サイバー・レヴシステム》
通常魔法
(1):自分の手札・墓地から「サイバー・ドラゴン」1体を選んで特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは効果では破壊されない。
「私は墓地のサイバー・ドラゴン・ズィーガーを特殊召喚!」
「リンクモンスターを蘇生したか……」
「そしてサイバー・エタニティ・ドラゴンを攻撃表示に変更してバトルよ! サイバー・エタニティ・ドラゴンで炎王神獣 ガルドニクスを攻撃!」
サイバー・エタニティ・ドラゴン ATK2800 VS 炎王神獣 ガルドニクス ATK2700
「この瞬間、フィールドのサイバー・エタニティ・ドラゴンを対象にサイバー・ドラゴン・ズィーガーの効果を発動! ターン終了時までそのモンスターの攻撃力・守備力を2100アップさせるわ!」
サイバー・エタニティ・ドラゴン ATK2800/DEF4000→ATK4900/DEF6100
「攻撃力4900!?」
「不死鳥を撃ち落としなさい!“エタニティ・エヴォリューション・バースト”!!」
サイバー・エタニティ・ドラゴン ATK4900 VS 炎王神獣 ガルドニクス ATK2700
翔一 LP5100→2200
「戦闘で破壊されて墓地に送られたガルドニクスの効果を発動! デッキからガルドニクス以外の炎王1体を特殊召喚する! 俺はガネーシャを守備表示で特殊召喚!」
「じゃあサイバー・ドラゴン・ズィーガーでガネーシャを攻撃!」
サイバー・ドラゴン・ズィーガー ATK2100 VS 炎王獣 ガネーシャ DEF200
「破壊され、墓地に送られたガネーシャの効果を発動! 戦闘で破壊された方のガルドニクスを特殊召喚する!」
「確かガネーシャの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターンの終了時に破壊されるのよね?」
「そうだ。これで俺のフィールドにはガルドニクスが絶えることはない」
「バトルフェイズを終了。私はこれでターンエンドよ」
「ターン終了時にガネーシャの効果で特殊召喚されたガルドニクスは破壊される」
翔一 LP2200 手札0枚
デッキ:23 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠:2(炎舞-「天キ」×2)墓地:13 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラデッキ:14(0)
千春 LP2900 手札0枚
デッキ:33 メインモンスターゾーン:1(サイバー・ドラゴン・ズィーガー)EXゾーン:1(サイバー・エタニティ・ドラゴン)魔法・罠:0 墓地:9 Pゾーン:青/赤 除外:1 エクストラデッキ:10(0)
翔一
□天天□□
□□□□□□
□ エ
□□□ズ□□
□□□□□
千春
凡例
ズ・・・サイバー・ドラゴン・ズィーガー
「一気に目まぐるしく動くようになったわね……デュエルはどうなるのかしら?」
「火野さんの狙いはガルドニクスを壁として維持し続けてターンを稼ぎ、ドゴランを手札に引き入れるのを待つ、といったところでしょうか……」
「対する千春はその前に二の矢三の矢を用意して彼のライフを0にできるか、というところね」
(今有利なのは攻勢に入っている千春。だけど、最後まで油断は禁物よ。相手のライフが0になるまでは勝ちを確信してはいけない。それが……デュエルの鉄則)
☆TURN11(翔一)
「俺のターン、ドロー!……スタンバイフェイズに墓地のガルドニクスは復活! そしてフィールドのモンスターを全て破壊する!」
「サイバー・エタニティ・ドラゴンは墓地に融合モンスターが存在するので破壊されない! そしてサイバー・ドラゴン・ズィーガーもサイバー・レヴシステムによって墓地から特殊召喚されたため、効果では破壊されないわ!」
「墓地の2体目のガルドニクスの効果も発動! 自身を特殊召喚し、フィールドのモンスターを全て破壊! 先に特殊召喚されたガルドニクスを破壊する!」
「何度やっても一緒! エタニティもズィーガーも破壊されないわ!」
「ああ、確かに今のままじゃエタニティともズィーガーも倒せない。だからこうする。俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動!」
《貪欲な壺》
通常魔法
(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。
「俺は墓地の炎王獣 バロン、炎王獣 ガネーシャ、熱血獣士ウルフバーク、暗炎星-ユウシ、魁炎星皇-ソウコの計5体のモンスターをデッキに戻し、シャッフル。そして2枚ドロー! 俺は2体目の熱血獣士ウルフバークを召喚!」
「ここで2体目のウルフバーク……まさか」
「そうだ! サイバー・エタニティ・ドラゴンとサイバー・レヴシステムで特殊召喚されたサイバー・ドラゴン・ズィーガーを突破する鍵はここにある! 俺はウルフバークの効果で墓地のガネーシャを特殊召喚! そしてこの2体でもう一度ランク4の魁炎星皇-ソウコをX召喚! X召喚に成功したことで俺は3枚目の炎舞-「天キ」をセット。そして発動し、デッキから炎王獣 バロンを手札に加える!」
魁炎星皇-ソウコ ORU:2 ATK2200→2500
「そしてソウコの効果を発動! X素材を1つ取り除くことで、次の相手ターン終了時まで獣戦士族モンスター以外のモンスターの効果を無効にする! この効果は対象を取る効果ではないため、サイバー・エタニティ・ドラゴンの効果をすり抜ける!!」
ソウコの闘気は猛る虎を模した炎となってフィールドを覆いつくす。ソウコ以外のフィールドに存在するモンスターは全て獣戦士族モンスターではないため、この効果によってその効果を無効にされる。当然サイバー・エタニティ・ドラゴンの「相手のカードの対象にならず、相手のカードの効果では破壊されない」効果も無力化され、サイバー・ドラゴン・ズィーガーの「バトルフェイズ時に攻撃力2100以上の機械族の攻撃力・守備力をターン終了時まで2100アップさせる効果」も発動不可能になってしまった。
「……さすがにそれは予想外だったわ。まさかこの2体をまとめて無力化されちゃうなんて」
「常に相手の予想を裏切るのがデュエルってものだろ? バトルフェイズだ! 炎王神獣 ガルドニクスでサイバー・ドラゴン・ズィーガーを攻撃! 炎王炎翼!」
炎王神獣 ガルドニクス ATK2700 VS サイバー・ドラゴン・ズィーガー ATK2100
千春 LP2900→2300
「俺はこれでバトルフェイズを終了。そして、ターンエンドだ」
翔一 LP2200 手札3枚
デッキ:28 メインモンスターゾーン:1(炎王神獣 ガルドニクス)EXゾーン:1(魁炎星皇-ソウコ ORU:1)魔法・罠:2(炎舞-「天キ」×3)墓地:8 Pゾーン:青/赤 除外:0 エクストラデッキ:14(0)
千春 LP2300 手札0枚
デッキ:33 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(サイバー・エタニティ・ドラゴン)魔法・罠:0 墓地:10 Pゾーン:青/赤 除外:1 エクストラデッキ:10(0)
翔一
□天天□□
□□□ガ□□
魁 エ
□□□□□□
□□□□□
千春
☆TURN12(千春)
「私のターン、ドロー!」
「このスタンバイフェイズに墓地のガルドニクスが復活する!」
「だったらそのガルドニクスの効果にチェーンして手札から増殖するGの効果を発動よ! 相手が特殊召喚に成功するたびに私はデッキからカードを1枚ドローしなければいけないわ!」
「……互いにドローの運は強いようだな」
チェーン2(千春):増殖するG
チェーン1(翔一):炎王神獣 ガルドニクス
「チェーン2の増殖するGの効果が適用された後、チェーン1でガルドニクスを墓地から特殊召喚! そしてフィールドのガルドニクス以外のモンスターを全て破壊する! ソウコの効果でフィールドの獣戦士族モンスター以外の効果はこのターンの終了時まで無効になっているため、サイバー・エタニティ・ドラゴンも破壊される!!」
灼熱の炎によって焼け落ちていくサイバー・エタニティ・ドラゴン。よもやこのモンスターが突破されるとは思っていなかった千春の顔にもさすがに焦りが浮かぶ。
「そしてフィールドから墓地に送られたソウコの効果も発動! フィールドの天キ3枚を墓地に送り、デッキから同じ攻撃力を持つレベル4以下の獣戦士族モンスター2体を表側守備表示で特殊召喚する! 来い、バロン! ガネーシャ!」
「ガルドニクスだけじゃなく2体のモンスターを展開した!? でもそのモンスターも……」
「ああ、2体目のガルドニクスの効果で破壊される……が、お前は増殖するGを発動しているからな。2体目のガルドニクスの効果は発動しない」
増殖するGを発動したため、千春の手札は本来の数より1枚増えて2枚になっていた。厄介なエタニティを除去した今、状況は一転して翔一が有利な形になっていた。仮にここでガルドニクスを撃破されたところで残った2体の炎王獣でランク4のXモンスターをX召喚するなりすればいくらでも勝負を決めに行ける。そんな状況で更に特殊召喚して千春に逆転の芽を渡すわけにはいかなかった。
「……そうね、それが正しい判断かもしれないわね。でも、このデュエルは私の勝ちで終わりよ! 私は《サイバー・ドラゴン・ネクステア》を召喚!」
《サイバー・ドラゴン・ネクステア》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻200/守200
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
(2):手札からこのカード以外のモンスター1体を捨てて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
(3):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、攻撃力または守備力が2100の、自分の墓地の機械族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は機械族モンスターしか特殊召喚できない。
「サイバー・ドラゴン・ネクステアの召喚に成功した場合、墓地の攻撃力または守備力が2100の機械族モンスター1体を特殊召喚できるわ! 対象は―――サイバー・ドラゴン・インフィニティ!」
「サイバー・ドラゴン・インフィニティ……っ、その効果は通させない! その効果にチェーンしてガネーシャの効果を発動!」
チェーン2(翔一):炎王獣 ガネーシャ
チェーン1(千春):サイバー・ドラゴン・ネクステア
「ネクステアの効果を無効にする! そして手札のバロンを破壊する!」
「……まあ、止めてくるわよね。インフィニティを蘇生させられたらたまったもんじゃないから。でも、そっちに効果を使ってくれてありがとね!」
「っ……まさかネクステアは囮!?」
「そのまさかよ! 私はフィールドと墓地から光属性・機械族のモンスターを全てゲームから除外し、《サイバー・エルタニン》を特殊召喚!!」
《サイバー・エルタニン》
特殊召喚・効果モンスター
星10/光属性/機械族/攻?/守?
このカードは通常召喚できない。自分の墓地及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、機械族・光属性モンスターを全て除外した場合のみ特殊召喚できる。
(1):このカードの攻撃力・守備力は、このカードを特殊召喚するために除外したモンスターの数×500になる。
(2):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。このカード以外のフィールドの表側表示モンスターを全て墓地へ送る。
「サイバー・エルタニンの攻撃力はこのカードを特殊召喚するために除外したモンスターの数×500ポイントになるわ!」
千春がサイバー・エルタニンの特殊召喚のためにゲームから除外したのはネクステア、ドライ、エタニティ、ズィーガー、ノヴァ、インフィニティのサイバー・ドラゴン系列のモンスター計6体。よってサイバー・エルタニンの攻撃力と守備力は3000にまで上昇する。
サイバー・エルタニン ATK?/DEF?→ATK3000/DEF3000
「そしてサイバー・エルタニンの特殊召喚に成功した場合に発動! このカード以外のフィールドの表側表示モンスターを全て墓地に送る! 光と共に消え去りなさい!“コンステイション・シージュ”!」
エルタニンの放った光と共に天に昇っていった3体の炎王たちの魂が消える。それはまさに夜空に星が昇るかのように美しく、儚かった。
「……俺のモンスターが……」
「破壊じゃなくて墓地送り。これじゃ炎王の効果は発動できないわね。バトルよ! サイバー・エルタニンでダイレクトアタック!“ドラコニス・アセンション”!!」
サイバー・エルタニン ATK3000
翔一 LP2200→0
*
「やったぁー! このデュエル、私の勝ちよ!!」
サイバー・エルタニンの直接攻撃を受けたことにより、翔一のライフは0になった。このデュエルの勝者となった千春は子供のようにぴょんぴょんとジャンプして喜びを全身で表す。このデュエルには遊希と鈴の名誉がかかっていたのもあるが、やはりデュエルに勝つことはデュエリストなら当然嬉しかった。
「遊希! 鈴! 見ててくれた!?」
「見てたわよ。いいデュエルだったわ」
デュエルフィールドから駆け下りた千春は傍らでデュエルの行く末を見守っていた遊希たちに飛びつくように抱き着いた。それだけ彼女も気張っていたのだろう。
「……おい」
そんな時、敗れた翔一たち一行が遊希たちの下へやってきた。翔一はもちろん、彼の仲間達は皆複雑な表情をしていた。
「何? 言っておくけど遊希たちの悪口については……」
「さっきの態度、悪かった!」
デュエルに勝って得意げになる千春に対し、翔一たちは一斉に頭を下げる。デュエルの前とは人が変わったかのような態度に千春は首を傾げた。
「あら、いやに素直ね」
「実はな……」
翔一曰く遊希と鈴の噂は前々から彼らが主張していたように、他の学生たちの間から何処からか流れて来たものであったという。そして偶然その話をしていた時にそれを千春に聞かれ、しつこく問い質されたことで彼らのヒートアップし、引っ込みがつかなくなってしまったのだ。
「つまり皆さんははその噂を初めから信じていなかった、ということですか?」
「ああ、てか信じるわけないだろ普通。まあそこのチ……日向があまりにも厳しく言うもんだから、つい頭に来ちまって……」
「ちょっと、今チビって言いかけたでしょ!? そこは聞き逃さないからね!」
「第一……入学式の時にあんなデュエル見せつける奴がコネとか裏口なわけがないよな」
主義主張が違っても、同じデュエリストであればデュエルで通じ合える。遊希と鈴の激しいデュエルは、千春や皐月と同じように観客席にいた翔一たちにも伝わっていたのだ。
「なんにせよ、誤解が解けて良かったわ。処分が下された以上、しばらくデュエルはできなくなってしまうけど、あなたたちならそれくらいのブランクくらいどうってことならないかもね」
「……元プロデュエリストにそう言って貰えるとはな。それだけでこのデュエルを受けた甲斐があったってもんだ」
「ちょっと! 遊希も火野も無視しないでよおおお!」
デュエルが終わった後のフィールドには疲れ知らずの千春の元気な声だけが響き渡っていた。